なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、あさひさんの居住区から離れ、私たちが向かった次の場所はというと。
「……草原の次は溶岩地帯、ということか?」
「エミヤん、モンハンからは一旦離れよう?」
「おおっと」
一般には『熔地庵』と呼ばれる溶岩地帯、その深層領域。
ここら一帯の溶岩の源流となる生物が住まう、そんな危険区域なのであった。
なお、まがりなりにも溶岩地帯なので、なんの準備もなしに踏み込むと酷い目に合います。
具体的には着てるものが燃えるとか、頭髪がチリチリになるとか。……いやまぁ、命の危機にならない分だけマシなんだけどね?
なにせ溶岩の温度は八百から千二百ほど。
……サブカルに触れている人にとっては桁が少ないように聞こえるかも知れないが、人体を燃やすために必要な最低温度が千度前後とされていることを思えば、普通に危ない温度であることは察せられるだろうし。
いやまぁ、空気って熱伝導率悪いから、直接溶岩に触るとかしなければそう大変なことにならない、ってのも確かなんだけどね?
まぁともあれ、ここも花火大会の会場として借りようとしている以上、事実上の管理者には話を通して置かなければいけない、ということになるのだけれど……。
「……その管理者さんとやらが見えないんだが?」
「あれー?留守かなー?」
額の汗を拭いながら辺りを見渡していたダンテさんが、なにも居ないぞとばかりに声をあげる。
……本来なら常時そこに居るはずの場所──深層領域における
彼はその性質上、周囲に与える影響が強すぎるためここから動くことは滅多にないのだが……ううむ、急な用事でもできてしまったのだろうか?
まぁ、待っていればそのうち戻ってくるとは思う。
何度も言うが、彼はその存在がもたらす影響が強すぎるため、半ば封印に近い形でこの場所に留まっているのだ。
ゆえに、長時間この場を留守にすることはありえない。
ゆえに、こっちとしては単に待っているだけで大丈夫、ということになるのだけれど……。
「うーん、途中で誰かに捕まってる可能性もあるし、一応迎えに行こうか」
「ふむ、誰かに捕まる……というのは、その言いぶりからすると悪い意味ではない、ということか?」
「ん?……あー、そういえばちょっと悪い意味にも聞こえるね、さっきの。一応、悪い意味として言ったわけじゃないよ?」
彼がこの熔地庵中の溶岩を生み出しているようなもの、ということもまた事実。
となれば、溶岩を求める存在達に群がられているという可能性もある。
そうなると人のいい彼のことだ、彼等の求めるまま時間を浪費してしまう可能性は十分にあるだろう。
そこら辺も踏まえて、一応迎えに行った方がいいかなー?……という判断になったわけなのだが、どうやらエミヤん的には『悪い人に捕まる』的な意味に聞こえたらしい。
……一応、なりきり郷内にも区分的に『悪人』にカテゴライズされる人、というのは存在する。
するけど、その『悪行』というのも基本子供のやるようなものにまでスケールダウンされている。
それゆえ、彼の心配するようなことはないと返しつつ、納得したエミヤんとダンテさんを連れて高山口をあとにしたのでした。
「…………うー、動いているから暑いよー」*1
「まぁ、ここの場合は動いてなくても暑いだろうがな」
はてさて、高山口を離れてしばらく経ってのこと。
各地を順繰りに周りながら『彼』を探しているものの、その気配はどうにも見当たらない。
具体的には、こっちが移動すると向こうもワンフロア移動している感じ、とでもいうか。……ペイントボール*2忘れた時のモンハンを思い出すと言えば、わかる人はわかるかもしれない。
「あてもなく探し回っている気分、ということか。……最近の作品ではそういうこともなくなった、と聞いたな……」
「そもそも物食べた時のポージングとかも無くなったみたいだからねー」
思わずモンハンの話をしてしまったため、会話の内容は再びそっち方面に偏っていく。
昔のモンハンは不便だった、というのはベテランハンター達が口を揃えて述べる事柄だが、事実現行作品をやったあとに古い作品に触れるとそのギャップに目を剥くこと頻りだろう。
ともすれば白目を剥く羽目にさえなりそう、みたいな?
なにせとにかく面倒臭かった。
どう面倒臭かったのかは、ネットで動画でも漁れば幾らでも出てくるのでここでは割愛するが、敢えて一つ挙げるのならば『食事後のガッツポーズ』が一番わかりやすいだろう。
これはゲームのプレイスタイル構築のための一種の枷、とでも言うべきものである。
回復アイテムを使うとガッツポーズが強制的に挟まり、結果として操作不能時間が出来上がる……というものだ。
「実際の戦闘でそんなポーズしてたら死ぬどころの話じゃないだろうが……相手もある程度動きが遅いからこその調整、ってやつだったんだろうな」
「実際、初期のモンスター達に今の高速化したハンターなんてぶつけたら、多分普通に狩り尽くされてるからねー」
ダンテさんの言葉に頷く私。
今でこそハンターは縦横無尽に動き回るが、それは相手となるモンスター側も速度が上がったからこそ。
もし仮に今のハンターの動きを過去作に持ち込めたのなら、ほぼ確実に蹂躙劇と化すだろう。
……つまり、ゲームスピードの調整という意味もあった、ということである。
あるいは、モンスターの動きをできうる限り現実の生き物に近付けると、そういう調整をしなければ一方的になる……ということか。
まぁ、プレイヤー側からすれば『なにやってんだお前ぇ!!』*3でしかないわけだけど。
ダメージを受けたから回復してるのに、またダメージを受けてしまうような隙を晒すのは堪ったもんじゃないというか?
