なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ふむ……確かにこの広さならば、夜の空に花火が良く映えるだろうな」
「障害物もほとんどないッスから、どこでも見られるのもポイントッスねー」
「湖畔から見る花火ねぇ……人気高そうだねぇ」
はてさて、幾つか候補地を巡っている私たちだが、現在はあさひさん──もとい、ミラルーツさんの居住区である湖のある草原へと足を運んでいた。
少し前ならここを候補地に、なんていうのは論外中の論外だったのだろうが……
「……その言いぶりだと、かつての彼女は近付くことすら危うい存在だった、ということかね?」
「私はその当時のあさひさん……もといルーツさんの状態を知らないからなんとも言えないけど。まぁ、ワンフロア丸々自分の居住地として貰ってる、って時点で察してください」
「おっと、もしかして私の話ッスか、いやーんえっち」
「……これは突っ込むべきところかね?」
「イヤだエミヤんったら、突っ込むとかえっちなんだから」
「左右から私で遊ぶのは止めないかっ!?」
いやほら、エミヤんって無自覚ドン・ファンだから。
そのうち猛り昂ってイダイナキバとかになりかねないから。……そのドンファンじゃない?そりゃそうだ。*1
ともあれ、昔のあさひさんがヤバい人だった、というのは数々の状況証拠から確定的。
一応、ハロウィン(一回目)の時におまけクエストで見掛けた時には、なんというかわりと今のキャラに近い感じだったような気はするけども。
……そういえば、あの時ってサウザーさんが【
タイミング的には既に互助会の方に『逆憑依』の方のサウザーさんが在籍しているはずだから、もしかしたらあそこで出会ったのはユニヴァースの方のサウザーさんだったりしたのかも……え?そこで本家のやつだったんじゃ、ってならないのは何故かって?だってハロウィンだぜ?
「……恐ろしいほどに説得力があるな」
「もしくは、流石にハロウィンで消費されるのは可哀想というか。……いやまぁ、実際に『逆憑依』として成立しているサウザーさんがイチゴ味、って時点でわりとアレだけども」
私の言葉に、難しい顔をしながら唸るエミヤんである。
本家であるFGOのハロウィンも、一年目はそこまで大それたモノじゃなかったのに二年目の時点で城の上にピラミッドが降ってくる、とかいう意味不明具合だったからねぇ。
まぁ、三年目になるとみんな大好き()チェイピ城になるわけだけども。
ハロウィンとサウザーさんの話はともかく。
私が知り合うより前のあさひさんが、一つのフロアを丸々与えられるほどに危険視されていたのは間違いあるまい。
それを思えば、こうして他の人間が足を踏み入れてもいいか?……と交渉できている辺り、色々と変わっていってるんだろうなぁとしみじみしてしまうというか。
……この分だと、他の禁足地*2にもその内立ち寄れるようになるかも?
「……待ちたまえ、その言いぶりだとこの場所の他にもそういう場所があるのか?」
「『逆憑依』って元の存在を再現する、って形の存在だから、元々が規格外の存在だと大した再現度じゃなくてもエグい実力になる、みたいなことが多いみたいだからねー。……この傾向、人型から離れるほど強くなるみたいだから、流石に一番強かったのは今の姿になる前のあさひさんだろうけど、そこまで行かないくらいの人ならそれなりに居てもおかしくない……というか?」
「軽く言うことではないと思うのだが……」
「最悪、そういう場合はワンフロア与えればいいッスからねー。なりきり郷にスペースの問題はないッスよ」
「つくづく羨ましい話だな……」
禁足地、という言葉にエミヤんが目敏く反応してくる。
以前は今のようにフレンドリーではなかったあさひさん──もといミラルーツの居住区が一番の禁足地だったのだろうが、今ではこの通り。
となれば、自動的に
単純に溶岩地帯なので踏み入れるのに苦労するフロア・熔地庵の深層領域──一帯を覆う溶岩の出所となる存在が座す場所だとか。
はたまた、隔離塔のような重要施設内の一区画・今なお対処が思い付かず凍結されたままの存在が眠る場所だとか。
厄災級・接触禁忌種・禁忌のモンスター・原作者も知らないドラゴンとかの跋扈する自然区域とか。
まぁ、そんな感じに普通は足を踏み入れない場所、というのはなりきり郷内に割りとありふれているのである。
……まぁ、サンタクロース業務をこなす時とかには普通に突撃するんだけどね、そういうところにも。
それはともかく、これらの存在達を好きにさせられるのは、偏にこのなりきり郷がスペースの問題から解放されているため。
そうでなければ無理矢理彼等に枷を掛けてどうにかする、という正直無理難題以外の何物でもない方法を試さなければならなくなっていたのだから、そういう意味では初期メンバー達の研鑽様様、というか。
……みたいなところまで語れば、羨ましそうにエミヤんは苦笑を浮かべていたのだった。ふむ……?
