なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、突然私たちのすぐ近くに現れた、炎に包まれた謎の人物。
火に巻かれているにも関わらずのほほんとしている様子から、彼が私たちが探していた『彼』であることはほぼ確定なのだが……なんというかこう、実際に相対した私たちは思わず閉口していたのだった。
いやだって……ねぇ?
「……なんでその人?」
「んー?いやー、なんだかいつでも燃えてそうだから?」
「燃えているという言葉の意味が違うような気がするのだが……」*1
火の向こうに見える彼の顔。それは、どう考えてもヒロアカの荼毘の顔だったのである。*2……いや、なんでその人?
一応、本来の彼に比べると顔の火傷がない……などの特徴が見て取れるため、荼毘そのものというよりは『大きくなった燈矢』という感じなのだが。
あと、喋り方も荼毘・燈矢のどちらとも違う感じなので、真面目に姿だけ借りている感じ……みたいな?
……そもそも絶えず燃え続けてるから顔なんてよく見えない?それはごもっとも。
ともあれ、この特徴的に彼が私たちが探していた相手、ということに間違いはないわけなのだが……うーん、やっぱこの人色々拗れてるな……?とか思ってしまう私である。
いやだって、ねぇ?この姿じゃなかったとしても、扱いとしては微妙な方だろうってのは間違いじゃないし。
「……そういえば、結局彼の本体はなんなんだ?道中でも誤魔化されていたが……」
「え?あー……うん、そのなんというか、ね?」
「なんだなんだデーモンガール、普段のアンタが嘘みたいに口下手じゃないか?」
とまぁ、そんな感じに微妙な顔をしていたら、エミヤんが不思議そうな顔をしてこちらに問い掛けてくる。
……あーうん、結局相手がどういう存在なのか、ということを一切告げないまま探していたんで、そういう疑問が出てくるのは仕方ないとは思う。
思うんだけど、だからって説明してしまうのもなー、と微妙な顔になってしまう私であった。
いや、別にこの人が悪い人・ないし悪い獣ってことではないのだ。
流石にミラルーツと比較すると格は低いけど、決して弱いってわけでもないし。
……無いんだけど、作中の描写がねー、なんというかねー。
ちらり、と荼毘の姿をしている彼の方を見やる。
原作での彼は、登場当初こそ影のある悪役……みたいな感じだったが、話が進むに連れその裏事情が明らかとなり、微妙に同情しきれない人物像へと変化して行った。*3
いやまぁ、普通に考えたら同情されてしかるべき、なんだけどね?
でもこう……なんていうのか、『いじめられるヤツにはいじめられる理由がある』なんて戯言*4に、一瞬頷いてしまいたくなるような空気感があるというか。
あれだあれ、被害者が加害者でないという保証はない、みたいな?
そんなわけなので、境遇に比してあまり同情されていない──下手すると寧ろウザがられている、みたいな評価になるのであった。
で、この『実態と評価が乖離している』という部分が、彼の本体である存在にも当てはまるのである。
ちょっとぼかしていうと、元の元?になっていると思わしい生き物は、本来
やっていること的にはもう少し評価されてもおかしくないが、その存在に付随する別の部分で評価が下げられている同士……みたいな繋がりなのだろう。
そういう意味では、彼の姿として荼毘はピッタリである……ということになるのだろうか。
まぁ、性格面はまっっったく似てないので、結果として下手ななりきりを見せられているような状態になっているみたいだが。
……さて、いい加減言及するのを避けられなくなってきたのでどうしたものか、と彼を見たところ。
「あーうん、いいよいいよ。こういうのは実際に見た方が早いだろうからねー」
「申し訳ない……」
こちらの視線を察した彼は軽く苦笑を浮かべながら、左手をひらひらとさせていたのだった。
……結果的に気を使わせてしまったが、実際直接姿を見た方が早いというのは間違いではない。
そういうわけなので、私は彼の変化を黙って見守ることにしたのだった。
そうして私が頷いてすぐ、彼の纏う炎の勢いが跳ね上がる。
あらゆる全てを呑み込んで燃やし尽くすかの如き業火は、彼の仮初めの姿を焼き払いそれを原子の塵に還していく。
そうして生まれた塵は、されどそのまま炎に消えることはなくその中を漂い、別の形を作り上げていく。
二本の足で立っていたそれが、次第に四足のそれに変わっていき、全体のシルエットもまた判明して行くのだが……しかし、それは明確な個とは言い辛いものであった。
敢えて口にするならば、それは炎そのものが形を持った存在……ということになるのだろうか?
