なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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ギュピッ、ギュピッ(足音)

「……ば、バストレボリューション!!?」*1

「ぴぃっ!!?」

 

 

 ──はっ!?

 私はどこだここは誰ださっきのなにズァークどうなった!?

 ……みたいな疑問が脳内を過ぎ去っていき、ふと視線を周囲に巡らせれば、なんだか豪奢な内装が目についた。

 ふぅむ、どこかのお屋敷かな?そして私が寝ているのは更に豪華なベッドの上、と。

 

 ……いや、前後の状況がさっぱり繋がらないのだけれど?

 私、さっきまで空の上だったよね?自由落下してたよね?爆発に巻き込まれて、意識を失ってたよね?

 みたいな感じに、高速で記憶を掘り起こしているのだけれど……うーん、やっぱり今の自分の状況に結び付くようなことに行き着かない。

 そうしてうんうんと唸り声をあげ続けて暫し、自分が起きたばかりの時に、近くで誰かが悲鳴をあげていたことを思い出した。

 

 

「わ、わわわわ私を食べても美味しくないですよぅ!!」

「……デカ乳エルフ、だと……」

「で、デカ!?いいいきなりなんなんですか貴方!?」

「いきなりなんだはこっちの台詞じゃいっ!!喧嘩売っとんのか我ぇぃっ!!?」*2

「ぴえぇっ!!?」

 

 

 そうして周囲を見渡せば、居ました居ました、でっかいお胸のエルフさんが!

 

 ……この子、基本的に胸についての言及しかされてない印象があるんだけど、それはそれとして、この子もなんか原作と性格が違う感じがあるような?

 まぁ、そもそもの初登場が八巻なうえ、アニメと原作だと他の人との繋がりさえも結構変化していたりするし、意外と演じるのが難しいキャラ、なのかもしれないけれども。

 ……なにが言いたいかというと、まぁ多分なりきり組だろうなこの子、ということなわけで。

 

 それはそれとして、この子のでっかい乳を見てると、無性にイライラしてくるんだけど、どうにかならないのだろうか?……ならない?だよねー。

 

 

「……はぁ。悪かったから、謝るから。……状況、説明してもらえる?」

「え、あ、はい。えっと、ご存知だと思いますけど、ティファニア・ウエストウッドです。……よろしく、でいいのかしら?」

 

 

 こちらのため息混じりの言葉に、私の目の前の彼女──金の妖精とでも言うべき少女は、控えめな笑みを浮かべながらそう告げるのだった。*3

 

 

 

 

 

 

「気を失ってはや三日、ねぇ」

 

 

 金の妖精──もとい、ティファニアから聞くところによれば、あのエンシェント・ドラゴンとの戦闘から、既に三日が経過しており、今の現在地はガリア王都・リュティスのグラン・トロワの一室、なのだそうだ。

 ……思いっきり無茶苦茶をやった代償に、私は暫く意識を失っていたらしい。まぁ、ビジューちゃんとしてもキーアとしても、わりと無謀なことをやった自覚はあるのでさもありなん、と言ったところか。

 

 ともあれ、あの一撃にてエンシェント・ドラゴンは即死。

 空の旅を妨害する者も居なくなったため、残されたメンバーは大急ぎでリュティスまで向かったのだという。

 そしてたどり着いたグラン・トロワで、重病人と見なされた私はすぐさまベッドに叩き込まれ、今の今まで眠っていた……というわけだ。

 

 

「なにをしても起きない、ってお連れの人がすっごく慌てていたわ、あとで謝っておいた方がいいかも」

「……うん、そうする」

 

 

 私が目を覚まさずに慌てていた、というのは──多分マシュだろうか?

 他のみんなも心配はしてくれただろうけど、取り乱すほどに慌てたと言うのなら、多分マシュだろう。……余計な心労を掛けたのは確かなので、あとで謝っておこうと心にメモしつつ、目的地へと歩を進める。

 

 ……寝起きでここまで長距離を歩かなきゃいけないというのは、なんとも辛い話だが、こうして起きてしまった以上は、ベッドで横になっているわけにもいかない。

 さっさと話を終わらせてしまうのが、現状での最優先事項だろう。……なんてことを思いつつ、皆が集まっているという部屋に、ティファニアの先導のもと進んでいるのであった。

 

 

「ごめんなさいね?私もフライとか使えないから、歩くしかなくって」

「お互い様よ、虚無なんだし仕方ないわ」

 

 

