なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
新生してもやることは変わらない
「その、せんぱい?」
「ん?なにマシュ?」
「いえその……な、なんでもないでしゅ……」
「?」
はてさて、傍迷惑な試練から早一週間。
……なんだか後輩がよそよそしいです。いやまぁ、理由についてはなんとなくわかるんだけどね?
そう、その理由と言うのは今の私の見た目。
先日の試練云々の踏破報酬……というと語弊があるが、現在の私の姿は今までの私のそれとは一変していた。
以前の私そのままの姿であるキリアを横に置けば、その差は一目瞭然。
……具体的には、髪の色がストロベリーブロンドから白髪……もとい銀髪に変わっているのが今の私である。
「……え、わしとキャラ被りしておらぬかお主」
「銀髪幼女キャラは二人もいらないって?ならどっちがこの世界に必要な人材なのか勝負する?」
「ほんのりキャラも変わっておらぬかお主!?」
……というのは、起き抜けのミラちゃんとの会話である。
いやまぁ、別に本気で争うつもりで声を掛けたわけじゃないけどね?あくまでもじゃれあいの延長線上というか。
そもそもほとんどストレートな彼女と違い、私の髪の毛って滅茶苦茶ウェーブ掛かってるからシルエットの時点で別物だし。
……とまぁ、その辺りの話は今現在関係ないのでここまでにしておくとして。
マシュの話に戻ると、この姿になってから微妙によそよそしいというか、何処か腰が引けているような気がする私である。
「まぁ、今のキーアちゃんなんとなーくだけど近寄り辛いものねぇ」
「ゆかりんまでそんなことを言う、酷い!私はなんにも変わってないのに……よよよ……」
「……うん、なんかちょっと絡み辛くなったような気も」
「わかったわかった、冗談だからちょっと距離離すのやめて」
ちょっとしたお茶目心じゃんかよぅ。そんなに引く必要性ないだろうがよぅ……。
いやまぁ、ちょっとテンションがおかしい気がする、と言われると否定しきれないのも確かなんだけどね?なんてったってバージョンアップしたわけですし。
「バージョンアップ、ねぇ?……その、以前一回消滅したあとに復活した、ってのはそうじゃなかったの?」
「んー、どっちかというとその時のパッチがようやく馴染んだ結果、というか」
「はぁ?」
「んにゃ、こっちの話。ところで、ゆかりんがここにいるってことはまたなにか厄介ごと?」
「おおっとそうだった。ハロウィンのお知らせよキーアちゃん」
「あ、そういえばもうそんな時期か」
なお、現在地はゆかりんルームではなく私の自宅。
……つまり、ここにゆかりんが居るということはトラブルのお知らせ、ということになるわけで。
こたつの上のかごからみかんを取りつつ尋ねてみれば、予想通り問題発生のお知らせが返ってきたのだった。
いやまぁ、いつものハロウィンってだけの話なんだけどね?
「それで?今年は一体なに?どこぞのユニバースロボの如くチェイテとピラミッドと姫路城が変形合体したりでもした?」*1
「当然の如くエリちゃん絡みだと考えるのね……いやまぁ間違いじゃないけど」
はてさて、ハロウィンである。
……元々はケルトのお祭りであり、その内容も実際のところは新年を祝うような意味合いのものだった*2わけだが。
今となっては子供達が仮装をして、お菓子をねだるものへと変化している。
世間様では、それに合わせて騒ぎたいモノが騒ぐための口実になり掛かっている感もあるが……ともあれ、死者の霊を鎮める、みたいな意味合いが消えているわけではないのだろう。
生者が騒げば死者も騒ぐ、みたいな感じというか。誰が騒いでいるのかの境がわかり辛くなるので、死者も寂しくないだろうというか。
そんなハロウィンだが、ソーシャルゲームだとまた赴きが変わってくる。
春には新生活やらなにやらで騒ぎ、夏は休みなので騒ぎ、冬はクリスマスやら新年やらで騒ぐ……。
そんな感じに、一年の間にはなにかと騒ぐ機会と言うものが設けられているものだが、秋にはそういうものがない。
いや、紅葉やらなにやらを見に出掛ける……みたいな、静かなイベントは幾つかあるのだ。
食欲の秋だったり、運動の秋だったりで用事を作り出すことも不可能ではない。
──そう、不可能ではない。
これらの用事というのは、極論を言うと別に秋である必要がないのである。
