なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「あ た ま い た い」
「ここが動画サイトなら、大きな赤文字で表示されそうな発言ですね」
はてさて、五条さんを無理矢理取っ捕まえてからはや二日。
その間私がどうしていたかと申しますと、ぶっ倒れて生死の境をさ迷っておりました(爆)
いやまぁね?確かに無茶をした自覚はあるけど、あれは必要な無茶だったから仕方ないというか、ここで意地を張らないと問題だと言うか……。
まぁ、だからといってマシュからのお叱りが減るわけじゃないんですけどね(白目)
実のところ死にかけてたのは一日だけで、それ以降は真っ赤に泣き腫らしたマシュに睨まれて大人しくしてるしかなかった、というだけの話なのですが。
あと、今迂闊に顔を見るとまた怒ってしまいそう……ということで、初日以外はアルトリアが私の見張り役となっていたり。
別に見張ってなくても何処にも行かないよと言いたいところなのだが、やったことがやったことだけに色々やらなきゃいけないことが多くて、ベッドの上に留まっていられるか微妙な部分があるのも確かな話。
……なので、強制的に仕事とかやることとか全部ストップさせる意味も含め、ベッドから降りることを禁止されていた私なのでしたとさ。
「……まぁ、検査の上では特段異常らしき異常は認められなかったがな」
「おっとブラックジャック先生」
で、そんな私が何処に運び込まれていたのかというと。
なりきり郷内においては恐らく並び立つ者は……いやまぁ結構いるけども。
それはそれとして、他の人がほとんど来ない上にそもそも他所に移動するのにも苦労する……という意味合いで地下千階、隔離塔併設のブラックジャック先生の
そんな僻地にある病院の主治医・ブラックジャック先生はと言えば、手元のカルテを見ながら難しい顔をしていらっしゃる。
……ううむ、これはもしかして、あれじゃな?
「
「……正解だ。わかっているならもう少し分別ある行動をお願いしたいものだがね」
「ぬぐっ」
何度か検査を受けたことがあるものの、その全てが
まぁ、平均的と言っても毎回数値のブレはあったはず、だけども。
……はい、お察しの通りそもそも【星の欠片】相手に普通の人間相手の検査がどれくらい意味があるんだ、って話でして。
いやまぁ、ここはなりきり郷・創作世界の存在達が闊歩する魔境。
ゆえに検査項目や種別・程度など、ある程度は対応できるように配慮や考慮は行き届いているはずだけども。
……そもそもの話、【星の欠片】は現行の科学で見付けられないほどの極小の世界を基盤とする存在。
そしてそれは創作世界の科学相手でも変わらないため、同じ【星の欠片】……それも
……え?わかり辛い?
んじゃまぁ雑に説明すると……要するに普通に検査してもそれが実際の数値なのか、ごまかしの入った数値なのか判別方法がない……ってこと。
まぁ見た目にも健康的だし、そういうごまかしのよくある例としての数値にブレがほとんどない……みたいなこともなかったから、今まで気付かれなかったんだろうけども。
「まったくだ。ASTとALTの比率だのγ-GTPの数値が健康な人間のそれより多いだとか、無駄に凝った偽装を施されているものだから気付くのが遅れたぞ」*1
「あー……ははは。まぁそこら辺は必要経費、ということで……」
本人的には、あんまり意識してなにかをしてたってわけじゃないんだけどね。
でもまぁ、酒飲みならこれくらいの数値にはなるだろう、みたいな調整をしてたのは事実です、はい。
とまれ、ブラックジャック先生がその辺りの小細工に気付いたのは事実。
それゆえ、数値的に健康であっても
何度も言うが、普通の人に【星の欠片】の状態を判別するのはほぼ不可能なわけだし。
「……つまり、この一件で貴方に劇的な変化があったとして、
「そうだけど……
「ふむ?」
その話を聞いて、横からアルトリアがこの話題の本質部分を突いてくる。
……要約すると、ブラックジャック先生はこう言いたかったのだ。倒れるような真似をしておいて、本当になにも問題はないのか、と。
確かに、周囲に絶対異変を察知されないのであれば、極論私が黙っていれば問題はない……という風に誤認させることもできる、ということである。
なので、医者である彼がその辺りを気にするのは当たり前だろう、ということになるか。
……まぁ、その辺りについては杞憂としか答えようがない。
確かに【星の欠片】相手でなければ隠し通せるわけだが、逆に言うと同じ【星の欠片】には──それも私より明らかに小さい相手には隠しようがないのだから。
そう、キリアが居る以上その辺りの話は正直気にしすぎ、としか言いようがないのだ。
例えばこう、キリアが敵側でこの世界の崩壊を望んでいる……みたいなパターンなら、唯一の対抗手段になりうる私の存在が機能不全になる、というのは寧ろ願ったり叶ったりであるため黙秘・ないしごまかしに荷担することもあるかもしれないが、生憎彼女はそういう役割を負ってはいない。
この世界における彼女は傍観者・ないしは助言を与える役であるため、例えば彼女に私の様子を詳しく尋ねれば、一切の抵抗なく全てを詳らかに教えてくれることだろう。
……その仮定で本来一般人が知らない方がいい知識、みたいなものが出てくる可能性はあるが……まぁ誤差だよ誤差。
「……因みに、好奇心から尋ねるのですが、この場合の知らない方が良い知識とは?」
「これから数日後に貴方は太りますよ、とかの助言?」
「!?」
いやまぁ、これは冗談……とも言い辛いか。
千里眼のようなものも使えるのが彼女なので、その複雑な視座から放たれる言葉が純粋な忠告かどうかはまた別……みたいな。
例えばこの『太るかもよ?』という忠告も、その実それが起因で自身の動きが鈍り、どこかで致命的な隙を作るきっかけになるので触れた……みたいな可能性もあるわけだし。
とはいえ、彼女の見る未来はあくまでも予測の類い。
どこぞの世界のように見た未来を
……話を戻すと。
例え私が隠し事をしていたとしても、その隠し事が致命的ななにかに繋がるのであればキリアは決して秘密にはしないだろう。
そして別に致命的ななにかでなくとも、聞いた相手が相応の対価を用意するのなら普通に教えてくれる可能性はとても高い。
そういう意味で、今の状況で私が嘘を付いたり隠し事をしたりする可能性は限りなくゼロである、ということになるのでしたとさ。
「……
「ははは……」
……うん、今アルトリアが含みを持たせたことでこちらに気付いていることを知らせたように、双方の視点で必要だと思われる場合はその限りではない……というのも本当だったりするわけなのだが。
とはいえそれも今回のパターンには当てはまらないので問題はない。
さっきも触れたように、今回私がぶっ倒れたのは使えるはずだけど使ったことのなかったものをぶっつけ本番で使ったから、というところが大きいわけだし。
「わかりやすい例だと……眠ってた魔術回路を叩き起こした、みたいな?」
「……ああなるほど、シロウのように、ということですね?」*2
こちらの言葉を聞いて、納得したように頷くアルトリア。
そう、今回の私が倒れたのは私の存在が変質したとかの重篤な理由ではなく、本来持ち合わせている技能を実際に使用してみたら思った以上に負担が大きかった、というところが大きい。
というか、仮に私が変質するとすればそれは
なにせ試練を受けなきゃいけないわけだし。
……と答えれば、何故か二人とも微妙な顔をしていたのだった。