なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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楽して得られるモノもなく

 はてさて、相変わらず歩き詰めの私たちだが、目的地の影もまだ見えていない。

 一応、ショートカットをちゃんと進めていることだけは間違いないのだが……うーむ、やっぱり長いなぁ、この道。

 

 

「ショートカットなのにそんなに長いのか……?」

「前も言ったけど、一生分の行脚に比べればなんだってショートカットでしょ」

「いやまぁ、それはそうなのだが……」

 

 

 まだ着かないの?……とでも言いたげなサウザーさんに、改めて本来の行程の場合に掛かる時間を提示する私である。

 まぁ、正論が人を救ったことはない……なんてことを述べた人がいたように、この話を聞いたサウザーさんは納得するどころかさらにげんなりしていたわけだが。

 

 一応、『星女神』様に会う、ということだけを目標とするのなら、柱を一つ潜る方が簡単(?)であるというのは間違いない。

 ……それで間違いはないのだけれど、そちらの方法の場合体感する時間的には一生分のそれになるため、まず間違いなく気疲れするというか、気疲れで済めばまだいい方だというか……。

 しかもそっちの方法の場合、オルタはともかく私の場合はもっと酷いことになるし……。

 

 

「……あー、もしかして?」

「普通のパターンの場合、柱を一つ潜る度に『星女神』様との面(せつ)タイミングがあるのよ。でも私の場合、本来三つ分柱を潜ってないといけないのを後回しにしてるから……」

「一つじゃなくて三つ分踏破したあとじゃないと、目的の人(『星女神』)に会えない……と?」

「そーゆーことー」

 

 

 ミラちゃんの言葉にはぁ、とため息を返す私である。

 ……うん、こういう特別扱いならご遠慮します、というか?

 

 まぁともかく、そういう決まりごとなのだから回避することはできない、というのも確かな話。

 なのでどうにかして、安全に進める裏道はないかと探し続けている、ずる賢いキーアさんなのでしたとさ。

 

 ……で、オルタに関してもその状況だけを見れば、私と同じく試験を免除された状態ということになるのだけど……彼女の場合、宿した【星の欠片】の強度的に『想起の柱』一つ踏破すれば話は終わるため、私に比べれば遥かに楽ができるというのも間違いはない。

 ないんだけども、楽だとは言っても本来一生分(の、体感時間を)掛けて踏破するものなので、五十歩百歩どころか『死ぬほど苦労する』のと『死ぬまで苦労する』ののどちらがいいか?……くらいの地獄の選択肢であるということも間違いなかったりする。

 ……この辺り、正規ルートを通ってない【星の欠片】故の悲哀というべきか、はたまた裏口入学したんだから仕方ないでしょ、と思うべきかは微妙なところである。

 

 

「……そういえば、アイツはどうなのよ?」

「アイツというと……アクアの方?」

 

 

 そんな話をしていたら、今はここにいない相方──ジャンヌ・アクアの方のことを思い出したのか、オルタが疑問の声を上げる。

 確かに、彼女達は二人で一つの【星の欠片】。

 オルタが試練を受けるのならアクアも受けるべき、みたいな彼女の(憤り混ざりの)抗議は正当なものである、と言えなくもなさそうだが……。

 

 

「そもそもの話、【顕象】って柱との相性が良くない……いや()()()()から、あんまり関わらせていいのかよくわかんないんだよねー……」

「……良くないならともかく、良すぎる……のぅ?」

 

 

 話を横から聞いていたミラちゃんが、不思議そうに首を傾げる。

 この話に関しては、【顕象】の発生の仕方が関わってくるわけだが……。

 

 

「……まぁ、まだまだ時間は掛かるだろうし、道中の話題作りってことで今度はこれの説明しよっか」

「参考までに聞いておきたいのだが、その話が終われば目的地に着くのか?」

「たぶん着かないですね」

「長すぎるだろうこのショートカット……」

 

 

 だから一生分の行脚に比べればうんぬんかんぬん。

 ……うへぇとでもぼやきだしそうなサウザーさんを宥めつつ、改めて咳払い。

 それでは授業(?)の第二回、【顕象】と【星の欠片】の親和性についてのお話である。

 

 

「まず、【兆し】という周囲の気質──願いを集める()と、誰かの願いを叶えたいと願う【星の欠片】……って聞いてどう思う?」

滅茶苦茶相性がいいって思う

「あ、はい。だよね」

 

 

 いや、なんでそんな被せ気味なのサウザーさん。言ってることは間違ってないけどさ。

 

 ……ともあれ、【兆し】と【星の欠片】の相性が良い、というのは互いの性質が噛み合うことからも、すぐに察することができる話なのは間違いないだろう。

 その流れで【兆し】が変化したものである【顕象】とも相性がよい……というのもまた察しやすい部類であるのも間違いあるまい。

 

 だがしかし、その時点では相性はよい──あくまで()()止まりであり、()()()()と称するには足りないように思われる。

 ここで考慮すべきなのが、【星の欠片】は他の要素があると目覚めず、また無理矢理突っ込んだ場合は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という部分。

 ──これは、相手が例え【顕象】であれ()()()()()()()()現象なのである。

 

 

「……ん?」

「言い換えると、仮に【顕象】が【星の欠片】を取り込んだ場合、最終的には【星の欠片】が【顕象】であると()()()()……みたいな構図になるってことかな」

 

