なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・炎系のキャラの性格って意外と難しい

 はてさて、前回から引き続き熔地庵を探索中の私たちなのですが。

 

 

「──ぷはっ、あー生き返るー……」

「あっついところで飲むキンキンに冷えた飲み物は上手いだろう?もっと買っていっておくれよ!」

 

 

 あまりの暑さに一度休憩しよう、ということになり最寄りの集落にあった売店に寄ったところ、そこで店番をしていたおばちゃんと雑談で盛り上がっていた……というわけなのでした。

 いやまぁ、個人的なことを言わせて貰えれば、こんなところで店番なんてしてて大丈夫なんおばちゃん?……って感じなのだけれど。

 

 

「この辺りの家はどこも特別製でねぇ、熱をそもそも通さないのさ」

「なるほど。……いや、そうじゃなきゃそもそもこんなところに家なんて立たないか……」

 

 

 おばちゃんの言うところによれば、この辺りの建築物は全て超耐火性かつ超断熱性、ゆえに老人がうろうろしていても問題ないのだとか。

 言われてみれば、その辺りしっかりしてないとそもそも人なんて住めないよなぁ……と納得する私である。

 

 この耐火・断熱効果は家の中心部に据えられた神棚*1を中心に発生しており、ここのように人々の集まる集落みたいになっている場所だと、効果範囲が重なって集落全部を覆うようになっているのだそうだ。

 

 ……まぁ、場所が場所ゆえに例外処理ができないらしく、安全な家の中では火の気が全く使えない、というなんとも言えないことになっているらしいが。

 料理する時とか大変では?……と聞いたところ、この辺りは全家庭オール電化だよ、という身も蓋もない返答が返ってきたのであった。

 地熱発電してるから電気代ゼロ円なんだって。……いやまぁ、他のところもそもそも電気代はゼロ円だけども。

 

 

「このフロアだけで完結している、ってのは意外と珍しいんだってさ」

「なるほどな……にしても、外と内とで気温が違いすぎるだろう、マジで」

 

 

 そんなことを話しながら、集落をあとにする私たちである。

 なお、どうでもいいこぼれ話だけど。

 なにもかもレンジでチン、だと味気ないということでどうにかして火の気を使おうとした結果、溶岩の上に耐火・耐熱性の網を置いてその上でモノを焼く……いわゆる『溶岩焼き』とでも言うべきものがここの名産になっている、というなんとも言えない話があったりする。*2

 

 ……みたいな会話をしつつ、周辺を見渡す私たち。

 目的の人物である『彼』の姿はどこにも見えず、どうにも徒労感が見えてきた感じである。

 っていうか、これだけ探しても見付からない辺り、やっぱりあさひさんみたく外行き用の姿を作ってそっちでうろうろしている、ということなんじゃないだろうか?

 

 

「仮にそれが正解だとすると、このフロアに居ないということもあり得るのではないかね?」

「あ、それはないですね」

「言いきるということは、なにか根拠が?」

「何度も言いますけど、彼はこの溶岩地帯の元締め。……言い方を変えると()()()()()()()()()()()()()()()なので、そう易々と外には出られないんですよ」

「ふむ?」

 

 

 そんなことを私が言えば、エミヤさんが探している相手がこのフロアに居ないのではないか、という可能性について論じてくる。

 ……が、それに関してはきっぱりと否定しておく私である。

 何故かと言えば、それは彼がこのフロアの元締めであるから。言い方を変えると、このフロアを溶岩地帯に変えたのが彼だから、ということになる。

 

 この辺りは先述したあさひさんのパターンと同じ。

 元々が強大であればあるだけ、そしてそれを制御する手段を持たないのなら持たないだけ、彼ら特異な『逆憑依』は自身の周辺を自身に取って最適な環境へと()()()()()()()変換・ないし侵食してしまう。

 そしてこれは、後々に自身の技能を制御できるようになっても、ある意味で問題が残り続けるものなのなのだ。

 どういうことかと言えば、変化させられた環境は不可逆である、というところが大きい。

 

 

「敢えて誤解を恐れずに言うのなら、周辺区域に自分という存在を【継ぎ接ぎ】している、ということになるのかな。自分という存在が周囲の環境を肯定するし、周囲の環境もまた()()()()()()()()()()()()()()()()本人を肯定する……みたいな」

「外付けの再現度補助設備……みたいなものってことか?」

「まぁ、そんな感じですね」

 

 

 周囲の自然環境そのものが、巨大な自身のバックアップになる……みたいな感じでもいいかもしれない。

 これらも含めて制御できてこそではあるが、仮に制御できたとしても既に出来上がった環境をゼロに戻すことはできない……というか。

 寧ろ、本体と違って理性などが付随しないため、バックアップとなった環境は自己の維持・保存を最優先し始めるため、下手に本人が離れてしまうと暴走を始める可能性大なのだ。

 

 じゃあ、たまに遊びに出て自身のフロアを離れているあさひさんはどうなのか?……という話だが、これに関してはとても簡単な理由が一つある。

 

 

「それは?」

「あれは分身だ、ってことですね。わかりやすい類似例を述べると、本人は変わらず星の裏側に居るけど分身をカルデアに送ったジーク君みたいな感じ、というか」

 

