なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
そういえばこのなりきり郷も、ある意味地上に伸びる地下世界のようなもんだよなー。
そこら辺も【継ぎ接ぎ】発生の要因なんだろうなー、とため息を吐く私である。*1
──唐突なオルト・ハロウィン発生の報に、一時騒然となった室内だったが、今は比較的落ち着きを取り戻している。
それは何故かと言われれば、当のオルト・ハロウィン自体の性質によるところが大きいのであった。
「祭事渓谷、ねぇ。恐らくだけど、本来のオルトの浸食固有結界──水晶渓谷とか空想樹海とかと同系列の能力、ってことだけど……」
「効果は周囲をハロウィンにすること。……原種達と比べると遥かに穏当な効果よね」
ゆかりんが頬杖を付きながらそう述べるが……まったくもって同意である。
本来『侵略異星外来種』とかなんとか、そんな感じの物騒な名前で呼ばれるオルトと呼ばれる存在は、型月世界観的には『どうしようもない絶望』として語られるモノである。*2
曰く、堅く・柔らかく・温度差に強く・鋭い外皮を持ち、地球上のあらゆる手段を以てしても傷付けることは叶わず、そもそも死の概念というものすら持ち合わせていない……。
その脅威というか恐ろしさというか、実際に相対する羽目になったマスター諸君は十分すぎるほどに味わったことだろうと思うが……ともあれ、そうして対峙した相手すら本来の原種ではなく亜種だった、というのだから救われない。
……とりあえず、オルトという存在が意外と学習能力が高い、ということは間違いないだろう。
その学習の結果、ということなのか。
亜種たるオルトは、本来の自己の能力とはまた別の方向性を持った能力──浸食固有結界を得ていた。
本来のそれが周囲を水晶に変化させていく『水晶渓谷』だったのに対し、亜種オルトのそれは周囲の植物を全て空想樹に変えていくという『空想樹海』と呼ばれるものであり、その変化は数少ないオルトの情報を知るもの達にとって、驚愕をもたらすに足る情報であった。*3
それと同じように、今なりきり郷に現れたオルト・ハロウィンも、自身の浸食固有結界の効果を変化させている。
それが、『祭事渓谷』。周囲をハロウィンに変化させていく、という効果の浸食固有結界である。
……うん、ツッコミたいところいっぱいあるよね?
でも今は大人しく概要を聞いて欲しい。聞いたあとで『なんでだよ!!』ってツッコんで欲しい。
そのうちFGO本編で似たようなこと起きるかもしれないけど、その時はその時でみんなで笑ってオルトを狩ろうな!(ヤケクソ)*4
「ハロウィンゲージの消費による私の創造の対として生まれたものであるので、かの蜘蛛は最初からハロウィンの使者としての属性を持っていた……というわけなのです」
「ええと……黄昏の腕輪とクビアみたいな?」*5
「……よく分かりませんが、方向性を異にする同位体、という方向性であるのであれば問題ないかと?」
まず、そもそもオルト・ハロウィンが生まれたきっかけというのは、ハロウィンゲージの総量となりきり郷ちゃんの実体化に必要なエネルギーの量が
つまるところ、なりきり郷ちゃんの創造だけではエネルギーの暴走を止めるに至らなかった、ということになるのである。
「……人一人を創造するのって、結構なエネルギーが必要だと思うんだけど?」
「ええ、その通り……なんですけど、それを踏まえてもなおエリザさんが無意識に集めていたハロウィンゲージの総量には遠く及ばなかった、というわけですね」
「あの子一介の『逆憑依』のはずなのに、背負わされてるものが大きすぎない?」
脱、ハロウィン!……がここのエリちゃんの掲げた目標じゃなかったんかい。
離れようとしたら反作用でハロウィンが追っかけてきた、ってレベルなんだが???
下手するとその内ハロウィンの理を司る神の一柱、みたいなことになってそうでお労しさが半端じゃないんだが……。
ま、まぁともかく。
無意識にエリちゃんが集めていたハロウィンゲージが多すぎて、人一人の創造では収まり切らなかった、というのは事実。
そもそも場所の擬人化、という形で可能な限り消費量を水増しした上でこの状況なので、こっちが思っているより大事だった可能性は否めない。
ともすれば、その内自然に破裂して周囲を消し飛ばしていた、とかの事態が起こっていた可能性も否定できない、というか?
