なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「いやー、ここに来てからずっと不満を抱えてきたが……」
「ここに来てこんなメシウマ案件が飛んでくるとはのぅ!!愉快愉快!!」
「ぬぐぐぐ……」
ええい、ここぞとばかりに『
でもまぁ、ここまで巻き込んだのは私であることも確かなので、微妙に言い返し辛い気分の私である。
それで気が済むならある程度は受け入れるべき……みたいな?
「……そうやってメシウマしてるのはいいけど、貴方達にも無関係な話じゃないのよ、それ」
「はははは無様無様……なんて?」
そんな風に仕方なく黙り込んでいたのだけれど……おや?なんか風向きが……。
高笑いをあげる二人に対し、少々気まずそうに声を掛けたのはキリア。
それほど大きな声ではないそれは、けれど二人の耳にしっかりと届いたのか。
彼らはぎぎぎ、という擬音が聞こえそうな動きでキリアの方に視線を移していく。
それを最後まで見届けたキリアは、大きくため息を吐いたのちにこう告げたのだった。
「『ほう、普通の人間も?なるほどなるほど……じゃあ彼らも私の挨拶が必要な相手ということだね、一緒に呼んで貰っても?』……だ、そうよ」
「「……神は死んだ!!」」
あーうん、御愁傷様……?
「なんで……なんでそんなことに……」
「さっき言ってた【星の欠片】以外の人間がこの場所に向かう必要のあった理由……の、これがその内の
「待て!?その言いぶりだとこれ以外にもまだなにかあると!?この時点でわりと大概なのにか!?」
「あははは……黙秘しまーす」
「ノォォォォオオォォッ!!!?」
あーうん、なんかこう……大分愉快なことになってるね、これは。
唐突に発生した、今回の騒動が終わった後のイベント予約。
端的に言うと『月の君』様へのお目通り……なのだが、どうやら今回みたいにこのメンバーで向かうことが
この辺り、因果がややこしくなっているので単純に私のせい、というわけでもないらしいが……まぁうん、この面々を選定したのは私なので、そこに関しては確実に私が悪い……ってことになるのかな?
まぁ、一々謝ったりはしないけど。さっきからずっと責められてたようなもんだし()。
で、嘆きの声をあげる二人とは対照的に、特に文句も言わずにニコニコ(※正確には苦笑い)しているきらりんに声を掛ける私である。
「んー?どうしたのキーアちゃん☆」
「いや、きらりんはなんでなんにも言わないのかなーって」
「今のきらりにはー、そういうのそこまで問題じゃないからにぃ☆まぁ、みんなが
「あ、左様ですか……」
うーん、菩薩メンタル。
そもそも言動に反して普通に常識人なきらりんが、トキさんのノリで拳法まで極めてるものだから精神性がかなり洗練されてるんだろうなぁというか。
……そう考えると、イチゴ味基準のサウザーさんも意外と頑張っている、って扱いになるのかなー。
「おい?そこで何故わしについてなにも言わんのじゃ??」
「いやー、ミラちゃんはミラちゃんだからほら……」
「遠回しに面倒臭いみたいな扱いをするでないわ!!」
いやほら、最近はそこまででもないけどわりと暴走する方なのは確かだし……。
渋いおじさまが出てきたら確実に弾けるのだから、そこがどうにかならない限り普通扱いは無理だよ……と返したところ、『それは今は関係ないじゃろうが!!』とキレられてしまった。
……でもほら、今のミラちゃん『月の君』様の情報気にしまくってるのがバレバレだし……。
「……な、なんのことかのぅ?」
「後で文句言われても困るから、先に言っておくけど……『月の君』様は女性だから、ミラちゃんの想像しているようなタイプじゃないよ?」
「ななににを言っておるのかわからんのぅうぅ!!とりあえずポリコレ準拠お疲れ様じゃのぅ!!」
(色々テンパってるのがバレバレね……)
……うん。なんとなーくだけど、彼女が『月の君』という名前を聞いて想像した相手というのが、彼女好みのお爺ちゃんなんだろうなー……みたいなのは把握していたというか。
まぁ、誰も性別についてどころか、その見た目についてすら言及してなかったからこその珍事と言うやつなのだろうが……哀れなり、ミラ上(兄上的ニュアンス)。
……まぁうん、昨今になって色々と改善の向きが出てきたけど、やっぱりふとした時に『女性の相手なのだから男性』みたいなことを思ってしまうのは大多数だろう、みたいな話でもあるのかもしれない。
たまーにテレビで流れてる、映像だけ映して音は無し……みたいな広告?の最後に『どんな声が聞こえましたか?』みたいなことやってるやつとか、大抵の人は同じような答えを出すだろうし。*1
とはいえ、それがはたして本当に問題なのか、と言われるとまた別の問題のような気がするのだ。
「……アンタ、なんかまた別の問題発生させようとしてない?」
「そんなに深くまでは突っ込まないよ。あくまでこの『なんでもかんでも垣根を取っ払えばいいのか』ってところに疑問を感じた、ってだけだから」
「それが余計な火種だって言ってるんだけど……」
