なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「…………」
「どうしたのエミヤん、なんか渋い顔をして」
「いや…………」
はてさて、思わぬ相手──ダンテさんとばったり遭遇した私たちはというと、そのままパーティを組むことになっていた。
理由は幾つかあるが……一番は
「この場所におけるモンスター達は、あのホワイトガールの放つエネルギーにつられて寄ってきたもの、と見なすことができるが……それらが集まりすぎると、必然デカブツの発生要因にもなりやすいのさ」
「なるほど?」
純粋な生き物というよりは概念が形を持ったものに近いため、複数揃いすぎると別の形に変換されなおしてしまう……みたいな感じか。
大抵の場合はどこぞのスライムの如く、複数の個体が統合されてドスタイプに変化する……みたいなことが多いらしいが、ごく稀に集まりすぎて別種に変化しようとすることもある……と。
それを防ぐため、ダンテさんのようなハンター達はモンスターを狩り尽くしている……とのことであった。
……というような話をしている間、エミヤんはずっと難しい顔をしていたのである。
時折ダンテさんの顔を見つめては、むむむと唸るのを繰り返す……みたいな?
流石にそんな反応をしておいてなにもない、ということもないだろうと声を掛けたものの……うーむ、微妙な反応。
一応、ダンテさんになにか悪感情がある……というわけでは無さそうなのは幸いだろうか。
まぁ、だとするとなにを唸っているのかがよくわからない、ということになるのだが。
そうして首を傾げていると、意を決したように彼は面を上げ、ダンテさんに近付き……、
「……つかぬことを尋ねるが、君は本当にダンテかね?」
「…………what's?」
突然、そんなことを口にしたのであった。
……いや、真面目になんで?
「いきなり俺が俺か、と尋ねられた時にはなにかと思ったが……なるほど、色々とそういうことをする理由、とやらは揃ってたってことか」
「ああ、すまないな……突然あんなことを聞いてしまって」
さて、突然のエミヤんの爆弾発言からしばし。
近くの岩場に腰を下ろした私たちは、先ほどの発言の真意を問い質し──それが必要なモノであったことを理解、はぁとため息を吐いていたのであった。
では何故、エミヤんがあんなことを言ったのか、というと。
その理由を端的に述べれば『リンボのせい』ということになる。
「まず、奴と声が同じであること。……感じる空気こそ違えど、どちらも同じ声質であることに変わりはないだろう?」
「ああうん……リンボもとい道満が【複合憑依】ってことは割れてるけど、それだけしか知らないならアレの性質上分身とかを疑うのも無理はないよね……」
まず一つ目、ダンテさんと道満の声が同じである、という部分。
本来なら声が同じ、というだけならば疑いの種にはならないのだが……こと道満に関しては別。
彼は優れた陰陽師であり、かつ仙術にも通じた怪僧。
それゆえ、自分の分身を式神を用いて作り出していたりもした。
その逸話?が根拠となり、今こちらに現れている『逆憑依』の道満にも、それらの技術が発現している可能性はとても高い。
また、ビーストⅢi/L──陽蜂の情報を得ているのならば、自分と同じ声のキャラクターは分身として利用しやすい、という話も知り得ているかもしれない。
この辺りは【継ぎ接ぎ】にも言えることだが──なんの関係もないものに変化したりするよりも、なにかしらの関わりがあるものに変化する方が楽であり精度も上がるのだ。
そのため、道満が分身として
……とはいえ、主役級のキャラを分身として活用する、というのは中々に難しい話。
陽蜂のようにビースト級の出力があるのならまだしも、そうでないのなら主役級のキャラの再現には実際の『逆憑依』のそれと同じ負担が掛かる必要性がある……。
ゆえに、本来ならばここでダンテさんを疑う意味はない(≒本来できるはずがない)のだが……実は、
「オマージュキャラクターに補強を加えれば元のキャラに近付く……考えてみれば、ありえなくもない話だねぇ」
「俺としては、そちらさんに俺をイメージさせるようなキャラがいた、ってことの方が驚きだけどな」
そう、それが型月ファンでも限られた人しか知らないような、死徒二十七祖の第十八位。
通称、復讐騎エンハウンス。*1
原作者直々に『ほぼダンテ』と明言された人物なのであった。
……いやまぁ、戦闘スタイルと見た目がダンテさんに似てるだけで、目的とか性格とかはどうにも全然似てないっぽいんだけども。*2
ともかく、型月世界にダンテさんに結び付くようなキャラがいた、ということは間違いない。
だが本来の彼が登場するのは『月姫2』──構想くらいしか語られていない架空の作品であるため、その姿も実際にはわからないため分身もなにもないはずなのだが……。
