なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「いやー、なんで今までわし達は苦しい苦しいと唸っておったのかのぅ?こんなにも身体が自由に動かせるというのに!」
「ああ!俺も今や身体がとても軽い!こんな気持ちで走るのは始めて、というやつだ!!」
「うわぁ……」
「これはひどい」
「洗脳でもされてるみたいだにぃ☆」
──人聞きが悪いことを言わないで下さい、そうでもないとここでは上手くやっていけない、というだけの話なんですよ?──
はてさて、無事……無事?に『星女神』様の館に到着した私たちなのだけれど。
件の二人は一種のランナーズハイみたいな状態に陥っており、なんというか見ていて怖いのであった。
……いやまぁ、こうならないとそれはそれで問題があった、というわけなのだから怖がるのは違うはずなんだけども、それはそれとしてなんというか、洗脳でもされているようで空恐ろしいというか。
でもまぁ、洗脳というのもあながち間違いではないのが問題というか?
この場所は何度も言うように『公』としての『星女神』様の影響と、『私』としての『星女神』様の影響がまるで混沌の如く渦巻く場所。
言い換えると容易くそれらの影響に振り回される可能性がある場所ということであり、それらを避けるにはきらりんのように影響を避けるか、はたまた二人のように端から片方の影響を受けっぱなしにするか、くらいしかないわけなのだから。
……そういう意味では、やっぱりきらりんの方がおかしいのかな?
「キーアちゃんひどーい!でもきらりんは気にしないよぉ☆だってきらりんはきらりんパワーで無敵だからにぃ☆」
──実際、きらりさんはそのパワーとアイドル力・北斗真拳の合わせ技でこの場の影響を脱しているようですからね、中々凄いことだと思います──
「……えっとぉ、褒められてるってことでいいのかな?かな?」
「大丈夫、褒められてる褒められてる」
ともあれ、ようやくたどり着いたのだから話を進めなければ、ということで当初の目的を果たそうとする私である。
「……当初の目的ってなに?」
「なにって……そりゃ勿論……なんだっけ?」
「おい?」
いや、冗談冗談……とは言い辛いか。
確かに表での時間経過はほぼないと言ったものの、それが精神的な意味での時間経過を否定するモノではない、というのも事実。……っていうか、そのせいで二人があんなに()なってしまったわけでもあるので、ちょっと思い出すのに時間が掛かるのも仕方ないのだ、多分。
というわけで、順序付けて思い出そう。
まず、『星女神』様に色々聞いてみよう、という催し?があったことからだ。
「え、そこから?」
「そこから。後から思い出したこととかのお陰で、当初とは見方が異なってる部分もわりとあるしね」
こっちの提案にオルタがマジで、みたいな顔しているが……途中で述べた通り、【星の欠片】案件は寧ろ場当たり的対応こそ最適解。
それゆえに当初持っていた情報だけだと見えてこない部分がわらわら湧いてくるので、そこを確認するために振り返りをするのはとても理に叶っているのだ。
決して万策尽きて総集編とかを始めたわけじゃない。無いったらない。*1
「……それ実質そうだってぶっちゃけてるようなもんじゃ」
「はーい振り返りスタートー!!元々は五条さんが突然なりきり郷から脱走した、って話から始まったんだよねー」
はい、余計なことを口走るオルタはスルーして考察&振り返りスタートー。
事の発端は『星女神』様の説明会だけど、それが問題として取り沙汰されるようになったのはそのあと、話を聞いた面々が脱走を始めたから……という部分になる。
これは、大半の『逆憑依』にとって過去の自分、というものに大しての飢餓感とでも言うものが、こちらの想定とかけ離れたものだったというところが非常に大きい。
心にぽっかりと穴が空いたような状態、というのが表現としては正しいのだろうが……ともかく、そんな感じでなりきり郷内の大半が機能不全に陥り、結果として脱走者の捜索に外部の手を借りる必要が出てきた、と。
で、それによって私とミラちゃんという懐かしのチームが出来上がったのだが……これがまぁ、なんとも効率がよく、一部を除いた面々は颯爽と郷に送り返すことに成功したのだった。
「……まぁ、よりにもよってその一部とやらが五条さんだったわけだけど」
「あー、今なにかと渦中の?」
「そう、今なにかと渦中の」
まぁ、その一部が厄介だったわけだが。
その一部──五条さんは、個人的にも世間的にも『なにかを聞いて脱走する』というイメージが湧かない相手であった。
当時はなんとなく『そんなことをしそうにない』というイメージでの感想だったわけだが、
