なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

799 / 1297
大抵の物事は基本的に似たような面を持つようになる

「……じゃあ、『星女神』にも喧嘩を売ってるかも、というのは……」

「そうした方が自分の糧になるから、ってことだろうね」

 

 

 今回の五条さんのあれこれが、色々あって自分のことを見直した結果である……というのが結論になるわけだが。

 ……出会ったばかりの彼のことを思い返すと、よくぞここまでという気分になってくる私である。

 なにせ、出会った当初の彼はというと、『人気があるからやってみた』というミーハーにも程がある存在だったのだから。

 いやまぁ、なりきりをするきっかけなんてそんなもんだ、と言われるとなーんも言い返せないのだけれど。

 

 

「あー……それは確かに。わしなんかアニメが始まる前からじゃったしのぅ」

「ってことは、漫画を見てからってこと?」

「いいや、書籍版の挿し絵を見てからじゃのぅ」

「あー……」

 

 

 そういえば、レーターがレーターだからどこぞのVtuberさんに似てる、みたいな感じで話題になってたこともあったっけ。*1

 まぁいわゆるカップ焼きそば現象的*2なものであり、そう時を置かずしてその話題も風化したわけだけど……。

 

 ともあれ、なりきりを始めるきっかけなんて基本的には『やってみたい』という簡素かつ純粋なものがほとんど。

 であるならば、『目立ちたい』『ちやほやされたい』程度の軽い理由で始める人間がいるのも、そうおかしな話ではない。

 

 

「まぁ、私とマシュはちょっと違ったんだけどねー」

「そうなのか?」

「うんまぁ……小説書くための練習の一環、みたいなやつだったんだよねぇ」

「へぇ」

 

 

 ……そういう始め方があるのなら、私たちみたいなパターンもあり得るだろう。

 そう、元々私とマシュの二人は、なりきりをするためになりきりをしていたというよりは、別の目的のために始めたという要素の方が強かった。

 で、その理由と言うのが『人物像の把握』。言い換えると、会話を通してその人物への理解を深める……というものだった。

 

 実際、単にキャラを理解するだけならば原作を読み進めるだけでも十分だが。

 そこから『そのキャラクターを動かそうとする』と、それはそれで別の技能が必要となってくる。

 その技能を磨くため……というとちょっと堅苦しいが、まぁそんな気分で始めたのがなりきりだった……というのが私たち二人の始まり、ということになる。

 

 まぁ、なんの因果か二次なり一次なりの小説を書く前に、こうしてその本人になってしまうというよくわからない状況に巻き込まれてしまったわけだが。

 

 ……話を戻して、五条さんについて。

 私たちが出会った当初の彼が『目立ちたい』『ちやほやされたい』というような意味合いでなりきりを始め、結果として『逆憑依』になった……という事情を知った上で、今の彼を見ると。

 なんというかこう、本来の彼はわりと生真面目だったのだろうなぁ、という感想も浮かんでくるのである。

 

 

「生真面目?」

「始めた当初はそうでもなかったけど、色々ある内に『五条悟』に近付いて行った結果、彼の思想に恭順し始めたというか……『五条悟』として恥ずかしくない存在になろうとし始めたというか。作中最強キャラとしての自覚が芽生えだした、みたいな?」

「ふむ……」

 

 

 五条悟というキャラクターは、その見た目や能力ゆえにとても華やかな存在である。

 ゆえに、そんなキャラをなりきりしてみたい……と思った時に、『カッコいいから』みたいな単純な感想が飛んでくるのもそうおかしな話ではない。

 そして、そんな単純な感想であるからこそ、その姿になれただけでも満足しうるモノであっただろう。……一種のコスプレ扱い、みたいな?

 

 だが彼は──きっかけがあったとはいえ、より五条悟らしくあることを選んだ。

 その結果、そのネームバリューに負けない存在になろうと足掻いている……。

 

 足掻く、というのは『五条悟』らしいとは言い辛い気もするが、だからこそ彼が二次創作の『五条悟』として歩み始めた証、とも言えるのかも知れない。

 そんなことを思いながら言葉を紡げば、なるほど……みたいな反応が周囲から返ってくる。

 

 

「まぁ確かに……先の先天的な能力云々の話ではないが、元から最強であるならばそれ以上を目指す意欲は湧かぬも道理。そういう意味では、最期の時にその理由が現れた原作の奴と、ここにいる奴とでは別人のようなものというのもおかしくはないか……」

「なんだかちょっと深い話になっちゃったねぇ」

 

 

 長々と語り続けたので、ちょっと疲れた。

 ……これは私の感想なので、周囲が抱くそれは長々と話を聞いたので、となるだろうが……ともかく、皆が皆疲れているということは間違いあるまい。

 

 なので、『星女神』様に密かにアイコンタクトをした私は、彼女が微笑み返して来たことを合図に一時解散をみんなに告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

「自由行動とは言うが……これ、どこまで行っていいものなのかのぅ?というか、そこらのモノは触れていいものなのかのぅ……?」

「そこまでびくびくしなくても、触っただけで死亡フラグみたいな危険物はないよ。……多分」

「そこは断言して欲しいところなんじゃがのぅ……」

 

 

 一時休憩、と言われて解散したみんなだが……そういえばここ『星の死海』だったわ、という感じで基本的に部屋の中で椅子に寄り掛かっている面々である。

 ……うん、言われてみればそりゃなんもないところなんだから、休憩も本当に休む以外することないよね。盲点ってほどじゃないけど、迂闊だったのは確かというか。

 

