なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・第一関門のお知らせ

「これが噂の柱ってことね」

「見た目はなんの変哲もない大きな柱って感じだね」

「なにか飾りがある、とかじゃねーんだな」

 

 

 みんなが口々に好き勝手な感想を溢すも、目の前の柱は特に反応を返すこともなく佇んでいる。

 第一の柱──通称『想起の柱』は、その名の通り『想起』させるものなのだが、とはいえそれが世間一般のそれと同一であるかと言われると首を捻らざるを得まい。

 

 

「……んん?どういうこと?」

「単純に単語について考えると『想い起こす』ってことになるでしょ?……でもこれ、【星の欠片】がその形を細かく砕く(次の形に進める)ためのものなわけで……」

「ふむ……原石から宝石に加工するようなもの、ということか」

「そうそう、そんな感じ」

 

 

 この柱というのは、何度も言うように【星の欠片】にとっての試練である。

 そしてその試練と言うのは、【星の欠片】がその深度──どこまで己という存在を(かい)すことができているか、ということを問うもの。

 結果としてその深度に到達したと認められるだけで、柱そのものは単なる加工機械のようなものでしかないのだ。

 

 ……となれば、そこに込められた『想起』というのが、単に『想い起こす』ことだけを示すものなのか?……という疑念が湧くのも自然な流れといえる。

 

 

「で、その疑念の答えと言うのが──」

「込められた意味は、正確には想いを()()()()()こと。私たちはそれを『掌握(Cultivation)』と呼ぶわね」

「かるてぃべーしょん?」

「確か……耕作だとか栽培だとかの意味を持つ英語だね。にしても掘り起こす……掘り起こすねぇ?」

「自身を穀物と捉え、それを収穫する……というイメージかのぅ?」

「そうそう」

 

 

 ご存じの通り、【星の欠片】というのは様々な場所に人知れず存在するモノである。

 とはいえ、目覚めたばかりの【星の欠片】は()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということを直感的に感じとることができない。

 

 ……全てが等価値(どれも主人格)であるのだから、自身が目覚めたところで他の自分(星の欠片)が目覚める保証はない……というだけの単純の話だが、このままでは無限数としての本領を発揮できないのもまた事実。

 寧ろ、大半の【星の欠片】とは他の自身の認知すらできず、単なる小さなものとして消費されるのが常ですらあるのだ。

 

 それらは単に『欠片(dust)』と呼ばれ、こんな場所にまで堕ちて来なくてよかった……なんて風に他の【星の欠片】から喜ばれることもあるのだけど、その辺りは話がずれるのでここでは割愛。

 

 重要なのは、この柱──『想起の柱』はそういった『欠片』達を【星の欠片】へと砕く(堕とす)モノである、ということ。

 そしてそのために行われるのが、あらゆるモノに含まれる自分(星の欠片)の認知である。

 

 

「あらゆる全てという大地に眠っているモノを()()()()()という意味と、自身という存在がどういうものなのかということを()()()()()という意味。その二つが合わさった結果、この柱には『想起(Cultivation)』の名前が与えられているってわけ」

「なるほど……ってん?確かキーアさん、柱のことなにか別の名前で呼んでなかった?」

「おおっと、そういえばあの時の詠唱は性質的にルビも地の文もどっちも認知できてて当たり前なのか……」

 

 

 本来は小さな世界で微睡んでいる他の自分を叩き起こし、自身が無限数であることを思い出す……それがこの柱によって引き起こされる事象。

 まあ、その際に『他の自分』などという不確かなモノを認知するために一回生き物としての生を捨てる、みたいな仮定を挟む必要があるのだけど……。

 これに関しては【星の欠片】になった時点で気付かずとも行われている自然の摂理のようなものなので、どちらかと言えば『思い出す』に相当するものと言えなくもないかも?