 さっきまでとは裏腹に、落ち着いた様子でこちらに声を掛けてくるティファニア。

 ……世間知らずで天然気味なところはあるが、そもそもに礼儀正しい少女……というような感じの子だったはずだし、こっちが素なのだろう。

 まぁ、こちら側の口調のロックが外れている以上、どこかしら本人とは違う場所があるのだろうが。

 

 そんな感じに細々と会話をしながら宮殿内を歩き、ようやっと目的地にたどり着いた私は、小さく深呼吸をする。

 ……鬼が出るか蛇が出るか、双子王みたいに設定とかが根本的に変わっている以上、なにが出ても驚かないようにしなくては。

 

 そうして決意を胸に、いざ鎌倉!*4……ならぬ、いざ会合!みたいな気分で扉を開け。

 

 

「フュ───」

「フュ───」

 

「「ジョンッ!!」」

 

「「ハーッ!!!」」

 

「!?」*5

 

 

 網膜に飛び込んできたその光景に、思わず脳裏に疑問符を飛ばす私。

 困惑する私の目の前で、二人の男が珍妙な舞を躍りながら指を触れさせた時、辺りが謎の輝きに包まれ──。

 

 

『余はシャルルでもジョゼフでもない』1
 
『余はシャルルでもジョゼフでもない』
                 

『───余はジョルル。この国を治める者だ!』1
 
『───余はジョルル。この国を治める者だ!』
                     

 

「……はい?」

 

 

 現れた謎の偉丈夫の姿に、私の混乱は最高潮に達するのでありました。*6

 

 

 

 

 

 

 ドラゴンボール的な気の高まる音を発しつつ、改めて席に座り直したジョルルなる謎の人物を横目に、私も用意された席に座る。

 ……ティファニアも同じように席に座ったのを確認して、最初から席について苦笑を浮かべていた、長い金の髪の男性を見れば。

 そこには、とりあえず原作通りの彼の姿があったのだった。

 

 

「……まぁ、見た目による取り違え、ないし入れ替わりが多発するこのハルケギニア。……貴方の心配はごもっとも、ですね」

「罷り間違って獣殿とかだったりした日には、刺し違えてでも滅ぼしに掛かるところでした」

『そもそも、奴がここに居るのであれば、このように和やかな歓談というわけにもいかんだろうよ』

 

 

 がっはっはっ、と豪快に笑うジョルル氏をジト目で見返しつつ、改めて金糸の髪の彼──聖エイジス32世ことヴィットーリオ・セレヴァレに視線を戻す。*7

 彼は、特に()()を纏うということもなく、ただそこに座って微笑みを浮かべている。……そのことがどれほどありがたいことなのかというのは、もはや語る必要もない話だろう。

 

 声や容姿、性格などの類似から、被せられたり・付け加えられたり・入れ換えられたりする()()らは、やられている方や、それを見る回りからすると、堪ったものではない……というのは、散々実感してきたことである。

 幸か不幸かなりきり組としてこちらに現れている人々に、世界を害するような性質の者は居ない……居ない?ああうん、たぶん居ないわけなのだが。

 ……そのせいで例のノッブのような、周囲を害するモノが発生している節もあるようなので、不幸の割合が多いような気がしていたりはする。

 まぁ、そういう時は中身の無い現象のようなものでしかない、それらの敵対者をぶっ飛ばせばそれで済むので、幾分か気は楽なのだけれど。

 

 ──それがもし、中身のある誰かだったのなら。私はどうするのだろう?

 

 ……なんてことを、ちょっとシリアスに思ってしまう今日この頃、みたいな感じでもあるのだった。

 

 

「まぁ、相手が()()()()のとんでも軍団なら、一切躊躇せずぶっ飛ばしますが」

「躊躇していたら終わってしまいますからね。……とはいえ、再現度の壁にぶつかるがゆえに、その危険性は皆無……の筈でした」

『【複合憑依(トライアド)】【継ぎ接ぎ(パッチワーク)】そして【顕象(デミゴッド)】。宜しくない要素が次々と山積みになった』*8

「それゆえに、貴方は()()()()()でこの地の扉を叩いた。()()()()()()()への対処法を求めて」

 

 

 ───他の虚無の担い手達が、こちらに視線を向けてくる。

 ……中身を傷付けず、悪影響を及ぼすモノのみを消し去る『虚無』。

 その扱い方を無意識に求め、私は自分の意思でここに来たのだと、彼らは告げる。

 

 

「ゆえに学びましょう、教えましょう」

『そなたが求める力のありかを』

「そして、貴方は為るのです。──()()()()に」

 

 

 朗々と告げる彼らに、私は──。

 

 

「え、いやだけど」

 

 

 と答えを返した。

 

 

 

 

 

 

「あ、せんぱい!」

 

