なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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人の恋愛観に迂闊に首を突っ込むべきではない

「えー?さっきまでの説明におかしいとこでもあった?」

「結論がおかしいって言ってるのよ私は!!」

 

 

 襟元を掴んだオルタが私の頭を前後に揺らすが……そんなに変なことを言っただろうか?

 さっき『星女神』様の状態にも触れたことだし、それを思えばそうおかしな結論ではないと思うのだが。

 

 

「ああ゛?」

「公私で別れてる、って言ったでしょ?……それ自体がおかしいと言えばおかしいのよ、だってその状態は『月の君』様に合わせたものだから、相手が善悪どっちかなら()()()()()()()()()()()()()()()わけだし」

「……んん?」

 

 

 そもそもの話として、『星女神』様の性質である『数多を含む』というのは、くっきり形の別れたモノが集まっているというよりは、形のないものが渾然一体*1となっている、というのが正しい。

 明確な形を持たないが、その中に全ての因子を持ち合わせているので適宜必要な要素だけを取り出せる……みたいなのが本来の形なのだ。

 

 まぁ、それだと今みたくこっちにフレンドリーな彼女にはならないだろうが……同時に、だからこそ【星の欠片】以外の来訪が叶ってしまっている、という風にも言えなくはない。

 見方を変えると、こうして意志疎通ができる存在となっているからこそ、他の面々の苦労が増す結果となった……みたいな?

 

 

「本来、【星の欠片】以外の存在が『星の死海』に入ることは不可能。一応、その存在が輪廻転生を諦め、命としての価値を全て星に還すことを決めたのなら入れないこともないだろうけど……それって結局身投げとなにが違うの?……というか」

「……まぁうん、自殺するのとなんにも変わらないわよね……」

 

 

 私の言葉に、オルタは冷や汗を一筋垂らしながら小さく頷きを返してくる。

 ……まぁ、これに関しては一般人に対して厳しいわけではなく、【星の欠片】の場合はその条件でも自身として行動できる──言い換えれば条件そのものは全く変わっておらず、それを受ける相手側にその準備がないというだけの話になるのだが。

 

 ともかく、本来ならそもそも到達不可どころか侵入不可な場所に入れるようになった結果、余計な負担を受ける羽目になったという風にサウザーさん達からは解釈できなくもないわけで。

 ……となれば、今の彼らの苦労が『月の君』様の性、というのも強ち間違いとは言い辛くなってくるわけである。

 

 

「……いや、そもそもその辺りの話がよくわかってないんだけど。なんで『月の君』の状態と『星女神』の状態がリンクするのよ?」

「前に少し触れたけど、『星女神』様と『月の君』様は対の存在。二つ揃ってこそ完璧・完全なわけ。……まぁ、見方を変えるとその対が最初は存在しなかったから、『星女神』様は暴走していた……ってことにもなるんだけど、その辺りはまた別の話になるからここでは割愛するわね」

「はぁ」

 

 

 そんな私の説明に、気を取り直したオルタが疑問をぶつけてくる。

 疑問が最初──なんで『月の君』様がどっちなのかわからない、という部分に戻ってきたわけだが。

 これに関しては、二人が『二人で一つ』だからこそ、というのがとても大きい。

 

 私たち【星の欠片】は基本的に太極図のような『対があってこそ完璧となる』ような存在だが、それは一番弱い(つよい)『星女神』様であっても同じこと。

 ……同じだと気付かなかったからこそ、当初の彼女は暴走を繰り返していたわけだが……それに関してはまた別の話になるため今回は割愛。

 

 ここで重要なのは、本来の『星女神』様が渾然一体──その状態で既に()()()()()()()()()なのにも関わらず『月の君』様という対を必要としていたという部分。

 言い換えるなら、彼女達は本人の状態がどうであれ、必ず相手にとって()()()()()()()()()ということになる。

 

 

「……ん、んん?」

「さっきのバッドエンド云々の話がわかりやすいかな?例えば『星女神』様が善の位置に立つのなら、対となる『月の君』様は悪の位置に立つ。反対になれば立ち位置も入れ換わるってわけ。……なんだけど、本来の『星女神』様には善も悪もない。そしてそれがデフォであり、対となる『月の君』様も同じような状態になるんだけど……」

「なるほど、今のように『星女神』が『公私』に別れていると、対となる『月の君』とやらも同じように『公私』……対であることを意識するのであれば『私公』に別れておるということになるわけか」

「おっとミラちゃん、意識が戻ったんだね!」

「やかましい、人が危篤だったみたいな言い方をするでないわっ」

 

 

 原則、『星女神』様がどちらかに傾いている状態というのは、同じように『月の君』様もどちらかに傾いている状態、ということになる。

 無論、片方が右ならもう片方は左──みたいな感じで、決して同じ方向に片寄ることはない。

 必ず反対側に寄っていき、同じ方を向くことは()()あり得ない。

 ……わざわざ『まず』と付けたように、例外はある。

 その例外と言うのが、『星女神』様が渾然一体と化している──すなわち本来の状態である時。

 