「その笑い方からすると、スペースの問題でなにか苦い目にでもあってたり?」
「君は目敏いな……一度、乙事主と思わしき相手にあったことがあるのだが……」
「いきなり爆弾発言を落っことすの止めない?」
その様子が気になったため、続きを促した私だったのだが……すぐに後悔した。
いや乙事主って。ジブリじゃん。もののけ姫じゃん。首すぽーんじゃん(?)。
いやまぁ、私も会ったことはあるよ、もののけ姫の関係者。それも主人公。
……でもあの人、レベル1でネタ発言しかできないタイプだったけどね!!
まぁ一応なんとか成長?して、今では普通の会話くらいはできるようになったみたいだけど。
ただまぁ、本当に
まさに「お前にアシタカが
話を戻して。
どうやらエミヤんが任務のために互助会の外に出た時に、怪我をした乙事主に出会ったことがあるのだという。
幸いすぐに命に別状があるようなモノではなかったが……乙事主が怪我をする、という自体が少々問題であるため、エミヤん的にはすぐにでも保護したかったらしい。
「怪我をしてるのが問題なんッスか?」
「そりゃ問題で……あー、そういえば最近の人ってもののけ姫見たことない、って人も多いんだっけ?それなら知らないのも仕方ないか……」
「?」
うーん、思わぬジェネレーションギャップ……。
最近の人というのはデジタルネイティブであり、小さな頃からネットワークに触れながら生きている。
それは言い方を変えると、小さい頃から触れるメディアが
……更に言い方を変えるのならば、
ジブリ作品は世界に名だたるモノではあるが、それゆえにそう易々と配信はできない。
今やテレビはメディアとしては弱いものになってしまったが、それでもその発言力などは決して低いものではない。
そんなテレビにとって、ジブリ作品の配信権利はとても重要なモノなのである。
そのため、ジブリ作品はサブスクのようなネット配信には対応していない。──言い方を変えると、
ゆえに、ネットを中心に立ち回る若い人には、ジブリ作品の知名度が低い。
……子供の興味を引くものとしてアニメをテレビで見せ、そうして夢中になっている間に家事や仕事を終わらせる……というのが昔の核家族における子守の方法だったわけだが、その立ち位置がそのままネットに移行してしまったわけである。
なにせ、動画配信サイトなどであればビデオやDVDの入れ換えの手間がない。
子供がどんなコンテンツにも手軽に触れられてしまう、という問題こそあるものの、それでも長時間子供の面倒を見てくれる、という点ではこれ以上無いアイテムだろう。
まぁ、その結果として偏ったコンテンツばかり接種してしまったり、はたまた量が膨大であるために倍速視聴が習慣付いてしまったり……など、色々とおかしなことになってしまっているわけだが。
ネットの功罪についてはともかく、最近の世代がネットと共にある、ということは事実。
ゆえにネットに無いものにはアンテナが伸びず、結果として世代間の断絶が進んでいる……というわけである。
そんなわけなので、改めてあさひさんに「乙事主が怪我をしているとヤバい理由」を話した私。
……『逆憑依』は自身の逸話に弱い、ということを当時のエミヤんが知ってたか別だが、ともあれこのままだとタタリ神に変貌してしまう可能性があることは理解できた。
それゆえ、エミヤんは乙事主を互助会に招きたかったのだが……。
「なにぶん、彼の巨体だ。互助会に彼を連れていくのは問題しかなかったのだよ」
「ごまかしバッジも効果薄そうだから途中で注目されそうだし、仮にたどり着けても中に入れない可能性が高かったってわけだね」
当時の互助会の設備は、移設前のそれより更に小規模のもの。
それゆえ、乙事主を迎え入れるようなスペースも無かったのだという。
結局、その時は当時のリーダーであったキョウスケさんがなんとかしたらしいのだが……。
「…………」
「どうかしたかね?」
「いや……なんかこう、どこかでトラブルの種になるんだろうなぁというか」
思い出してしまったのは、さやかちゃんのこと。
……将来的にヤバいことになる相手を、ある種の封印を施して隠しておく……みたいなことをやっていたっぽいと判明した今、件の乙事主もどこかに隠されているのかも、とちょっとイヤな予感がしてきた私なのであった。
いや、当時のキョウスケさんが悪意からそういうことをした、ってわけじゃないのはわかってるんだけどね?
それでもどこかでトラブルの種になるんだろうなぁ、と思うと苦い顔を隠しきれない私なのでありましたとさ。