なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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君が帰ってくるまで私たちは眠らない

「……まぁ総合すると、私らの記憶が吹っ飛んだのはそれが長すぎて精神ダメージが過大だったからだけど、同時にその時間は現実時間では一分にも満たないもの。……そこからわかるように、彼女(キリア)には時間の制限はないのに、未だに戻ってきてない……っていうのがどういうことか、ってことだよね」

「期を見計らっているのか、はたまた単純に向こうでの話が長くなっているのか……だったか?」

「そういうこと」

 

 

 気を取り直して、現在の状況を纏める私。

 キリアにとってなにかをするのに時間の経過など必要ない。にも関わらず、その時間経過が起きているというのは、そこになにかしらの意味がある……ということである。

 

 パターンとしては二つあり、前者はキリアがこちらの様子を窺っているもの。

 これに関してはその理由が色々と予測できるため、こちら側がどうする、と決めるのは難しいと思われる。

 

 ……いやだって、ねぇ?

 これでもし、行きに赤ちゃん達に見送られたから、帰りも赤ちゃん達に迎えて欲しい……みたいなやつだったら、こっちは逃げ出すしかないけれど。

 そういうのではなく、単純に向こうがさっきまでの行いを反省して、微妙に顔を見せ辛い……みたいなパターンでも成立することを思えば、正直考えるだけ無駄というか。

 ……素直に向こうが焦れて出てくるのを待った方が良い、みたいな?

 

 そういうわけなので、こっちに関しては気にしない方向で良い、ということになるのであった。

 で、問題はもう一つのパターン、単純に『星女神』様からの聞き取りが予想以上に難航している場合なのだけれど……。

 

 

「そっちの場合、最悪私たちはなんの成果も得られない……なんてパターンも予想しとかないといけないんだよねぇ」

「なぬっ、なんの成果も得られんだと!?あそこまでやっておいてか!?」

「ああ落ち着いてサウザーさん、まだあくまでも可能性の話ってだけだから」

「むぅ……」

 

 

 私の予想した内容に、ある意味では今回一番迷惑を被っていたと言ってもおかしくない立場である、サウザーさんから抗議めいた声が上がる。

 ……まぁうん、あんだけ恥ずかしい思いをしたのに、『なんの成果も!!得られませんでした!!』*1された日には、そりゃ怒り心頭になってもおかしくはないだろう。

 

 とはいえ、これはあくまでも可能性の話。

 ()()()まだ、確定した話ではないのでここで怒っても仕方ないのである。

 

 

「……その言い方だと、半ば確定しているように聞こえるがのぅ」

「ああうん、一番最初の目的だった『五条さんの相方』の情報に関してはまぁ……なんとか入手できるんじゃないかなぁ……?」

「そのレベルなのかっ!?」

 

 

 ……目敏いミラちゃんが指摘したように、私としては八割くらいなにも得られない可能性が高いと思っている。

 なんなら、『最低限これだけでも知れたらいい』というラインである『五条さんの相方』についての情報も、この状況だと得られるかどうかあやふやな感じというか。

 

 何故かというと、結局()()()()()()()()()()()()()()という部分に話が繋がるのであった。

 

 

「それってぇ、そんなに重要なことなの~?」

「うん、本来現実の時間が経過したことを認知できるほどに議論が白熱する、ってことがありえないからね」

 

 

 不思議そうに首を傾げるきらりんに、私はため息を交えながら答えていく。

 

 何度か言うように、【星の欠片】はその構築段階から『無限』というものを前提とした存在である。

 そのため、相手が同じ【星の欠片】である場合、あらゆる行動を()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

「……???」

「私たちの使う『無限』は物理的なモノであり概念的なモノ。だから、時間みたいなモノにも()()ことができるんだよ」

 

 

 より正確に言うのなら、時間という概念の中にも【星の欠片】が含まれている、ということになるか。

 つまり、もっと単純に言ってしまうと、私達は時間を無限に細分化できてしまうのだ。

 それも、一時間を無限に割るとか・一秒を無限に割るとか、結構無茶苦茶なことをやれてしまう……というくらいのレベルで。

 

 

「なるほど、無限に分割することが前提なので、分割する対象の方を変えて実質的な時間の長さを変化させているのですね?」

「……マシュは相変わらず理解が早いね……。その通り、マシュの言う通り、分けるのなら無限にするのが基本だから、量を調節する場合私達は分けるものの方を選ぶってわけ」

 

 

 流石はマシュと言うべきか、言いたいことをサクッと理解してくれる。

 

 彼女の言う通り、私達が起こした事象の量を調節する場合、そもそもの分けるものの量を選ぶ、という方式で調節している。

 それが何故かと言うと、無限概念である自己を保持するため──単純に言うと無限に割る以外の小回りが一切効かないためである。

 寧ろ、変に細かく調整しようとすると自己の崩壊を招きかねないというか。

 

 

「さらっと恐ろしいことを言うな貴様……」

「その辺りは、現実に『無限』という概念を無理なく顕現させようとした結果、ってやつだね」

 

 

 一種の自己保持回路みたいなもので、『今私は無限なので明日も無限です』みたいな証明を行っているのが、基本的な【星の欠片】なのだ。

 そのため、途中で無限であることを止めると、翻って()()()()()()()()()()()()と世界に判断され、不純物として処理されてしまうのである。

 

 ……いやまぁ、そうやって処理されても、世界の状態が不安定なままならそこら辺からリポップできたりはするんですけどね?

