なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ぜぇー……ぜぇー……かひゅー……」
「おおうすっごい過呼吸。ほらゆかりん大きく吸ってー、吐いてー」
「死ぬぅ……その内死ぬやつぅ……」
どうにかこうにか柱を抜けてこっちにやってきたゆかりんだが、そのダメージはとかく甚大である。
まぁ、一番
比較的大丈夫そうなのは、最初にクリアした結果休む時間を十分に得られたきらりんくらいのもの、ということになるのだろうか?
そうは言ってもクリアできただけ僥倖……みたいな部分もなくはないと思う私なのだが。
そう、私のこの言い草からもなんとなく察せられる通り、ある程度時間は掛かったものの、他の面々も
この結果には、私たち先に試練を終えた組もビックリだったり。
……具体的には、メロオロンさん辺りはギブアップするんじゃないかなー、とか少し失礼なことを思っていたりもしたのだが。
当の彼はゆかりんに先行すること五分ほど前に柱を踏破し、近くで大の字になって寝転んでいたりする。
「ぜぇー……かひゅー……王に対峙した時くらいに緊張したが……なんとか……なったぜ……」*1
「あーなるほど、
どうやら、彼という存在そのものに刻まれた記憶──原作での恐怖が彼の足を先に進めた、ということになるようだ。
こういう時、元の作品で死ぬほどの目に遭った人は強いというか?
逆に今回が死の恐怖初体験だったりすると、躊躇したり足が止まってしまったりするのだろう。
……まぁ、今回の面々でその辺りの心配が必要だったのは、実のところ一番最初に踏破したきらりんくらいのものだったりするのだけれど。
「一緒にいるせいで調子が狂ってるけど、本来コイツって単なるアイドルだものね……」*3
「そういうオルタちゃんはこういうの得意そうだけど、意外とダメだったにぃ?」
「うううううるさいわね、私にも苦手なものの一つや二つあるわよっ」
なお、今しがたきらりんが突っ込んだように、オルタが意外とダメージが深かったのも事実。
……そもそも彼女自身成立過程が特殊なタイプなので、本人由来のそこら辺の耐性がいまいち発揮できてなかったのが理由じゃないかなー、というのがこちらの分析だったりする。
まぁ、その辺りの話は置いておくとして。
今回この試練が一番血肉になりそうな人物──五条さんがどうなっているのか、というのを確認するため視線を動かすと。
なんと彼、天を仰いで静かに涙していたのだった。……いやどういう状況!?
「……そうか、こんなにも単純なことだったのか」
「あ、あのー?五条さーん?もしもーし?」
「俺は全、俺は一、全は俺、一は俺。……限りなき繰り返しの果て、至るは大悟──慈悲は決して相手に与えるもの非ず、それは本来……」
「(それ以上はヤバいから)目を覚ませぇ!!」
「ほげぇ!?」
やだ、なんかヤバい宗教にはまった人みたいになってる……目を覚まさせなきゃ(使命感)
ってな感じに斜め四十五度からチョップを入れたところ、彼は「気軽に無限抜くの止めようよ……」と言いながら正気に戻ったのであった。
……無限抜く云々は前々からそうだったでしょ、というツッコミは置いておくとして。
「あのまま続けてたら、ゲッター線ならぬ【星の欠片】に導かれる羽目になってたよ?──具体的に言うと、
「あ?……あーうん、なるほど。ああいう感じなんだね、正規ルートでの【星の欠片】への変化って」
そうして正気に戻った五条さんへと、しっかり自分を持つように注意を促す私である。
……うん、さっきの彼はどう見ても私やオルタ達みたいな偶発的なパターンではなく、必然的に【星の欠片】になってしまった人達に見られる言動だった。
さっきも少し説明したが、『想起』の試練は【星の欠片】への覚醒……堕落?ルートと紙一重のもの。
それに対する心持ちを間違えれば、容易く転がり落ちてしまうものでもあるので、気を引き締めておかないとヤバいのである。
この辺りは、死への恐怖ではなく死への
「死への慣れ、ねぇ?」
「自他問わずに*6、ね。……そういう意味ではサウザーさんも危ない方なんだけど、あっちはギャグ世界の人間だから多少は補正が掛かった……みたいな感じになるんじゃないかな?」
「んー、やっぱり危険物なんじゃないの【星の欠片】って?」
そこを否定する術を私は持たないかなー。
……【星の欠片】は自身を矮小化する中で無限概念を内包するようになるのだが……その理由は『極小の概念を突き詰めると消失と生成との繋がりも見据えなければならないから』、というところが大きい。
ある一定
……『死に死を重ねる』ことで生きていると世界に誤認させるモノである『永獄致死』を再現できるようになることで、結果として『死を尊ぶ』感覚を養うことにも繋がってしまうのだ。
……分かりやすく言うと、死を殊更に忌避する理由がなくなってしまう、みたいな?
