なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・最後の柱が今開く(クルーゼ並感想)

 あれやこれやと話しているうちに、ようやく最後の柱がその姿を見せる。

 

 最後の柱、精神についての試練を課すそれは、『断定(anthesis)』──もしくは『隆起(anthesis)』と訳されるもの。

 そして、柱としての名前は。

 

 

「【星鏡心樹(keel)】。星を鏡に、心を大樹に例えるもの。竜骨(keel)の名を持つことからわかる通り、【星の欠片】にとっては一番の基礎となる部分でもある」

「竜骨、ねぇ?」

 

 

 これは言い換えると、そこを操作する術を持たずともそれに寄り添ってはいる──それを前提に全ては動いている、と定めているということ。

 文字通りの基礎・基盤であり、迂闊に操作すれば自身の存在の根幹から崩れ去るような、基本的には触ることを忌避するような部分。

 ──それさえも恐れず触れてこそ、【星の欠片】は大成(anthesis)すると定める最後の試練である。

 

 

「なるほど……ところで、あんしすぃすって?」

「『開花』って意味の英単語だね。【星の欠片】としての全てを花開かせた、って感じになるのかな」

「ふぅん……?」

 

 

 耕し(Cultivation)解し(Decomposition)花開く(anthesis)

 小さな種を育てるように、【星の欠片】もまた手間隙を掛けてこそ大成するもの。

 そういう意味では、他の能力と大差ないとも言えるのかもしれない。

 

 ……まぁ、だからこそこうして余計な労力を割く羽目に陥っている、とも言えるわけだが。

 なにせ能力の原理がまったく別物であったのなら、少なくとも五条さん辺りが同行する意義は薄れていたわけだし。

 

 

「それそのものじゃなくて、考え方が応用できるからこそ学ぶ意味がある……みたいな?」

「敵を知る、みたいな方向性だと寧ろ邪魔にしかならないしね」

 

 

 悪戯に恐怖を煽るだけ、というか。

 ……何度か言うように、【星の欠片】は極小の存在。それをそのまま受けとると、こちらの対策という網を軽々すり抜ける極小の侵略者(インベーダー)、ということになってしまう。……端的に言って質が悪すぎる、というか。

 

 その性質上、対策はまったくもって無意味。

 なにせ方向性が今まで人が出会ってきたモノ()と違いすぎる。

 打ち倒す(撃退する)ために打ち倒すと寧ろ不利になる(悪手)とか、まず引っ掛からないほうが珍しい地雷だろう。

 

 その上、あらゆる場所から突然生えてくる、などということも可能。

 ……全てのものに含まれている、という性質を真面目に考えると籠城も無意味になるのだから、この存在を知ることによる恐怖──いつなんどき自身が奴らに食い殺される(なってしまう)かわからない、というエイリアン・パニック染みた恐ろしさに押し潰される可能性の方が高いと言えるだろう。

 

 ……実のところ、【星の欠片】は人間に対して敵対的どころか友好的ですらあるのだが。

 とはいえそれもまた程度を知らず、友好的過ぎて()()()()()()()()()()()()()()()、なんてヤンデレ以外の何物でもない発露の仕方をするかもしれない……いや寧ろそれが正規ルートみたいな相手だと知れば、それはそれで恐怖でしかないかもしれない。

 

 ともかく、変に彼らの知識だけ得ても良いことはないわけで、そういう意味では深く関わらず学べるところだけ持っていく、くらいが丁度良いように思われるわけである。

 ……深く関わらなくても、【星の欠片】的には自分から得た知識で道を切り開いて行く姿を見るのは好ましいわけだし。

 

 

「過保護ではないんだよね。とかく人の選択を後押ししたくて仕方がないってだけだから。……限度を知らないから迷惑がられるわけだけど」

「それについては身近に例があるのでなんとなくわかります」

「……キリアのことだよね?あれなんで視線を逸らすの?なんで???」

 

 

 ……私、別にみんなに親切の押し売りなんかしてないと思うんだけど?

 え?死ぬようなトラブルが飛んできたらまずその身を(てい)すのは良くない?いやほら、それは私の場合死が軽いというかなんというか……。

 あ、はい。命懸けで相手を守るのはある意味では暴力だと、はい、はい……ええと、その通りにございます……。*1

 

 ……おかしいな、なんで『隆起の柱』についての解説をしてただけなのに、私が責められる流れになってるんだ……?

 いやまぁ、ゲームでマシュが蒸発したシーンを例えに出されては、私としても納得せざるを得なかったのだけれども。*2

 

 ……ええい、とにかく最後の試練である。

 気合いを入れ直す……もとい、ここが全ての終着点のつもりで気合いを入れろと皆に告げた私は、再度柱になにか張り付いていないかを確認し──見事、()()を見付けることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

「また付箋、じゃのぅ」

「今回はなんと書いてあるのだ?」

「………………」

「さっきよりもさらに渋い顔!?」

 

 

 はてさて、再びの付箋──恐らくは『月の君』様からの伝言を見付けたわけだけど。

 そこに書いてある内容を見た私は、思わず周囲にこれ以上ないくらいの仏頂面を晒していたのだった。

 

 ……いやだって、ねぇ?よもやよもやというか、まさかまさかというか。

 うんまぁ、()()は確かにそういう性質もあるし、()()()と同じで他の人にも使えるだろうけどさ?

