なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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長い話もそろそろ終わりでして

「……帰りたい……」

「今帰って来たばっかりなんだけど」

 

 

 はてさて、『星の死海』から無事戻ってきた私たち。

 戻る前に幾つか聞きたいことなども確認できたため、暫くあちらに向かう必要性はないはず、である。

 まぁ、似たような場所に行く必要性はあるため、どこかで情報の整理でもした方がいいような気もするが……。

 その辺りは今回の一見が終わってから、ということになるだろう。

 

 

「ということは、さっさと見付けて終わらせる……みたいな感じ?」

「まぁ、うん。向こうの目的が【星の欠片】への対抗策を得ること、っていう予想が正しいのなら、それを鍛えるのは今じゃない……というか、もっとお誂え向きの場所があるというか」

 

 

 具体的には『月の君』様のところとか。

 ……『私』の部分が強い『星女神』様の『星の死海』ではわりと逃げが効いてしまうため、修行という目的では利用し辛いだろう。

 そういう意味では、父性──子を突き放す、もしくは子を厳しく育てる存在としての性質が強い『月の君』様の『星の死海』の方が、成長の糧になるという意味では余程向いているはずだ。

 実際、『星女神』様もその辺りを自覚しているからこそ、自分のところでどうこうするのではなく『月の君』様のところに行きなさい、という態度を示していたのだろうし。

 

 まぁ、だったらそのことだけさっさと告げればこんなに長い間(※現実では数秒未満)こっちを拘束する必要もなかったんじゃ、って気もしないでもないのだが。

 ……ああいや、向こうであったことを報告書に纏めてゆかりんに提出し、それによって『希望者は月の君様道場の受講をオススメします』(※要約)と遠回しに伝えるように、っていう意味だったりするのかも?

 

 

「……なにそれ」

「『星女神』様と『月の君』様は対、って話はさっきもしたでしょ?この『対』って性質は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だから、この場合()()()()()()()()()『星女神』様と対になるように()()()()()()()()()『月の君』様、って感じになるのが自然なのよ」

「なにそれ……」

 

 

 そんな私の予想を聞いて、怪訝そうな顔をするオルタである。

 ……いやまぁ、こっちも単純に言えば『星女神』様が意外と表に出てくるので、対である『月の君』様は滅多に出てこないというキャラ付けになるのが一般的……みたいな話でしかないのだが。

 と、そう伝えれば今度はげんなり、みたいな顔になるオルタであった。……ワケわからん、ということなのだろうか?

 

 

「といっても、そんなに変な話じゃないんだよ?単にそこにあるだけで世界に影響を与えるような存在が二人居て、片方が表にいるのならもう片方は安定のために裏にこもる……って共同作業してるだけだし」

「そういうこと言ってんじゃないのよ……」

「はぁ、じゃあどういう……?」

「あーもう、私はいいのよ私はっ。……そもそも、さっさと五条のやつ探しに行くんでしょうが」

「おっと、そうだったそうだった。このままだとまた解説で時間を使いきるところだった」

「メタい話してんじゃないわよまったく……」

 

 

 ならばもう少しわかりやすく説明するか、と思ったのだがどうやらそういう話ではない様子。

 ……はぐらかされる形になったが、確かに足踏みは十分したのだからさっさと目的を果たすべきなのは間違いない。

 ただでさえこの後更に面倒なことが待ち受けていることが確定しているのだ、五条さん如き……というとあれだが、ともかく彼一人もとい彼ら二人に何時までも時間を浪費させられている場合ではないのだ。

 

 

「……あれ、もしかして僕今すっごい喧嘩売られてる?」

「そうよ売ってあげてるんだから買いなさいよ。言っとくけど、貴方が挑戦者(チャレンジャー)だから」*1

「……滅茶苦茶煽るじゃん」

 

 

 ()()()近くに居た五条さんに強めの煽りを投げつつ、彼を捕まえる準備に入る私である。

 ──彼らが()()を目指すのなら、例えそれが与えられたモノであれ、偽りのモノであれ、最弱(さいきょう)を歌う私はその頂を見せねばならぬのだから。

 

 

「いやまぁ、ホント不本意だけどね!そもそも最弱(さいじゃく)って言ってもまだ(うえ)にいるし!なんならその片割れが隣に居るし!!」

「どーも母です。娘の真実をお話します」*2

「その前フリは止めて!」

 

 

 ……まぁ、私程度で最弱を名乗るのは烏滸がましいことも事実なのだが。

 同時に試練からもそろそろ逃れられないとなれば、いい加減実力相応の心構えをする必要性がある、ということも確かだろう。

 

 なので、ここは一つ圧倒的な力の差と言うものを彼らに教え込むとしよう!ついでに私がどこまでできるのかも確認だ!

