なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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寝不足の閃きは大抵ドツボ

「……まぁ、テスカトリポカを想起した、っていうのはなんとなくわかったけど。それが問題解決にどう繋がっていくのよ?」

「話は最後まで聞きなさいよ。FGO関係者がテスカトリポカと聞いたのなら、ついでに想起するモノがあると思わない?」

「ついでに想起するモノ?……ええと、それってもしかして主人公の家を自称する……」

「そう、トラロック!彼女の存在こそ、私達が問題を解決する最良の手段だったのよ!」

「えー!?」

 

 

 例の全能神を思い出した、ということはわかったが。

 はたしてそれが今回の解決策とどう関わってくるのか?……ということには思い至らなかったエリザ。

 そんな彼女に教えるように、紫はそこから更に想起しろと言葉を繋ぐ。

 

 ──そう、全能神たるテスカトリポカが、自身の()として扱っていたとある存在。

 その名をトラロック。主人公の()を自称するという、ある意味ではまったく新しいアプローチの方法を生み出したキャラクターである。

 

 

「つまり……どういうこと?」

「いい?まずハロウィンの近似的祭事である死者の日、という形で私達はメキシコ、ひいてはアステカ神話へとアクセスする手段を得たわけ。更に、その神話の全能神であり最高神でもあるテスカトリポカの言葉、というある種の信託とも言えるそれを以て、更にトラロック──正確にはそれそのものではない、役割を羽織った者(プリテンダー)への派生権さえも得た──」

「……え、もしかしてユカリ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「大正解!!」

「……わ、わぁ。私貴方のこと誤解してたかも。やる時はやるのね、盛大に」

 

 

 その姿から紫は、一つの答えを導き出していた。

 トラロックの本来の姿は都市に宿った精霊、()()()()()()()()()()である。

 その考えをハロウィンという祭事に当てはめ、ハロウィンそのものを擬人化させよう……というのが、彼女の思い付いた策。

 

 すなわち、アルティメット・ハロウィンエリザである!

 いや、ちゃんと正確に表記するなら『シン・アルテミット・エリザ』になるだろうか?

 

 ……なお、本来ならそんな大それたことは行えないのだが、ここはなりきり郷、もとい『逆憑依』の影響下。

 言葉による説得力を増し増しにしていけば、あからさまにおかしな結論でも何故か成立する、そんな場所である。

 普段はそれを『口は災いの元』として忌避しているが……今回はそれを逆に利用しよう、ということになったわけだ。

 

 そして、その話を聞いたエリザはと言うと──驚くと同時、仄かな尊敬の念を紫に対して抱き始めていた。

 なにせ、エリザからしてみれば紫と言うのは詰めが甘い領主、といった印象。

 トラブルの後始末を他人に投げ、椅子に座ってふんぞり返っている……とか、そんな感じのイメージだったのである。

 

 まぁ、責任は全部私が取る、と泰然としているとも言えるし、そもそも全てを他人任せというのもエリザの勘違い、というやつなのだが……ともかく、紫に対しての心象があまりよいものではなかった、ということに違いはあるまい。

 

 ところが、今の紫はどうだろう。

 エリザには思いもよらなかった斬新な方法を打ち出し、かつそれを実行に移せるだけの下準備も十分。

 ──つまり、エリザは今の紫の姿にある種のカリスマを見たのだ。

 

 ……なお、賢明な読者諸君はなんとなく理解しているだろうが、この二人まともな精神状態ではない。

 見ればわかるが瞳孔がぐるぐるしている。完全に錯乱状態である。

 

 従者たるジェレミアはおろおろと右往左往しているが、同じように外様で成り行きを見守っているダンテが微動だにせず、ただ面白そうに笑っているため止めるに止められない。

 そしてそのダンテの方も、本来はハロウィンを世界に広めるために【兆し】から派生した存在だったりするのだが……彼女達の語る内容がぶっ飛び始めたため、笑うしかなくなっていたりする。ちょっとなに言ってるかわからない状態、というわけだ。

 

 そのため、ストッパーがいない。

 計画の無謀さを指摘する者がいない。

 結果、無謀かつ無茶苦茶なその案は賛成多数により可決し、流れるように実験が開始。

 

 ハロウィンという概念そのものと化した究極のエリザを生み出すためのそれは、見事なまでの失敗と『なんでよー!?』という二人の悲鳴と共に、真っ白な輝きの中に呑み込まれていったのであった──。

 

 

 

 

 

 

 ……はてさて、ゆかりんから事の顛末を聞き終えた私なのだけれど。

 とりあえず、感想としては次のようになる。

 

 

「お ば か !!」

「あいたっ!?」

 

 

 虚空から取り出したるハリセン(数百話ぶりの登場)によりツッコミを繰り出したわけだが……いやホントに。

 焚き付けたのは恐らくハロウィンの悪魔とやらなのだろうが、その結果行くとこまで行ってしまったのはゆかりんとエリちゃんの二人。

 

 ……となれば、その当人を叱らないわけにも行くまい。

 そんなわけで、暫く当事者達へのお叱りタイムが挟まることとなったのであった。ゆかりん涙目である。

 

 

「うー、仕方ないでしょー、実際なにかしら対処しなきゃいけないのは確かだったし、エリちゃんの意志をここで折ったらそれこそ再起不能だったでしょうし……」

「そりゃまぁそうでしょうけど……そもそもなんで貴方達だけで決めたのよ。呼びゃいいでしょうよ私とか他の面々とかを。エリちゃんは見つけられなかったって言ってたけど、それってつまり最初の内は私を呼ぶつもりがあった、ってことでしょ?」

「……あっ」

「それもすっぽ抜けてたってわけね……」

 

 

 うーんこの。

 ……まぁ、その辺りも思考を誘導されていた、ということなのだろう。

 私相手にはそういうの(思考誘導)は効かないし、それによって彼女達の動きを邪魔されるのはハロウィンの悪魔としても困る結果だった……というのであれば、一応の納得もできなくはない。

 

 ……できなくはないが、どうにも最後の方は二人のコントロールを失っていた節もあるし、そう考えると悪手以外の何物でもなかったのでは?

