なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……え、無為転変みたいな効果しておいて、防御不可なのこれ?」
「一応魂を認識できるのなら触れられているな、みたいなのはわかるけど……そもそもその人だけの
「うわぁ……」
相手の持つ常識を知らなければ、一体なにを防げばいいのかがわからない。
されど、相手の持つ常識を知るということは、その常識に汚染される──言い換えるとその相手になってしまう。
多重の意味で回避不可、防御不可。
それこそが【俯視】と呼ばれるものなのであった。
……ただまぁ、それだけだと単なるクソ技なので、回避の手段が一つ。
「位階が【星海烙印】──魂の区分であること、また即座に影響が出るというよりは、徐々に反応していくというのが正解だから……魂の知覚ができて、かつそれに触れてなんとかできるのなら変化を相殺する、みたいなことはできるよ。それこそ【俯視】より
「あ、一応なんとかはなるのね、なんとかは」
「まぁ、対処療法みたいなものだけどね?」
一応、【星の欠片】でなくとも魂を操作できる存在ならば、受けた影響を排除することは難しくない。
……そういう意味で、【俯視】の一番の恐ろしさはその手軽さ、ということになるのかもしれなかった。
「無為転変級の干渉手段を、今さっきのきらりん達みたいにさらっと入手できるわけだからね。そりゃまぁ、色んな意味で覚えておいた方がいい……みたいな気分になるでしょ?」
「確かに。知る前ならともかく、知ったあとだとこんな危なっかしいけど使いでのあるもの、覚えないわけにもいかないなって気分にもなるね」
本来、一部の存在が自身の力を高めた結果として覚えられるような、そんな高等技能を一瞬で獲得できてしまう。
……その利便性と恐ろしさは凄まじく、見たことも聞いたこともないのならともかく、知ったあとに知らぬふりを貫くのは不可能だと断言してしまっても問題ないだろう。
だって、【俯視】以外の手段は遅きに失しすぎる。
初めから──それを知る前から扱えていたのならともかく、そうでない人間が魂の知覚・およびその先の魂の操作など覚えようと思えば、それこそ何年掛かるかわかったものではないだろう。
いや、ともすれば数十年・数百年掛かっても覚えられないかもしれない。
そう考えると、扱い方を誤ると危ない技能であるとはいえ、かなり手軽に魂への干渉手段を得られる上に、ともすれば
「……ん?ちょっと待った、他の技能にもなんか影響あるの?」
「あるよー?さっきも言ったけど【俯視】によって増えるのは、正確には新しい
「!?」
さっきのきらりんがわかりやすい。
防御不能というのは結局のところ、他の相手への触れ方が
光や音・触感のような五感とはまた別の認識手段が増えたからこそ、それがなんなのかわからない相手には遮ることができないというだけなのである。*1
なので、肉の体を突き抜けて病気の原因となる部分に直接触れることもできる、と。
そして、人の持つ能力というのは、それらの五感や拡張された感覚を通じて発揮されるもの。
感覚という経路を使って相手に触れるもの、とも言える。
つまり、【俯視】の影響下で生来の能力を使った場合、その経路を使って相手に触れることができるようになるのだ。
「例えば、ツボを押す時って皮膚の上から触れるものでしょ?なに言ってるんだって感じだけど。でもそれってツボと皮膚の間にある筋肉とかを無駄に刺激してしまう、ってことにもなるよね?──でも、【俯視】と併用すると、ツボそのものだけを刺激する、なんてことができるようになる」
まぁ、ツボというのはその周辺の区域全てを指すことも多く、特定の方向から纏めて刺激することで初めて効果を発揮する……なんて場合もあるので、単にツボがあるだろう場所だけ触れても意味はない、なんてこともあるかもしれないけれど。
……そういう意味では例えとして不適切なのだが、わかりやすさ重視ということで……。
まぁともかく、【俯視】は新しい常識を視る目と、それに触れるための権利を与えるもの。
それに対する触れ方を指定するものではないので、本人のやり方次第では色んなモノに応用できるのである。
