なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まぁとりあえずあれでしょ?下手に連れてこれないしなにが起きるかわからないから様子見、みたいな」
「まぁうん、そんな感じ」
顔に付いた煤を拭いつつ、オルタの言葉に同意を返す私である。
……そもそも【星の欠片】がリアルに存在しているって時点で色々とアレなのだ、そりゃ警戒しすぎるなんてことはあり得ない……みたいな?
まぁ無論、ぶっつけ本番的に見ていくしかないので、この警戒も単なる杞憂であるという可能性も否定できないわけだが。
そんなことを言いながら、さくさくと道なき道を行く私たちである。
……肉の体を特殊な状態に変換しているようなモノなので、身体的な疲れが発生しないことだけがここでの利点……というようなことを語った覚えがあるけど、改めてそれを強く実感する次第である。
こんな砂(?)まみれの道とか、普通に歩いてたら絶対筋肉痛とか捻挫とかになってるだろうし。
いやそもそもその前に、あまりの歩きにくさに音を上げてるかも?
「それほどか?……と思わんでもないが、その口ぶりからすると他に理由があるということでいいのか?」
「おっ、聞いちゃう?そこ聞いちゃう?」
「何故にちょっと嬉しそうなのだ貴様は……」
足元に広がる白い砂のようなもの。
見渡す限りの地面・その全てに敷き詰められたものが一体なんなのか。
……いやまぁ、ほんのりその答えについては触れてるけど、明確なところは明かしてないわけだから次の話題には丁度いいんじゃないなーって。
そんなわけで、疲れている様子の一同の休憩タイミングでのお話。
第三回は『星の死海』の役目について、をお送りします。
「なんだかー、教育番組みたいな感じだにぃー☆」
「まぁ、実際そのノリではあるかなー。披露する機会のないはずだった設定を語ろうとするなら、ある程度なにかに肖った方がやりやすい、みたいなところもなくはないけど」
「ああ……一応お主の黒歴史、的な意味もあったんじゃったか……」
ええまぁ、リアルになっちまったというか、リアルを観測してフィクションだと誤解していたというか、どっちにせよ私が道化であることは間違いない……的な意味では違いないですね?
……などとミラちゃんの言葉に白目を剥きつつ、適当な岩とかに腰掛けた面々へと説明の体勢に移る私である。
先ほど既に触れているが、『星の死海』とは全ての壱が還り、零が生まれる場所。
簡単に言い換えると、死した命が生まれ変わるための場所、というような感じのところになる。
「輪廻転生──地獄や天国のようなもの、ということか?」
「ちょっと違うかな。それらはまだ人としての意識が残ってたりするでしょう?──この場所は違う。人としての未練は持ち込めない。いや、
仏教で言うところの成仏──輪廻の輪からの解脱、というのが近いのだろうか?
まぁ、成仏の場合は『現世の煩悩を断ち、仏の世界に行く』というような感じであるため、それはそれで別種のモノであるような気もするのだが。*1
どういうことかと言えば、この世界──『星女神』様の解釈からすると『仏になる』というのはやるべきこと全てを終えた、とは扱わないからである。
「『仏という存在に変化した』と認識するからそうなるんだけど……まぁ要するに、単なる成仏は人の世界の外に出た──単に視座が変わったと見るからこそ、
仏様達は世俗の悩みからは切り離されているというが、それでも人の世界から救いの声を聞いたりはしているわけで。
……いやまぁ、私は仏教にわかなので実際には色々と違うのかも知れないけれど、要するに仏だろうが仙人だろうが、己の意思がある以上は役目から逃れられてはいないのでは?……と考えたというわけである。
そのため、彼らの属するような超自然的世界も、この場所から見ればまだまだ色々背負っているなぁ……ということになるわけだ。
「背負っている……のぅ?」
「そ、背負ってる。役目にしろ意思にしろ、そういったモノは最終的に消えていくもの──
「はぁ……?」
よくわからん、という感じのオルタである。
まぁ、この辺りは宗教観的なものも絡む話なので、わからないならわからないでもいい。
前提として覚えておくとなんとなくわかりやすいよ、ってだけの話だし。
「なにがわかりやすいのよ?」
「
「……ふぅん?」
私の言葉に問い返してくるオルタに対し、これ見よがしに見せるのは地面から掬った砂。
私の手の隙間からサラサラと溢れるそれは、しかし特別ななにかを持ち合わせているようには見えない。
……それもそのはず、これらの砂は砂のように見えて砂ではない。
感覚的に砂だと受け取っているが、その実これらの本質は『壱』なのである。
「いち?……ああいや、『星女神』の、ということか」
「ミラちゃん正解。──そう、この砂は『星女神』様が司るモノと同質の物体、ってことになるね」
その言葉を聞いて、得心したようにミラちゃんが呟く。
……彼女の言う通り、この場を埋め尽くす『砂のようなもの』は、『星女神』様の扱うモノ──『弌』と同質のものなのだ。
言うなれば、要素を削り取った結果最後に残ったもの、ということになるか。
「輪廻転生とか、人が死んでも魂は巡る……みたいは話があるでしょ?それが成立するのは、魂の記憶がリセットできるから。……言い換えるとリサイクルできるから、ってことになる。記憶の消去不充分で前の記憶が蘇ることもある、って辺りにリサイクル品の空気を感じないでもないよね?」
なら、ゴミの最終処分──細かく砕いて埋めるのに相当するモノがあってもおかしくはない、みたいな?
