なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ええと、ハロウィンの悪魔?母?」
「ええそうです。つまり私は正真正銘ハロウィンによって産み出されたもの、ということになるわけですね」
「…………(説明を求めるような視線)」
「あーうん、話が前後しちゃうけどちゃんと説明するから……」
突然のカミングアウトに、周囲が凍りつく中。
そうして場を凍らせた本人であるなりきり郷ちゃん自身は、先ほどから変わらぬ笑みをこちらに向け続けている。
……爆弾発言を落としたくせに説明する気はない、とばかりのその態度に思わずゆかりんに助けを求めるような視線を向ければ、彼女はあーとかうーとか唸りながら天を仰いだあと、はぁと大きなため息を吐いたのち、再び説明を再開したのであった。
「さて、試しって話だったけど……具体的に案とかはあるの?」
「それなんだけど、一つ考えていたことがあるの」
「考えていたこと?」
試運転のようなものをすることが決まり、『ではなにを以て試しとするのか』ということを話し始めた紫達。
その中でエリザは、一つの案を彼女達に披露した。
「今の私は、発散できなかった『ハロウィンゲージ』を溜め込んだ状態。つまり、意識してハロウィンを祝おうとすれば、それが例え当日でなくともある程度ハロウィンの影響を引き出せるはずなのよ」
「……ちょっと待って。当たり前のような顔をしてさっきから登場してるけど、『ハロウィンゲージ』ってなに?」
「はぁ?さっきまでなにを聞いてたのよユカリ」
いやちゃんと全部聞いてたが?
……と言いたくなるのをぐっと堪え、エリザに説明を促す紫。
そんな彼女の様子に「仕方がないわねぇ」と一つ嘆息をし、説明を始めた彼女の言によれば、『ハロウィンゲージ』とは次のようなものであるとのことだった。
「ふむ……エリザ粒子*1などを含む『ハロウィンを成立させる要素』を一纏めにしたエネルギー……ねぇ」
「単純にエリザ粒子だけを対象としてないのは、ここだとそれ以外にも色々な不思議粒子が混在してるから……ってわけ」
ハロウィンを行う際、そこで起きる不思議な現象を全て肯定するもの・そのために使われる様々な理由付け……。
その根拠となるものが『ハロウィンゲージ』なる不思議エネルギー。
その実態は、エリザ粒子などの多種多様なエネルギーの混合体であるのだという。
「……つまり、なりきりパワーとかも?」
「そう、なりきりパワーとかも。……下手をすると【星の欠片】とかもほんのちょっぴり混じってるかもしれないわね」
「危なくないそれ?」
「ハロウィンについてしか機能しないから、字面ほど危なくないわよ?」
彼女の言によれば、『ハロウィンゲージ』として纏められていることからわかる様に、含まれているエネルギーこそ多種多様であれ、それが引き起こす事象は必ずハロウィンに関係するものに限る……ということになるらしい。
なので、含まれているものにどれほど物騒なエネルギーがあったとしても、それを警戒する必要はないのだとか。
「まぁ、とは言っても他に含まれているモノを見ちゃうと、思わずストップを掛けたくなるのもわかるのよね……」
「エリちゃんがそんなことを言うってことは、そんなに(普段なら)危ないものが含まれてるの……?」
「んー、わかりやすいところで言うとこれかしら」
「……?なにこの、青く輝く液体」
「ヌカコーラ、って言えばわかるかしら?」*2
「ぬぉわたぁっ!!?」
「ひぎゃぁーっ!!?」
とはいえ、言葉だけで納得できるかと言われればそうではないだろう、と腕組みをするエリザ。
彼女のそんな様子に、思わず尻込みする紫の前に差し出されたのは、ほんのりしゅわしゅわしながら青く光輝く液体。
コップに入ったそれを不思議そうに眺めた紫は──続くエリザの言葉に思わずそれを吹っ飛ばしてしまうのだった。
放物線を描きながら飛んでいったコップは、そのまま内容物ごとエリザの頭上にジャストヒット。
仕出かしたことの大きさで叫ぶ紫と、突然頭に飛んできたヌカコーラの冷たさに叫ぶエリザとで執務室が慌ただしくなる中、その騒動を納めんと奔走するジェレミアの愚直な献身が火を吹き……。
まぁ、なんやかんやあって事態が収拾の兆しを見せた頃、ソファーに座り直した(ついでに頭も洗って服も着替えた)エリザはというと、改めて説明を再開したのであった。