今でも頻度は減ったもののたまにある『回復のためにまごついていたらいつの間にか敵がこちらに攻撃してくる間際だった』、が頻繁に起きてたわけだし。
「ティガの突進を避けて回復アイテム使ったら、ハンター越しにティガがこちらに旋回してるのが見えた時の絶望感よ……」*4
「ああ、初めてティガと戦闘した時か……避けて回復のつもりがそもそも避けきれていない、というやつだな」
しみじみと語る私たちである。
……まぁ、今ではプレイヤー達の要望などを取り入れ、滅茶苦茶軽快に動き回るようになったわけだが。
そしてその代わりに、昔のハンターだと避けきれないような攻撃をモンスター達がしてくるようにもなったわけだが……昔と今、どっちがいいのかは人による……のかも?
「どうしてだ?速い方が喜ばれそうなもんだが」
「歳を取るとアクションゲームができなくなる、って聞くじゃない?」
「あー……」
体が付いていかないし、視線も追い付かない。
自身と相手のスペックに振り回され、結果としてゲームが嫌いになる……みたいな?
そういう高齢ゲーマーも多いらしいし、そういう人はわりと放置ゲーに流れて行くらしいとか、まぁそんな話もあるけど言ってて楽しい話でもないので割愛。
そもそも私たち、そういうこと気にするような歳でもないしね!
さて、いい加減元の目的に話を戻すけど。
こうして話している間にも
あの巨体なので、遠目からでも本来なら見付けられるはずなのだが……そうはなってない辺り、もしかしたら彼もまたあさひさんみたいなことになっているのかもしれない。
「……ん?あのドラゴンガールと一緒ってのはどういうこった?」
「あさひさんのあの姿って、ミラルーツのまんまだと他の階層に遊びに行けないから……みたいな問題が発生したから生み出した変身形態であって、別に【継ぎ接ぎ】とかではないらしいけど……それと同じように、『あの姿』のままだと他所に行けないから移動用の姿を生み出したのかも……みたいな?」
「…………???」
おおっと、ダンテさんが首を傾げたまま固まってしまった。
こっちがなにを言ってるのか、よくわからなかったらしい。
この辺りは、元々のスペックが高い存在の『逆憑依』は『逆憑依』であってもわりとわけのわからないことができる、という話を知らないと分かりにくいかもしれない。
要するに、あさひさんのあの姿は(敢えて誇張した言い方をすると)有り余るパワーを使って新しい姿を作り出した、というのが近いのである。
「……あー、魔族だのが変装するのに近い、ってことか?」
「どっちかと言うと『逆憑依』の枠組みの中で『逆憑依』してる、ってのが近いのかな?まぁ、あくまでそんな感じってだけで実際に『逆憑依』が発生しているわけじゃないんだけど」
もう少し分かりやすく言うのなら、『逆憑依』の力で別のキャラになりきりをしている、となるか。
人外スペックをフル活用してなりきっている、とかでもいいかもしれない。
無論、『逆憑依』としては成立していないので本人由来のスキルとかは使えないのだが……それを無理矢理再現している、みたいな?
念能力で言うと『
無駄遣いってわかってるのになんでそんなことを?……みたいな疑問が飛んできそうだが、一応これにも利点はある。
そう、『逆憑依』にならないことだ。
「単純に私たちがなりきりをこの姿でやっても、なにも起きないか最悪【継ぎ接ぎ】が発生するだけだけど、彼女達のそれはスキルまで自分のパワーで再現するから既に【継ぎ接ぎ】になっているみたいな扱いになって、余計な面倒を背負込まずに済む……みたいな?」
「ふむ?」
普通の【継ぎ接ぎ】は私たちの行動に対して『誰か』がスキルを付け加える……みたいな形だが、あさひさん達のそれは付け加えられる前に自分で用意するので『誰か』が『あれ?もうあげたっけ?じゃあいいか』と勘違いする……みたいな感じか。
つまり、取り外しできる【継ぎ接ぎ】よりもさらに手軽であるのだ。
……まぁ、強大な存在が人化するようなものなので、ある程度以上の再現度を持つか・はたまたそもそもの存在が強大過ぎるかの、いずれかの条件を満たす必要があるわけだが。
「ともあれ、件の人なら外出用の姿を新たに設定する、みたいなことができてもおかしくはないわけですよ、わりと普通に存在の格としては結構なモノがありますからね」
「ってことはここの主はアカムトルム*5とかその辺り、ってことか?」
「いや、モンハンじゃないですね」
「……ふぅむ?」
私の発言を聞いて、ダンテさんはここの主がアカムトルムだと思ったようだが……それは違う。
とはいえそれをここで明かすのもあれなので、相手が誰なのかは出会うまでのお楽しみ、と私は声を返すのだった。