 

 

「……ここに来て、唐突に勉強タイムを挟み込まれることになるとは思わなかった」

「はい?勉強タイム?」

「ん」

 

 

 こちらの言葉に「なんのこっちゃ?」とでも言いたげな視線を向けてくる周囲の一同に、私は付箋に書かれた言葉を見せることで答えとする。

 そこに書かれていたのは、『試練の前に皆に【俯視】を授けること』という文字。

 無論、唐突な新単語の登場にみんなは疑問符を頭上に浮かべていたわけだが……。

 

 

「『神断流』ってあったでしょ?【星の欠片】だけど誰にでも扱えるってやつ」

「ああ……オルタちゃんに付与してアクアちゃんをぶん殴ったやつね」

「言い方ぁ」

「……よくよく考えたら、あの時のメンバー半分くらい揃ってるのねここ」

 

 

 それが以前彼らも触れたことのあるもの──『神断流』と似たモノであることを告げると、なんとなく得心がいったのか小さく頷き出したのだった。……一部だけ。

 まぁ、それも仕方のない話。ミラちゃんを筆頭に、互助会メンバーは初めて触れた単語・概念だろうし。

 なのでその辺りをちょっと説明したところ……、

 

 

「突然ミラちゃんが興奮し始めた件について」

「……そういえば、未知の技術に興味津々なタイプなんだっけ、その子」

 

 

 聞いたこともないスキル系統ということもあってか、ミラちゃんが『全部覚えるー!!』と突然駄々をこね始めたのだった。

 ……いや全部て。*3道具としての性質が強い『神断流』とはいえ、上位の技は使えるようになるには相応の鍛練が必要なんやぞ?*4

 まぁ、SAO(ソードアート・オンライン)におけるソードスキルのように、ある程度の動作アシストはあるわけだけども。

 

 

「と、いうと?」

「例えば射撃武器系統の技を纏めた式──いわゆる流派に相当する一群があるんだけど、その中に『鷹狩(たかがり)』って技があるのね」

「初出情報をポンポン出すの止めない?」

「例えがないと分かりにくいでしょ?……まぁともかく、この『鷹狩』ってのは端的に言うと障害物を避けて相手に当てる射撃方法のことなのよね」

「……ふぅん?」

 

 

 なんのこっちゃ、と問い掛けてくる五条さんに対し、私は『神断流』の技の一つ──『鷹狩』を例にあげて解説する。

 この技は障害物の向こうに隠れた相手を射つための技だが、その実()()()()()『鷹狩』の場合はそこまで大それたことはやってないのである。

 単に相手が何処に居るのかを予測し、それが何処から出てくるのかを予期してその予測地点に()()()()、みたいな感じというか。

 

 ……高度な予測演算を必要とするとも言えるが、その実そこら辺を補助してくれる技も『神断流』には存在するため、字面ほど不可思議なことをしているわけでもない。

 そもそも『神断流』自体が『原型保護』とか掛かりまくってるから、その演算に必要なリソースとかは肩代わりしてくれるし。

 

 とはいえ、これだけだと例に挙げるのは微妙なので……派生技である『白鷹狩(しらたかがり)』の方に話を移そう。

 

 

「……派生技?」

「同系統の技で動きや効果が違うものだね。格ゲーとかで追加入力すると性能が変わる……みたいなのあるでしょ?ああいうのだよ」*5

「ああ……ヴォルカニックヴァイパー*6とか?」

「そうそう、そういうの。……で、『白鷹狩』の場合は予測射撃じゃなくて()()()()()()()()()相手にヒットするんだよね」

「……???」

「そんな脳が理解を拒んでいるような顔をせんでも……」

 

 

 いやまぁ、基礎技が単なる技術の範囲に収まりそうなのに、派生技は明らかに物理法則とか無視してたらそういう反応になるのもわからんでもないけど。

 ……でもまぁ、この辺りは『神断流』が()()()()()()()()()という性質を持ち合わせていることを思えば、なんとなく理解もできるかもしれない。

 

 

「で、その逸話を再現するために、使う人間の方もその時の動きをなぞらせる──言い換えるとシステムアシストをしてくれるってわけでね?」

「なるほど……確か神への奉納物、みたいな意味合いもあるんだっけ?つまりその流れで動きそのものが一種の儀式化していると」

「せーかい」

 

 

 まぁ、単に動きをなぞるだけだとシステムアシストは発生せず、それらを為した人のことを学んだり、はたまた鍛練によって必要な技量値を満たすことによって初めて発動ができるようになる……みたいな部分もあるのだが。

 ……この話で諦めてくれれば良かったんだけど、ミラちゃんは余計に技習得に熱意を燃やし始めたのだった。うーんこのスキルマニアめ……。

 

 

*1
自己犠牲系ヒーローにぶつけるべき言葉。『目の前で傷付きながら自分を守っている』という姿は色々と精神面で衝撃的すぎる、ということ。特にそうして守ってくれている相手が自身にとって大切な存在である場合、『傷付いている相手になにもしてやれない、どころか自分という存在のせいで傷付けてさえいる(=自分がこの場に居るので守らざるを得なくなっている)』という解釈ができる為、とても精神に宜しくない

*2
先の『自分を守るために傷付く人』の一例。地表を焼く大熱量を前に盾となった少女は、ただ一人の先輩を守るために全力を尽くし、見事にそれを成し遂げたが──

*3
前も述べたが、派生も含め『神断流』は五百以上の技がある

*4
いわゆる奥義の類い。『テイルズオブ』シリーズの如く『秘奥義』相当の技も存在するが、そこまで行くと習得難易度もかなり上がっているし火力もおかしくなっている

*5
わかりやすいのは『波動拳』と『灼熱波動拳』か(両方とも『ストリートファイター』シリーズより)。見た目はほぼ同じだが後者の方が少しコマンドが複雑になる代わり、ヒットした相手を燃やすなどの効果がある

*6
『ギルティギア』シリーズの主人公・ソルの技の一つで、いわゆる『昇龍拳』枠(=対空必殺技)。追加コマンドを入力することで叩き落としたり殴り飛ばしたりする

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