無論『新年度』という観点から考えると、周囲との歩調も合うようになるだけの時間が過ぎており、夏の暑い時期を過ぎているため大がかりな行動を始めるのに向いていて、食べ物もよく熟れているためそっち方面を目的に動くのもあり……みたいな、秋頃が旅やらパーティやらに向いている、というのは確かだろう。
とはいえ、そこに必然性はない。
新年度──新しい生活に慣れるためにあれこれしよう、みたいな動機もなく。
真夏──暑さを乗り越えるため、様々な方法で涼を得ようとする必要もなく。
雪景色──厳しいそれを乗り越えるために一致団結する、という機会すらない。
言うなれば、秋というものには行事の必然性が薄いのである。
あったとしても収穫とかの仕事方面に向かうのがほとんど、というか。
そしてそれらは、ソーシャルゲーム内においては祝い辛いものとも言えるだろう。
なにせそれらはゲーム、娯楽。
……それ自体が秋に楽しむものに被ることもあり、わざわざこのタイミングでと特記する必要もない。
ついでに、収穫の面を強調しようにもソーシャルゲームにおける収穫とはユーザーの課金である。……課金キャンペーンでもするのか、というか。
下手なことをすると炎上が見えるため、そこを触ることはまずないだろう。
その他、運動やら食事やら芸術やら、秋に取り沙汰されるものを無理矢理突っ込む方法もなくはないが……微妙に乗りきれないモノになるのもなんとなく目に見えている。
そういう意味で、秋頃に行われる固有の
「……まぁ、それを踏まえたとしてもFGOのハロウィンはなにかおかしい気もするけど」
「うーん、エリちゃん周りの不穏さがギャグじゃなくて本当に不穏であるなら、最初からネタを仕込み続けた……ってことになるんだろうけどねぇ」
ブレエリちゃんの宝具ランクとか。*3
この分だと今年はハロウィンは無さそうだし、その辺りの完結編は来年に流れてしまいそうな予感もあるが……エリちゃんのことだからクリスマスをハロウィンでジャックした、とかやりかねないので恐ろしいところである。
マイルーム会話でもサンタに反応を示していたりするし。
……とまぁ、FGO内でのエリちゃんの話はこの辺にしておくとして、改めてなりきり郷の方のエリちゃんの話に視点を戻すと。
彼女本人は、流石に本家本元エリちゃんみたいな理不尽感はない……というか、『逆憑依』であることも手伝って普通に良い子……エリちゃんシリーズ中一番無害(?)な九紋竜エリザに次ぐ・もしくは上回る無害さを誇るのだが。
それがなにやら変な化学反応を起こしているのか、彼女本人の無害さに反して巻き起こすトラブルは本家本元に勝るとも劣らない、みたいな規模になっていることがあるのだ。
……まぁ、その辺りは今までの私たちの歩みを知っていれば納得できる話だと思うわけだが。
ともあれ、ハロウィンの時期にエリちゃんの動向に注意する、というのは訓練されたなりきり郷民ならば自然とやっていること。
それゆえ、今回もそこまで気にせず(もとい、私たちが気にせずとも他の面々が気にしてくれている)に目の前の問題に取りかかっていたわけなのだが……。
「それが裏目に出た、というべきなのかしらね……」
「なるほど、その言い方だと注意してただけじゃどうにもならないようなことになった、ってわけね」
「まぁ、端的に言うとそうなるわね……」
私も、この間の件の報告とか後始末とかに追われた後で気付いたわけだし、とため息を吐くゆかりんである。
……この分だと、さっきの私の冗談も意外とバカにできないかもしれない。
なにせ、前回のハロウィンのこともあってなりきり郷内の警戒指数はかなりのもの。
シャナやダンテさんは言うに及ばず、トキさんや外部からモモンガさんとかも気にしてくれていたはずなのにも関わらず、彼らが揃って『手に負えない』と言っているに等しいのだから。
そんなわけで、これからゆかりんが告げるだろう言葉を警戒し、身構えていた私はというと。
「……まぁ、見て貰った方が早いわね。というわけで、どうぞー」
「はぁい、私の出番ですねー」
「……んん???」
玄関の方へ向けてゆかりんが声を掛けたこと。
および、それに返ってきた声が聞き覚えのないものであったことに、思わず首を捻ることになったのだった。
そして、呼ばれてやってきたのは……。
「お初にお目にかかります!私、『なりきり郷』と申します!本当の名前はもう少し堅い感じなのですが……これの方が通りが良いですよね?」
「……えっと、どういうこと?」
ふわっとしたドレスを纏った、まさにお姫様と呼ぶべき風貌の少女。
そんな彼女の姿と言葉を聞いて、私はゆかりんに詳細な説明を求めるように詰め寄ったのだった──。