なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……滅茶苦茶暇なんだけど」
「でしょうね。まがりなりにも病院ですから、娯楽などはそう多くはないでしょうし」
はてさて、しばらく安静にしてないとダメ……というのは変わらないため、大人しくベッドに寝転んだ私なのだけれども。
……うん、見事に暇でやんの。テレビも有料だから気軽に見れないし。*1
どうせ暇なんだからとスマホでゲームでもしようかと思ったけど、ここ地下千階だから電話以外ろくに通じないし。
……いや、正確には電波というかwi-fiとかは飛んでるんだけども、この辺りで飛んでるそれは医療用のやつなので、仮に繋いだとしても何処かに繋がるわけでもない……というか。
そもそもパスワードわからんから接続のしようもない?それはそう。
「有線の方なら問題はないがね。無線の方に関しては別に……というやつだ」
「そこは普通逆じゃないの……?」
基本的には有線の方が信頼度が高いものなのだから、そっちを医療用に引っ張るものだと思うのだが。
そもそも医療現場で無線電波とか宜しくない、って話になりそうだし。*2
……ただこれ、どうにもここが隔離棟だから、みたいなところもなくはないらしく。
「結果として幽閉されているようなものですから、彼ら用に信頼度の高い設備は優先して回している……でしたか」
「まぁうん、処分じゃなくて保護のための隔離だもんね、ここの階層の住民……」
院内という閉じた空間だけで運用すればいい……というか、下手に外部との接続経路を用意しておくと、緊急時にハッキングでもされた日には目も当てられないことになる……。
みたいな、保安とか安全とかの面からスタンドアローンであることを推奨される、というのも病院のシステムの特徴である。*3
そこら辺を思えば、無線だけでシステムを賄えてしまうのもなんとなく納得できるというか……。
それと、今私たちが触れたように『この階層に住まう人の種別』というのもポイントであると言えるだろう。
彼らは罪を犯した結果としてここにいるのではなく、他者との不用意な接触が不幸を発生させる可能性がある──言い換えれば彼ら自身に過失は未だないにも関わらずここにいる……という、ある種の不当な幽閉状態にあると解釈することもできる。
なので、こうして幽閉してしまうことの代わりに外の情報くらいは得られるように配慮する……みたいな対処になるのは寧ろ当然の結果、みたいな感じになるのだ。
……まぁそれと、地下千階にもなると無線での地上との通信が無謀の域になる、みたいな部分もなくはないだろう。
ただでさえ、有線だとしても地上との距離が長すぎてちょっとラグるのだから。*4
「仮に一階層二メートルと考えても、単純計算で二キロ。その程度なら意外とどうにかなりそうにも思えますが……その実この計算は、各階層が建築基準法に準拠していることを前提としたもの。ご存じの通り、各階層が二メートルそこらで収まるかと言われれば否、ですものね」
「あさひさんのところとか、擬似的な宇宙まである*5からね……」
一番空が高い(=距離が長い)のは、恐らくあさひさんのとこの草原になるのだろうが……他の階層だってそれに負けず劣らずの高さを誇る。
無論、有線だからと言ってそれらの距離をまっすぐ突っ切っている……というわけでもない(時空間操作技術によるショートカットなどが採用されている)が、それでも思った以上に長い距離を
それゆえ、特になにも考えずに外のサイトとかにアクセスしようとすると、それなりのラグが発生するのである。
具体的には……物にもよるけど最短で一秒以下、最長ならば三十秒以上……みたいな感じに。
無論、単に調べものとかをするだけならページが表示されるまで待てばいい、というだけの話になるけど……動画を見るとかゲームやるとかしようとすると途端に悲惨なことになる、と。
郷内での通信だけなら別に無線でも問題ないんだけどね。そのための専用端末だし。
「確か……通信システムにユカリのスキマを利用しているのでしたか?」
「いわゆる5Gならぬ5Sってやつだね。『第五世代スキマ通信システム』」
今現在私たちが使っている通信端末は、実のところ当初のそれとは代替わりをしている。
理由は幾つかあるが……大きいのはゆかりんがスキマを自在に操れるようになったこと、及び郷内が広大になりすぎたため、通信に更なるラグが見られるようになったことになるだろう。
この場合のラグとは、地下千階にあるこの場所だけに留まらない、他の階層でも起こるものの話になる。
……さっきも触れたが、階層ごとに高さ──距離が全然違ったりするのがこの場所。
その上、いつの間にか人が増えていたりすることがあるように、
こっちに関しては滅多に起きないことだが……一回、一階層全部機械文明みたいな場所が突然現れた*6ことがあり、それに伴って旧式の端末は通信障害を起こすようになったのである。
多分、件の階層が中途階に突然現れたせいで電波妨害の壁を作ってしまった、というのが理由なのだろうが……ともかく、これでは無線通信などろくに使えなくなってしまった、というのも確かな話。
そういうわけで、通常の空間とは別の場所──迂回路としての利用にスキマ空間へ白羽の矢が立った、というわけなのであった。
無論、これはゆかりんのスキマ操作技能が上がったからこその手段。
そしてまだその技能には伸び代があるため、劇的な改善がある度に世代が積み重なってきた……と。
現行の通信規格は『第五世代スキマ通信システム』──通称5Sだが、既に次世代通信規格についての検討が重ねられている段階である、とのこと。
……まぁ、実際には外の通信規格をなりきり郷用に落とし込んでいる、みたいな部分もあるみたいだが。
そういうわけなので、単に通信することを優先するのならば、wi-fiではなく通常回線を使えばいい、ということになるのだけれど……。
「その場合はギガがね……」*7
「郷内の通信は無料ですが、外へとアクセスするとなると普通に通信料が必要になる……ということですね」
うん、そこら辺は普通の端末と変わらないというか?
無線を使うのなら無料でいいが、通常の通信は普通に通信料を取られる形になるため、使いすぎると通信制限を食らったりするのである。
一応、郷の内部に電話を掛けたりそこにあるサーバーにアクセスしたりする分には、料金は掛からないんだけどね。
でもまぁ、スマホゲームとかは普通に外のサーバーにアクセスする形になるので、下手に無線を切ると一瞬でギガが消滅するので注意が必要……と。
いやまぁ、オンライン対戦系のゲーム以外なら、その辺りのことは端から念頭に置いた上でシステムを組んでいるため、意外と通信料は取られないのだけれども。*8
……まぁともかく、色んな意味でここから外のゲームに触れる、というのはハードルが高いというわけなのであった。
「なのでこうしてソリティアに励む、と」
「……一人でやってるよ、とでも言えばよいのでしょうか?」
「それ遊☆戯☆王ーっ!」
結果、一人でトランプを遊ぶ羽目になった、というわけなのである。
……可哀想なモノを見る目で見るんじゃねぇやい!!