なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「意図的に隠している……?」
「そう。普通の未来視じゃわからないってことは、そこで起きる想定外のトラブルに対処するのは、とても難しいってことになるでしょ?」
「……あー、少なくともここに在中しておる未来視部隊とやらでは、対応が後手になるのが目に見えておるのぅ」
私の言葉に、ミラちゃんが遠い目をしながら頷いている。
……そう、なりきり郷ではトラブルを未然に解決するため、未来視ができる『逆憑依』で結成された部隊が存在する。
筆頭として桃香さんがカウントされている……というのがちょっと不安を煽るが、そもそも彼女はスキルで言うところの『千里眼:EX』*1持ちに相当するため、(勤務態度はともかく)彼女のもたらす情報はとても正確なものとして、普通に重宝されているわけだ。
──そんな彼女でさえ、未来視のバグというものは見分けることができない。
いやまぁ、並行世界視が含まれるタイプの未来視であるのならば、そこから気付くことも決して不可能じゃない(他の世界の同一時間との差異を見分ける、などすればよい)とはいえ、そのバグのずれ方が並行で収まらず、並立の方にまで達していたらどうしようもないだろう。
そして恐らく、今回『星女神』様が黙っているものの中には、その『彼女が辛うじて気付けるレベル』のバグが混ざっている、という可能性が非常に高い。
何故なら、彼女は基本的に試練を与え人の成長を促すモノだからだ。
「言い方を変えると──今回は私への試練だけど、黙っている方は皆への試練だろう……みたいな?」
「ああ……彼女が黙っていればそもそもそれを知りようがないし、仮に知ったとしても彼女に直接問い質せる者も居ないということか……」
サウザーさんの言う通り。
黙っているのが私への試練でないのならば、私が気付く可能性は低くなるだろう。
私もほんのり予測系の技能は持っているものの、それで見えるのはあくまでも自分の近くのことだけ。
キリアならもうちょっと広範囲を見ることもできるだろうけど……それが試練であるのなら、彼女がそれをこちらに伝えてくることはないだろう。
比較的こちらに近い立ち位置だとはいえ、彼女も本質的には『星女神』様と同じく試練を与える側なわけだし。
つまり、『星女神』様が自身の居城に引っ込んだのは、言い方を変えると
彼女がもし、特になにもせずにこちらに居たままであれば……恐らく、私たちの気は緩んでいただろう。
世界の滅びの先駆け的な存在であるとはいえ、それは彼女が目覚める前、及び彼女が相方を得るまでの間の話。
今の彼女は普通に人類の保護者であり、人の手ではどうにもできないような災厄に見舞われたのならば、普通にこちらを助けてくれるはずだ。
──だがそれは、本来の【星の欠片】の理念からすると、微妙に噛み合わないものでもある。
どんなものにとっても
そしてそれは、自分達を踏み台にしてでも先へと飛躍して欲しい、という願いの現れでもある。
それを、普通の神の如く庇護する……というのは、正直侮辱と取られてもおかしくない状態なのだ。
いやまぁ、今の世の中的に『子は全て親から離れ独立するべき』なんて論法が真っ当に受け入れられるか、って話でもあるんだけど。
いわゆるコンプライアンスの問題、みたいな?
