なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「うーん、ハロウィン……ハロウィン……日本でいう盆……先祖の霊達の鎮魂……」
「ユカリがああして唸り始めてからはや数分。……なにか思い付くと思う?」
「いやぁ、どうだかなぁ」
なんとか解決策を思い付けないだろうか、と思索を巡らせる紫と、その周囲でヒソヒソと会話する他の面々。
……気概だけはたっぷりあったエリザだが、それも空回り気味であることに違いはなく。
それゆえ、彼女は早々に思考することに飽き始めていたのであった。これにはダンテも苦笑い、である。
まぁ、実のところ聡明な部分も持ち合わせないでもないエリザにとって、答えのない疑問に
そう、答えがない。
この問題には、原則正答がない。
真っ当な手段が真っ先に封じられ、かつ邪道・奇策の類いも解釈の幅で絡めとる……という構造になっているこの難問は、ある意味では逆理──パラドックス*1の域にすら達している。
まぁ、だからこそその絡まった縄を一刀両断できた時、付随する難問も解かれるだろうという確信がある*2わけだが……そこまでエリザがキチンと認識しているわけではない。単なる勘である。
そして、それが勘……あやふやなモノであるからこそ、彼女もまた真剣味を保ち続けられなかった……という今の状況に繋がるのだった。
「ハロウィンなんだからハロウィンらしく……というのが
「……それをお前さんが言っている、ってこと自体が原作派からすると驚きの結果ってやつだろうよ」
「あら、そう?」
はぁ、とため息を溢すダンテと、にこっと笑みを溢すエリザである。
……そうして笑みを向ける中で、そういえば……と一つ彼女の中に思考の種が生まれる。
といっても、現状を打破するためのものではなく、目の前の彼についてなんとなく思うことがあった、というだけの話なのだが。
それは、ダンテは王子として役不足か、はたまた役者不足であるかというもの。
原作においてガウェイン──マッシュ騎士を『
実際、彼の動きをFGOに当てはめたのなら、星をジャラジャラ出した後に一枚の
無論、彼自身の原作を思えばスタイルチェンジ──アルトリアのように全てのカードをバスターにしたり、はたまたドゥルガーのようにアーツまみれにしたり……みたいなこともできそうではあるが。
──などと、取り留めもない思考が彼女の中で巻き起こっているのは、偏に彼女の飽きが頂点に達した証左であり──。
「これだぁーっ!!?」
「ひゃんっ!?」
ゆえに、突然の叫び声に小さく飛び上がることも、その思考の迷走を思えば仕方のないことであると言えたのであった。
……他二人の男達が小さく嘆息したことは言うまでもない。
「理解したわ!必要な勝利の方程式を!!」
「ず、随分と自信満々じゃないユカリ?……ええと、右手のそれは?」
「?知らないってことはないでしょう、遊戯王カードよ遊戯王カード!」
「……ねぇユカリ、私が言うのもなんだけど
「エリちゃんがスッゴい心配そうな顔で私を見てくる!?いやいや、違うから!別にこのカードを使おうとはしてないから!!