数々の無限使いと同じく、彼もまた他の人とは視座が違ったから、というのがその理由だったわけである。
……まぁ、その情報が無くても『かつての親友に誓っていた』みたいな方面から、なんとなく他者への態度も察せられなくはなかったのだけれど。
ともあれ、自身の心を動かされるほどのなにか、というものを持ち合わせている印象のない彼が動いたことに疑問を持ちつつ、私たちは彼を探して方々を駆けずり回り……、
「結果、彼の動機が『強くなる』というごくごく単純なものだった、と知ったと」
「まぁ、本当に
敢えてツッコミを入れるのなら、
重要なのは、五条さんの出奔理由は後ろ暗いモノではない、ということだろう。
「で、それを悟った辺りで五条さんに協力者がいる、ってことが判明したと」
「消える相手、だったかしら?……で、確かその相手にもなにかしらの願い的なモノがあるって話だっけ?」
「そうそう。で、その願いは恐らく五条さんと共にあることで叶う・もしくは叶いやすくなると」
で、五条さんが連れている協力者。
これがまたかなり強力……もしくは特定方面に特化した相手であり、これを打ち破るのであればその動機を知るより他あるまい、という結論に至ると。
……言い方を変えると、彼の願いを叶えない限りまた同じような挑戦?が待っている可能性が高い、となるか。
「だから、その辺りを知ってるだろう『星女神』様にコンタクトを取ろうとしたんだけど……」
「
「そういうことー」
うん、本当に色々やらされたモノである。
そのまま私が向かう方式だとヤバイので、あれこれと抜け道を探し……結果としてここにたどり着くことに成功したものの、そこまでに支払った代償は決して軽くはなかった。
……なにが悲しいって、このあと別の形で今回の件に関わったみんなに詫びを入れないといけないのがね……。
いやまぁ、私個人としては死にたくない(比喩)のでやるしかなかったんだけども、それはそれこれはこれというか。
──ええ、楽しみにしていますね──
「……うへー」
ああうん、これは死にましたわ(白目)
……私が死んでも代わりはいるもの、多分。
まぁ、その辺りの話はそれを受けるであろう明日以降の私に投げるとして。
ともあれ、こうして色々やらかしたりこなしたりはしたものの、どうにか目的地にたどり着いたことは事実。
ゆえに、『星女神』様に今回の目的──五条さんの協力者についての話を聞きたいのだけれど。
──その前に、オルタちゃんの用事を済ませてからでいいかしら?──
「あ、はい。どうぞどうぞ」
その前にパパっと終わらせるから、とでも言わんばかりの彼女の言葉に思わず頷く私である。
オルタは「ちょっとぉ!?」と抗議の声をあげたが……まぁうん、ちょっとチクッとするというか、まぁそんな感じですぐに終わるものなので、気にせずサクッと受けて貰いたいというか。
ここで『星女神』様のやることを拒否して変に時間を取られたくもないし、うん。
……などと声を返せば、彼女はしばらく唸ったあと渋々『星女神』様の方に近付いて行ったのだった。
「……あ、すぐ終わるってのはこっちから見た場合の話であって、そっちの認識では早くて一日くらいは拘束されるからそのつもりでね☆」
「はぁ?そういうの先に言いなさ(『星女神』様に頭を触れられ少しフリーズ)くぁwせdrftgyふじこlp?!?!!!?」
「あ、終わったみたい」
「オルタちゃん、凄い声だったにぃ……」
なお、死にはしないだけで死ぬほど酷い一瞬を過ごす羽目になる……と直前で告げたのは、別に意地悪ではなく心の準備をする時間を与えるためであり、かつ
主張が矛盾してるって?こうしないと一瞬の世界に準備した気持ちが焼き付いてしまうから仕方ないね……。
言い方を変えると、心の準備をした瞬間が無限に引き伸ばされ、その準備した心根を基準にした状態で審査を受ける羽目になるので想像以上にキツい、みたいな感じだけど。
分かりやすく言うと、『準備した』というフィールド魔法が発動した状態で新しくカードを使う羽目になる、みたいな?
この『準備した』という状態、あらゆる処理の次に挟み込まれるため対応札が全部無駄になるのだ。時の任意効果の発動タイミングがずっと潰されるようなもの、というか。*2
精神的に意外どころかかなりキツいことになるので、そういうのを軽減するためにも深く考え始める前に審査を受ける必要があった、というわけだ。
あと、説明しとかないとあとからうるさく言われる、みたいな部分もなくはない()
ともかく、最低限の審査を終えたオルタはというと、奇声を上げながらしばらく跳び跳ねていたのだった。
うーん、一種の尊厳破壊……。