なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「
「海に関連する【星の欠片】が他に無いのは、必然その属性が彼女と被るから……ってところが大きいね。なにせ彼女は少数派だから」
「あー……能力被りはご法度、ってこと?」
「そういうことー」
まぁ、とことんまで『星女神』様と対称的にする意味合いもなくはないが。
……ともかく、『月の君』様の原型となった少女は、そんな感じで海を自身の力の源とした。
となると、恐らく疑問が一つ浮かんでくると思う。
そう、敬称である『月』ってどっから出てきたの、と。
「……そういえば、さっきは『星女神』を地球に見立ててる、みたいなこと言ってたわね。でもこの話だと『星女神』は天の星に見立てられている……正直、素直に考えるなら『星女神』の方を月に見立てた方がいいんじゃないの?」
「理由は幾つかあるけど──反転した、ってのが一番大きい理由かな?」
「反転した?」
「『月の君』様になるのは、正確にはバッドエンドの時だけって言ってたでしょ?さっきの『星天海鏡』も彼女自身に宿ったモノというよりは、後付けで使える武器みたいなものの扱いだし」
わかりやすく言うと、『月の君』様にとっての『星天海鏡』は、他の人にとっての『神断流』に近いというか。
あくまで武器のようなものであり、それを使うことが自身を削っていく──【星の欠片】としての完成に近付くものではない、というか。
だが、先ほどから言っている通り、本来『月の君』様がその名前で呼ばれるのは彼女がバッドエンドに到達した時。
そしてそのエンドに到達する条件というのは、本来単なる武器であるはずの『星天海鏡』を自身に同化させ、そこから純化させることにあるのだ。
「純化、ねぇ」
「正確に言うと、柱の試練を踏破すること……って意味だけど。彼女がそれを行ったことが、私たちの今の状況の遠因になっている……っていう点では無関係とは言い辛いね」
「……ええと、もしかしてなんだけど」
「オルタは察しがいいね。──その通り、『星女神』様がこの世界で『公私』に別れてしまっているのは、極論『月の君』様がここを踏破してしまったからなんだよ」
本来、『星天海鏡』単体だとランク付けが難しい。
誰かに宿るわけではなく、かといって『神断流』のように誰にでも扱えるわけでもない。
実質的に『月の君』様の原型となった少女専用のモノであり、その時点で彼女が【星の欠片】になるのは既定路線のはずなのである。
……それを既定路線とせず、人のまま『星女神』様に並び立てる場所にまで到達するのが彼女の到達点であり正規ルートだが、とある展開においてはそうならず、【星の欠片】であることを選択してしまう場合がある。
その時、彼女は本来あやふやな『星天海鏡』を確たるモノと定めるため、柱の踏破を行うのだが……。
その展開を迎える時、『星女神』様と彼女の立場は逆転している。
……言い換えると、本来であれば人の世を壊そうとするのは『星女神』様の方だが、この場合は『月の君』様の方になっている……ということになるだろうか?
通常であれば人類の守護者なのは『月の君』様の方だが、このルートに限っては『星女神』様の方がその役割になっている……みたいな。
どちらのパターンにおいても、『星女神』様が柱の試練を『月の君』様に受けさせる理由はない。
──が、そもそも
敵や味方のように見える状態でも、その実正確には
つまり、その時の立場が敵であろうが味方であろうが、
その結果、本来は混ざりあって片寄った答えを出すことはないはずのモノが、きっちり別れて別々の答えを出すようになってしまっている……と。
……わかりくい?じゃああれだ、ロールパンナちゃん*1は善と悪の心を持っているけど、ここでは『善』と『悪』のロールパンナちゃんに分裂してるようなもの、と思えばいい。
その理由は、相手も同じように『善』と『悪』を持つ相手であり、今の自分と同じように『善』と『悪』に別れてしまっており、それぞれに対応しようとした結果……みたいな感じで。
「……余計にわかりにくくなってない?それ」
「まぁ、ここに関してはそんなに深掘りするもんでもないから……ともかく、私たちが公私での『星女神』様の対応の違いに翻弄される羽目にになったのは、見方を変えると『月の君』様が『月の君』様として成立する際に無理矢理『星女神』様の一部を味方に付けたから、ってところが大きいってわけ」
元々『星女神』様の一部から生み出されたモノである『月の君』様は、少なからず『星女神』様の力を使う素養があった。
それを悪用……というとあれだが、まぁ活用して自身の【星の欠片】としての深度を深めたわけである。
結果、ポジション──善悪の立場が入れ替わった二人は、立ち位置にも変化を来すこととなった。
元々天の星──災いをもたらす凶兆であった『星女神』様と、大地──人の暮らす場所を守護する『月の君』様はそっくり立場が入れ替わり、その際に『月の君』様は自身の性質──少数派であるというそれから『天に無数に輝く星々ではなく、地球という星にとっての唯一である月』を自身の象徴として選んだ……と。
「で、ここからちょっとややこしいんだけど。人としての『月の君』様の最終到達地点ってのが、この『人の敵になった自分』を反面教師にしているところがあるんだよね」
「……はい?」
「並行世界の自身の末路を見て、ああはなるまいと気持ちを一新した……みたいな感じに思ってくれればいいよ」
どちらかしか掴めない選択では、結局のところなにもかも取り零す……と理解したのかもしれない。
どこぞの爆弾魔さん*2に言わせれば、『両方を掴む選択肢を用意するのなら、その反対──なにもかもを失う選択肢も必然
そしてその上で、両方を取り零した自身の形を自戒として自身の名に使用した……と。
「つまり……どっちのパターンも、最終的な呼び方は『月の君』だってこと?」
「その名前に込められた意味はまったく違うし、あくまでもバッドエンドありきの暫定的な呼び方だけどね。バッドエンドの方が『かつて敵対した相手からとった皮肉のような名前』だとすれば、こっちは『それを自身の慢心や傲慢を戒めるためのモノとして活用する方向に舵を切った結果の名前』になるわけだし」
「ふーん……」
「それと、何度か触れたこともなかったあるけど『月』って存在自体が二面性を持つものだから、ってのも理由になるね」
「なるほど……」
……
一つは、狼男──恐らくは狂犬病患者が、月の明かりすら刺激が強すぎて苦しみ吼える姿が『月に吼える』という姿だけ抽出され、その後の伝説の中核になった*3──のように、夜に住まう者共の拠り所としての『闇』の性質。
そしてもう一つは、夜を照らすモノとしての『光』の性質。
こちらはどうも日本などの一部での認識、ということになるようだが……ともかく、月に関する風評は善悪どちらにも傾き辛い、ということになるのだと言い張ることはそう難しくないはずだ。*4
……ついでに言うと、太陽を『陽』──男性的なものと言うように、月は『陰』──女性的なものとして語られることも多く、それゆえに先の『海』と合わせて彼女が女性である理由の一つになっている、と見ることもできなくはないだろう。
ともあれ、最終的に彼女は自分を『月の君』と自称するようになる。
そしてそれを自称する頃には、その状態が人であろうが無かろうが、どちらにせよ『星女神』様の対として並び立てるほどの存在となっている……というわけなのであった。
「なるほど、ねぇ」
「で、多分こっちに来てる『月の君』様は──」
「バッドエンドじゃない方、ってこと?」
「──正直、どっちかわからん」
「なんでよ!?」
で、それを踏まえた上で結論を出したのだけれど。
何故かオルタには怒られてしまった。解せぬ。