 

 以前、『星女神』様が『逆憑依』関連のモノを【星の欠片】で解体するのは難しい、みたいなことを言っていたが、それでも【星の欠片】側にできることはある。

 

 ──そう、詳しい原理はわからずとも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 本来原理もわからないのに完全に同じもの作るのは無理があるが、こと【星の欠片】に限って言えば対象への理解とできる範囲は別であるため、見たものを見たままに再現(コピー)することだけは可能。

 つまり、【星の欠片】で【顕象】を再現すること自体は不可能ではないのだ。

 

 

「さらに、本来【星の欠片】は自立意思──自分で方向性を定めるような性質を持たない。基本的には願望器の一種だから、自分から勝手に行動しようとはしない」

「……あー、だけどその性質も【顕象】を再現した場合は──」

()()()()()()()()()()()()()っていう目的をもコピーするからね。結果として、【星の欠片】の持つ願いを叶える力と、【顕象】の持つ願いを集積するあり方が噛み合いすぎてしまうってわけ」

 

 

 正確には、【星の欠片】でそこを再現すると些か過剰になりすぎてしまうきらいがある、という感じか。

 ともかく、この両者は『願い』を起点にはしていても、その向いている方向性が別々であるため、組み合わせると行ける場所が広がりすぎてしまう……というわけである。

 ……まぁ、その運用方法はどうなのか、って話でもあるから、【顕象】相手に【星の欠片】が自然発生する確率はかなり低いだろうけども。

 

 

「……そうなのか?」

「本来の【星の欠片】のポジションって、魔法のランプのそれに近いんだよね。誰かに呼ばれたからやってきて、呼んでくれた相手の願いを叶える──みたいな?」

 

 

 確かに互いの相性はいいだろう。

 だが、そもそもの話【星の欠片】は()()()()()()()()()()()()

 他の存在の願いに叶えることはほぼあり得ないのだ。

 なので、自然な環境下において【顕象】が【星の欠片】を発生させることは──こちらもほぼあり得ない。

 ……まぁ、その辺りは細かいことを言うと『逆憑依』にもほぼ確実に発生しないでしょ、ということになるのだが。

 

 

「そうなの?」

「中に人がいる分まだ発生率は高い方だろうけど、そっちの場合は逆に()()()()()()()()()()()パターンが多くなるから……」

「あー」

 

 

 そう、言い方を変えると『逆憑依』はそれそのものが能力みたいなもの。

 中に人を核として持つというのは、その人物を守るための殻として『逆憑依』を纏っている……ということにもなるわけである。

 そう考えると、スタンドとかその辺りのモノに近いのかも?……みたいな感じに思えない?と尋ねてみれば、周囲のみんなはうんうんと頷いていたのだった。

 

 はてさて、話を戻して【顕象】と【星の欠片】についてだけど。

 この両者はその起点が『願い』でありながら別の方向を向いているモノであるため、組み合わせやすく親和しやすい……という特徴を持つ。

 ……持っているが、その実向いている方向の違いが自然と互いの末路を決めてしまうわけである。【顕象】は目的、【星の欠片】は手段……という感じに。

 

 で、そうして生まれたものはどうなるかと言うと……まず間違いなく、【鏡像】とかの厄介な存在になるわけで。

 

 

「む?」

「倫理とかって人が作って人が守るモノでしょ?単なる【顕象】ならまぁ、そこら辺の感性も出来上がりの際にインプットされるけど……【星の欠片】が混ざるとその辺りも溶けちゃうから……」

「なんと?!」

 

 

 もしくは、子供に好きにやらせると時に大人がドン引くようなことをし始めるのに似ているというか。

 ともあれ、【顕象】と【星の欠片】を併発したものがブレーキのない特急電車になる、というのがほとんどのパターン。

 ゆえに、周囲に甚大な被害をもたらす可能性が高くなる……なんて予想が立ってしまうのだった。

 

 で、件のアクアについてだけど……まず【顕象】であることは間違いない。

 だがしかし、彼女の場合は単なる【顕象】ではなく【複合憑依】である。──それがもたらす影響については、以前説明した通り。

 簡単に言うと、単に【顕象】に【星の欠片】をぶち込むよりも遥かに安定する──言い方を変えると暴走の危険が少なくなる、ということになる。……え?安定するまでは他よりヤバイだろうって?

 

 ともあれ、今のアクアが安定していることは間違いない。

 ……間違いないが、だからといってこの『星の死海』になんの考えもなしに連れてきてもいいのか?……と言われると話は違ってくる。

 

 

「そもそも彼女みたいなパターンが初なわけで、どんな影響を及ぼすかは全く不明。……だったら、本人と近い上に『逆憑依』だから暴走の恐れもほとんどない相手を利用するのは間違ってない、と思わない?」

人のことを実験動物扱いしてんじゃないわよー!!

ホゲアーッ!!?

「あ、思わず燃やしちゃった」

 

 

 最終的な結論を口にしたところ、物理的に燃やされたキーアです。

 ……いや、この仕打ちは酷くね?確かに私も色々悪かったかもだけど。

 

 などと言えば、オルタはてへぺろしながら謝罪の言葉を返してきたのだった。

 うーんこの鬼畜。私が言えた義理ではないけどね!

 

 

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