……『星女神』様がコンプライアンスを気にするのか?という話は置いておくとして。
ともあれ、本来の【星の欠片】の理念からすると、人を庇護し導くのは正反対のやり方、ということになる。
なので、ここで彼女は『私はいつでも貴方達を導くわけではありませんよ』と主張するため、及び私たちに更なる飛躍を期待して、自身の居城に引きこもったのでは?……という予測が立つのであった。
「……うん、それそのものは別にいいんだよ。実態はどうであれ、親が子供のすること全てに口を出す、ってのがよくないのは間違いじゃないし」
「問題があるとすれば、
「そういうこと……」
で、そこに隠れている問題点は、ミラちゃんの指摘通り。
……うん、言っていることそのものは決して間違いじゃないのだ。
最初にやり方を教えるくらいならまだしも、常に子の傍に立って彼らのやることを補助し続ける……というのが、子の成長に宜しくない可能性が高い、というのは。
だが同時に、一回教えたのだからもう一度やれるよね?……と言って全部任せてのは、それはそれで子の能力に過剰な期待を抱きすぎ、というか。
教えればなんでもできる、というのはわりと幻想である。
懇切丁寧に教えても覚えられない、ということは往々にして発生すること。
その理由は人によって様々だろうが──少なくとも、単一の正解など存在しない、ということは間違いあるまい。
──そう、単一の正解など存在しない。
これは即ち、彼女のように見ている範囲が広い存在の場合、それらの中から落ちこぼれるモノを見ていない、ということと同義である。
例え確率が一パーセント未満であっても、純粋に対象が増えれば該当者は増える。
確率として見た時は変わらずとも、個々人に目を向ければあぶれる人は確かに増えているのだ。
すなわち、一人にできるのだから皆できるよね、は暴論以外の何物でもない……ということ。
今回の場合、私という存在が試練を越えた、ないしこれから越えるのだから、他の人達だってできるよね?……という論法が罷り通っているかもしれない、ということになるのだ。
「なので、そこら辺の勘違いを訂正するためにも、彼女に話を聞く必要があるんだけど……」
「その場合、別の試練が起動し自動的にさっきの勘違いを補強してしまう……ということか」
「そういうことー」
さっきから口にしている通り、今の私が彼女の元に行くのは自殺行為である。
なにせ試練が纏めて襲い掛かってくる可能性大だからね。
無論それも問題だけど、今回の場合もっと問題なのが『その行為がさっきの話を補強してしまう』点。
私が聞きに行くと試練が発生するということは、彼女の元にたどり着いた時点で私は試練に打ち勝った、ということでもある。
なんてったって、試練を成功させなきゃ私は死ぬようなもの、だからね!
……この時点で私は試練によって成長した、ということになり。
結果として、『星女神』様は更に躊躇いなく、他の人への試練を敢行することだろう……正確には彼女が試練を出しているわけではない、というのがポイント。
一人がフルマラソンに成功したのだから、他の人だってやれるはず……くらいの無茶振りをしようとしているといえば、なんとなく危険度も伝わるだろうか?
なので、言い方は悪いが……孫に期待する祖母に、母親から『うぉ…それは流石にやりすぎ……』と言って貰う必要がある、というわけなのである。
で、あわよくば私の試練だけでなく、これから起きるだろう他の人への試練についても知っときたいなぁ、と。
……うん、普通に重いな、必要な条件が。
こっちは四人でスモック着てるだけという、大分間抜けな状態なんだけれども。
でもこれがないと戦いの部隊にも立てないかもしれないんだよなぁ……(遠い目)
「さっきの話か……」
「そう、実際のところ、『星女神』様より遥かにキリアの方が、試練を出す側として似合ってるってことだからねぇ……」
同じく微妙な顔をしているサウザーさんの言葉に、深々と頷く私である。
……うん、『星女神』様がその名前の通りに神であるのならば、キリアってその敵対者である悪魔……もっと言えば魔王だからね、そりゃ人を苦しめるのがお仕事というか。
え?今から私たちがやることも、ある意味では私たちが苦しんでいるので試練みたいなモノなんじゃないのか、だって?ううん、一理ある()
「しっかりしてぇキーアちゃーん☆」
「べふぅっ!?」
「ううむ、綺麗なビンタだったのぅ……」
そうして半笑いする私に、きらりんから飛んできたのは気付けのビンタ。
……いや普通に痛いんだけど、でもお陰で腹は決まった。
やらなきゃいけないことなのだから、ここでうじうじしていても始まらないのだ。
っていうか、見た目的に恥ずかしいのはサウザーさんくらいのもので(後ろで抗議するサウザーさんは無視)、私たちは寧ろ似合っているくらいなのだ、これで胸を張らずにどうするというのか。
そんなわけで、さっきから話をしている間中、ずっと握りっぱなしにしていた玄関のドアノブを開く。
そうして家の中に乗り込み、乗り込み……?
「ああ、おかえりなさいキーア、それから他の子も。
「ひぃっ!!?」
──踏み入れた室内は、まさに異界であった。
綺麗に整えられた
設置されたベッドは四人分──大きさは大の大人が寝転がっても大丈夫そうなそれは、天井から吊り下げられたベッドメリー*2と組合わさり異様な威圧感を放っている。
なにより、室内で異質な圧力を放っていたのは──今回の私たちの目標、キリア。
彼女は恍惚の表情を浮かべ、片手には哺乳瓶を、もう片手にはガラガラを持ち、こちらの到来を盛大に歓迎していたのであった。
……やベーぞ
A D V E N T M O T H ER
人類
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