灼熱の身体なのではなく、灼熱そのものが身体であるというべきか。
赤熱したそれは近くにいるだけで肌を焼くかの如き熱を持ち、私たちを赤く照らす。
それは、彼の存在が
本来であれば、その姿は彼の暴走の先にあるものなのだが──ここにいる彼はその姿こそを本体と定めているがゆえ、暴走などとは縁遠い。
……まぁ、代わりにこのフロア以外のどこにも行けない……なんて誓約を負ってしまったわけなのだが。
とはいえ、伝説としての格を得た彼の力が凄まじい、ということに変わりはあるまい。
ゆえに見よ、仰ぎ見よ。その炎熱の身体を、星を滅ぼさんとする業火の身体を。
彼の者の名はヒードラン。かこうポケモンヒードラン。
高山口──
そして、その彼がその名に恥じぬ業火を纏った姿である。
「こりゃまた……凄い姿だな」
「ああ、どこぞの炎の巨神を思い出す威容だ……」
『あはは、そう言って貰えると嬉しいなー』
はてさて、彼の正体はポケモンのヒードラン……それも暴走形態がデフォルトになっているというかなり特殊な存在だったわけだが。*5
何故彼のことを告げたがらなかったかというと、彼の別名……あだ名……蔑称?に問題があったからであった。
その名前の由来は、ヒードランが初登場した時の動き・姿・説明文などによるもの。
曰く、ヒードランは十字のツメを食い込ませて壁や天井を這い回るのだという。
……また、とある作品において彼を出現させる場合、特定の手順を踏む必要があるのだが……その結果現れるヒードランは地面から飛び出してくるわけでも、はたまた火山から現れるわけでもない。
そう、天井からポトッと落ちてくるのである。……効果音が軽いため、本当にポトッと落ちてきたとしか言いようがない。
それらの説明文・描写と見た目が合わさり、彼の呼び名として使われたもの。
それが、『ゴキブロス』なのであった。……そう、台所とかに出てくる憎いあんちくしょうが元ネタである。*6
うん、見た目もどことなくアレに似ていると言えなくもないんだよね、ヒードランって。
一応名前と体付きなどから察するに、トカゲ系であるというのが本当のところなのだろうけど……ツメを食い込ませて這い回る、という説明文が宜しくないというか。
トカゲだって壁や天井を這い回るんだから、そっちで間違いないはずなんだけどね、なんというかね。
……なお、描写的な扱いは悪いけれど、戦闘面では結構優遇されているというのがヒードランの特徴でもある。
なにせ専用技持ちであり、その技名も『マグマストーム』と格好良く、かつ効果も拘束系でありながら火力が高い……と致せり尽くせりだし。
更にはタイプもはがねとほのおの複合でありながら、特性『もらいび』によるフォローもあり耐性が十一種、それでいて伝説らしいステータスも持ち合わせるため全体的に強い……という優遇っぷりである。
……いやホント、描写だけ追い付けば伝説としての格は十分なのよ。
で、そんな彼が唯一まともな?描写を貰ったのが、今の彼の姿である暴走形態。
アルセウスのプレートである『ひのたまプレート』による強化形態と考えることもできるそれは、それゆえに伝説に相応しい描写を兼ね備えた、と見ることもできる。
……いやまぁ、本当は暴走なんですけどね。本体のヒードランは炎の身体の中に囚われてたし。
でもまぁ、ヒードラン愛好家からしてみれば折角の強化形態、どうにかして使ってみたいなー、となるのも分からないでもない。
……実際にこの人がそこまで考えていたかは微妙だが、ともあれ現在彼がこの姿になっていることは間違いあるまい。
そういうわけで、彼はこのフロアの溶岩を生み出す元──ハードマウンテンの主として、この場に居るということなのであった。
……あ、危惧してた『二人が微妙な顔をするかも?』って部分に関しては問題なかったです。やったね。