例えば、矢を射る時に【俯視】で相手と経路を繋ぎ、それを通すことで百発百中……みたいなことだって、あっさりとやれてしまうだろう。
「……なるほど。つまり僕の茈を絶対当たるようにすることもできる、と」
「なんなら範囲そのままで特定の相手にだけ当たる、みたいな風にすることもできるよ。術式には手を加えずに」
「うへぇ」
ことの重大さがわかったのか、思わず苦笑いしながら天を仰ぐ五条さんである。
……本来当たる相手を限定する、みたいな追加効果を付与する場合、通常の手段では様々な縛りを設ける他ない。
繊細な呪力操作を行える五条さんと言えど、攻撃力や範囲を減衰させず・かつ無関係な相手だけ避ける……みたいな感じに術式を操作するのは、骨が折れるどころの話ではないだろう。
領域展開などであれば、そもそも範囲内無差別であるからこその効果とも言える以上、そんな付与効果は端から付けられない……なんてパターンも有り得なくはない。
──そんな無謀を、【俯視】はあっさりとクリアする。
この世界で自分にだけしか触れられないモノであるため、縛りもなにもない。
単にいつもの延長線上で、触りたくなければ触らなければいいだけのこと。
そこに難しい理屈は存在しない。
なので、例えば【俯視】の影響有りの状態で『無量空処』を使った場合、
……
「……なるほど、領域展開をさせないための非術師の壁、更には仮に敵のみを領域内に閉じ込められたとしても、そうして領域を逃れた非術師は外に張られた帳との間に挟まれ圧死する……という、あの時の呪霊側の対策が全て無に帰すのか」
「敵を見付け次第【俯視】の上から『無量空処』張ればそれで済むからね。なんなら【俯視】の方の必中・防御不可は真人じゃないと気付けもしないから、領域展延とか簡易領域とかも無意味な可能性大だし」
「うわぁ」
あの時の相手側の策が悉く無価値となるため、恐らく白目を剥く他ないだろう。
というか、魂に対して直接『無量空処』を叩き込むみたいな扱いになるだろうから、受ける影響も甚大になる可能性大というか。下手するとそのまま祓われない?
で、その上で足止め効果は全くなし。
まさしく路傍の石を蹴飛ばすが如くあっさりと乗り越えられてしまうため、羂索は「キッショ」なんて言う余裕もないはずである。
……唯一(羂索側に)救いがあるとすれば、【俯視】は魂でモノを視るものの、基本的には視界に準ずるもの。
その時点で視界に入っていないモノを捉えるには視界以外のなにかで視る必要性があり、そうした場合初回の『無量空処』では羂索が範囲外となる可能性が高い、ということだろうか?
「あれ、そうなの?」
「【俯視】で周囲を避けるとは言ったけど、その実やり方としては【俯視】で必要な相手にだけ当てる、の方が正解だからね。ってことは、目の前の呪霊達の対処を優先するわけだから、それより外の相手にはそもそも当てないように、って感じになるわけ」
「……そっか、渋谷駅全域にすると他の呪術師も対象になっちゃうもんね」
なので、領域展開といいつつ狙った相手だけに領域効果を発揮する全く別の技術になっている、みたいな?
だから、仮にそういう状況になった場合羂索は五条悟が生きている限り無理、みたいな思考になって死ぬまで影に潜む……みたいな方向に舵を切るだろう……ということになるか。
まぁ、お目当ての術式持ちである真人を必然的に見捨てる形になるため、彼が再び暗躍し始める……
ともかく、【俯視】の利便性と恐ろしさはその人が持つ技能如何によっては何倍にも膨れ上がる。
その効果を知れば、多少のデメリットがあっても覚えたい・使いたいと思ってしまってもおかしくない……というわけなのだ。
「まぁ、だからこそデメリットの方を先に説明して置くことで、可能な限り覚えることへの忌避感を抱かせるわけだけど……」
「わけだけど?」
「……今回、『月の君』様直々にここにいるメンバー全員に覚えさせるように、って言われちゃってるんだよね……(白目)」
「あー……御愁傷様?」
なに考えてるのあの人、みたいな気持ちを私が抱いてしまうのも仕方のない話、というか。
……いやまぁ、次の柱に触れるのなら、最低限自分で魂の保全くらいできないと話にならんよってことなんだろうけども。
まったく、なんでこんなにスパルタなんだか……と、大きなため息を吐き捨てる私なのでありましたとさ。