「……まぁ?私も断りなくあれを引っ張り出したのは悪かったと思ってるけど。……だからって私の頭に放り投げることはないでしょう。無事だったからいいものを」
「いやその、ホントごめんなさい……」
「仮に本当に危なかったとしても、貴方なら放射線くらい普通に無害化できるでしょ?」
「イヤソノ、ホントニモウシワケナイト……」
「……はぁ。まぁ、慌てふためく貴方の姿が面白かった、ってことで多めに見てあげる」
「アッハイ,ドウモアリガトウゴザイマス……」
(お労しや紫様……)<ホロリ
まぁその前に、ちょっとした皮肉タイムが始まったわけだが。
……そもそもの話、八雲紫の原作には普通に核反応とか操るヤバいキャラがいるのだから、今さら放射線がどうのでビビる必要性がないのだ。*3
というか彼女の能力的には放射線の有害性なんて緩和できて当然、ビビり散らかす姿を見せる方が間違いなのである。
いやまぁ、一般人がヌカコーラを目の前にして冷静でいられるか、と言われればそれはノーなのだが。
「……でも、前もって言っていた通り、あれも『ハロウィンゲージ』の中に含まれるモノだから、仮にあれで影響があると言っても飲んだ人間がハロウィンの虜になるくらいのもの、なのよ?」
敢えて言うなら『ヌカコーラ・ハロウィン』みたいな?
……それはそれで恐ろしい気がするけど、とは口が裂けても言えない紫である。
ともあれ、『ハロウィンゲージ』の方向性を知る上では、この上ないサンプルであったことは間違いないだろう。
……彼女の知らぬところではあったが、実はこの中には無限の力を持つとある文明人達の意思を宿すエネルギーだの、生物に進化を促すエネルギーだの、その名前を聞けば白目を剥くであろうモノがまだまだ含まれているのだが──知らぬが花、というやつである。
とりあえず、本来なら危ないエネルギーも、『ハロウィンゲージ』という区分に含まれている内はその危険性も減少、ないし方向性の決まったものになっているわけで。
そしてそれは、現在エリザを中心におよそ二年分溜め込まれている。
……正確には、二年分丸々溜まっているわけではないのだが……ともあれ、ハロウィン当日ほどではなくとも、それに近しい影響を発揮できるほどには勢いを得ているわけで。
「……でも、それだと普通に暴発しない?」
「そこで、試しの方法よ。これだけのエネルギーがあるんだから、
「……あ、なるほど。新しい配布エリちゃんを作るってことね」
「
ただ、そのままハロウィンの事前演習をしたところで、発生するのは前祝い……もといハロウィンゼロ日目のお知らせだろう。
ゆえに、このエネルギーの発散のさせ方も考える必要がある。
そこで彼女が考えたのが、本家のように新しいエリザベートの姿を作り出すことで、エネルギーを消費しきってしまおうというもの。
思い通りに新しい姿が生み出せればハロウィンを制御したことになるし、臨界寸前の『ハロウィンゲージ』の消費も行える。
また、仮に失敗したとしても、エネルギーの方向性を『新たな存在の創造』に絞ることで、その影響を可能な限り無害な方向に持っていくことも可能。
「さっきも言ったように、『ハロウィンゲージ』はあくまでハロウィンに関係することにしか作用しないエネルギー。言い換えると、内容物の物騒さに反してその実できることの幅がかなり狭いってわけ」
「本来ならなんでもできるような性質のモノでも、出力が足りないしそもそもハロウィンにしか使えないから、よっぽど変な方向に行かない限り世界の滅びとかには派生しないってことね」
「そ。それもハロウィンに相応しい存在を生み出す、って形で出力するから、ハロウィンが過ぎ去れば自然と無害になるって寸法よ」
絶対にレールから逸脱しないようにルールを重ねがけしている、とも言えるだろうか?
ともあれ、
そう判断した紫は、彼女の提案を快諾。
ここに、シン・ハロウィンエリザ開発実験がその開幕を告げたのであった。
「……ツッコミ処は幾つかあるけど、とりあえず一つだけ。なんでよりにもよって『シン』とか頭に付けたのよ!?」*4
「あ、あの時はみんな熱にうかされてたのよぅ……」
「それもハロウィンの悪魔の仕業でございます、みたいな感じですね」
「……やっぱりハロウィンって悪なのでは?」
「しっかりいたせー!!」