なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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そういうこともある、と示されてはいる

 にこにこ、と笑みを浮かべながら正座をしている少女。

 そんな彼女をこたつの前に座らせつつ、私はゆかりんと小声で話をしていた。……彼女が何者なのか、ということを問い質すためである。

 

 

「誰もなにも……今本人が答えを言っていたでしょう?」

そうじゃなくて。なんでそうなったとか、どうしてこうなったとか。付随するあれこれを説明しなさいって言ってるのよ私は……!」

 

 

 いやまぁね?

 昨今は擬人化界隈も盛況を過ぎたとはいえ、それでも建物の擬人化というのは意外と珍しいもの。

 それでも既存の──言い方を変えると有名な城やら場所やらではなく、わざわざ一部の人間しか知り得ないこの場所がその対象に選ばれる、というのは些か納得が行かない。

 というか、ここって区分的になにになるのさ?都市?城?単なる地名?

 

 というかだ、なにかの理由でこの場所の名前を名乗っているだけで、実は別のものが正体である可能性も普通にあるだろう。

 ……その辺りを突き詰め始めると、もうとっととトラブルの起因を聞いた方が早い、ということになるわけで。

 

 そんな感じで笑顔で問い詰めていると、ゆかりんはあんまりことの重大性を感じさせない語り口で、今回のトラブルの始まりについて語り始めたのだった──。

 

 

 

 

 

 

「……そういえば、いつの間にかもうハロウィンねぇ」

 

 

 そう彼女がぼやいたのは、自身の執務室にて。

 

 時期としては十月の下旬、もうしばらく経てばハロウィンの時期……というようなタイミング。

 そこで彼女は、ここまでに起きたあれこれ──トラブルの数々を報告書に纏めながら、自身の有能な補佐役であるジェレミアから休憩を具申されていたのであった。

 

 その具申と共に差し出された暖かなココアを啜りつつ、椅子の背に軽く体重を掛け、天井を仰ぎ見る。

 ──脳裏を過ったのは、トラブルに忙殺されることで意識から外れていた行事……ともすれば、ここまでに起きたトラブル全てと釣り合う可能性すらある特級の祭事、ハロウィンについての思考であった。

 

 本来、ハロウィンなんて外様のイベント、日本人としては仮装をするかしないか・子供達に渡すお菓子を選別するとか……まぁ、それくらいのことしか問題にならないはずのもの。

 どこぞの都市部のように、若者達が集まってトラブルを引き起こす……というのならともかく、『やりたい人がやればいい』くらいで済むような話のはずなのである。

 いやまぁ、だからって真島の兄さん辺りがお菓子を配ってたら、内容はともかく警戒するとは思うけども。

 

 とはいえ、それらの話は一般的なことについてであって、こと『なりきり郷』という特殊な立地においてはまったく別の印象となる。

 ……いやまぁ、仮になりきりとか、そうでなくとも普通の創作物とかであっても、本来はそこまで変なことにはならないはずなのだが。

 

 

「……いえ、ケルト方面の話を詳しくするような場所なら、或いは……?」

「仮にそうだとして、その辺りの機微などを正確に把握しているこちら(日本)在住の人物がどれだけいるものか、という話になるのではないかと」

「……まぁ、そうよねぇ」

 

 

 一応、ハロウィンの源流とされるケルト関連の話を扱っているような場所なら、現代の緩みきったそれではなく緊張感やシリアス感を交えたハロウィンというのも語れるのかもしれないが……。

 そもそもの話、ケルト方面の神話や古い風習を知る人がどれほどいるのか、というもっとも過ぎる話に派生しかねないので流す紫である。

 

 ともかく。

 近代におけるハロウィンという行事の()()()を引き上げているのは、主に一つ。

 その存在のことを思い浮かべ、思わず渋面を作りながらココアを啜った紫は──、

 

 

「子ネコ~っ!!楽しい楽しいハロウィンのお知らせ、よぉ~!!」

「ぶふっ!!」

 

 

 執務室の扉を蹴破らんばかりの勢いで抉じ開けた人物──悩みの根幹であるエリザベートの姿を視認した途端、思わず噎せることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

「……あら?居ないわね子ネコ。いつもならマシュと一緒に話してるんだけど」

「ちょっ、なっ、まっ」

「紫さま、一先ず落ち着いて」

 

 

 執務室に突撃してきたドラ娘──エリザベート・バートリーは、不思議そうな顔で室内を眺めている。

 彼女からしてみれば、目的の人物との遭遇を願う際にもっとも確率の高い場所、くらいの思いで訪ねて来たに過ぎないのだろうが……直前まで彼女のことを考えていた紫からしてみれば、タイミングが良すぎて思わず吹き出してしまうのも無理もない話。

 ゆえにしばらくえずいていたわけだが……その背を献身的に擦るジェレミアの気持ちは幾ばくか。

 

 ……ともあれ、しばらく室内を見回していたエリザが彼女達の様子に気付き、「……なにやってるの貴方達?」と声を掛けるのはそれから数分後。

 そして、それを受けた紫が「誰のせいだと思ってるのよ……!」と仄かな怒気を見せ、彼女を困惑させたのはそこからさらに数分後となるのであった。

 

 はてさて、そんなやり取りを経てソファーに座り直した彼女達。

 まず口火を切ったのは、この執務室の主である紫の方。

 彼女は開口一番、エリザに対してこう問い掛けたのだった。

 

 

「……一体、どういう心境の変化?」

「心境?……あー、去年までの話?確かに、これまでの私は折角のハロウィンに乗り気じゃなかったわね」

 

 

