なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、先ほどの会議?の席であさひさんが求めたのは、なんとアプトノスを使った料理であった。
──アプトノス。
モンスターハンターシリーズに登場するモンスターの一種であり、どちらかといえば世界観を補強するためのモブ……みたいな扱いの生き物である。*1
言い方を変えると
ホーミング生肉……アプケロスとは違い狩りやすく、また温厚である彼等は作中において荷物の運搬に使われたり、はたまた卵や肉を食料として有効活用されることも少なくなかった。
スタミナ回復アイテムとして有名である『こんがり肉』作成のために、ハンターに殴り倒されることもしばしば……といえば、その悲哀もなんとなく感じられるのではないだろうか?
まぁ、だからってその辺りの罪悪感解消とばかりに、向こうが積極的にハンターに攻撃しにくるタイプのを登場させるのもあれだと思うわけだが。……お前らのことだよ
ともあれ、彼等が現実の家畜と同じく、人々の生活に密接に関わっていることは間違いない話。
それゆえ、世界がモンハン世界に侵食される場合、一番最初に現れるのが彼等……ということにも繋がるのであった。
「他には環境生物か。……確か、ドスヘラクレスなども採取できるのだったか?」
「説明文を真面目に受け取ると強すぎる、ってことになる例のアレでしょ?私は見たことないけど、あさひさんの言うところによれば『探せばいるはずっす』ってことらしいね」
「ほう、それはそれは……」
大型モンスターではなく、世界観を補強するための存在達が優先して現れる……ということを聞き、エミヤんが真っ先に連想したのはどうやらみんな大好きドスヘラクレスさんのことだったらしい。
……
まぁその辺りを今の彼がどう思っているのかは謎なので、とりあえず触れないまま話を進めるが。
さて、環境生物達もそこらに湧き始めている……ということから分かるように、この辺り一帯はすっかりモンハン世界に侵食されてしまっている。
そのため、そのままほっとくと更なる大型モンスターが湧き始めるかも?……ということで、狩猟による事実上の駆除が大々的に推奨されているのであった。
「まぁ、妥当だな。放っておくと他のモンスターの発生要因になったりするのかもしれないのだろう?」
「だねぇ。ランポスとかギアノスならまだしも、ティガレックスとかリオレウスとか出てくると堪ったもんじゃないし」
以前、パオちゃんの部屋とあさひさんのフロアが概念的に繋がり、パオちゃんの部屋側にモンハンの雪山が顕現していた……ということがあったのを覚えているだろうか?
あれは言うなれば、パオちゃんの構成要素として含まれていた『ベリオロス』と、あさひさんの本来の姿である 『ミラルーツ』、二つのモンスターが揃ったことで
このパターンの場合、『逆憑依』側の意向を世界に反映しやすい、という特徴があることがわかっている。
わかりやすく言うと、環境の調整を
例としてわかりやすいのは、雪山で縄張り争いもせずに暮らしていたドドブランゴとティガレックスの姿だろうか?
あの二種は共に区分としては大型モンスターであり、仮にライズやワールドの仕様が反映されていたのなら、まず間違いなく縄張り争いをしていたことだろう。
そのことに関して、あの時のあさひさんは『
彼女のお膝元ならばモンスター達は大人しくする……というのが正確であるのならば、こうして侵食されたフロアを危険な場所として認識する必要がない。
これはつまり、無意識によって発生する侵食──それも『特定のキャラが複数集まっているのだから、そこはその作品のパワーが強い』という原理にて行われるそれとは違う、『単にその個体が強すぎるために発生する侵食』は個人の意思を反映していない、ということになるだろう。
言うなれば、勝手にその世界が再現されているだけなので、力量が上がるまではその侵食を止めることもままならず、かつそこに追加で顕現する者達も、必ずしも侵食元に対して従順ではない……ということになるか。
雪山で遭遇するティガレックスと、こっちで遭遇することになったティガレックスは狂暴性が比較にならない……みたいな?
幸いにして、このフロアは星一つ分の広さを持ち、それらを侵食するのに無意識のそれでは圧倒的に速度が足りてない。
それゆえ、今現在はあくまでも環境生物・次点でさほど脅威ではない小型モンスターの顕現に留まっている……と。
これだけだと悪い面しかないように聞こえるかもしれないが、実際にはいいところもある。
それは、雪山にいる友好的なモンスター達と違い、こちらに現れるモンスター達は原作そのままの姿・行動を取るということ。
……言い換えると、基本的に攻撃することに心が痛まない、という話になるのだった。
「ポポの肉って美味しいって聞くけど、雪山にいるあの子達を攻撃するのはちょっとねー……」
「そこではティガレックスすら、犬や猫のような扱いなのだったか。……いや、大型犬の如く飛び込んでくるティガレックスというのも、命が幾つあっても足りないような気がするわけだがね」
尻尾をびったんびったんと嬉しそうに左右に振りながら、こちら目掛けて走ってくるティガレックス……。
言葉の上ではちょっと可愛げも見えるが、その実相対すると
そんな感じで、本来なら危険過ぎるティガレックスすらこの様子であるため、冗談でも攻撃しようという気が湧かないのだ。
……というか、なんか雪山のモンスター達はそもそも食事をしているかどうかも微妙であるため、モンスターの見た目をしただけの妖精とか精霊なんじゃないかなー、というか。
地脈とか大気とかからエネルギーを得ている可能性が高い、みたいな?
いやまぁ一応仮想空間内なので、リソースの分配が微妙にやり方が違う……みたいな可能性もあるけど。
対し、こっちで出てくる小型モンスター……ランポスは、ゲームで見たのと同じようにこちらを包囲し攻撃してくる。
そのため、こっちも情け容赦なく攻撃できるというものなのであった。
……まぁ、仮に攻撃されても大して痛くないんだけどね、これが。
「確か、この施設内では非殺傷設定が適用されているのだったか」
「『逆憑依』と【顕象】、それから普通の一般人相手にだけ、だけどね。こっちのモンスターは【鏡像】扱いみたいだから、普通にダメージは通るし」
その理由は、このなりきり郷に張り巡らされている『非殺傷設定の結界』。
これは『逆憑依』及び一般人に対しての致死性攻撃を大幅に減衰するという代物。
本来であれば【顕象】などは対象外のはずなのだが……特例なのかなんなのか、こちらに敵対的でなければ【顕象】であっても保護対象に入るのである。
……いやまぁ、流石に減衰率は下がるみたいだけど。
ともあれ、そういうこともあってこちらは向こうを張り倒せるし、向こうはこっちにろくなダメージも与えられない……ということになるのでしたとさ。
──まぁこれ、恐らく小型モンスターにしか通用しないらしいんだけどさ。
大型モンスターはその個体自体が世界の肯定のための楔になるので、こっちの法則に縛られない可能性が高いとかなんとか。
「だから定期的な駆除を必要とする、というわけか」
「そうそう。ランポスならいいけど、イャンクックくらいでも出現の可能性が観測されるとヤバい……みたいな」
そういうわけで、今まではあさひさん一人で・彼女の状態が落ち着き、かつこちらとの交流が始まってからは郷内の『逆憑依』達を交える形で、この辺りの狩猟が解禁された……と。
──なので、こういうこともある。
「──ん、珍しい顔が見えたと思えば……久しぶりだなデーモンガール。息災だったか?」
「ダンテさん?」
アプトノス狩猟のため歩いていた私たちは、ランポスの集団に突貫し吹っ飛ばしている一人の男性──ダンテさんと邂逅することになったのであった。