なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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公私で対応が違うのは当たり前

 はてさて、今回のあれそれが個人としての面とシステムとしての面が微妙に食い違っているために起きた事故……事故?ということを明らかにした私たち。

 こうなってくると問題なのは、この『試練だと思わしき長丁場』があとどれくらいで終わるのか誰にもわからない、ということになるだろうか。

 

 

「……なんで?」

「この試練は『星女神』様が出そうとして出したモノじゃなく、システムとしてオートで弾き出されたものだから」

「うーむ、お役所仕事の問題点……」

 

 

 言い換えると、突発的に出来上がったものなので本来多少は含まれるはずの()()が足りてない……みたいな?

 

 口煩く『星女神』様の厳しさを説いてきた私ではあるが、それが人への憎しみとか恨みのような負の感情から生まれたものではない……ということについては流石に知り得ている。

 つまりは親しき仲だからこそでてくる軽口のようなものなわけで──それによって向こうが憤慨してなにかをする、みたいなことが起きることもない……というのもまた知り得ている。

 

 総括すれば『単に苦しめるためだけの試練が自然発生するわけがない』となり、今私たちが直面しているものが自然なものではない、というのはすぐに察せられるわけである。

 いや、正確には個人のやり口としてこのやり方が自然に出てくるわけがない……という意味合いであって、この状況が色々噛み合った結果自然と導きだされたものである、ということは間違っていないのだが。

 

 ……自分で言っててなんだけど、話がこんがらがってきたんだが???

 

 

「説明し続けるとそうやってドツボに落ちる癖、いい加減直したらどうかのぅ」

「面目ない……」

 

 

 唐突に宇宙猫になった私を呆れたように見つめてくるミラちゃんに苦笑を返しつつ、一つ深呼吸。

 

 ……うん、要するに公私混同をしないのが『星女神』様だってだけで、今回の試練はその公私の内『公』の部分が強く働いた結果。

 で、『公』の方はルールに厳格であるため、そこから繰り出される試練はきっちりと規則に縛られたものが出来上がる。

 そこに『顔見知りだから』とか『相手はか弱い存在だから』みたいな容赦は一切ない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という究極のお役所仕事の元、半ば以上に理不尽な話を投げ付けられてしまう……ということになるわけだ。

 

 これの厄介なところは、()()()()()()()()()()()()定められた後にはそれを課した『星女神』様自身にも、試練の変更が利かないという部分。

 そこを曲げてしまうということは、すなわち世界を曲げるに等しい。……先に語った等価交換の話に引っ掛かり、別種の理不尽を投げ付ける形でしか変えられないのである。

 

 

「と、いうと?」

「今回のがろくな装備もなく山を登れ……みたいな話だとすると、装備についてはともかく、登る山については絶対に変更が利かない……みたいな感じ?」

「……装備の途中調達は認めるが、そっちはそっちで別の試練が飛んでくる……ということか?」

「そういうこと」

 

 

 頭のいい人は話が早くて助かりますね……。

 

 今しがたミラちゃんが述べた通り、このパターンの場合『装備の調達』に関しては多少の融通が利く。

 何故ならば、この例文の場合『山を登る』部分を変えると話が別物になってしまうから。

 ゆえに、例え登る山が富士山だろうがエベレストだろうが、その目標だけは変えられない……ということになるのである。

 

 で、それゆえに変更する箇所として真っ先に目に付くのが『ろくな装備もなく』の部分なのだが……。

 確かに、ここを変更することは可能である。

 例文の場合は『山を登る』部分だけが確定事項であり、『ろくな装備もなく』に関してはどう解釈しても()()()()()()()()()()ことを禁じてはいないからだ。

 

 

「……そうか?」

「そうじゃない場合は装備を使()()()()()()()()って文になるからね。使用不可ではなく事前準備不可なんだよ、この文」

 

 

 首を傾げるサウザーさんに、私はこの文の規制について説明する。

 そう、目標部分ではなく前提部分に当たる『ろくな装備もなく』という文は、あくまでも事前に準備をしてはならないということしか告げていない。

 もしこれが常に装備を使ってはいけない、という意味ならば恐らく『ろくな装備もない()()』というような文になっていることだろう。

 ……細かく見えるかもしれないが、その細かさは【星の欠片】にとってとても重要なものである、ということも間違いない。

 

 

「それが何故かと言うと、ほんの少しの隙間でも私たちにとっては大扉みたいなものだから。……見方を変えると『隙があるなら利用して当然』みたいな考え方が主流、ってことになるね」

「ええ……?」

 

 

 そう、ほんの少しでも隙間があるのなら、私たちは十全の力を発揮できる。

 言い換えると、隙間が空けているのは余裕の現れか、もしくはその隙間を相手が利用することを期待している……ということになるのだ。

 

 なので、寧ろそれを利用しないのは相手に対して失礼な行為に当たる、ということになるのである。

 ……私が裏道探してるのも、その辺りに理由があったりなかったり。

 

 

「……あー、もしかして今回のあれこれも怒られているわけではない、と?」

「うん、寧ろどんどんやれーって感じだと思うよ。まぁそれと同時にちゃんと試練は受けてほしい、とは思ってるだろうけど」

 

 

 公の部分ではちゃんとしろと思ってるけど、私の部分ではよくやったと思ってる……みたいな?

