なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……え、
「そりゃまぁ、ねぇ。貴方って姿はころころ変わるけど、それでも髪の色に関しては一切変化してない、ってパターンがほとんどだったし。そんな人間の髪色が変わっちゃったら、思わず本人だと認識できなくなってもおかしくはないと思わない?特に、急いでいる時ならなおのこと、よ」
「い、言われてみれば確かに……!?」
「せんぱい……」
「……ま、まぁうん。貴方の主張はよくわかりました。確かに、私たちはこれまで原作のエリザベートのイメージに引き摺られ、決して
「でしょでしょ?だからまぁ、今回だけ試してみようかなーって。……今ならほら、子ネコの上司?とかいうすごい人もいるみたいだし、私のせいでなにか起こってもどうにかなるんじゃないかしら、って思ったのよ」
(──ふむ、行き当たりばったりに見えて、意外と考えていらっしゃるというべきか)
突発的な提案に見えて、意外と後先を考えているというか。
……そんな風に感心するジェレミアを他所に、二人の話は続いていく。
「でもまぁ、いきなり全力全開ってのも……こう、躊躇する面があると思わない?」
「まぁ、ねぇ。今のところ、貴方の話は全て机上の空論。もっともらしい推論を並べ立ててはいるけれど、それが真実である保証は何処にもないものね」
「そうそう。だからね、本格的なハロウィンの前にちょっとした
「試し?」
その内容は、先ほどまでの議論をひっくり返すようなもの。
とはいえそれも仕方のない話。エリザベートとハロウィンというのは、基本的に起きるトラブル全てに首を突っ込むFGO主人公が、それでも忌避の感情を見せるもの。
……まぁ、その忌避の主な対象はエリザベートの開くコンサートの方であり、巻き起こるトラブルに関してはそこまで……いや仰天することもあるけれど、かといって他のイベントより殊更面倒なのか?……と問われればノー、と答えるだろうものでしかないわけだが。*1
その証拠にというわけではないが、一度ハロウィンのことを忘却するような事態に見舞われたあとは、特にハロウィンを怖がる素振りを見せなくなっているのである。
まぁ、忘れてからのエリザが『
ともあれ、主人公がハロウィンを忌避しなくなったのが『エリザベートの変化』によるものであるとすれば、今回の彼女の心境の変化はまさに『エリザベートの変化』に相当すると考えてもそうおかしくはあるまい。
……おかしくはないが、同時に変化としては少なすぎるのでは?と感じてしまうのも事実。
そのため、実際にハロウィン当日にその可否を確かめるのではなく、予め試しとなる行動を幾つかクリアすることで危険性の無さをアピールしてはどうか?……と彼女は言いたいらしい。
「まぁもちろん?ハロウィン以外だとトラブルの発生確率は低い、って見方もあるけど……同時に、今の私は二年分のハロウィンゲージを持ち越した状態。そこからハロウィンに相当する行動を起こせば、きっとなにかが起こるはず……なのよ!」
「(ハロウィンゲージ?)……で、そこで起こるトラブルが手に負えなければ諦めて、どうにかなりそうだったら本格的に今年のハロウィンに参加する、と?」
「まぁ、簡潔に纏めるとそうなるわね」
どう?と問い掛けてくるエリザを他所に、紫は自身の思考に埋没する。
……確かに、ハロウィンの度に彼女を監禁拘束するのは忍びないし、そもそもそこまでやってもなんらかの事情でハロウィンが爆発する、というのも以前までの経験からわかっている。
ならば一度、彼女の思う通りにやらせてみてはどうか?……という気持ちが強い。
実際、今このタイミングならば大抵のことはなんとかできる
「しれん?」
「ああ、貴方は知らなかったわね。私とキーアちゃん達は、彼女の上司の元でちょっとした強化訓練?みたいなものを受けていたのよ」
「あら、ある意味お揃いね!……にしても、なるほどなるほど。ユカリもなんだか変わったと思ってたけど、そんなことがねぇー」
それによる変化というのは、どうやら単に見ただけでもなんとなくわかってしまうものであるらしい……ということを、目の前のエリザの反応から認識する紫。
そうなると、少々自負というか自信というかが湧いて来るのも事実。
ゆえに天秤は許可の方に傾きつつあり──、
「いいんじゃないのか?なんだったら、俺も付き合うぜ」
「その声は……ダンテ!ダンテね?!なんだもう、居たんなら言いなさいよ、このっこのっ」