生と言うものの特別性を誤認し、結果として死に浸ることを間違いだと思わなくなってしまうとも。
普通の生命としてはその考え方は致命的であり、かつ自身の生を無価値と断じるモノでもあるので最終的に自身が本来納めるべき
なんにせよ、『想起』の試練を深く理解してしまうと、結果として『永獄致死』の下の位置に潜り込むことになってしまい、結果として【星の欠片】になる以外のルートが無くなる……と。
この辺りは言葉で説明しようとするとややこしくなる一方なので、『想起』の試練で満点回答を出してしまうと漏れなく【星の欠片】確定ルートであること。
及び、この試練で満点を出す前提条件は『死』という概念に対して忌避感が薄れていることである……ということを覚えておくと良いと思う。
……まぁ、この『死への忌避感が薄れている』というのは本来、自己の否定を積み重ねたモノが最終的に当てはまる条件であり、他者などに対してのそれとは向きというか方向性というかが違うのだが……そこら辺普通に混同
ともあれ、元々戦闘などによって『死』と近い存在は、『想起』の試練における前提条件を満たしてしまいやすいというのは確かな話。
そういう意味で、五条さんが色々と危ないのはある意味予測できた事態なのであった。
「でもまぁ、『月の君』様が認めてるというか推奨している以上、こっちに止める権利も拒否権もないんだけどね?」
「んー、前々からちょっと思ってたけどわりと邪神だねその人?」
「そもそも【星の欠片】自体大抵邪神みたいなもんなんだから、その極北である『月の君』様達が邪神じゃないわけがないからね、仕方ないね」
「なんという開き直り……」
なお、崖から飛び降りる(比較的ソフトな表現)のを止めるどころか寧ろ推奨するのって普通に邪神扱いもやむ無しでは?
……みたいなツッコミが五条さんから飛んできたが、こっちとしては返す返答はただ一つ、『そうだが?』でしかなかったりする。
うん、まともに起動すると特定の存在を王に祭り上げ、かつその存在にとって最良(※最良とは言ってない)の世界へと周囲を変革する……なんてはた迷惑極まる生態をしているのが【星の欠片】。
それも、その行動の原動力は自身のためではなく、『そうすれば人はもっと輝ける』とかいう余計なお世話以外の何物でもないモノなのだから、そりゃあ巻き込まれた側からしてみれば悪以外のなにに区分されるというのか、みたいな?
……で、その極致であるはずの『星女神』様が若干マイルドになっているのだから、彼女の対である『月の君』様がアレになっているのは予測できて然るべき、みたいな話でしてね?
「これからが私にとっての真の地獄だ……!」
「……あ、そっかこれより先はそもそも僕達触れないどころの話じゃないんだっけ?」
ゆえに、これからその横暴()をもろに受ける羽目になる私は可哀想、という話にも繋がってくるのでしたとさ。
……切に帰りたい……。