 

 部屋から出ると、マシュが真っ先に近付いてきて、こちらに声を掛けてきた。ほんのり涙目な彼女に申し訳なさを覚えつつ、抱きついてきた彼女の背に腕を回して抱擁を交わす。

 

 

「よかった……っ、せんぱいがご無事で、本当によかった……っ!」

「大袈裟ねぇ、あんなんじゃ死にはしないわよ」

 

 

 と軽口を叩くものの、ティファニアに聞いたところによれば、ここに運び込まれたばかりの私は土気色の顔をしており、生気の欠片も感じられなかったという。

 ……思った以上に死にかけである。ビジューちゃんボディには負担が大きかったらしい。

 そのあたりのことを思い至らなかったのも、ちょっと浮き足立っていた証拠、という奴なのだろうか。

 なんてことを、私と同じように部屋から出てきた、他の虚無の担い手を見ながら思っていると。

 

 

「いやはや、断って頂けてほっとしました。了承されていたらどうしようかと」

「……やっぱり、試していたのですね?」

 

 

 他のみんなも集まってきたため、口調のロックが再び掛かったのを実感しつつ、ヴィットーリオに声を掛ける私。

 ……あのあと、嫌だと言った私を見て、彼らは一様に相貌を崩し、互いに笑みを交わしあっていたのだ。

 

 

「私達は確かに虚無の担い手としてここにありますが……貴方もお察しの通り、その格としては劣るのです」

「なる、ほど?」

 

 

 彼らはあくまでもなりきりとしての彼らであり、『虚無』を扱うには足りていない……ということなのだろうか。

 まぁ、

 

 

『帰ったか、シャルロット』

「!で、伝説のスーパーお父様……逃げてキュルケ、勝てるわけない……」*9

「いや、色々ツッコミところしかないのだけれど?」

 

 

 とかやってるジョルル……もとい、ジョゼフとシャルルの二人までそうなのか、と問われるとどうなんだろう、みたいな気分にはなるけれども。

 ……まぁ、そこを踏まえてもなお、『虚無』には足りないのだろう。

 

 

「つまり、今私が我を通そうとするのなら、あなた方には対処する手段がない、ということですか?」

「平穏を甘受した代わりの咎、と言ったところですかね。一応ビダーシャル氏に控えて頂いてはいますが、彼もまた穏健派(なりきり組)。真に虚無に目覚めた貴方相手に、どこまで粘れるものやら」

 

 

 やれやれと首を振る彼の様子に、改めて自分が大きな分岐点に立っていたことを知り、ちょっとだけ恐ろしくなる私なのだった。

 

 

*1
『胸革命』。『ゼロの使い魔』内の用語。ティファニアにサイトから送られた一種の称号。彼は胸魔神だからね、仕方ないね

*2
何故人は胸の大きさで争うのか。平らでも豊かでもいいじゃないか。しかしてその闘争は終わらず、こうしてまた平らな方がキレるのである

*3
『ゼロの使い魔』より、ティファニア・ウエストウッド。愛称はテファ。ハーフエルフの少女であり、ミス・ロングビルにとっては妹のような存在……なのだが、アニメでは繋がりがあやふやになっている。登場タイミングが遅いうえ、サイトへの好意を自覚したのもかなり後の方と、地味に二次創作殺しな素性をしている。彼女を出演させるなら、登場タイミングまで話を進めるか、いっそ無理矢理登場させるかくらいしかない。性格とか見た目とかから、人気キャラではあるので試した者も多い、はず

*4
『いざ鎌倉』は、全力を尽くして働く時、という意気込みを表す慣用句。鎌倉時代に武士達が抱いた心意気から生まれた言葉、なのだとか。なお、『鉢木(はちのき)』という能の演目が語源とされるが、実際は違うそうな

*5
『ドラゴンボール』より、フュージョン。二人の体格や気の大きさが近い人間が、不思議な躍りを踊ることによって一つに合体する不可思議な術。合体していられるのは大体30分ほど

*6
『ゼロの使い魔』のキャラクター、ジョゼフ1世とシャルル……が、融合した存在。無論、原作にこんなものは居ない

*7
『ゼロの使い魔』のキャラクター。ロマリア連合皇国の教皇。原作においては、ある意味黒幕

*8
例のノッブみたいなのの呼び方が、【顕象】。現象と顕現からの造語

*9
アニメ『ドラゴンボール』シリーズの映画の一つ『燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』にて、伝説の超サイヤ人を見たベシータが発したとても情けない台詞『やめろ!勝てるわけない!あいつは伝説の超サイヤ人なんだぞ!』から

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