 と思わないでもない私である。

 

 

「えっと?」

「トラロックのことを話題に出した時点で、ハロウィンの悪魔の思惑は全部外れた、ってこと。……多分だけど、本来なら溜まりに溜まった『ハロウィンゲージ』を使うってタイミングで、自分がその場に割って入ってその力を掠め取ろう……みたいなことを考えていたんじゃないかしら?」

 

 

 そう言いながら、ちらりとなりきり郷ちゃんの方に視線を向ける私である。

 

 ……ハロウィンの悪魔なる存在が二人を誘導したのは、恐らく不安定な自身を確固たる存在として確立するため、というのが正解だろう。

 恐らくだが、形而上学的な存在である悪魔の一種であるかの存在は、ハロウィンという概念のごく一部しか利用できていなかったのだ。

 ダンテ君の姿をしていたのも、恐らくはハロウィンに活動実績があり、かつ再現できる中で一番戦闘力が高かった……というのが大きいのだろうし。

 ……それはつまり、ハロウィンという概念の中でしか行動できていなかった、ということになる。

 

 ハロウィンの悪魔なのだから当たり前なのでは?

 ……という疑問が飛んできそうだが、それに関してはこう返すしかあるまい。『ハロウィンの』悪魔と『ハロウィンの悪魔』では意味合いが違う、と。

 ハロウィンという祭事の中でしか動けない存在と、ハロウィンという名前を背負う存在とではその強度が違う、とでもいうか。

 

 ともあれ、かの存在は自己の完全な確立のため、『ハロウィンゲージ』をなんとかして掠め取ろうとしていた。

 そのためにはなんとしてでもそれを消費する方向に話を持っていく必要があり──そうして誘導した結果、思惑を達成しすぎた、と。

 

 

「ええ、あくまで私の中に残る残滓から読み取れる限りは、って感じですけど。ゲージの使用を決意させたまでは良かったけど、その消費の仕方が想定外だった……みたいな感じですね」

「想定外、と言うと……」

「多分だけど、諦めてエリちゃんを増やす方向に行くと思ってたんじゃない?結果は霊衣(継ぎ接ぎ)──言い換えると羽織るものを作る方向に行っちゃったわけだけど」

 

 

 この辺りはまさに言葉の綾とでも言うべきか。

 もしくは口は災いの元?

 

 ……ともかく、言葉遊びが想定より上手く行きすぎた結果、というのが正解であるのはまず間違いあるまい。

 当初の予定であれば、ハロウィンの悪魔が想定していたのは新たなる霊基の創造だったのだろう。

 霊衣という形で創造するのは不可能に近く、どう想定してもなにかしらの既存エリザに引っ掛かって成就しない、と考えていたのだとも言えるか。

 

 ところが、暴走したゆかりんは『シン』とか『アルテミット』とか付けることにより、それらの問題を力業でクリアしてしまったのである。

 例え既存のモノを想起させようとも、それは『新生(シン)』であり『究極系(アルテミット)』である……と定義付けることで。

 

 

「プリヤ世界でクラスカードを使って変身した衛宮士郎(お兄ちゃん)みたいなもの、というか。あれって過去作の色んなエミヤシロウを想起させるけど、それらとは別物の存在だったでしょう?……その時ゆかりんがやってたことは、偶然その流れに沿うものだったってわけ」

「な、なるほど……」

 

 

 過去のエリザの姿を想起させたとしても、それはそもそもその想起こそを意図したモノであるので問題ない……みたいな?

 ともかく、名付けによる制御を図らずも達成していたゆかりんは、そのまま行けば見事に『シン・アルテミット・エリザ』を爆誕させていたことだろう。

 ──そしてそれは、恐らくなりきり郷崩壊を招いていたはずである。

 

 

「えっ」

「だって『シン』で『アルテミット』ですもの。……出てくるの、どう考えてもヤバイやつじゃない」

「そのことを私の母も察知していたようで……結果、そもそもの起点──トラロックの考え方、概念の擬人化という部分を流用して他の出力を見出だした、って感じになるみたいです。有り体に言えば、私の母は起爆寸前の爆弾を横から掠め取って安全な場所で爆発させた、ってことになりますね」

「えっ」

 

 

 暴走ゆかりん達がそのままエリちゃんを新生させていた場合、発生したのは恐らく『U-オルガマリー』のような敵性体の降臨。

 ビースト・ハロウィンなる奇怪生物が誕生することを察知したハロウィンの悪魔は、そもそもこの奇天烈(きてれつ)な儀式(?)が成立することとなった要因──トラロックのあり方を利用し、別の──もっと身近なモノの擬人化へと派生させることを決意。

 

 自身という存在を、トラロックにおける精霊と同一視させ、荒ぶるハロウィンゲージを全て消費し──結果、なりきり郷の擬人化として出力した、と。

 つまり、始まりこそ私利私欲で動いたハロウィンの悪魔は、最終的になりきり郷を救ったのだ。

 

 その行いに敬意を表し、無言の礼を取る私たち。

 ただ、当事者たるゆかりんだけは、話の流れに付いていけずにぽかんとした間抜け面を晒していたのだった──。

 

 

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