「いてて……相変わらずお前さんはデンジャラス・ガールだな」
その傾きを後押しするように、室内に居たもう一人が声を上げる。
その人物──ダンテは、彼女達が話していた場所とは別、もっと奥にある応接室で紫の仕事が終わるのを待っていたのだが……その最中、飛び込んできたエリザの話を立ち聞きしていたのだった。
彼女の主張を聞いた、ダンテの反応は概ね良い。
そもそもの話、なりきり郷がハロウィンの危機に直面した一回目の時、彼女を手伝ったメンバーの内の一人が彼、ダンテである。
言い換えると腐れ縁というわけで、それゆえに彼女の苦悩をある程度知っていたのも反応に寄与したというわけだ。
これが仮に、もう少し傍若無人な相手だったら賛同しなかっただろうが……ここのエリザはそこまでの人物ではない。
ゆえに、彼もまた協力してやってもいい・問題が起きたら解決に走っても構わない……とまで心を許してくれていた、というわけである。
それゆえに、紫は決断する。
ここにいる面々ならば、恐らくなにが起こっても内々に納めることが可能だろう。
ならば、長く続くハロウィンの呪縛をここに解くことを宣言するのも、吝かではない。
「──よし、やりましょう!今年のハロウィンは大手を振って楽しむわよー!!」
「やったー!!私頑張るわー!!」
「オーケー、後詰めは任せな。デーモンだろうがデビルだろうが、なにが出てきても切り捨ててやるよ」
ゆえに、彼女は快諾を示す。
エリザがやる気であるがゆえに、ダンテが乗り気であるがゆえに、なんとでもなると彼女は首を縦に振る。
(……なんでしょうな、この得も知れぬ不安感は)
そんなムードの中、彼女の頼れる従者だけは、得も知れぬ不安感に顔を曇らせていたのだった。
「──なるほど、エリちゃんが、ねぇ」
ここまでの話を聞き終えた私は、湯飲みの中のお茶を飲み干しながら一つため息を吐く。
……あーうん。
確かに、ここにいるエリちゃんがハロウィンに巻き起こるトラブルについて、心を痛めていたというのは知っている。
なんなら二年目に関しては、微妙に記録が無茶苦茶になってる辺り……虚数事象か、それに似た処理が施されるようなとんでもない事態になった、というのもなんとなく察せられる。
いまいち記憶に無いが、願望器的なものが暴走してなりきり郷もろとも爆発したんじゃないか、というのが予想だが……ともあれ、それらのトラブルの起因にエリちゃんが居た、ということに変わりはあるまい。
原作そのままの彼女なら、多少は凹みつつも前を向いて歩きだしたのだろうが……ここのエリちゃんは微妙にネガティブ。
それゆえに原作の彼女の欠点の幾つかを乗り越えられていたりもしたのだが……今回は、それが事態をややこしい方向に誘ってしまったのだろう。
ついでに、それに関わる他人達のタイミング、というのもよろしくなかった。
私の見た目が変わっていたせいでトラブルの発生タイミングに同行できなかったし、ゆかりんはなんとなーく気が大きくなっていたため冷静な判断ができなかったみたいだし。
……ただ、そうなると気になることが一つ。
「ダンテ君がやけに乗り気なのが気になるのよねぇ……」
「あー、それなんだけど……」
確かに、初回ハロウィンの同行メンバーだったダンテ君が、エリちゃんの提案に乗り気である……というのは、言葉の上では納得できなくもない。
……無いのだが、トラブルの匂いに敏感な彼が、こんなあからさまな状況に了承の意を示すだろうか?……という部分が微妙に引っ掛かるのである。
なんというか、この場面なら一応否定派の立場に回って様子を見るとかしそう、というか?
そんな私の疑問を感じ取ったのか、ゆかりんが口を開こうとして──、
「それなら簡単ですよ」
「……簡単?簡単ってどういうこと?」
それを制するように、静かにしていたはずのなりきり郷ちゃん?が声をあげる。
視線を彼女の方に向ければ、その表情はにこにことした楽しげなもので。
……けれど何故だろう、どことなくその笑みに不穏なものを感じてしまうのは?
そんな風に私が警戒していることなど知らぬとばかりに、目の前の彼女は自身が述べようとしたことをそのまま口に出す。
「そのダンテさんは偽物。ハロウィンの悪魔がそれを邪魔させないように遣わした、ある種の使い魔のようなものだったのですから」
「は?」
「因みに、形式的には私の
「は???」
その言葉が、どれほどの混乱を私たちにもたらすのかも理解しないままに。
突然放たれた衝撃の言葉に、私たちは揃って凍りつくこととなったのだった──。