なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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努力 未来 そしてハロウィンパーティ

 話を聞いている内に、だんだん頭が痛くなってきた私ことキーアである。

 

 ……うん、普段なら気付くであろう不穏な空気が、悉くスルーされ続けたと言えるこの状況。

 これが噂のハロウィンの悪魔のせいであると言うのなら、そりゃまぁハロウィンなんて滅ぶべきなのでは?……みたいな感想が出てくるのも仕方のない話と言うか。

 

 

「ところで、ここで言う『ハロウィンの悪魔』って、チェンソーマン的なやつなの?」

「いいえ?どちらかと言えば形而上学的な存在として『悪魔』の呼称を使っているだけであって、なにかしらの原典を持つ存在であると断言できるものではないですね」

「……思ったよりヤベー話なんじゃないのこれ?」

 

 

 創作物ではなく、本物の悪魔の話なのでは?

 いやまぁ、どこまで本気の話なのかもわからんので、完全に鵜呑みにもできないのだけれど。

 

 ともあれ、聞くだけで危うい『シン・ハロウィンエリザ』の研究が始まってしまった、ということは理解できた。

 理解できた上で、そこからなにがどうなってなりきり郷が一個の存在として成立するに至ったのか、ということを解き明かさなければなるまい。

 そしてそのためには、彼女達の足跡を引き続き聞くしかなく……。

 

 せんぱいお茶です、とマシュから手渡された緑茶を啜って一息吐きつつ、私はゆかりんに続きを促したのだった──。

 

 

 

 

 

 

「ところで、生み出そうとしているもののイメージとかはもうできてるの?」

「イメージ?……そうね、今のところそれっぽいものは一つ、思い浮かんでいたりするのだけど……」

「するのだけど?」

「これが中々、上手い具合に形になってくれないのよね……」

 

 

 蓄えられた『ハロウィンゲージ』を無害なものに変換する……。

 そのためには、ハロウィンに連なるなにかを作り出さなければならない、というのが彼女の主張。

 そしてそれは、『エリザベートが関わるのなら荒唐無稽でもそれはハロウィンである』というある種の概念誘導により、そこまで難しいことではなくなっている……わけなのだが。

 

 とはいえ、それでも本当になんでもあり、というわけではない。

 少なからずハロウィンを意識させる要素は必要であり、それをどう表現したものか……という点で、エリザは蹴躓いている最中なのであった。

 

 

「ふむ……それってつまり、今までのエリザシリーズを想起させるのは宜しくない、ってことであってるかしら?」

「そう、そうなのよ。焼き直しでは使いきれない、完全に新造しないとダメ!……でもだからといって、『配布にも霊衣にもなってないから』なんて理由でJAPANに逃げるのもNG。……そうなると、どうにもいい感じに案が纏まらないのよね……」

 

 

 その理由は、都合エリザシリーズは七種以上に及ぶから、というもの。

 ……原点であるエリザ、ハロウィンらしさを追求した魔女っ娘、奇抜さを狙った戦士風。

 まさかの二種パターンで血の伯爵婦人を解釈しなおしたロボ達に、童話を取り込んだ姫様としての姿と、今までの自身からもっとも離れた状態となったちみっ子。

 

 単純にエリザの名を冠するだけでも七種、外見だけは出ている日本風(JAPAN)も合わせれば八、更に自身の未来の姿であるカーミラ達を混ぜれば十種。

 ……これだけのバリエーションが存在すると、そこに少しでも近似してしまうと現れるのは彼女達になってしまうのである。

 

 

「……それのなにが問題なの?」

「問題大有りよ!この場合、私の霊衣(ドレス)って形じゃなくて、新しい【顕象】(サーヴァント)って形になっちゃうんだから!」

「……あー」

 

 

 それによる問題、というものが最初よく理解できなかった紫だが……続くエリザの言葉に、その意味を深く理解する。

 そう、今までにない姿として定義できずに『ハロウィンゲージ』を消費した場合、それによってもたらされるのは簡単に言うと新たな【兆し】の召喚(ガチャ)なのである。

 

 分かりやすく言うのであれば、()()()()()()()()()()()()()()()()、というべきか。*1

 それも、生まれるのは恐らく『逆憑依』ではなく【顕象】の方。……つまり、原作のエリザベートそのままの存在が現れる、ということになるわけで。*2

 

 

「本来、既にこの世界に現れている『逆憑依』ないし【顕象】と同じキャラクターは、その成立条件が整ったとしても現れない・出現できないのが普通だけど……」

「生憎私以外のエリザが増えない、なんて保証はどこにもない。原作からしてそうなのだから、普通に二人に増える可能性大なのよ」

「うわぁ……」

 

 

 更に、問題なのがエリザベートの特殊性。

 本来、『逆憑依』などの【兆し】関連の存在は、全く同一の存在は現れない──分かりやすく言うと既に『八雲紫』が居る状態で、新たに『八雲紫』が増えることは有り得ない。

 その原理は不明だが……ともあれ、全く同じ見た目の存在は出てこないのが普通なのである。

 

