なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・気難しい人はほとんどいないのです

 はてさて、思わぬ足止めから一夜明け、燈矢君の居住区にて。

 

 

「うーん、話には聞いてたけど……流石の料理の腕だねぇ」

「お褒めに預かり光栄だ。ダンテの方も……特に問題はなさそうだな」

「ああ、これだけ旨けりゃ幾らでも食えるさ」

 

 

 で、現在私たちはエミヤんの作った朝御飯に舌鼓を打っている最中である。

 昨夜の晩は燈矢君が夕食を振る舞ってくれたのだが……それらは大半が()()()()()調()()()()()()()であり、美味しいには美味しいものの色々と不満点の残るものであった。*1

 

 いやまぁ、なんでそうなったのかっていう理由はわかるんだけどね?

 こんな火口の近くで食材の調達なんて、早々できる訳がないんだし。

 なんなら高温環境下だからなんもかんも萎びるわい。

 ……そういう意味では、例え焼き物ばっかりであっても調理の体裁をなしてるだけマシというか。

 

 

「下手をすると煮込みまくった味のしない肉、とかが出てきてもおかしくない状況だからな」

 

 

 とはダンテさんの言。……どこぞのブリテン料理かな?(白目)*2

 ……まぁともかく、炎そのものとでも言うべき相手から出てきた料理としては、普通に食べられるモノだったことは間違いない。

 

 その点を踏まえた上で──やはり『もっと美味しいものを食べたい』と思ってしまうのは人の性。

 ってなわけで、私が『虚無』経由で食材を室内に持ち込み、それを調理器具諸々投影したエミヤんが料理したものが、今日の朝御飯になるというわけです。

 

 いやもう、これが美味しいのなんの。

 言い方は酷いけど、昨日のあれはこれに比べたら月とスッポンってやつだね、本人がそう言ってたし!

 ……うん、自分からそういうこと言い出すのはこっちがギョッとするから止めて欲しいかな……気にしてない、ってのがすぐにわかる良い行動だとは思うけども。

 

 

「そう?僕的にはそういうの長引かせるべきじゃないと思うけどなー」

「それはそうなんだけど、その姿でそんなこと言われるとなんというかこう……ねぇ」

 

 

 なお、当の燈矢君は首を傾げていた。……ほのおタイプなのでからっとしている、ということなのだろうが……からっとし過ぎててちょっと付いていけない感がなくもないというか?

 まぁ、本来の姿が強力であることも合わさって、細かいことを気にしないんだろうけども。

 でもその姿と言動が噛み合わないから、やっぱり違和感凄いです()いや、わざとやってるんだろうなぁってのはわかるんだけどね?

 

 

「……そうなのか?」

「あさひさんもそうだけど……彼らみたいなのはわざとクオリティの低いなりきりをしている、みたいなところもあるだろうし」

 

 

 こちらの言葉に首を傾げるエミヤんに対し、私はスクランブルエッグを口に運びながら答えを返す。

 

 元々が強大な存在であるがゆえに低めの再現度でも力量的には高くなる……というパターンである燈矢君を含めた面々には、ある問題点が存在する。

 それは、幾ら力量に換算した時には強力であっても、『逆憑依』としては未熟である……という部分。

 言い換えると、普通の『逆憑依』より影響を受けやすい状態にある、ということになる。

 

 

「ん?そりゃおかしくないか?ファイアボーイにしろドラゴンガールにしろ、力量的には強者になるんだろう?だったら生半可な干渉は弾けると思うんだが」

「この場合の影響ってのは普通の攻撃とか誘導とかじゃなくて、『逆憑依』関連の影響のこと。言い換えると、【継ぎ接ぎ】とかが発生しやす過ぎるのよ」

「……うん?」

 

 

 ダンテさんの言葉に、私はフォークを置きながら答える。

 

 あさひさんを筆頭とした彼らは、単一の個体として見る場合は確かに驚異的である。

 本来のスペックの一割にすら満たないだろう状態でもなお、生半可な『逆憑依』なら蹴散らすそのパワーは、すなわち『逆憑依』がパーセンテージでその辺りを管理しているため。

 現実的に再現度がどれくらいあれば『逆憑依』として成立するのかはわからないが……ともあれ、例え一パーセントであってもそれを運用する元の資源の量が多ければ、答えとしてはおかしなことになる……というのは【星の欠片】の話でも散々説明している通り。

 

 百の内の一つなら答えは『一』だが、万の内の一つならば答えは『百』である。

 これが、割合で物事を管理する際の問題点。

 総数で見れば法外な量になっていたとしても、割合で見れば全然多いものではない──寧ろ少なく見える、なんてことはよくあること。

 

 そしてこの割合はあくまで一人の人間に乗っかる分の計算式であり、また『逆憑依』してくる存在をどれだけ引っ張ってくるか、ということを指し示すモノでもある。

 ……わかやすく言うと、本来その器には入らないような量であっても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もの、ということになるか。

 

 純粋な人間を対象にしての『全体の一パーセント』と、ミラルーツを対象にしての『全体の一パーセント』は、単純な量で見た時には絶対に釣り合わないが、それを割合で管理しているために()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、みたいな?