などと話していれば、オルタが呆れたような諦めたような、微妙な表情でこちらに声を掛けてくる。
それは多分『また脱線するのか』みたいな意味合いも含まれているのだろうが……別に今回の話に関係ないというわけでもないので、ちょっと補足して元に戻れば問題ないだろう。
というわけで続行します。
「ガバチャーの権化……!!」
「やかましい。……まぁとりあえず話を戻すけど。昔に比べて『区別』と『差別』の判断ができなくなってるんじゃないかなー、って話」
「区別と差別?」
「例えば子守りは昔女性の役割だったけど、最近なら男性側もやるべき……みたいなことになったでしょう?」
ジト目で見てくるオルタを華麗にスルーしつつ、例としてあげるのは子守りの話。
女性の仕事として挙げた場合、特に負担が大きいものとして知られるわけだが……なのでまぁ、それを男性も手伝おう・ないし率先してやろうという最近の風潮は真っ当なものだと思う。
……思うが、それがはたして本当に
「なんでよ?」
「一番わかりやすいのは
「それは……微妙に痛いわね」
「そう、
わかりやすいのは、お金が掛かるというもの。
……微妙とは言うが、月一万円を捻出するとなると困るのも確かな話。
そもそもミルク代以外にも子供の養育にはお金が掛かる。
……となれば、昔みたいに男性ばかりが働いてどうにかなる、という状況も少なくなるだろう。
結果、子供をずっと見ていられる時間がなくなり、保育園などに預ける必要が出てくる……と。
実のところ、保育園や幼稚園というのは義務教育ではない。
言い方を変えると
これらのことを総合すると見えてくるのは、子供の為にお金を稼ぐことで、子供と一緒にいる時間が削られているのではないか?……ということ。
まぁ、これはかなり極端な話*3なのであくまで問題提起として置いておくが……他にも、男性が子育てをするという部分において、問題になりそうな話というのは存在している。
「さっきの保育園繋がりで言うなら、男性が迎えに行ってたりすると噂になりやすい、みたいなのがあるね」
「噂?」
「『あそこの奥さん、旦那さんに迎えに来させてるのね』みたいな周囲の奥さんの噂話」*4
「あー……」
言い換えれば、女の敵は女……みたいな?*5
自分のところではない、他の家庭というのはその内部事情が見えない以上、どうしても想像でモノを語りやすい部分である。
で、意外と常識というものに縛られている彼ら彼女らは、そういった場で他と違うことをしている人を見ると変な噂を作り出しやすい……と。
この辺りはわかりやすく言うと『村八分』とかの『自分達と違うことをしているものは異物として弾く』精神がほんのり作用した結果だろうが……まぁうん、言って変わるとも思い辛い部分なのでどうにかできるかは微妙というか。
で、この話を拡大していくと『マイノリティ』達の話に突入して行く……と。
「……微妙に戻ってきたわね」
「問題の根幹としては、そう違わないからね。見方を変えれば誰だって少数派になることはある。あるけど、そこで少数派の意見を採用しろ、と言われて採用できるか否かはまた別の話だから」
例えば、既に付き合っている同性同士のカップルがいたとして。
彼らが『自分達を認めて欲しい』というのは、まぁ特に問題は無いだろう。
……そういう意味で、ここで引っ掛かってしまうのは
何故かと言えば、通常の場合は普通に違法になるものが彼ら相手だと糾弾しにくくなるから、というところが大きい。
「これは性的マイノリティに限らず、人種的な話の時も同じなんだけど……『特定の集団に属している』から迫害されるのと、問題や事件を起こしたから取っ捕まるのでは意味合いが違う……って部分が混同されやすく・もしくは意図的に混同し始めることがある、って話ね」
「あー、一部のアホがやらかす……みたいな?」
「そうそう」
日本人だけなのかは定かではないが、基本的に集団を評価する時に善行に関しては全体を、悪行に関しては個人を見て判断する……ということがとても多い。
いわゆる連帯責任的なあれとも言えるが、ともかく悪目立ちする個人が属している集団、というのは同じように悪目立ちするように思えてくるのである。
それがあるからこそ、そういう偏見は良くない……みたいな話も持ち上がって来たわけだが、ここで悪目立ちする奴らがその話を悪用し始めたので話がややこしくなったというか。
……結局
少数派が集まった中ですら、さらにその中の少数派が無茶苦茶やっている……という事実に。
「まぁ、そういう手合いって陣頭指揮には向いてるんだけどね。でもあくまで革命を主導するのに向いてるだけで、革命後に政治を回すのには全く向いてないというか」
「……で、その話が今回のあれそれにどう関係あると?」
「『月の君』様は、そういう意味ではマイノリティの極致だって話」
「はい?」
それで、それらの話がどう今回の話に関係してくるのかと言うと。
件の『月の君』様は、見方によってはマイノリティの代表みたいなモノでもある、という話になるのであった。