なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
やる気はでないが、相手がオルトである以上は動かないわけにもいかず。
仕方なく、マシュを連れて家を出る私なのであった。
なお、なりきり郷ちゃんは当初家に置いていくつもりだったのだが……。
「トラブルの種達は巧妙に姿を隠しています。私のナビがあった方が探しやすいと思いますよ?」
とのことで、結局連れていくことになったのであった。
うーん、彼女が本当にこの場所の擬人化であるのなら、できれば前線には連れて行きたくないんだけどなー。
「彼女の受けた傷が、同様にこのなりきり郷の破壊に繋がりかねないから……ですね?」
「うんまぁ、そういうこと。……こういう無機物──それも建造物の類いと強く結び付いた存在ってのは、基本互いの損傷がフィードバックするものだからねぇ」
いわゆる九十九神とその化身の関係性、とでもいうか。*1
擬人化の概念の起源とも言えなくもない九十九神は、人が大切にしてきた物品には神が宿る、とする民間信仰の一つである。
……まぁ、元を正すと宿るのは妖怪であり、なんなら
その話にしたって、『百年モノを使うと化けて出る』という迷信が先にあり、実際に化けてでたのでこれは本当だったんだ、みたいな感じに肉付けされていったのだろうが……。
「百年ちゃんと使ってれば、例え化けてでても祟られることはなかったんじゃ?……みたいな再解釈があったんじゃないかなって思うのねー」*2
「当時における百年というのも、しっかり確認していたかと言われると微妙ですからね」
言い換えると、そもそも『百年』というのも目安でしかないよね、みたいな?
……それよりも前に化けて出られるだけの力は蓄えており、それをしなかったのは偏に
ともかく、長く使ったものが命を持つ、という考え方は古くからあるものであり、特別な考え方ではないというのは確かだろう。
海外でも『アニミズム』*3という形で存在している辺りまさに、というか。
で、話を戻すと。
そういう無機物に宿る存在というのは、原則その無機物と状態を同期しているのが普通である。
例えば宿っているのが茶碗だとして、それが綺麗にされていれば宿っている側も身綺麗になるし。
仮に茶碗が欠けてしまっていたら、宿っている方もどことなくボロボロになったりする。
もし茶碗が粉々に砕けてしまった日には、宿るモノも同じように粉々に砕けてしまうだろう。
これは、昨今の作品で語られるような擬人化──特になにかしらの本体とでも呼ぶべきモノを持つような存在においても、似たようなことが言える。
仮に城の擬人化であるならば、元の城が華美な見た目をしていればそのキャラも相応に派手になるだろうし、城が壊れるごとにそのキャラの服も破損していく……みたいに。
「この辺りを真面目に語るのはあれなんだけど……本体というべきモノがあるとして、それを体に見立てるとどうなるか?……みたいなことになるんだと思うんだよね」
「外装は服、絵柄があれば顔や表情。キャラクターから元の存在を想起させることも必要とされる擬人化というのは、裏を返すと特定の部位の破損を照応させられてしまう……ということですね」
(やだ、滅茶苦茶真面目に考察されちゃった)
流石はマシュ、全力ですな。
……冗談はともかく、マシュの言う通り擬人化というのは元となった存在をある程度想起できるようにしないといけない。
そうでなければ擬人化である意味がないというか、勝手にそのキャラを擬人化した存在であると主張している変な人になるから仕方ないというか……。*4
ともかく、本来人格を持たない存在にそれを付与するとなると、それらしい個性を元の姿から見いだす必要があるのである。
例えば真っ白な外壁が特徴的な城があるとして、その城を擬人化するとなればその『白さ』を何処かに加えよう、見映えのよい特徴にしよう……と考えるのが普通である。
さっきの例で行くなら真っ白な着物、という形になるのだろうが……インパクトが足りないのなら全身真っ白にするとか、そういう形での懸案が必要となってくるだろう。
そうして生まれたキャラクターは、ある意味でその『白さ』に理由がある存在、ということになる。……呪術的な繋がり、と言い換えてもいい。
それゆえ、その白さの根幹となった部位──真っ白な外壁がなんらかの理由で失われた時、そのキャラクターもその『白さ』を失う結果に繋がる……と。
これは逆パターンでも同じことが言える。
キャラクターの白さが損なわれることがあれば、それは擬人化元である城の方にもなにかしらの異変が生じる……というわけだ。
例えば墨で汚されたのなら、実際の城の外壁にも墨による汚れが発生する……みたいな。
「……擬人化作品ってわりとアダルトな作品も多いじゃない?」
「せんぱい最低です」
「まだなにも言ってないわよ!?」
……なお、こうして説明しつつ、脳内で想像していたのが『艦これ』とかだったため、実際の物体の損傷や汚れがキャラに反映され、かつそれと逆のことも起こりうる……という状況の絵的な説明が、可能な限りぼかして述べると『刃牙の家』*5になってしまったため、思わず口に出したのだが……。
そのせいで、マシュからは汚物を見るような眼差しを向けられる羽目になってしまったのだった。
……いやだってさぁ!?仕方なくないエッチなの多いよ擬人化作品!?