 

 これがなにを意味するのかというと、残り九十九パーセントは()()()()()()()()()()()()ということ。

 言い換えれば、そこに他のモノを収めることが可能だし、パーセント的にもっと広範囲に渡るものが収まれば、結果として主体がそっちに変わってしまう可能性がある、ということでもある。

 

 こっちを単純に説明すると、一パーセント分のミラルーツ成分と三十パーセント分の他のキャラの成分が『逆憑依』として一つの人に乗っかった場合、キャラとして表に現れるのは三十パーセントの方になる……みたいな感じか。

 棒グラフだと割合的に多いのは後者だが、実のところこのグラフには奥行きがあり、そこを可視化すると一パーセント分のスペースに膨大な量のモノが乗っかっている……とか?

 総量で見ると明らかに前者の方が勝っているのに、用意していた置場所が狭いために扱いが悪くなっている……という考え方でもいいかもしれない。

 

 ともかく、『逆憑依』として考えた場合、力量よりもそれが締めるスペースの方が優先される、ということに間違いはない。

 そしてそれゆえ、あさひさん達のような存在は【継ぎ接ぎ】のような後天的な属性の変化に気を付けなければならない……と。

 

 

「例えばもし、あさひさんが今よりも遥かにあさひさんの真似(なりきり)が上手くなってしまった場合、その時に【継ぎ接ぎ】の判定が発生するわけだけど……似ていれば似ているだけ一人の器を締める『再現度(パーセント)』は上昇する。結果、『あさひさんの姿をしているミラルーツ』じゃなくて『ルーツのコスプレしてるあさひさん』になる可能性が高いんだよ」

「……なるほど、主体がひっくり返ってしまうのか」

「それになんの問題があるんだ?」

「大有りだよ。主体がミラルーツ側だから今は問題ないけど、もし主体があさひさんになった場合はまず間違いなく、ミラルーツのパワーなんて制御できなくなるし」

「……あー」

 

 

 この話の問題は、『逆憑依』としては再現度が高い方の存在が優先される、という点。

 基本的な【継ぎ接ぎ】は主体となる存在に別のキャラの特徴などが付随する、という形になっている。

 言い換えると、他のキャラの真似だったり特徴が引っ付いていたりする()()()()()、みたいな感じだろうか?

 精神の入れ換わった状態、という理解の仕方でもいいかもしれない。

 

 だがしかし、あさひさん達のような存在が迂闊に高再現度のキャラを【継ぎ接ぎ】してしまった場合、主体がそちらに引っ張られ過ぎてしまうのである。

 その結果、主体の状態では制御できていた有り余るパワーを制御できなくなる……と。

 

 この話、実はわかりやすい実例が私たちの近くに存在している。……そう、アルトリアだ。

 

 

「君のところの居候の一人、だったか」

「そ。で、そのアルトリアなんだけど──()()()()()()()()()なんだよね」

「……む?」

 

 

 普通にアルトリアと呼んでしまっているし、なんなら姿もリリィのそれである彼女だが……本来の主体はアンリエッタ──ゼロの使い魔におけるヒロインの一人が、彼女の根幹となる存在である。

 マーリンがあれこれやった結果、今の彼女になったと言うことだが……裏を返すと、彼が介入する前の彼女は()()()()()()()()()だった可能性が非常に高い。

 だがしかし、現状の彼女はアンリエッタではなくアルトリアとして認識されてしまっている。……この状態こそ、主体と【継ぎ接ぎ】が入れ換わったものと考えられるわけだ。

 

 幸い、パワー的にヤバイのはアルトリアの方であり、アンリエッタ成分が暴走したとしても普通に抑えられるだろうし抑えているのだろうが、それを同じように『単なるアイドルとしての芹沢あさひ』に求めるのは酷というものだろう。

 そういうわけで、あさひさんは『単なるアイドルとしての芹沢あさひ』が間違っても【継ぎ接ぎ】されないように、わりと崩した状態の彼女としてなりきっている……ということになるのだった。

 

 で、それに関してはここにいる燈矢君も同じ。

 罷り間違っても荼毘ダンスなんて踊らないような好青年的キャラクターとして振る舞うことにより、間違っても【継ぎ接ぎ】が起こらないように注意している可能性が高い……ということになるのであった。

 

 

「まぁ、本人達が意識してそうしてるかは微妙だけどね。『なんとなくそうした方がいい』という虫の知らせ的なモノにしたがっているだけ、って可能性の方が高いし」

「へー、そうなんだー」

「……ね?」

「なるほど……」

 

 

 そこまで語り終えたのち、私はのほほんとした様子の燈矢君を眺めながら、小さく肩を竦めたのでしたとさ。

 

 

*1
主な献立は『焼きトウモロコシ』『各種串焼き』など。流石に高熱でざっと焼く、みたいなことはしていない

*2
元々ブリテンにも家庭料理は存在したが、産業革命などの折にその技術などが失伝したとのこと。それだけが理由ではないが、それ以外に有名なのは『当時のイギリス人は食に拘りが余りなく、とりあえず肉を食う文化だった』などがあるとか

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