 とはいえ、今さら休憩はなしとも言えないし、かといってなにかしらの用意をするような暇……スペース?もない。

 外は確かにだだっ広く、仮に街でも作り出せば暇も潰せようが……その街、一時間もしないうちに消えるよと言われて心休まる人間がどれほどいようものか。

 

 ……そう、確かにこの場所は土地の問題が一切ないように見えるが、その実『星女神』様の中──言い方を変えると心象世界のようなもの。

 その造形は彼女の心次第であり、実際街のようなものを作りあげることは不可能ではないものの……言い換えると彼女の夢のようなモノなのである。

 ──つまり、彼女の一声ですぐに瓦解するもの、というわけで。

 

 それだけならばまぁ、私たちが街中で楽しんでいる間は維持に気を回して貰う、みたいな方法で顕現時間を伸ばすこともできるかもしれないが……お忘れでないだろうか、そもそもここで言う世界の支配者とは、『公私』の彼女であるということを。

 ……つまり、『私』の部分の『星女神』様が維持しようとしたところで、『公』の部分の『星女神』様が無駄と断じると酷い目にあう、ということである。

 

 具体的には、出来上がった街は常に蜃気楼のように揺れ続け、例えすぐに霧散することはないとしてもそう遠からず()()なることを予測させる……悪い言い方をすれば今にも崩れそうな街、ということになるわけで。

 そんな人工的に再現した『直死の魔眼の視界』みたいな街、誰が好き好んで進み入ろうと思うのか。

 そういうわけで、外のスペースにあれこれ作るのは不可能。

 結果として、この館の中でできることを探すしかない、ということになるのだけれど……。

 

 

「ここに来るまでに館の内部をさらっと見たが……なにもないにも程がないか?」

──そもそも私一人が居るだけの場所ですから。他人に見せる必要も、必要以上に着飾る必要もないのですよ──

「うぬぅ……」

 

 

 外観こそわりと立派に見えるものの、その実この館の中身は()()()()()

 元々『星の死海』に辿り着いた者達の目標として作られた館であり、その中ですることも単に【星の欠片】としての自覚を問うとかそういう方向であるため、長期間滞在することをまったく想定していないのである。

 

 そのため、結果として調度品とか絵画とか、こういう館なら最低限一つくらいはおいてありそうなものすら一つもない、という非常に殺風景な景色と化していたのだ。

 ……流石に、このお茶会の周囲はちょっと気にされている感じはあるけど。

 

 

「でもまぁ、それだけ。ここから一歩外に出れば、そこには全てが真っ白で現実感のない館の内装が続くだけ。そこから更に外にでても、待ち受けるのは星の砂が降り続く漆黒の景色だけ……」

気が狂いそうなのだが?

──ある意味それが狙いのところもありますからね──

「そうだここ試練の場所だった」

 

 

 思わず、とばかりに愚痴を溢すミラちゃんたちだったが、返ってきた『星女神』様の言葉に見事に撃沈していた。

 ……まぁうん、宿泊用の場所でもないし、歓楽用の場所でもない。

 基本的には苦行方面の修行を行うための場所なのだから、そりゃまぁ精神に負担をかける方向に進むのは仕方のない話、というか。

 

 まぁ、拷問に使われるという噂のホワイトルームとやらよりは人間味はあるので、そこで満足して貰うしかないだろう。

 ……そういうところと比べられる時点であれ?それはごもっとも。

 

 

「……仕方ない、ウノでもする?」

「流石に間が持たぬし、ありがたく参加しよう」

「あ、きらりもやるー☆」*3

「……なんかこう、上位存在が一人命を落としたような気が」

「?」

 

 

 その後、流石にこのまま無為に時間を過ごしても回復なんてしないだろう……ということで、遊びに精を出すこととなったのだが。

 ……なんだろ、全然関係ないところで誰かが『ぐわーっ!?』って感じに倒されたような気がするのは。

 

 そんなメタな感想を抱きながら、私たちは暫しの休憩時間を過ごしたのだった……。

 

 

*1
リゼ・ヘルエスタ氏のこと。実際並べると姉妹のよう

*2
『カップ焼きそば』と『焼きそば』は似ているが別のものである……ということから、類似・ないし模倣したものがまったく別の価値を得ることを意味する言葉。単に外見が似通っている、という意味で使われることもある

*3
『グランブルーファンタジー』のコラボキャラクター、赤城みりあのサポートスキル『みりあもやるー!』から。『アイドルマスターシンデレラガールズ』とのコラボキャラである彼女は、当時としてはそう珍しくもないSRのキャラクターであり、そこまでの注目を与える存在ではなかった。……のだが、当初の彼女のサポートスキルの効果が問題だった。その効果は『サポートメンバー時に一定確率でメインメンバーと交代する』というもの。……要するに勝手に戦線を崩壊させてしまうのである。その為、一時期の彼女は使い勝手が悪いどころか害悪のレベルで使用を推奨されないキャラにされていたのだ(一応、最初からメインに置いておけば問題はない)。運営も流石に間違ったのかと思ったのか、その後このスキルの効果は『サポート時に応援効果』といった旨のモノに変更され、この騒動は終わりを見せた……かに見えたが、新しい主人公のジョブ『エリュシオン』の登場により別の形で再燃。詳細は省くが、この二人を合わせるとどんなに強力な敵でも即死させてしまうことができるようになり、結果酷い祭りになったのだった。この事から、この台詞には『みりあも()るー』という物騒な響きも加わることになったとかなんとか

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。