 

 ……などと説明していると、五条さんが不思議そうに尋ねてくる。

 その内容は、以前私が『星解』を使った際の詠唱文についてのもので。

 ……そういえばあれって原理的には『統一言語』とかと同じものだから、音節だけでなく意味ごと聞こえててもおかしくはないのか。

 そうなると、『想起の柱』そのものの呼び方が『Cultivation』ではない、ということに疑問が及ぶのもおかしな話ではない。

 

 

「この辺りはちょっと複雑なんだけど……『想起の柱』って呼び方自体がある意味後付けなんだよね」

「……んー?どういうこと?」

「【星の欠片】という存在にとっては『想起(Cultivation)』という概念の方が先にあって、それを引き起こす柱だから『想起の柱』って呼んでるってだけの話」*1

「……んー?」

 

 

 ……あーうん、わかり辛いか。

 じゃあこう言い換えよう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ、と。

 

 

「……ふむ?」

「もっと言うと、この柱に触れた後その先に進めたのなら『特定の位階に到達した』と認める……って視覚的に分かりやすくするために生まれたモノであって、元々はそんなわかりやすい指標なんてなかったんだよ」

「……資格のカード代わり、ということか?」

「運転免許証みたいなもの、と言い換えてもいいかもね」

「なんだか一気に俗な話になったわね……」

 

 

 私たち【星の欠片】に対して与えられる試練の内の一つの名前が『想起』であり、そこを越えたモノを呼び表す(称号)が別個にある。

 それが()()()()であるわけだが……同時に、試練である『想起』は【星の欠片】が力を奮う際の工程でもあるのだ。

 先の詠唱に含まれていた『掌握(Cultivation)』はまさにそれであり、ゆえにそちらと混同しないように──二つを呼び分ける必要がある場合、称号としての名を借り受けている……と。

 

 

「で、それが【星天彩具(monochrome)】。己という色を以て、天に輝く星を彩れるようになったと示すもの。……白黒(monochrome)でどうやって、と思うかもしれないけどその辺りは【星の欠片】的に()()()()()()()()()()()()()として選ばれた、みたいな感じだから気にしないでね」

 

 

 

 

 

 

「……単語が被らないように、と言うのならまた別の名前を与えるべきなのでは?」

「だからさっきも言ったでしょ、これに関してはそもそも最初は存在しないものだったから、便宜的にそう呼んでるに過ぎないんだって」

「むぅ」

 

 

 はてさて、以前の詠唱で述べていた『想起の柱(monochrome)』についての話はこれくらいにしておくとして。

 いや、説明責任を逃れているとかではなく。

 なにせこの話、このあと耳にタコができるほど繰り返す羽目になるだろうから。

 

 

「……はい?」

「流石にみんなはここだけで済むというか、なんかこう上手いことどうにかするんだろうけど……ショートカットが無い以上、どう足掻いても()()()()()()()()()()()()()()()()()わけで」

「……あー」

 

 

 流石に【星の欠片】ではない他の面々はなんかこう上手い具合にスルーさせて貰えるとは思うけど……私やオルタ達はそうもいかない。

 いや、オルタ達に関しては一先ず『想起』だけで済むのだからまだマシで、私の場合は残る二つ(Decomposition・anthesis)についての踏破を考えないといけないわけで。

 

 ……ついでに言うと、踏破そのものは免除されるとしても、そもそもショートカットが使えない以上、『月の君』様の元に向かうには柱を通らなければなんともならない……みたいなこともあり、結果的に『柱』についての解説のタイミングは都合三度ある、というなんとも言えない状態に陥っているのだった。

 その度に柱の話を一から全て行うのもあれだし、かといってここで全て話すにしても実物を前にした方が説明しやすい……みたいな意味合いもあったり。

 

 

「な、なるほど……まだ一本目なのか、そういえば」

「そうそう。で、前回柱を通ってないのにあれだけ精神的時間を浪費させられたことを思うと、必要な説明をその都度やるくらいならさっさと柱に挑むべきだってのはなんとなく理解できるでしょ?」

「それは確かに」

 

 

 また、もしここで子細とは言わず説明に時間を取られた場合、いつまで経っても『月の君』様に出会えない……なんて未来が幻視できてしまうのも理由の一つ。

 なので、今回の分の説明はここまでにしておき、私たち【星の欠片】組は試練に挑む前の最終調整に移ることにしたのだった。

 

 

「ふれーふれーキーアちゃん☆」

「……で、あれは?」

「【星の欠片】組だけど試練は既に受けてるから気が楽って感じでこっちの応援に移った薄情な母親」

「わぁ」

 

 

 なお、唐突にチアリーダーと化したキリアについては気にしない方向でお願いする。

 ……ツッコミしてる心の余裕なんてないんだよ察しろ!

 

 

*1
『想起の柱』という一単語ではなく、『想起』を引き起こす柱ということで仮に呼んでいるだけ、ということ。メガネみたいな形なので『眼鏡橋』と呼ぶが、その実橋そのものの名前は別にある……みたいなのが近いか

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