 ……その事例を嘲笑うかのような挙動をするのが、俗にいう英霊達なのだが……その中でもエリザベートは、殊更におかしな挙動をしかねない。

 同じように見た目が類似しているキャラがぽこぽこ増える『アルトリア属』と違い、エリザの場合はそれぞれのキャラが完全に別モノ扱いになっている。

 一応、『アルトリア属』の方はなにかしらの理由付けがされていることがほとんどだが、エリザの場合はほぼそれがない。

 

 分かりやすく別物であると察せられるのはロボ二人とロリっ子一人で、それ以外は『何故それらが別個存在扱いされているのか』が全く不明、という意味不存在なのだ。*3

 

 

「まぁ、ちょっと悪し様に語りすぎなような気もするけど……ブレイブエリちゃんの成立過程とそのあとの扱いを見ると、正直大袈裟とも言い難いのよね……」

「しれっと増えた上でしれっと合体して新形態、更に後々その形態も別個体になっている……ですものね……」

 

 

 我が身のことながら、思わず遠い目をしてしまうエリザである。

 ……どこぞの学士殿が聞けば必ず発狂することだろう。

 

 ともかく、エリザベートにおける別個体判定というものはとても緩い。

 そしてその緩さゆえに、【兆し】関連の話では更にややこしい状況を招いていく。

 ──完全に新規でない場合、【継ぎ接ぎ(霊衣)】判定が出ないのだ。

 

 

「過去に合ったモノを参照し、それを成立させる……という方向になるってわけね。その結果、過去の配布(エリザ)を想起させてしまった場合、百発百中でその姿の私が別途構成される……って結果に行き着くってわけ」

「うーん傍迷惑……」

 

 

 今回必要なことは、可能な限り面倒ごとを飛び火させずに鎮火させること。

 そのためには必ず()()()()()()()()()()【継ぎ接ぎ】として『ハロウィンゲージ』を消費しなければならない(≒彼女が扱える状態に誘導しなければならない)わけだが、それをするためには過去の配布された自分達からはある程度離れたデザインにしなければならない……。

 それも、可能であればその姿自体でハロウィンを想起できるように、という条件(おまけ)付きで、である。

 

 そうなると、一番の障害となるのが初期配布のハロウィンエリザ、もといキャスター版のエリザベート。

 彼女は初期も初期の存在……FGOにおける最初の配布キャラ、ということもあって今ほどなんでもあり、という存在ではない。

 

 それゆえ、その見た目も魔女の服装になったエリザベート、というシンプルさであり、クラスも彼女の派生としては有り得ないとは言えないラインの魔術師(キャスター)

 ある意味ではハロウィンにおける優等生であり、それゆえに彼女を想起させない形でのシン・スタイルを目指さなければ全て無為と化す、という強敵の中の強敵である。

 

 かといって外しすぎれば、数々の配布エリザ達に阻まれる……。

 特に、日本風のエリザである『エリザJAPAN』は安易な逃げを封じるハードルとして立ち塞がる存在の一角。

 日本風アレンジ、という誰もが思い付く派生を封じつつ、それでいて実際には存在していない……というその立ち位置は、数々のエリザファンを泣かせてきた存在だと言えるだろう……!

 

 

「……ええと、話が脱線しているようなので軌道修正致しますと。真っ当なハロウィン風は初代の配布エリザ殿に、そうでないものも()()()()()()()()()という属性が日本風のエリザ殿に誘引される可能性が高く*4、そうなると日本風からかけ離れた存在であることが望まれる……ということで宜しいかな?」

「そう、そうなのよ!……それが難しいのよねぇ」

 

 

 以上の話をジェレミアが纏め、要点を改めて明らかにする。

 特に問題なのはやはり初代(ハロウィン)架空(JAPAN)、その二つ。

 せめて架空(JAPAN)がなんらかの形で実装されていればまだ話は違ったのだろうが、それこそ無い物ねだりとしか言いようがない。

 

 ゆえに、今彼女達ができる対策はただ一つ。

 ハロウィン過ぎないようにハロウィンを感じさせつつ、かといって日本風にはならないように他のエリザにも被らない形のエリザの新たなスタイルを見いだすこと。

 それこそが、今回のクリア条件になるのであった。

 

 

「……無理では?」

「無理じゃないの!やるのよ!安全なハロウィンのために!!」

「えー……」

 

 

 さっきまで確かにあったやる気がごりごり減っていくのを自覚しながら、それでもやるのだと奮起するエリザを前に、紫達はこの問題の難しさを改めて噛み締めるのだった──。

 

 

*1
最悪のパターンの場合、一人増えたのでもう何人いても同じでしょ、とばかりに増え始める可能性もある。?「理解不能理解不能理解不能!!何故そうなるどうしてそうなる!?原理も理屈も道理も全て蹴っ飛ばすんじゃなあぁあぁぁいっ!!!」?「あら、知らなかったの?エリザに常識は通じないのよ?」?「ああああああ!!」

*2
同時に聖杯案件自動発生のお知らせである

*3
かと思えば本人のお着替えの時も(他のサーヴァントと同じように)ある。エリザを真面目に考察するべきではない……

*4
新しく作ろうとすると、の意味。ほんのちょっとでも日本風の空気があればエリザJAPANに塗り潰される

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