「見た目はほぼダンテさんって言われてるから、ある程度なら形を整えることは可能なんだよね……」
「そうして出来上がった雛型に、後から近似するような概念を【継ぎ接ぎ】していけば
そう、イメージとして『ほぼダンテ』という情報がある以上、そちらを元にすることでなんとなくの姿を作り上げることは不可能ではないのだ。
それゆえ、道満がダンテさんの姿を分身として利用する、という可能性は決してゼロではない……ということになってしまうのだった。
そりゃまぁ、思わず疑ってしまってもおかしくはないというか。
まぁ、最終的にはダンテさんの活動開始時期と道満の活動開始時期的に、微妙に噛み合わないのでこの心配は杞憂である、ということになったのだが。
「その道満とやらが道満として振る舞うようになるよりも前に、俺が活動を始めてるから違うだろう……って話だったか?まぁ、疑いが晴れる分には文句はないが……そんなに厄介なやつなのかい、その道満ってのは」
「あーうん、単に道満ってだけならそうでもないんだけど、そこに混じってるモノがねー……」
そこまで話して、結果的に疑われていたことになるダンテさんは特に気にした風もなく笑っていたのだった。
……うん、そうして豪気なのはこっちとしてもありがたい。
一応謝罪はしたものの、身に覚えのないことで疑われた、ということに変わりはないわけだし。
私も一瞬疑っちゃったしねー……。
それはそれとして、自身の疑いの種となった人物である『道満』という存在に、興味津々な様子のダンテさんに苦笑する私たちでもあったり。
……さて、そこから提起された『道満は危険なのか?』という問題だが……個人的には、
確かに、原作における道満は『晴明に勝つ以外ならなんでもできる』と揶揄されるくらいには器用な存在だが、それはあくまでも原作における彼の話。
こちらにおける話として語るには、彼の能力が技術に裏打ちされたモノである、ということがネックになってくる。──そう、再現度の問題だ。
かつて『じゅうまんボルト』という技を使う際、再現度が足りてないとどうなるのか?……みたいなことを話したことがあるが、その考え方を彼にも適用すると、その技能のほとんどがまともに使えない、という予想になってしまう。
何故かって?さっきから言うように道満の実力はかなりのもの、言い換えると普通に強いのである。
強ければ強いだけ、その本領を発揮するためには再現度の高さを必要とする……となれば、彼の技術方面の強さが『逆憑依』と相性が悪い、ということはなんとなく察せられるだろう。
そのため、単に道満が『逆憑依』として現れた場合、よっぽど再現度が高くなければ脅威とはなり辛い、ということになるのだ。
……再現度が高い場合?そもそも再現度が高い奴は道満でなくても脅威なので問題ないですね(?)
ところが、である。
今こちらに現れている道満は、単独の憑依ではなく複数──三つの存在が一つの器に注がれた【複合憑依】。
本来問題となる出力面が解決されるため、厄介度が上がっているのだ。
それだけではない。
確かに道満も危険視すべき相手だが、それ以外の構成要素も大概危ない相手なのであった。
「……なるほど、
「混ざってるのが悉く危険人物なのがねー……」
彼自身が述べていたことだが、彼の構成要素となるのは道満以外にキョウスケ・ナンブとセフィロスの二人。
……本来キョウスケさんは普通の人(?)だが、ここでの彼は【継ぎ接ぎ】が混ざっているようで純粋な彼ではなくアインストの要素が混じってしまっているとのこと。
そして、セフィロスに関しては言わずもがな。……元の人物から豹変している存在というのも、彼等三人の共通点となるわけだ。
そしてその三人のどれもが、やりたいことをやらせたら酷いことになるのが目に見えている存在。
なんなら、本来の主人格と思われるキョウスケさんが一番の危険人物、という状態である。
セフィロスさんに関しては最悪、クラウドさん投げとけばある程度誘導できるからね。
……どこからか響いてきた『止めてほしいんだが』という言葉をスルーし、一先ずの結論を出すと。
単に『逆憑依』してきた道満ならそこまで危険視すべきではないけど、【複合憑依】としての道満は普通に危険人物である……ということになるのであった。
『楽しそうに話してるとこ悪いっすけど。そろそろご飯持ってきて欲しいんっすけどー』
「おおっとそうだった。いい加減本来の目的を果たしに行きますかー」
「んじゃあ、俺もそっちを手伝うかね」
……などと話していると、どこからかあさひさんの文句が飛んできたため、私たちは会話を切り上げ元の目的──アプトノスの狩猟を終えるために下ろしていた腰を上げたのだった。