 この時の彼女は全てを含むため、本来ならあり得ない『右も左もどっちも見る』という状況を生み出すことができる。

 このパターンの場合『月の君』様は『右も左もどっちも見ない』となり、傍目にはやっぱり視線が合わないように思えるが……そこは無限概念、そこにちょっと隠し味(無限)を加えるだけで解釈は恐ろしいほどに変わってくる。

 

 以前ちょっとだけ触れた『極逆論』*2という考え方だ。

 これによれば『(極端に)左右を見る』行為と『(極端に)左右を見ない』行為には共通点が生まれる。

 それは『その行為に耽溺している』ということ。

 それぞれの行為に努めているだけならともかく、それの行為に無限を代入してまで推し進めるのであれば、そこには別の意味が発生して然るべき。

 そして、そうして生まれた意味まで反転することは無いだろう。

 

 ……屁理屈染みているが、ともかく『星女神』様が渾然一体となっている場合、二人は敵対者としてではなく同盟者として同じ方向を向く余地が生まれる、というわけなのである。

 

 で、今回の『星女神』様の状態なんだけども。

 ……うん、『公私』というのは本来善でも悪でもないのだが、それを受ける側からするとどうにも悪や善に見えてくる、ということはあるだろう。

 

 やって来た人間に試練を与える『公』の面は、普通の人には悪に思えてくるだろうし。

 迎えた人間をもてなす『私』の面は、普通の人には善に思えるはずだ。

 ……が、それはあくまでも一方向から見た場合の話。

 与えるものが試練である以上、それを潜り抜けた存在が以前より強くなる……という面に視点を向ければ『公』の行いは善に思えるだろうし。

 同じように、もてなしという形で客人達を()()()()()()()、という風に解釈するのであれば『私』の行いは悪に思えてくるはず。

 

 ……言い換えると、渾然一体ではないものの、今の『星女神』様は善悪どちらにも振り切らず、かといってどちらでもないとも言い難い状態なわけで。

 となれば、そんな彼女の対となる『月の君』様も、同じようにどちらとも言い難く、されどどちらでもないとも考えにくい状態になっているはず、ということになるのだ。

 気を取り直して会話に入ってきたミラちゃんの言を借りるのであれば、『星女神』様が『公私』に別れているのだから、『月の君』様は『私公』に別れているはずだ……みたいな?

 

 なおこの場合、一応反転関係になるのは保たれているはずなので『公』の方が一見こちらに優しく見えて、『私』の方がこちらに厳しく見える……という形になっていると思われる。

 うん、ややこしいな!!

 

 

「なんでそんな面倒臭いことに……」

「さっきも言ったように、本来この二人は対としてあるから……かな?敵対はしてないっぽいからバッドエンドのはずはないけど、それなら『星女神』様の状態は悪側──人に対して厳しい存在として固定されてるはずなのにそうじゃないからね」

「人に対して厳しい……のぅ?」

「具体的には作中後半のベジータみたいな感じ」*3

「逆にわかりにくいわ!」

 

 

 つまりはあれだ、ツンデレだ。

 ……いや、ツンデレな『星女神』様とか想像できんけども。

 

 ともかく、今こうして悪い面も良い面も見える『星女神』様、というのがわりとイレギュラーなことは間違いあるまい。

 私が必要以上に彼女を恐れていたのも、その辺りの話からして今は優しそうに見えるけど、その実そのムーブはあとから『なーんちゃって!!』的なことをするためのモノだと疑っていたから……って部分も少なくはないし。

 

 まぁ実際のところはこの通り、『星女神』様は普通の人と同じような感性を持っていた、というだけの話だったわけだが。

 

 なお、この話をずっと横で聞いていた『星女神』様本人はというと、まるで笑顔を張り付けたかのような状態で地味に怖かったことを付け加えておきます()

 

 

*1
前漢の武帝の頃、淮南(わいなん)王の劉安が編著したとされる哲学書『淮南子(えなんじ)(正式名称は『淮南鴻烈解』)』にて使われた言葉。意味としては『異なるものが互いに溶け合い、区別が付けられない状態』となる

*2
改めて説明すると『前提となる要素が極端なモノである場合、それらを語る軸とはまた別の場所で結果に類似する点が現れる』という考え方。わかりやすいのは『明るい場所』『暗い場所』は共に光源という軸では両端だが、それらの状況を極端にした場合どちらの場所も『人には見えない』場所になる……という同じ結果が生まれる。屁理屈の極みなのでまともな論法ではない

*3
いわゆるライバル枠、それも敵から味方になったタイプのそれのこと。まだ敵としての感覚が残っているが、その実そこから再び敵対するビジョンが見えない感じ

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