「そういうわけなので、ハロウィンゲージに火が着いた時点で早急に消費する必要が生じたわけです」
「その『火が着いた』ってのは、一度貴方を創造しようと動かしたから、ってことよね?」
「端的に言うとそうなりますね!」
なので、それだけのエネルギーを一度稼働させ始めてしまった以上、急に止めることなんて不可能。
しかも、一度方向性を定めてしまったのだから、他の向きに急転換するのも至難の技。
言ってしまえば、停止直前ではなく運行中の新幹線を別の線路に移動させようとするようなもの。
線路の切り換えを用いずにそれを行おうとしているのだから、まず大事故になるのが普通というわけである。
なので、その時点でできることはそのまま走らせること──なにかしらの存在を創造することだけ。
それも、場所の擬人化では足りなかったのでそれよりリソースの多そうな相手を見繕って、だ。
──この時点で、エリちゃんの思考に余裕はまったくなくなった。
「八雲さんがどうだったのかは知りませんが、少なくとも直接ハロウィンゲージを操作する形になっていたエリザさんの方は、『このままじゃ無理!!』ということは如実に感じていたはずです。……そりゃまぁ、思考がパニックになるのも仕方のない話、と言いますか?」
「あー……『え?足りてないの?これで?』『え゛、このままだとエネルギーの行き場がなくなって爆発する?!マジで言ってるのそれ!?』『え、えっとえっとえっとえっと、すごい生き物!?すごい生き物を作ればいいのね!?ええとええと、すっごい生き物すっごい生き物……あ゛』って感じになったのね……」
「ご名答でーす」
とにかく早急にエネルギーを使用しないと、まず間違いなく自身は弾け飛ぶ(爆心地の間近なので)。
それだけで済むのならまだマシで、場合によっては周辺区域──下手すると日本国ごと吹っ飛ぶと感覚で理解してしまった彼女は、走馬灯のように自身の記憶の中のすごい生き物、達を思い出してしまい……結果、彼女の原作でもあるFGOに出てきたすごい生き物──オルトを想像してしまった、と。
「そこからはあれよあれよという間にハロウィンゲージが消費され──結果、オルト・ハロウィンなる怪生物が生み出された、というわけですね」
「で、実際に対峙したことがあるのは亜種──攻撃性の低い・もしくは目的意識の低い方だったから、そちらの例に倣い件のオルトの目的は使われたエネルギー……ハロウィンゲージの性質に寄った、と」
「そういうことになりますね!」
オルト一つを創造するのに必要なエネルギー量がどれくらいなのかは分からないが、ともかくハロウィンゲージはエリちゃんの願い(※願ってません)を受諾。
有り余るそれを有効活用し、結果オルトを生み出すことに成功した、と。
……ただ、そうして生み出されたオルトは原種のそれではなく亜種からの派生。
攻撃性が低い、とされたかのオルトと同じであるため、目的意識のない──言い換えれば主体性のない存在であった。
それゆえ、自身の目的を外付けのモノとして必要とし、結果使われたエネルギーをそのまま目的として定めた、と。
それゆえ、オルト・ハロウィンは今のところハロウィンを求めるだけの生き物と化している。
周囲に無差別にハロウィンを振り撒くだけなので、危険性は他のオルトと比べれば遥かに低い、というわけだ。
……まぁ、だからといって放っておくと、そのうち地球上全てをハロウィンにし始める可能性が大なのだが。
「地球上全てをハロウィンにする……?」
「クリスマスとかお正月とか、全部ハロウィンの延長線上になるってこと。ハロウィン以外の全てが認められない世界になる、と言い換えてもいいかも?」
「それはそれで微妙に傍迷惑ね……」
さらに面倒臭いことに、ハロウィン属性を持たないモノをハロウィンに同化してしまう(≒仲間にしてしまう)ため、迂闊に抵抗するとハロウィンにされて無力化されてしまうとのこと。
現状はハロウィンの申し子であるエリちゃん達が可能な限りハロウィン汚染を防いでいるが、この分だと一週間も経たない内に地球上は全てハロウィンに沈むとのことであった。
……絵面はギャグだがわりと地球滅亡の危機である。
「あとねー、一番ヤバイのがオルトってだけで、実は他にも色々とハロウィンの空気に誘われて出てきてるヤバイのがいるみたいでねー。そういうのも含めて、全部解決して欲しくてここまで来たってわけ」
「なるほどなるほど。……部屋で寝てていいかな?」
「ダメー!!本来ならハロウィン過ぎれば全部消えてたんだろうけど、オルトがいる以上ハロウィンは常に保たれ続けるからハロウィンが終わる道理はないのよー!!」
「うーんこの。ここでも実質的な王なのねアイツ……」
なお、ゆかりんの言によれば、オルト・ハロウィン以外にもトラブルの種は振り撒かれているとのこと。
……相手がオルトでさえなければハロウィン当日を過ぎれば全部露と消えて終わっていたのだが、どうにも空想樹的な事象継続効果をこっちのオルトも持ち合わせているらしく。
結果、全てのトラブルの種を解決したのちにオルトを倒そう!……みたいな、縮小版総力戦を決行させられる羽目になったのであった。
……うーん、ボックスイベかなー?()