まぁ、この言い方だと人をゴミ扱いしているような感じになるのでアレだが……わかりやすさの面ではこれ以上もあるまい。
そう、輪廻転生がリサイクルなら、それすらできなくなったモノがたどり着く場所──埋め立てなり焼却なり、そういった行為に相当する場所がここ『星の死海』である、ということになるのであった。
「ということは……この砂はプラスチックチップ*3のようなもの、ということか?」
「お、サウザーさん鋭いねー。……焼却場みたいな、的なことを言ったけどそこまですることは稀でね。基本的にここにやってきたものは細かく砕かれて新しい材料になるのさ」
肉体・魂・精神……。
己を示す三つのそれを粉々に砕き、以前の存在との因果を完全に断つための場所。
それが『星の死海』であり、またそれゆえに別の見方をすることもできる。それが、先ほどから触れている『やり残し』の部分。
ここへ自然にたどり着くということは、すなわち己のやるべきことを全て終えた、という証明。
言い換えれば『お前は役目を全て果たしたぞ』という証左になるのである。……一種の表彰のようなもの、というべきか。
まぁその辺りの話はともかく、ここに来る者達は例外なく砕かれる定めにある、ということは間違いあるまい。
で、【星の欠片】もある意味ではその流れで生まれたもの、ということになるわけだ。
「……あー、工程は確かに同じ、ということになるかのぅ?」
「三つの要素を順番に砕いて行って、そこらに溢れる『星の砂』にする……っていうのが本来のここの目的だからね。その繰り返しの中で、たまたま変なことになってしまったのが【星の欠片】だってのは間違いじゃないよ」
違いがあるとすれば、【星の欠片】になるものは
……粉々に砕けてまでなお、自身のやるべきことが残っていると自認できるものだけが動き出す、みたいなことになるのかもしれない。
どっちにしろ恐怖映像なのは間違いないが。砂まで砕いたのに喋り出すわけだし。
……ともかく、纏めるとこの世界に広がる砂は元々なにかしらの存在であり、それらが役目を終えて砂の形にまで砕かれたもの。
そして、砂まで砕かれる条件は輪廻転生のような超自然的繰り返しも含む、あらゆるやり残しを終えた時である……ということか。
「だからまぁ、『知らず知らずの内に誰かの骸を踏んでたんじゃ?』みたいな警戒は要らないよ、オルタ。そこにあるものにはそれらの要素はないし、仮に残っていると思うのなら寧ろ侮辱になるからね」
「おおおお、思ってないわよそんなこと!!」
それ、思ってたって自白しているようなものでは?
……などと言えばキレられるのは目に見えているため、口にはしない私である。
……そう、今述べたように、ここにある砂は確かにかつて人であったりしたのだろうが──今は単なる砂でしかない。
そしてそれは悲しむことではなく、寧ろ喜ぶべきこと。
人としての姿を捨て、砂になってしまうほどに己のやるべきことをやり通した人達なのだ。
それは超越者達ですら早々辿り着けぬ境地。悟りの外にある真なる無。
それに触れた彼らは、確かに『やりきった』人達なのだともう一度告げ。
「よし、休憩終わりー」
「はいはい……」
私たちはまだ終わってないのだから、歩くしかない……と諭すように声をかけ、再び私たちは道なき道を歩き始めたのでした。
五「……僕もやりきれたのかねぇ」