 

 もしくは、本体である龍が微睡みの中にて得た姿をそのまま現世でも使っている……みたいな。

 ともかく、本体かつ制御ユニットでもある体は元の居住区に残したまま、精神だけ外に出て活動している……みたいな感じなのが今のあさひさんなのである。

 無論、それが徹頭徹尾正解ならばあのあさひさんには肉の体がない……すなわち外でモノを持ったり食べたりできない……ということになってしまうので、厳密には色々違うわけなのだが。

 まぁ、邪龍・ファヴニールに対するFGOでのジーク君、が一番近いんじゃないかな、やっぱり。

 

 なお、この説明に関してはエミヤんには通じたものの、ダンテさんには微妙に通じず、その辺りの説明をするのにちょっと時間が掛かったということを合わせて記しておく。

 

 

 

 

 

 

 はてさて、それからも熔地庵内の至るところを見て回ったものの、彼らしき存在の姿は見当たらず。

 ……ううむ、別に花火大会開催まで時間がそんなに残っていない、というわけでもないけど。

 どうせなら今日中のうちに、あさひさんと彼を合わせてあと一人くらいは許可を取っておきたかったのでこの足止めは予想外というか。

 

 時刻的にまだ三時前くらいなのに諦めが早くない?

 と思われるかもしれないが、実のところ熔地庵における三時は外での夕方に近いものであり、これ以上の滞在は少々無理が出てくるため推奨されていないのだ。

 

 

「無理が出てくる……とは?」

「具体的に言うと、大体午後四時くらいから熔地庵中の溶岩の入れ換えが始まるんだよね」

「溶岩の」

「入れ換え」

 

 

 なんでそんなことに?……と首を傾げるエミヤんに対し、私は熔地庵において夕方から朝方に掛けて行われる、とあるイベントを答えとして返す。

 感覚的には、風呂屋のお湯を張り替える……みたいなのが近いのだろうか?

 

 この熔地庵内の溶岩は彼が管理するものである、というのは先述した通りだが、それが指す意味をもう少し詳細に説明すると、ここら一帯の溶岩は全て()()()()()になるのである。

 雑に言うと『溶岩を吹き出す生き物』みたいなことになるのだろうか?

 まぁそういうわけなので、新鮮な溶岩(?)を供給するため、大体午後三時を過ぎた辺りから外出禁止令が一部区域に発令され、それから翌朝八時くらいまで物理的に溶岩が移動して危なくなるのである。

 

 具体的には、一度彼の体に吸収されたあと、再び溶岩として吹き出す……みたいな感じになるわけなのだが……。

 その結果として彼自体にも近付けないし、さっきの集落みたいに対処もしていない単なる街道なんかは、とてもじゃないけど人が進めるような状態ではなくなるのだ。

 なにせ、平気で道の上を溶岩が垂れ流される形になるからね。

 まぁ、その時に周辺に転がっているゴミとかも纏めて回収される形になるため、区域内の清掃にも役立っていたりするらしいのだけど。

 ……一応注釈を入れておくと、ここでいう『ゴミ』は誰かがポイ捨てしたものではなく、高熱に晒された結果ダメになった道路の破片などのことなので悪しからず。……悪しからずかな?

 

 まぁともかく、このフロアそのものの基本構造みたいなモノなので、これをこちらの都合で止めることは不可能。

 ……っていうか、さっきも言っていた『バックアップ』部分の半自動的行動でもあるため、ある程度の誘導はできても本人にも止めることは不可能なんだけど。

 

 ともあれ、これが開始されると介入する手段はないため、件の彼に会うのなら明日の朝まで待つ必要がある……ということになるのだった。

 ……その時間帯になれば戻ってくるという意味では、単に彼に会おうとする場合寧ろ絶好の機会ということになるんだけどね。

 今回は会っただけでは話が終わらないため、実質的なタイムアップの宣言になってしまっている……というわけなのであった。

 

 

「まぁ、今日中に話を纏めるのは無理だけど、次の日の朝に何処か行ったりしないように言い含めておくことは可能だから、一応高山口まで戻ってみる?」

「そう……だな。ここまで探して急に相手が見付かる、ということもないだろう。なら、戻って相手を待つのが最善……ということで間違いないだろうな」

「へぇー、そうなんだー」

「!?」

 

 

 これ以上の捜索はほぼ無意味。

 ……となれば、もう高山口に戻って彼を待った方がいいだろう……とエミヤんに告げ、彼がそれに頷いたのを確認した私の隣に、いつの間にか現れていた一つの人影。

 それは全身が燃えたまま話しかけてくる、奇妙な存在。

 ……探し人である『彼』らしき姿が突然現れたことに、私たちは思わず身構えていたのであった。

 

 ──まぁ、当人はのほほんとした笑みを浮かべていたのだが。

 

 

*1
神を奉る為、家の中に設置された棚。基本的には神道に関わるモノであり、位置は大抵天井の近くであることが多い

*2
なお、本来『溶岩焼き』という場合、溶岩が冷えて固まった岩板を使ってモノを焼くことを指す。間違ってもマグマの上でモノを焼く、ということではない

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