 紫の放った問い掛けに、気まずげに視線を泳がせるエリザ。

 それもそのはず、去年までの彼女はどちらかと言えばハロウィンを避けていた。

 その理由は言わずもがな、『エリザベート』というキャラクターとハロウィンの相性が()()()()()()というところが大きい。

 言い換えれば、彼女にその気がなくともトラブルの方から向かってくるレベル……というか。

 

 他所のゲームや創作物を見ればわかるが、ハロウィンというのはそもそも日本に入ってきたのが遅く、定着率もそこまで高くない。

 そのため、日本特有のアレンジもそこまでされておらず、元となった祭事をそのまま真似ている……という風情が強い。

 

 ゆえに、ちょっとしたイベントとしては扱われても、それがトラブルの主軸になるようなことはそう多くないのである。

 仮にあったとしても、ハロウィン用のお菓子が盗まれたのでそれを取り戻しに行くとか、お盆に近しいモノであることから霊達との話に派生するとか……まぁ、そんな感じである。

 

 で、それを念頭に置いた上で、エリザの出身作の一つ・FGOにおけるハロウィンを思い浮かべて見よう。

 ……辛うじて一年目はまだしも、二年目は魔界村交じりで三年目は例のアレ(チェイピ城)

 その次は一度エリザから離れようとしたように見せ掛けて、日朝幼女向け番組交じりのカムバック・エリザベート。

 その更に次とその次は、それぞれ童話と水滸伝が混ざる意味不明振りである。

 

 

「ハロウィンという名目で、かつエリザベートが関わってるのならなにをやってもいい……と思ってる節があるわよね、どう見ても」

「い、一応仮装という点では受け入れられる話……なんじゃないかしら?」

 

 

 弁明するエリザだが、本気でそう思っているとは思い辛い顔をしている。具体的には目を逸らしている。

 

 ……まぁ、無理もない。

 一年目の魔女っ子はともかく、その次はビキニアーマーの勇者、その更に次はまさかのメカエリちゃんず。

 主題じゃなかった時にも鬼に混ざった状態で現れたし、その次で主題に返り咲いたらシンデレラ、更にその次には水滸伝の無頼漢と混ざって幼女化……。

 脈絡もないし統一感もない。水着とかサンタにならない分あれこれ変化しすぎ、とでも言わんばかりの状態である。

 

 まぁ、ハロウィンを一人占めしているにも等しいため、その分新しい服を貰いまくっているとも言えるので、一部の人には微妙にヘイトを貯められていたりするみたいでもあるが……その辺りは今は関係ない話だろう。

 

 ともあれ、ハロウィンがすっかりエリザの祭りの様相を呈するとともに、それに従ってハロウィンという祭りそのものがわりとなんでもありなものに勘違いされている……ような気がする、というのは間違いじゃないだろう。

 そしてそれを本人としてではなく外の視点として知っている今のエリザは、それがもたらす迷惑というものをこの上なく理解し、ゆえにその火種を他所に飛び散らさないように警戒している……みたいな。

 

 

「そんな感じだったのが、去年までの私だったワケ。でも私ね、ようやっと気付いたの。──そういう姿勢こそ、寧ろ周囲にトラブルを撒き散らしていたんじゃないかって」

「……なるほど???」

 

 

 だが、そうして縮こまっていても、トラブルは変わらずやってくる。

 そこでエリザは考えた。──これはもしかして、自身がハロウィンを拒絶しているからこそ起こることなのではないか、と。

 

 

「……うん?」

「考えてもみて?私が意識せずとも、ハロウィンはやってくるしトラブルも発生する。時期が問題だから、と可能な限り外に出ないようにしてたけど、それでもスッゴいことになったわけじゃない?……これ、私がハロウィンを拒絶しているから、余計のことハロウィンが意固地になった結果なんじゃないかって思うの」

「ハロウィンが」

「意固地になった結果……???」

 

 

 ハロウィンはそもそも単なる祭事。

 そこに特別な意味を付与しているのは私たちであり、その前提がある上で自身がそれを拒絶するというのは、ある意味で自然な現象を差し止めるようなもの。

 津波の前に壁を作り、結果としてその壁より高い波を生み出してしまうようなものなのではないかと、エリザは考えたのだ。

 

 

「だから、今年は敢えてハロウィンを楽しんでみようと思うの!……あ、流石にライブはなしね。こっちはどうしようもないから。代わりに、ハロウィンそのものは満喫する気満々ってわけ」

「なるほど……それでトラブルの規模が下がったら儲けもの、みたいな話ってことね?」

「そう、それそれ!それに、仮にトラブルが起きるとしても去年みたいなのを経験したあとだと、大抵のことは笑って済ませちゃうでしょ?」

 

 

 いやまぁ、本当に笑って済ませられるわけじゃないけど。

 ……ある程度トラブル対処への経験値が貯まったことにより、昔ほど振り回されずに済むだろうという予測が立つというのが近いのかもしれない。

 

 ともかく、自身が否定するからこそ反発して来ているのであれば、それを受け入れればある程度トラブルの規模を減らせるのでは?

 ……と考えたエリザは、そのために必要な人員を揃えるために走り回っている、ということになるのだった。

 

 

「だから子ネコを探してるんだけど……どうにも見当たらないのよねー。さっき家に行った時も、見覚えのない銀髪の子しか居なかったし」

(……これ、見間違えてるわねこの子?)

 

 

 なお、そのメンバーとして真っ先に採用されるべき少女は、最近イメチェン()していたため、彼女には気付かれなかった……なんて、なんとも言えない話になっていたのだった。

 

 

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