なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「これはまた、なんとも面白いものを考え付いたモノだな」
「と、いうことは……」
「ああ、こちらからは特に文句はない。実際、他所の組織に火薬を持ち込む、というのはどうなのだろうかと考えていたところだ。……まさに渡りに船、というわけだな」
ゆかりん側の賛同を得たその足で、互助会のモモンガさんのデスクへと向かった私たち。
途中、一緒に付いてきたダンテさん絡みで一悶着があったりはしたものの、概ね穏やかに会議は進み……結果として、彼からも承認を得ることができた。
そうと決まれば善は急げ、忙しいのはこれからなのでさっさと準備に向かいたいのだけれど……。
「ああ、済まないが待って貰えないだろうか?」
「おおっと、一体なんですかモモンガさん?」
「そう身構えないで貰えると助かるんだがな……」
勇み足でモモンガさんの執務室を飛び出そうとした瞬間、背中に向けて飛んでくる彼の言葉に思わず立ち止まる羽目になる。
……彼の言い方的に面倒事の空気をひしひしと感じたため、できれば聞かなかったことにして互助会内へと繰り出したいところなのだが……そうは問屋が卸さない、とばかりに笑みを浮かべる彼の姿に、思わず後ずさってしまう私である。
っていうか、骸骨の顔でどうやって笑ってんのそれ?*1
「さてな。……話を戻すが、これから互助会内を回るのだろう?だったらその時に一緒にして欲しいことがあってな」
「はぁ、して欲しいこと?……ややこしいことでしたら断りますけど?」
「私に対してそんなことを言えるのは、君くらいのモノだろうよ……おほん、まぁそちらの用事のついでにこれをお願いしたい、というだけの話だ」
「ふむ……?」
へっへっへっ、いいのかい私は他所の組織のお偉いさんでも無礼な物言いをしてしまう女なんだぜ……?*2
嘘、単に相手がそれくらいの距離感を許してくれてるから、それに甘えてるだけです。じゃなきゃあまりに恐ろしい&不敬すぎてやってられんわ。
……え?お前さんはわりと失礼なタイプだろうって?そういうこと言うやつはあとで屋上な。
……それはともかく。
にっこりとした笑みを苦笑に変えたモモンガさんが人差し指をすい……と動かせば、私の手元に降りてくるのは一枚の紙切れ。
落ちてきたそれを掴んで内容を読んでみれば、なるほど私たちの用事のついでに、という彼の言葉がどういう意味なのかがすぐに察せられ……。
「ん、了解でーす。じゃあ、これ以外にはなにもない?ないよね?……ってなわけで行くよー、エミヤんにダンテさん」
「あ、おい待ちたまえ!……失礼する、モモンガ殿」
「それじゃあ俺も付いて行くとするか。さよならだ、アンデットキング」
「ああ、気を付けてな」
そのまま、受け取った紙を懐にしまった私はというと、もう引き留めるような用事はないな?ないな??……と念押ししたのち、モモンガさんの執務室を今度こそあとにしたのだった。
……これ以上仕事を積まれるのは嫌だからね、仕方ないね。
「ところで、さっきアンデットキングから受け取ったモノについての説明はしてくれないのか?」
「そんなに大したものじゃないよ、こっちの用事のついでにアンケートをお願いする……みたいな感じのやつだから」
「アンケート?」
「そ、簡単なアンケート」
はてさて、執務室を飛び出して暫し。
実質的なモモンガさんの私室でもあるそれは、他の互助会メンバー達の居住区からは幾分離れた位置にあり、彼以外のメンバーと顔を合わせるには暫く掛かるだろう……というのが私の予想である。
施設内での飛行移動などは禁止されているため、つかつかと早歩きすることになっているが……所詮幼女ボディのそれは早いわけでもなく、遅れて飛び出して来た他二人に早々に追い付かれることとなった。
……いや、別に置いていくつもりとかは一切ないんだけどもさ?
まぁともかく、こっからも長いのでさくさく進みたいため、さっさと歩いてきてくれるのはありがたい。
……ありがたいついでに担いでくれたりすると(歩幅的に)早いのだが、それに関しては断られた。
なんでも「馬に蹴られる趣味はない」とのこと。……その馬、法螺貝を持ち歩いていたりしません?
