なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
『お腹いっぱいっす!満足したっすよー』
「ふむ、それならば良かった。私としても、珍しい食材を調理できて楽しかったよ」
はて、それからの話はサクッと進んだ。
……いやまぁ、アプトノスの狩猟に手間が掛かるというのも早々無いことだろうから、当たり前と言えば当たり前の話なんだけどね?
寧ろ大変だったのは
まず狩り方に関してだけど、こうして狩猟に向かう前にあさひさんからのリクエストがあった、というのが問題であった。
曰く『たくさん食べたい』『最低でも一匹は
……たくさん食べたい、という方に関してはそもそも現れたモンスターは狩り尽くすべき、というこちらの法則的にさしたる問題ではない*1が、もう一方に関してはそうも行かなかった。
なにせ『丸焼き』である。……簡単に丸焼きというが、それを美味しい料理にするためには結構な手間が掛かるのだ。
「丸焼きというとそのまま火に掛ける、というイメージが強いかも知れないが……その実必要な行程は多岐に渡る」
そう語り始めたのは、調理を手伝うと声を掛けた際にこちらを制してきたエミヤんだが……ともあれ彼の言うところによれば、丸焼きを行う際に気を付けること、というのは以下のモノであった。
まず、大型のモノは丸焼きにするのは不向きである。
これに関してはとても単純、まずもって中心部までしっかり火が通らない、というところが大きい。
実際、現実にも牛の丸焼きを食べられるところはあるにはあるが、そこでは専用の器具を用意した上で、さらに切り分けの際に肉を焼き直す……という行程を必要とするモノがほとんどである。
まぁ、牛肉の場合はある程度レアでも食べられはするだろうが……保健所などから指導が入るのでちゃんと焼く、という行程を追加する必要があるというわけだ。*2
ここからわかるのは、大型のモノを丸焼きにする際一般的にイメージされるような光景の通りには行かない、ということ。
モンハンの肉焼き機のように『肉を刺した棒を火に掛け、くるくると回しながら焼く』というのがまず難しい。
牛一頭の重さはおよそ七百キロ前後であり、それを回し焼くのに必要な筋力もアレだし、焼き方の都合上ずっと回し続けないといけないのもアレである。
さらに、丸焼きといっても一切下処理が要らないというわけでもない、というのも問題だろう。
内臓や頭は普通取っておくべき*3だし、そうでなくとも血抜き*4をしっかりしておかないと肉の味が落ちてしまう。
そして最後に問題となるのが、調理時間。
丸焼きはその名の通り『丸焼き』するものだが、それゆえにどうしても調理時間が伸びてしまう。
牛よりも遥かに小型な豚の丸焼きに掛かる時間が半日、かつそこまで焼いても中は生焼けの部分がある……という時点でなんとなく察せられる話ではあるのだが。
というか、単に姿を残したままの生き物を食べたい、というのならオーブンでも使った方が余程上手く焼き上がるというか?
……単に調理をするだけでもこれだけの問題が発生するのである、いわんやそれを美味しくしようとすれば……というわけだ。
「そもそも、今回狩ってきたアプトノスは一般的な牛よりもさらに大型だ。……これを丸焼きにする、となれば想定される問題もさらに広範に渡るだろうな」
「なるほどな、こいつの調理が難しいってことはわかった。……だが、アンタの顔に『できない』なんて言葉は書かれていない。一体どんな解決策を思い付いたってんだい?」
「かの有名なデビルハンター殿に期待されては、こちらとしても緊張せざるを得ないが……なに、そこまで難しい話でもない。彼女の力を借りれば、それで加熱に関しては話が済むからね」
「む?デーモンガールがか?」
で、そこで有用となるのがなんと私。
……より正確に言うと【星の欠片】なのであった。
物体を内部から温める、というと電子レンジ……ひいてはマイクロ波を想像するかもしれないが、牛よりも大きいモノを調理できるサイズ・かつ出力となると、なんらかの法律で止められるか罰せられるかする可能性が高い。
なんでかって?その規模だと普通に兵器転用できかねないからだよ!
まぁ、実際にはマイクロ波の性質上、まともに使える兵器にはならないだろうけども。そもそも稼働のために必要な電力量が桁違いになるわ。*5
だが、そういうものが丸焼き調理の際に便利だろう、というのもまた事実。
マイクロ波は水分に吸収されやすく、またそれ以外のモノには反射・ないし透過するため、モノを内部から温めるのに向いている。
また、水分に対して吸収される性質上、食品内部の細菌などを的確に殺菌する手段としても優れている。*6
なにせ、生き物は大抵が水分を含むものであるがゆえに、だ。
なので、下手にフライパンで調理するよりもレンジでチンした方が食中毒になり辛い、なんて話もあるのだが……それもきちんと利用できている場合の話だし、微妙に話題がずれてきているのでここでは割愛。
ともあれ、調理の際にレンジが使えるのはありがたい……ということに間違いはないだろう。
そこを前提にすると、【星の欠片】が調理に応用できるのならばこれ以上に便利なモノはない……と言い切ってしまっても問題はないということに気付くはずだ。
なにせ、【星の欠片】は
簡単に言ってしまえば、これを調理に応用すると完全に焼きムラのない料理を作ることができる、ということになるのだ。
「扱いとしては『細胞一つ一つに発熱させる』みたいなことができる、ってことになるわけだからね。そりゃまぁ、こういう大型のものを丸焼きにする上では重宝すると思うよ?」
「細胞一つ一つに対してアプローチを変えられる、というのも利点だな。部位によっては熱を加えすぎると味が落ちる……などということもあり得るわけなのだから」
焼きムラを作らないということは、同様に一部だけを焦がしてしまう、ということもないということになる。
丸焼きの場合は特に、表面だけが焦げてしまい内部は真っ赤、みたいなことが頻発してしまう。そういう事態を防げる、というだけでも利用価値は十分に高いと言えるだろう。
……そういうわけで、手伝いを買って出た私はいつの間にかコンロ扱いされていた、というわけなのでありましたとさ。
いや、いいけどね?流石にエミヤんの調理の手際見てたら、他の部分で手伝うのは無理だってわかったし。
そんなこんなで出来上がったアプトノスの丸焼き。
中までしっかり火の通ったそれはあさひさんの好評を呼び、また今度食べたいとまで言わせることに成功していたのでありましたとさ。
なんなら全体の調理時間も一時間に満たないあたり、大成功と言い換えてもいいくらいだというか?
「まぁ、まだ他の場所にも回らなければならないからな。それと、頼んでおいたことは大丈夫かね?」
「それなら大丈夫ー。しっかり用意しておいたよー」
「なるほど、ならば結構だ」
私たち様に別個で用意したアプトノス料理に舌鼓を打ちつつ、エミヤんからの問い掛けに準備万端と返す。
横のダンテさんはなんのこっちゃ、みたいな感じに肩を竦めていたが……まぁ、その辺りは後のお楽しみ、ということで。
「……そういえば、ダンテさんはこのあとどうするんで?なんかこっちが勝手についてくるのかなー、と思ってましたけど」
「ん?んー……そうだな、そこまで真面目にやるべきこともないし、今回はアンタ達についていくことにしよう。なにが起きるか楽しみなところもあるしな」
「……トラブルが発生することを前提に喋るの止めません?」
「起こらないとも思ってないだろう?」
「……仰る通りで」
なお、そういえば別についてくるかともなんとも聞いてなかったな?……と思った私が聞き返したところ、なんとも言えない評価を貰うことになる一幕があったりもしたが……わりといつも通りのことなので言うべきことは特に無い。無いったら無い。