「えっちなのはいけないと思います!」
「……どっから出てきたのXちゃん」
「いえ、なんだか言わないといけないような気がしまして」
なお、そんなことを言う貴方は煩悩にまみれている……みたいなツッコミが横合いから飛んできたため、思わず愕然とする羽目になる私なのであった。
……違うし……別にエッチな話をしようと思って話題にあげたんじゃないし……。
「…………」<ムッスー
「ほらせんぱい、機嫌を直してください。本当にせんぱいがなんの意味もなくそういう話をしたとは思ってませんよ」
「……いや、他所でやってくれないかなそういうのは?」
はてさて、なにか起きたらとりあえずラットハウス……のスタンスでいつも通りやって来たわけですが。
現在、私は横合いから切り分けたパンプキンケーキをこっちの口に近付けてくるマシュにイヤッ!……と対処している最中なのでした。……ちいかわかな?
「やかましい、人魚の煮付け出すぞ君」
「おっと永遠の命は間に合ってますので。……真面目な話をすると、【星の欠片】的に相殺どころか黙殺するレベルなんで効かないと思います。方向性的に正反対だし」
「本当に真面目に語るやつがあるか!!」*6
なお、コーヒー豆をごりごり砕いていたチノちゃん……もといライネスが、こっちの様子に怒り心頭とばかりに声をあげていたが……無理もない。
なんでかは知らない()けど、私とマシュがラットハウスに入ってから客の入りが増えたからね!ハロウィン特性セットが飛ぶように売れてるから嬉しい悲鳴ってやつだな!()
川´_ゝ`)「なに、気にすることはない。確かに彼女にとっては道楽の類いだが、私達としては腕を振るう良い機会だからね」
「おっとウッドロウさん。……なんか雰囲気変わりましたか?」
川´_ゝ`)「久方ぶりの出番だからね。恐らくは空気化していたということだろう」
「冗談にもならないこと言うの止めませんか……?」
貴方が言うと洒落になっていないというか。
……ともあれ、裏の調理場から注文の品を持って出てきたウッドロウさんに挨拶をしつつ、そういえば上条君の姿が見えないな、と辺りを見回す私である。
「トウマならオルト対策に駆り出されたよ。相手は極限の単独種とはいえ、所詮は『逆憑依』。今の出力の下がった状態ならば、相応に対処は可能だからね」
「うーん、クロスオーバーモノとして見ると火種すぎる発言……」
その疑問に答えたライネス曰く、上条君は現在エリちゃん以外でハロウィン属性なしにオルトを押し留められる存在の一人として、前線に駆り出されているとのこと。
……往年のなんでもそげぶ、を思い出すような内容の発言だが、その辺りは型月民も人の事言えた立場じゃないのでお口チャックする私である。
いやまぁ、そういう議論は繰り返されるもので、どの時期でもなにかしらの作品が過剰に持ち上げられていることはよくあるんだけどね?メカクシシリーズとか。
……これ以上話すと余計な火種が振り撒かれそうなので今度こそお口チャック。
こちらを懐柔しようとあれこれやってくるマシュを極力無視しつつ、ライネスからの話を静かに聞く私であった。