 

 まぁその話については置いておいて、先の例文に話を戻すと。

 今語ったように、装備を途中で調達することは禁じられてはいない。

 だがしかし、同時に『途中で道具を用意する』という行為が別の規制に引っ掛かるわけである。

 ……いや、正確にいうとそれを思考の範囲に含めた時点で、新しく規制が生まれてしまうというべきか。

 

 

「……ん?どういうことだ?」

「例文だけだと指定してない規制がある、ってこと。『山を登る』『装備の事前準備禁止』以外のことは読み取れないでしょ?それはつまりなにをしてもいいってことではなく、問題が起きたらその都度新しい規制が増やされていくって意味なのよ」

「なんだと……?!」

 

 

 確かに私は先ほど『隙間を利用するのは寧ろ褒められる行為』みたいなことを述べたが……それはあくまでも相手が隙間だからこそ。

 なにもモノが置いてないだだっ広い空間を隙間とは呼ばないだろう、という極々普通の話もちゃんと関わってくるのである。

 

 先の話の場合、『装備もなく』という文は開始時点までのことしか定めておらず、開始後の調達まで縛っているわけではないからこそそこが隙間となっていたわけだが。

 それ以外の部分──具体的に装備とはどういうものを指すのかだとか、はたまた調達する際に山のモノは使っていいのか・反対に山の外から取り寄せていいのか、いっそ下山して買い集めて来てもいいのか……みたいな部分はまっさら、言い換えるとなにも決まっていない。

 

 そう、()()()()()()()()()()

 それはつまり()()()()()()()()ということと同義であり、なにもないのだから隙間という『モノとモノの間に生まれるもの』もまた発生しようがない、ということになるのだ。

 そのため、その部分の話をする場合は新たに別種の規制が()()()()()()()()()()()()()発生する、という歪なことになってしまうのである。

 

 

「なんでそんなことに……」

「【星の欠片】が法則をあれこれするものだから、かな。極端な話、あらゆる全てに含まれるっていうのは、ちょっと本気を出せば周囲のモノを好きに動かせる……ってことにも繋がるわけだから」

 

 

 では何故こんな行き当たりばったりな対処が認められているのかというと、そうでもないと【星の欠片】のやることを制御できないから、というところが大きい。

 小ささを極めた結果、なんにでも含まれている()()()()()()()()()()()()()()()のが【星の欠片】。

 それは見方を変えると、()()()()()()()()どこからでも湧いてくる可能性がある、ということにも繋がってくる。

 

 型月(タイプムーン)作品における『抑止力』の考え方が分かりやすいだろうか?

 あれは世界法則として働いているとは言われているものの、実際にどの部分が抑止力の仕業なのか、ということはわからないのだと語られている。

 その場で起きた全てが抑止力の仕業なのかもしれないし、実際には小石一つ分の干渉で誰かの足を取っただけなのかもしれない。

 ……それがあるともないとも言い辛い時、それの干渉を全く無かったと証明することはできないだろう。

 

 それと同じく、【星の欠片】は小さな世界に身を置くがゆえに、原則として確認ができない。

 確認ができないので証明ができず、それゆえにそれの干渉もまた否定できない……。

 そんなものをどうにかして制御しようとする場合、決まりきったやり方というのは悪手にしかならないだろう。

 なにせ決められて(設置されて)いる。──それはつまり、その決まりごとの中に隙間を見いだすことができる状態、ということ。

 無論、隙間の一切ない決まりごとの場合もあるが──大抵、なにかしらの穴は見つかるもの。

 

 穴に罠を仕掛けることは基本認められないため、そうなったら穴から出たあとで捕まえるしかない……ということになるのである。

 

 

「……いや、もうちょっと事前に対処するとか、そういうのは無いのか?」

「言ったでしょ、【星の欠片】はなんにでも含まれている可能性があるって。どこぞの宇宙刑事みたくマイナス一秒のタイミングで影響を生じさせることも不可能じゃない*1から、予め準備するとかあんまり意味がないのよ」

「ええー……?」

 

 

 言い換えると、能力行使の際過去と現在の境がほぼない……みたいな?

 なので、事前に対処したところでそれよりも前のタイミングで動かれたら意味がない……みたいなことになってしまうと。

 まぁ、それに関してはこっち側も同じことが言えるわけだけど……結局どっちが小さいのか、みたいな話になるので不毛以外の何物でもないというか。

 

 では、今までの話を総合して、これから私たちがどうするべきなのかというと。

 

 

「今の長距離走をそのまま続けるか、向こうの容赦を期待して別解を探すかの二つに一つ、かな」

「……後者は実質的に選べなくないか?」

 

 

 素直にこの長丁場をやりきるか、もしくはそれを降りて別の道を探すのかの二つに一つ。

 ……なのだが、今までの話を聞いた結果『後者はまた別の苦労を背負うだけになるのでは?』という結論を出したらしいみんなの言葉に、私は小さく肩を竦めるしかないのだった。

 

 ……まぁうん、そういう見方もあるよねー。

 

 

*1
謎のヒロインXXのスキル『乗着 EX』のこと。装備したという事実をマイナス1秒に発生させる荒業。要するに(装備に関しては)隙がない

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