「その流れだと君は銅鑼を持ち歩いている、ということになりそうだが……」*3
「私は実際に持って無くてもその場で作れるので」
「創造系の能力持ちならでは、ってやつだな」
呆れたような視線を向けてくるエミヤんに肩を竦めれば、隣のダンテさんはけらけらと笑みを浮かべていた。
……話を戻して、モモンガさんからのお仕事の話。
それに関しては然程難しいモノではなく、簡単なアンケートのお願いのようなモノであった。但し対象は、互助会に所属しているメンバーのみ。
「……む、ということは私もか?」
「そういうことになるねー。あと、さっき渡されたのは原本で、それをコピーしてみんなに渡して欲しい……みたいなことでもあるみたい」
「ナチュラルにコピー機扱いされているな……」
私たちがモノを複製できることを前提にしている、的な?
まぁ、そもそもそれができないとこっちの仕事も終わらないわけなので、そこに関しては単なる前提条件……というやつでしかないのだが。
そんなわけで、懐にしまった原本をひょいと取りだし、そのままコピー。
出来上がった複製品をエミヤんに渡せば、彼はそこに書いてある内容を流し読みしたのち、微妙な顔を浮かべていたのだった。
……多分、私と同じ感想を持ったのだと思われる。
「……また微妙な顔をしているな。一体なにが書いてあったんだ?」
「…………誤解を恐れずに言うのなら、
「研修……?」
「因みに私も、キリア側でのアンケート記入を求められてたりするよー」
会話する二人の言葉に挟むように、自身にもアンケートを求められていることを告げておく私である。
……うん、結局キリアとしてのデータはこっち所属のままで、そのあと脱退の手続きとかなにもしてないからね。
言ってしまえば単なる怠慢なのだが、
……個人的には、こっちの人員を改めて確認するために参加しておきたいところなのだけれど……マシュが許してくれるかなー?
最近なんか前にも増して「付いていきたいでシュ」って顔に書いてることが多いからなー。
まぁ、今回みたいにその辺りの主張を振り切って外に出る、という方向性でも別に問題はないのだけれど。……多分。
「多分、って君なぁ……」
「いやー、お仕事だからほら、ね?」
「その内監禁されても知らないぞ……」
「その時はその時でどうにかするから大丈夫」
ほら、無いものを捕まえて置くのって難しいし?
……冗談はともかく、そろそろどこかで埋め合わせをした方がいいかなぁと思っている私である。
むくれマシュのうちはいいけど、焼きマシュになると困ったことになるし?
とまぁ、私と後輩のなんとやら……に関しては置いとくとして。
件のアンケートだが、その内容はこの花火大会が終わってそう時を置かずして、互助会所属メンバー全員を連れて研修旅行……という名の慰安旅行を行う予定なので、何処に行きたいかをメンバーに尋ねる……という形式のモノである。
何気に『不参加』についての設問がない辺り、一応強制参加という形になるらしい。
そういうの一種のパワハラなのでは?……と思わなくもないが、そもそも互助会にある娯楽って食事かテレビ、あとは鍛えることが好きな人はジムで汗を掻く……くらいしかないので、寧ろ福利厚生的には『今までやってなかった方がおかしい』類いなのかもしれない。
……なお、私もアンケートの対象者である、というのはこのアンケート用紙の原本の方に記載されていた。
エミヤんに渡したコピーからはその文面が消えているため、私が言わなきゃわからなかっただろうけど。……まぁ、別に隠すことでもないし?
「なるほど、ってことはこの中だと俺だけ仲間外れ……ってことか?」
「結果的にはねー。まぁ、ダンテさんは郷の方の福利厚生を活用して下さい……ってことで」
「……その論理で言うと、君は実質ダブルワークというやつになるのではないか?」
「おおっと、その辺りは掘り下げちゃダメだぞエミヤん。税金はちゃんと納めるべきだけど、キーアとキリアは別人だから合算されても困るしネ!」
「とんでもないこと言ってないかね君?」
そんなわけで、この面々の中ではダンテさんが微妙に仲間外れになっている、というわりとどうでも良さげな話になるのでしたとさ。
というか、そもそものことを言うとここまでこの人が付き合ってくれている、というのもわりと不思議なんだけどね。
……声繋がりで疑われているかも、とちょっと気にしてるのかもしれない。いやまぁ、実際どうなのかはわかんないけどね?
あとエミヤん、別名義で働いてるんじゃ、とかグレーすれすれの部分を突くのは止めよう、誰も幸せにならない。
そんな他愛のないことを話しながら、私たちは他の面々が集まっている居住区に向け、つかつかと歩き続けていたのでしたとさ。
……やっぱり誰か背負ってくれない?ダメ?そんなー。