なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ゼロに還る際の一欠片、かな」
「なにか言うたかのぅ?」
なんでも、と溢しながら歩を進める私。
そんなこちらの様子を横目で見たミラちゃんはというと、しばらくこちらを眺めたのち興味を失ったようにふい、と視線を反らしたのだった。
──『星の死海』、第一層。*1
真っ暗闇の中、白い砂漠の中に同じく真っ白な建物がぽつぽつと立ち並ぶ……という、なんとなく既視感を覚える風景を眺めながら歩き続けている私たちである。
時間としては恐らく一時間も経っていないと思うが──既に、精神的な疲労を訴える者も少なくなかった。
「んにぃー……ここはとっても綺麗だけどぉ、なんだか物悲しくもなってくるよー……」
「全ての壱が還り、零が生まれる場所だからね。そりゃまぁ、一般的な人の感性だと色々感じるのが普通、というか」
その筆頭、ともいえるきらりんだが──彼女に関しては、向こうに残ってもいいよと予め伝えてあった。
北斗の拳混じりになっているとはいえ、彼女は単なるアイドル。
……一般人である彼女には、この道は負担が大きすぎると判断したがためである。
まぁ、実際にはこの通り『ここまで来てきらりだけ行かないってのは無いと思う』と言いながら付いてきたわけだが。
……その意気やよしだが、とはいえここでの疲労は肉体に対してのモノでなく精神に対してのモノ。
何処まで持つかは未知数であるため、ダメそうなら即座に休憩に入る予定である。さしもの『星女神』様も、それについて文句を言うことはあるまい。
「……え、休んだくらいで文句を言われるのか?」
「本来なら、ね。分かりやすく説明すると、ここに訪れるってのは一種の巡礼だから」*2
「あー……」
そんな私のぼやきを拾い、サウザーさんが驚愕の声をあげる。
まぁ確かに、休憩を挟んだくらいであれこれ言われることがある……みたいな発言だったので、彼の驚きもわからないでもない。
だが、考えてもみてほしい。
そもそもの話、この場所に入れるのは本来ならば【星の欠片】のみ、そしてこの道は彼らが自身の持つものを
……つまり、『苦しい』『辛い』『悲しい』といった
言い方を変えると、そもそもこの道を歩ける
いやまぁ、正確なことを言うと
「……怖っ!!?」
「そう、怖いんですよーこの怖いのも序の口なんですよー。私が普通にやって来るのを嫌がった理由をわかって貰えましたかー?」
(でもそれってアンタの作った設定よね、という顔)
「んー?言いたいことがあるなら聞こうかオルター?なんなら今からルート変えてもええんやでー?」
「ちょっ、アンタも嫌だからルート変えたんでしょうが?!」
「あっはっはっ、
「こいつ性格悪すぎない!?」
あっはっはっ。魔王とか自称するやつを捕まえて今さらなにを言うやら。
……冗談はともかく、これに関しては
なので、その辺りを突っ込むのならこっちにも相応の手段があるぞ、という至極まともな返答でしかないのであった。
……はてさて、話を戻すと。
本来この道──『星の死海』第一層、『想起への道』は肉の身体を捨て去るためのモノである。
肉の身体に起因するあらゆる正負の感情──お腹がすいただとか、歩きすぎて足が辛いだとか。
はたまた、美味しいものを食べて元気が出ただとか、よく眠れたので疲れが取れただとか。
そういう、身体に対して作用するもの全てを
なので、『星女神』様もこの道を真っ当に進む相手には、
「……聞けば聞くほど来るんじゃなかった、という思いが増していくのだが?」
「入る前にも行ったけど、今回はそういう決まりは全部機能してないから大丈夫よ」
……そう、
今回は初回訪問のオルタ達を『星女神』様のお膝元に連れていくことを目的としているため、それらの効果は自動的にカットされているのだ。
じゃなきゃ他の人なんて連れてこない……というか、他の人がいるからこそ間違ってもその辺りの機能を有効化なんてできないというか。
場所由来の効果なので、普段みたいにピンポイント爆撃もできないしね。
「ピンポイント爆撃……?」
「話を聞いてて疑問に思わなかった?あらゆるものよりも小さい存在だからこそ、あらゆるものに例外なく作用するってのが売りなのに、近くに一般人がいるからって効果の対象を絞れなくなるのか?……って」
「まぁ、多少は疑問に思っておったが」
とはいえ、その辺りは門外漢じゃからのぅ……とはミラちゃんの言。
……そう、【星の欠片】がその小ささで相手の拒否を掻い潜るモノである以上、普通の技能のように
一応、使い方──含まれている【
寧ろある程度
そう考えると、前回の解説──近くに一般人がいると本来の『星の死海』の役目を果たせない、なんてことはあり得ない話のように思えてくる。
となると、それを覆すなにかがあるということになるのだが……これは、この『星の死海』がある意味で『星女神』様の体内のようなものである、という部分に理由があった。
「……いや、自分の中という方が寧ろあれこれできるモノではないのか?」
「それがこと【星の欠片】の場合はややこしいのよ。『星の死海』は『星女神』様の体内に居るのと同じだけど、この場合の『体』と見なされるのは
「最小構成数?」
私たち【星の欠片】が無限概念である、というのは何度も説明している通り。
特定の物体を無限にわけることにより、そこに生まれた『一つ』を自身の存在の基幹にするもの……というのも、これまた説明済み。
これは言い換えると、普段の姿はあくまでも微少な埃のようなものが集まった結果であり、【星の欠片】についてちゃんと語る場合はその微細な埃の方を見なければならない……ということにもなる。
……つまり、この『星の死海』という世界はその実『星女神』という【星の欠片】の
「…………????」
「分かりやすく言うと、【星の欠片】を集めて世界を作ってるんじゃなく、一つの【星の欠片】の粒の中にある世界がここ、ってこと」
細胞一つ分の世界、とでもいうべきか。
人体という大きな世界の中のできごとでも、さらにその外にある世界の中でのできことというわけでもなく。
それよりも小さいもの──人の細胞一つ分の
いやまぁ、概念的には細胞一つ分だと広すぎるんだけど、わかりやすさを重視するとそんな感じになるというか。
ともかく、仮にこの世界を物理的な大きさで確認する場合、その大きさは顕微鏡でも確認できないほどに小さな場所、ということになる。
ではこれがさっきの話にどう関わるかと言うと──、
「……あ、きらりわかっちゃった」
「なぬ?」
「つまりぃー、
「は?」
「そういうことー」
「は??」
おおっと、きらりんにはわかってしまったらしい。ちょっと意外。
いや、別に彼女をバカにしてるわけではなく、他の面々が気付けていないことが不思議だというか。
なにせ、今までの説明から答えについては既に推測できるはず。……ミラちゃんくらいは、普通に答えにたどり着いてもよさそうなものなのだが。
と、そこまで言われたミラちゃんはしばらく下を向いて考え事をしたのち、おずおずと顔を上げながら声を発したのであった。
「……まさか、相手の干渉範囲自体がこの世界一つ分より小さくならない、ということか?」
「は???」
「ミラちゃん正解ー」
「はぁ????」