「そ、そう?ならいいのだけど」
我が意を得たりとばかりに興奮する紫と、その右手に燦然と輝く一枚のカード。
エリザからは裏地しか見えないが、流石にそれがなんのカードであるのかを見間違えるようなことはない。
それは、このなりきり郷でも流行しているカードゲームの一つ、『遊戯王デュエルモンスターズ』のもの。
たまにそこらの広場で「ふぅん、流石だと言いたいが……流石だ」*3とか言ってるどこぞの社長っぽい人とかが遊んでいるモノの一つであり、同じくカードゲームの一種であるデュエル・マスターズなどと人気を二分する大家の一つである。
……なお、他のカードゲームも細々と流通してはいるようだが、単純にプレイヤー数的な話になるのか外で見かけることはほとんどない。
まぁ、それらのカードは基本座ってやるものであること・及びなりきり郷開発部が早々にデュエルディスクを開発・流通させたことで流行を(結果的に)作ってしまったことなどが原因であることはほぼ間違いないが。
因みにだが、現開発部室長であるとあるコハッキーの言によれば、
「後々空間拡張技術・ソリッドビジョンシステムを応用して他のカードゲームもスタンディングに対応・ないしテーブル席への変形を儲けることで、イメージしたり少女達の戦いを再現できるようにしたりするつもりです」
……とのことであったが、「それ明らかに問題発生のフラグでしょうが!?」と目の前の紫に止められたとかなんとか。
まぁ、カードゲームと世界滅亡はセットみたいなモノだから仕方ない。
話を戻して。
カードゲームと言うものの危険性を知るはずの人物である彼女が、それを手に持って興奮している……という状況に危機感を覚えてしまうのは、寧ろ正常な証。
……それを異常の代名詞であるエリザがやっている、という状態が興奮している紫に冷や水を浴びせる形となったのは言うまでもなく、彼女は慌てて弁明に入ったのだった。
曰く、このカードはインスピレーションの助けになっただけであって、
「フュージョンしようとしたわけじゃない、ってこと?」
「ノー!!フュージョンノー!!」
「ふぅん……じゃあ、そのカードは一体なんなのよ?」
「……ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました。その答えは──これよ!」
「……ええと、なにこのカード?」
気が狂ったわけではない。
そう主張する紫の言葉に一先ずの納得を見せたエリザは、更なる説明を要求。
それに対して彼女は、自身の持つカードを表返す──エリザに表面が見えるように持ち変えることで答えとした。
そうして現れたカードの名前は『冥骸府-メメントラン』。
最近増えたカテゴリの一つ、『メメント』に属するフィールド魔法の一つなのであった。
「……なるほど、『死者の日』ですか」
「ジェレミア正解!ずらしを加えるのなら類似の祭りに、っていうのは対策の初歩の初歩ってやつよね!」
「ししゃのひ……?」
そのカードを認識し、真っ先に反応を示したのはジェレミアであった。
メメント・モリ──ラテン語において『死を忘るるなかれ』という意味を持つ言葉をその由来とするこのカテゴリは、メキシコの祭りの一つ・『死者の日』をモチーフに持つカード群である。
「死者の日と言うのはメキシコにおいて
「……それ、ハロウィンじゃないの?」
「実際、
死者の日と呼ばれるその風習は、日本における盆・ケルトにおけるハロウィンなどと同じく、先祖の霊を敬い鎮めるものだとされる。
それらとの明確な違いは、この祭りは笑みを伴うものであるということ。
死を恐れるのではなく、死者と共に笑い楽しく祝うことで彼らの無念を払拭する……みたいな意味合いを持つものである、ということだろう。
「楽しむ……なるほど。同じカテゴリの子達がどことなく楽しそうなのは、そのししゃのひ?ってのが下敷きにあるからなのね?」
「そ。あと、もう一つモチーフになっているものがあるんだけど……それは貴方の方が縁深いかも?」
「ん?私に?」
「貴方個人にって言うよりは、貴方の出身作に……って感じだけどね」
そう言いながら、取り出したカードは『冥骸合竜-メメントラル・テクトリカ』。
メメントにおけるキーカード・エースカードであり、そのモチーフとなる存在はアステカ神話における冥府神・ミクトランテクートリ。
……冥府神、という一点を思えば、とある全能神を想起させる存在だとも言える。
実際、その存在が判明した当初は、そちらがモチーフであるのではと思っている人も多かったような気がするし。
「……もしかして」
「そう、第二部七章にて登場した全能神。──テスカトリポカ。アステカ神話をもモチーフに持つカード群、ってことになるのよね、この子達」*4
そして、直接その名前を口にした彼女は──にやり、と意味深な笑みを浮かべていたのだった。