なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
自死を求めるものであるが、それらはその実
……そんな感じの性質を持つ柱の試練達だが、前回述べた通り『隆起』のそれはその中でも最高峰と呼べるようなものとなっている。
上条さんが原作において『自分はいないけど万事上手く行っている』世界を見せられて心折られていた*1が、この『隆起』の試練もある意味性質としてはそれに近い。
……いやまぁ、そこで見せられるのは『自分という存在が肯定された上で、尚且つ万事上手く行った』世界なのだが。
「そしてそれは決して
「普通なら『それ作り物の世界じゃん』ってなるんだけど……」
「恐ろしいことに、言ってしまえばそうして生まれた世界は、
言うなれば、それを偽物と言ってしまうのは今までの自分のなにもかもを否定するのに等しい、というか。
積み重ねた努力がきちんと花開いた世界、願ったことがちゃんと叶った世界。
運や神といった外的要因による理不尽を極限まで排除した、人が人であるならばそれ以上を得ることは絶対にない理想……。
そしてそれは、【星の欠片】が関わっているからということでいびつに見えるが……その実、
単に、一般的な世界での実現可能性が一パーセントを割る、というだけの話であって。
……その辺り、下手に夢幻であるより質が悪いというか。
まぁ、極小で現状確認不可であるとはいえ、【星の欠片】そのものは科学技術の延長線上にあるのだから仕方のない話でもあるのだが。
「いつかはたどり着く技術、だったかのぅ。……具体的にどれくらい先なのかのぅ?」
「さぁねぇ?前借りしてるから奉仕体質なんてくっついてるけど、技術として使えるようになる頃にはそんなものは無くなってるだろうねぇ」
「判別方法が微妙に嫌なやつじゃのぅ……」
そういう意味では、いつかはミラちゃんにも使えるようになるもの、ということになるのだろうが……彼女にしては珍しく、習得には消極的であった。なんでだろうねー(棒)
……冗談はともかく。
この試練における障害は、いわゆる耐えるものの中でも一番の難敵。
それそのものは寧ろ好ましいモノである、というそれを捨てること。
己の得られる最大限の幸福を捨て去り、あくまでも自身は他者のための道具である……とでもばかりに意思を捨て去ること。
そしてそれでもなお自身を見失わず、人という存在の明日を夢見られること。
それこそが、【星鏡心樹】として認められる条件ということになるわけである。
で、それを踏まえた上で私は敢えてこう言おう。
「なーに言ってんだこいつ???」
「よりにもよって自分で言うのか……」
いや、誰だよこんなもの考えたやつ。……私だったわ!
思わず黒歴史に頭を抱えて転がり回りたい気分である。
確かにさぁ!世界平和なんてもんを実現しようとすると、誰もが他者のために意識せず動ける、みたいな状況を構築する必要があるのはわかるけどさぁ!!*3
こんなんまともな精神でどうにかできるわけないやんけ!攻略不可のクソダンジョンやんけ!!責任者呼んでこいやぁ!!
「みんな聖母なら争いなんてないよねってか!?やかましいわ!!マザコンは赤い彗星だけで十分ですっての!!」
「なんだか唐突にどこぞの大佐さんに飛び火したわね」
「突然話題に上げられてビックリだろうな向こうも」
いやまぁ、当のロリコンマザコンファミコン大佐は少なくともなりきり郷にいた覚えはないけどね?!
……ってなわけで、思いの丈を散々吐き出し肩で息をする私であったが。
「……よし、行こうか」
「うーん死んだ目……」
ここで駄々を捏ねても仕方ない、といい加減死地に飛び込むことを決め、皆と共に一歩前へと踏み出したのだった。
「────ほら、いつまでそうしているつもりだい?」
「んん……?」
……はて、私は一体何をしていたのだったか?
寝惚け眼で上半身を起こせば、そこはどうやら教室の中。
自分はどうやら
黒板の上に備え付けられた時計を見れば、時刻はお昼過ぎ。……どうやら誰に起こされることもなく、この時間まで寝続けたということになるらしい。
「全く。寝るのなら素直に保健室に行けばいいのに。姉さんは病弱なんだから、それくらいは許されると思うけど」
「……突然の眠気は私の病弱さとはまた別問題です。それより、もっと早く起こしてくれても良かったのでは?」
「気持ち良さそうに寝てたからね。憚られたってやつ」
「人の間抜け面を眺めていたかっただけでは……?」
すっかり寝こけてしまったことを恥じつつ、起こしてくれなかった──というか、後ろで寝ている私を教師達に悟らせないように立ち回っていた彼女の姿に、思わず憤りを感じてしまう私である。
絶対この子、面白がってこういうことをしたのだろうということがわかってしまうから、余計のこと。
そうして抗議する私に軽薄な笑みを返してくる彼女は私の大切な
……私が深窓の令嬢、みたいな容姿だからと言うわけではないだろうが、彼女は何処となく男性的であり共学でありながら王子様扱いされることもあって──、
「ほら、また考え事。知恵熱なんてことはないだろうけど、ボーッとしてるとまた勘違いされるよ?」
「……誰かさんのお陰で、脳の再起動に時間が掛かっていることは否めませんね」
「なるほど、お姫様はご機嫌斜め、と。……いやごめんて、怒らないでよ私が悪かったから」
……この妹は、いちいち私をからかわないと会話できないのだろうか?