 ──と、言うわけで。

 

 

「──『開闢(しげん)』『虚無(しゅうまつ)』を束ね、『無欠(しじゅう)』を見出し我が根源に奉る。其処より別たれし我が肢体、その根幹を今定義し直しここに奉ず」

 

 

 ──言の葉は一種の自己暗示であるという。

 特徴的なワードを並べ、自身という存在を再定義する際、敢えて口頭にすることに意味があるとも言えるか。

 

 ……なのでオルタさんよ、『なにそれカッコいい』みたいなキラキラした瞳でこちらを見るのは止めとくれ。

 恥ずかしいと思うと恥ずかしいからそう思わないように注意してるんだ、そこでそんな目で見られると私は中二病じゃねぇ、って叫びたくなるんだよ。

 

 ……いやお母様?そこで不思議そうな顔されても困るんですが。

 え、なになに?【星の欠片】云々の設定を考えたのはお前……違いますー!どこぞの型月の小説家と同じで、私のそれは何処かの世界で実際に存在していたものをたまたま言い当てただけですぅー!!

 なんならそちらがこっちへの干渉権を得るために、私という一個人を端末として操った可能性も……え、それはない?あくまでも偶然一致しただけでその考えはまさしくお前の素である?

 

 うわああああああ……!?(突然の頭痛)

 

 

「っ……、我は一つを知らぬもの。我は数多を知りうるもの。矛盾の果てに、己が価値を定めるもの」

「あら、持ち直したわね」

「横からあれこれ言うのは止めてやらぬか……?」

 

 

 これも一種の試練だってかぁ?ふざけんな!(涙目)

 ……とはいえその感情を表に出すとこの行程をまた最初からやらされる羽目になるので、頑張って耐える私である。

 頑張れ私、この詠唱も恐らくここでしか使わないから恥ずかしいのは今回だけだ!……ん?フラグ?

 

 ともかく、意識を集中して、己を再定義する言葉を紡ぐ私である。

 ……とはいえ、完全に再定義し直すわけではない。

 その役割は恐らく『月の君』様の試練が受け持つはずなので、この場で必要なのは本来使えるかわからないものを、今一時だけでも使えるように己を改変すること。

 そのための痛み(だいしょう)が精神へのそれだと言うのなら、これは必要な痛み。

 ゆえに逃げることは許されず、ただ耐えながら言葉を紡ぎ続けるしかないのだ。

 

 ゆえに、額に嫌な脂汗を掻きながらも私は前を向き続ける。

 

 

「星の欠片の末席にして、最先端の我が真名は【   (■■■■)】!なればその御名において、我は根源の一つを借り受けよう!!」

「お、来るわよみんなー。身構えときなさーい」

「身構えるって……アイツ、何するつもりなのよ?」

「んー?単純明快よ。()()()()()()()()()()()を認知するのは、今後の育成計画の上ではとても重要なことでしょ?……()()()()、ね」

「はぁ?」

 

 

 行程は最終段階。

 言葉を紡ぐ度に自身という存在の意味や組成が切り替わるのを感じるが、それそのものに痛みはない。

 本来の私はそれを既に越えているはずだからか、はたまた別の理由か。

 ……越えているはず、というのが間違いでないならば、例の試練でこの辺りの痛みがフィードバックする羽目になるということだし、越えてないなら越えてないで改めて味わう羽目になる……というのだから、どちらにせよ震えざるを得ないのは私へのイジメ以外の何物でもないというか。

 

 いやホント、なんで私なんだろうなぁ、という嘆きを胸の奥にしまいこみつつ、準備ができたことを悟る私である。

 ──今ならば、届かないものにも届くことだろう。

 その確信を得ながら、私は一つ息を吸い込み。

 

 

「【    (■■■■)】、限定励起(circled separation)。出力範囲、『想起の柱/星天彩具(monochrome)』に調整。掌握(Cultivation)管理(Decomposition)断定(anthesis)──正常起動。『星の歌よ、その色を詳らかに』」

「え、なにそれ」

「……あら、そういえばここにいる人に、見たことのある人はいないのだったかしら?だったらまぁ、忠告。身構えた上で、抗わないように」

「は?なにその難し、ってなにこの虹色の光……」

 

 

「──倫理開放、『星解』」

 

 

 

 

 

 

「いやーははは。……なにそれ」

「……極まると、こういうことしてくるのが、【星の欠片】ってことよ……」

「おっと」

 

 

 ふらり、と倒れ込んできた彼女を抱き止め、周囲を見渡す。

 どうにも、周りのみんなも大して状態は変わらない様子。少なからず気持ち悪さを訴えたり、はたまたこちらを驚いた様子で見詰めていたり。

 

 それもそのはず、僕の隣で肩に手を置く彼を──()()()()()()()()()()()()()()()姿のそれを見れば、何故自分達にそれが認知できるのか?……と疑問に思うのが普通だ。

 その辺りも含め、抱き抱えた相手に視線を向け、ポツリと呟く。

 

 

「いやホント。……最強が聞いて呆れるね」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ぽっかりと抜け落ちた空白の時間。

 おおよそ十分ほどのそれに、僕は挑むべき壁の高さを改めて思い知らされることになったのだった──。

 

 

*1
『呪術廻戦』において、五条悟が宿儺との戦闘の際に述べた台詞。彼が言った言葉を逆に言い返されている形となる

*2
いわゆる関係者による暴露の前フリ。なお、本当に関係者が話しているよりも、関係者のフリをしている人間の作った嘘の暴露話であることも多い

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