 でもその辺りの話は今回関係ないので、ここでは放置。

 

 必要なのは私達が物事を起こす場合、基本的にその量はある程度のパターンがある、ということの方。

 つまり、時間というものを無限分割する際、表面に量として現れるモノにもパターンがある、ということである。

 

 

「ふむ?」

「相手が普通の人間だったりする場合、無限なんてモノをそのままぶつけたら普通に頭が弾けちゃう……ってのは、五条さんの術式を知ってればわかる話だよね?」

「ああ、『無量空処』は一秒に満たない時間でも半年近くの情報量を流し込まれる……というやつじゃな?」

 

 

 最近の人が一番()()()()()『無限』は恐らく、五条さんの使う術式達だろうが……そんな彼の領域展開・『無量空処』は、領域内の相手に対し『無限回の知覚と伝達』を強制する、というかなりエグいものである。

 

 先ほど、人間の脳は基本的にパンクすることはないと言ったが……それも対処する時間が用意されていれば、の話。

 一秒にも満たない時間の間に、一年近くの情報が波のように押し寄せるとなれば、それは流石にどうしようもないだろう。

 ……まぁ、この場合は知識の貯蔵が溢れたというよりは、処理が多過ぎてオーバーフローしたという方が正解だろうが。

 

 ともかく、普段から無限に触れているとかならともかく、なんの耐性も持たない相手に無限をぶつけるのは──例えそれが物理的な量を持たぬ情報であっても無謀、というのは間違いあるまい。

 

 それは【星の欠片】であっても同じであり、どころか五条さんのそれよりも遥かに切羽詰まった問題として降り掛かっているモノなのだ。

 何故かって?【星の欠片】がどういうものなのか、もう一度思い出してみたらわかるんじゃないかな?

 

 

「……万物に含まれるもの。言い換えれば、()()()()()()()()()()()()()()()()。それゆえに、ふとした瞬間にも周囲のモノに無限を振り撒きかねない……ということですね?」

「そういうこと。私達はどこにでもある、だから誰にでも無限を近くさせてしまう可能性がある」

 

 

 そう、これまたマシュの言う通り。

 私達【星の欠片】は積み上げた結果の無限ではなく、一つのモノを無限に割った結果現出するもの。

 それゆえ、例外が一切ないのである。確かにあるものの中から無限を見いだすために、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がゆえに。

 ……言い換えると、ふとした瞬間に相手に無限を知覚させてしまう可能性がある、ということでもある。

 

 というか、【星の欠片】が目覚めた時の滅びの一因・先触れの一つだからね、『世界に無限が溢れ壊れていく』ってのは。

 

 

「……怖っ!!?」

「うん、【星の欠片】って怖いの。しかもオンオフしかできなくて、量の調節はほぼできないの。……で、その数少ない量の調整方法が対象を変える、ってことなんだけど。……それでもやっぱり()()でしょ?それで割るでしょ?……普通はそれでできたモノを知覚なんてできるはずがないんだよね」

「なるほど、本来無限は式に入れられぬもの。それを無理矢理動かしても、まともな数値にはならんはずじゃからのぅ」

 

 

 で、問題点はミラちゃんの言う通り。

 無限は数字ではないため、それで割り算をしても答えは出ないのが普通なのだ。

 無限の原則的には、無限をなにで割っても無限にしかならないように、なにかを無限で割ってもなににもならないのだ。

 

 ……さて、この話を踏まえた上で、今の状況をもう一度考えてみよう。

 現在、キリアはこちらに戻ってきていない。

 それも、彼女がここを出てから少なくとも()()()()()()()()()()()

 ──本来無限を扱うキリアにとって時間の制限はほぼないにも等しいのにも関わらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

「これが意味することはただ一つ。キリアが既にこっちに戻ってきているのに顔を見せるのを渋っているか、はたまた向こうで『星女神』様からの話を聞くのが難航しているか。──同じ無限使い同士だから、抵抗すればそこには無限対無限……本来答えのでないはずの無限を含む計算において、唯一違う答えを出しうる状態が引き起こされることもある、ってことになるからね」

「なんと……」

 

 

 それはつまり、キリアが尋ねることを『星女神』様が拒否している可能性が高い、ということになってしまうのだった。

 ……いや、そこまでするってどういうことよ?

 

 

*1
『進撃の巨人』より、845年の壁外調査から戻ってきたキース団長(エレン達の教官になるスキンヘッドの男性……の、若き頃の姿。髪はふさふさ)が、調査兵の一人の母親に対して述べた台詞。その母親の息子は右腕を残して巨人に食い殺されており、せめて息子は役に立ったのだ、と思いたくて声をあげた母親に対し、無念を滲ませながら叫ぶこととなった

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