そんなことを思いながら、改めて彼女に声を掛ける。
「──■■。もういいですから、お昼にしますよ」
「はいはい。どこでも付いていきますよお姉さま」
……ちょっと拗ねたような台詞になってしまったからか、彼女は小さく苦笑を返してきたのだった。
──それ以上の狼藉は許しませんよー──
「……はっ!?」
突如頭の中に響いた『星女神』様の声に、思わず身震いする私である。
……いや、なんやさっきの夢。というかだ、
「……なんでよりにもよって
「何故、何故と問うのか。そうだなぁ……その方が
「……『星女神』様ー、『星女神』様ー?貴方の相方様、なんというか悪い癖が進行してませんかー?というかこの人こんなにプレイボーイみたいなあれでしたっけー?」
──安心しなさい、からかわれてるだけよ──
「それのどこが安心できる要素があるんです???」
いつの間にか目の前で座っている女性──男装の麗人、みたいな空気を纏うその人物に心当たりのあった私は、思わず渋い顔になっていたのだった。
……『星女神』様の相方であり、今回一連の騒動の元締め……原因?となっている存在、『月の君』様。
彼女は今、先ほどの
無論、私の方もさっきの
……理解はできるのだが……。
「……ええと、
「そういうこと、とは?」
「惚けないでくださいよ……使われなかった設定を元に新しく使う設定を構築する、みたいなことをする作家は普通にいる。私もその例に漏れず、色々と設定を使い回したりしたものですが──確かに、
「いいや?全然?」
「そうですかそっち側……じゃないんかいっ!?」
この、病弱な姉とそれを甲斐甲斐しく()支える妹、という構図は、『月の君』様の原型となったキャラクターの、更に原型となる者のそれ。
そしてその人物は、のちにユゥイのモデルとしても使い回されている……。
となれば、わざわざこの世界を見せてきた辺り、遠回しに『月の君』様は向こう側に属する存在である、と伝えてきてるのかと思ったのだが……いや、違うんかい。
じゃあなんで今このタイミングで見せてきたし。
「そりゃまぁ、その姿こそ
「────いや、それは」
その問いに返ってきた答えに、思わず閉口する私である。
……確かに、私の源流であるキリア……の、更に源流であるのが今の私の姿。
それぞれは別の存在であり、ゆえにこそこの姿はキリアともキーアとも別のモノである。
──だが、元となった要素としては……。
「……
「まぁ、君が先に進むのなら、それは切っても切り離せないからねぇ」
「…………本当に、意地の悪い」
「ははは、褒め言葉として受け取っておくよ」
こちらの皮肉もなんのその、柳のように受け流す『月の君』様の様子に思わず歯噛みする私である。
……いやまぁ、この人に私が敵うわけもないんだけどさぁ、それにしたってさぁ……。
思わずはぁ、と深いため息を吐きつつ、そのままではなんにもならないので気を入れ直して視線を前に戻す。
彼女は変わらずこちらを見ていて、その瞳に映る私の姿もまた変わらず──。
「さっ、そろそろ起きる時間だ。他の子達はサービス。色々と教えておいたから、後で確認しておきたまえ」
「ご親切にどうも。……その内はっ倒して差し上げますのでご随意に」
「おやおや。随分と強気になっちゃってまぁ。──まぁ、それが目的だったから、私としては構わないのだけどね」
その内、意識が白み始める。
どうやら、今回私がすべきことは終わった、ということになるらしい。
なんとも遠回り、なんとも傍迷惑な旅路であったが──確かに、必要なモノであったことも確かな話。
そのことを噛み締めながら、『月の君』様に軽口を返す。
……お節介な彼女の気遣いに感謝しつつ、私は意識を浮上させて行く──。
「……えっとキーアちゃん、その髪は……?」
「心機一転というか、キーアVer.2というか。……まぁ、中身は変わってないから安心して」
視界に映る、
……原点回帰というか、黒歴史に向き合った結果というか。
ともあれ、新しくなった自身の姿を誇るように見せつつ、私は起きてきた他の皆の様子を確認しに向かうのだった。