なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……その表情はどういう感情なので?」
「むざむざと不健康になろうとする相手に付ける薬はなんだったかな、という顔だよ」
「むぅ」
さて、相変わらずベッドの上からお送りしているわけなのですが。
これまでの話を聞いた二人はというと、なんとも言えない仏頂面をこちらに向けてきていたのでした。
……まぁうん、ぶっ倒れた人間が再度ぶっ倒れに行くと言っているようなものなのだから、これが他人の話なら私も止める側に回っていたところだろう。
無論、今回に関しては私がぶっ倒れる側なので止める気も止まる気も一切ないわけなのですが()
というか、止めさせてくれないだろうし……みたいな?主に
「こちらとしてはその当人達に文句の一つでも投げてやりたいところだが……無意味なのだろう?」
「人格相当の物を持ち合わせてはいるけど、その実【星の欠片】はみんな現象そのものみたいなものですからねぇ」
はぁ、とため息を吐きながら愚痴を溢すブラックジャック先生に対し、私はそう答えを返した。
根本的には【星の欠片】って、本来精神らしきものすら砕けて消えてるはずの存在だからねぇ。
偶然と必然の繰り返しで意識があるように動いているだけだから、ある種の哲学的ゾンビみたいなものというか。
……まぁ、その原理自体現行科学では全く解明できたモノではないので、真実心がないと言い張ることも難しいんだけども。
その辺りは実際の哲学的ゾンビの証明問題とは逆、みたいな?
ついでに言うと、それが正解なら説明が難しいのが三例ほど存在することになる、というのも問題だろうし。
「三例と言うと……」
「私でしょ、ユゥイでしょ、オルタとアクアでしょ。……ほら、三例」
それは一体誰を指しているのか、とでも聞きたげなアルトリアに、具体例を挙げて説明する私である。
まずはなにを隠そう私。唐突にトップスリーに叩き込まれたものの、それゆえに色々追い付いていない感のある期待の()ルーキー。
そもそもが『逆憑依』であることも交え、真っ当な【星の欠片】と見なすのは難しい特例だと言えるだろう。
その次、謎の状態で暗躍する私の義理の娘・ユゥイ。
どうにも『逆憑依』の原理的にもおかしなことになっているようだが、それを抜いても【複合憑依】の【星の欠片】なので特例も特例というか。
……【星の欠片】なのに明確に自分の欲を優先しているように見える、というのも特異的な部分だろう。
そして最後、本当の意味でのニューカマー・期待の新星。
それがオルタとアクアのジャンヌコンビ。彼女達に関してはなにもかもオリジナル()な私やユゥイと違い、版権キャラに【複合憑依】と【星の欠片】がくっついている……という点において、前者二例に負けず劣らずの特例組である。
彼女達もまだ自身の【星の欠片】との同期が上手く行っていないため、このあとの展開によってどうなるかはまだ予断を許さないとも言えるが……まぁなんとかなるんじゃないかなー、というか?
……いや、別に適当なことを言ってごまかしているとかではなく、一応まがりなりにも『星女神』様のお膝元に行って戻って来てる実績はあるわけで。
ならまぁ、『月の君』様の元に向かってもいきなり酷いことになる、みたいな可能性は限りなく低いと見ていいと私は思う。
「その三例が特別なのはやはり……」
「まぁうん、『逆憑依』だって点だよね。外側の変化を決して中に浸透させないというか」
あれこれ挙げたものの、やはりこの三例が特別である理由はただ一つ、私たちが『逆憑依』であることにあるのだろう。
本来の【星の欠片】はその人が持つ可能性の全てを無に帰した結果たどり着くもの。……にも関わらず、私たちは核という形でかつての私たちを何処か違う場所に避難させている。
それは見方を変えると、【星の欠片】の成立条件を満たせていない──失うべきものを失わないままにその場所に立っている、ということになるわけで。
っていうか、数多の因果を一時的に無にする『星解』発動下でもその辺りのリンクが切れない辺り、なんというか真っ当なもんじゃないでしょこれ感が更に強まったようにも思うのだ。
……いや、これに関しては私がやる前、『星女神』様が検査のために使った時点で気付いていたことではあったのだけれど。
「……
「そういうことですね。……まぁ、『星解』は因果切断ではなく因果を解すもの──
「ふむ……?」
とはいえ、単に『星解』を受けて無事だった……というだけでは正確な判別はできない。
本来『星解』は因果を断つ──繋がっていたものを無理矢理切り離すものではなく、あくまでも自然の流れとしていつかは離れていくモノを今、
分かりやすく言えば、洗濯ばさみの持ち手を握っただけ、みたいなものなのである。
そこに挟んであるものを退かすわけではなく、あくまでも挟まれていたものを自由にしただけ。
特になにもしなければ、そこにあるものは再び挟まれる──元の因果に立ち戻るだけなのだ。
なので、調べることだけを目的とした『星女神』様の『星解』が例え『逆憑依』の核との繋がりまで解していたとしても、
……正確には
その微妙なニュアンスの違いは、私が無理をしてでも『星解』を発動したことと無関係ではない。
……というか、『逆憑依』における核との繋がりにまで干渉できていたのならば、こうして私がここにいることは無かったのだ。
「その場合、キーアではなく
「その通り。あの時の『星解』の発動祈念は『全ての異常の正常化』。だから彼──メレオロン*1さんは透明化を解除されてたし、五条さんも対応できなかった」
何故ならば、あの時私が発動した『星解』の目的──対象は、自然ならざる全てのもの。
言い換えると、あの場で能力を発動していたり
なので、『逆憑依』という明らかにおかしな状況は、真っ先に正常化されるはずだったのだ。
しかし、結果はどうだ。
確かに正常化は為された。デフラグやデバッグは終わりを告げ、おかしなものは正しいものへと置換されたはず。
……にも関わらず、私たちは未だなお『逆憑依』であり続けている。
どころか【複合憑依】が混ざっているせいで不安定な面すらあったオルタ達が元気になっている……みたいな、本来そうはならないはずの出来事まで起こっている始末。
これはすなわち、【星の欠片】の影響範囲よりも遥かに小さいか、もしくはこちらの知る現象とは全く別のものを起因として発生している現象だと仮定するより他ないのだ。
「言い換えると全く未知の現象、ってこと。こうなるともうお手上げだね、『逆憑依』を発生させた存在の善性は信じてるけど、逆にもし善人じゃなかったら、私たちは対処も対抗もできないまま相手の思う通りに動くしかなかった……なんてことになりかねないし」
「相手の目的がわからない……というわけではないからこそ問題、ということですね」
「だねぇ」
ある意味、『ぼくのかんがえたさいこうののうりょくたいけつ』みたいになっているというか。
救いがあるとすれば、そういうのによくある他者を軽んじるモノはない、ということだろう。
一応、『逆憑依』が本来失われる
……まぁ、それはそれでなんのためにこんなことをしてるのか、何故創作のキャラクター達を保護膜に選んだのか……みたいな部分に疑問が残るんだけども。
なんてことを宣いながら、私は起こしていた体をベッドに倒したのだった。