なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「シンユディバーズ?ソンナドオンドゥルア゙ドゥワケナイジャナイカ?」*1
「あ、はい。ありがとうございました」
(珍しくマシュが困惑してる……いやまぁ気持ちはわかるけども)
ラットハウスの外に出た私たち。
一先ずなりきり郷内の空気感を確かめるため、辺りにいた人達から話を聞くことにしたのだけれど……うん、真っ先に声を掛けた相手があれだったというか。
見事なオンドゥル語に思わず感服しつつ、結局なに言ってたんだろうあの人……と、去っていく男性の背を見送った私たちである。
……っていうかあれ、ブレイドでよかったのかなぁ……?
「特撮系の『逆憑依』は変身後の姿こそ本体、と言うような方も多いですからね……」
「見た目で判別できないのは、なんというかあれだよねぇ」
あれか、あくまで演者は演者であって本人ではない、みたいな?
原作では『老婆のような嗄れた声』と書かれているのに、アニメになると普通の少女の声になっていたヴィクトリカ・ド・ブロワみたいに、あくまでそのメディアではその姿になるだけで本当は違う……みたいな扱いというか。*2
まぁそういう感じで、特撮系の『逆憑依』は変身後の姿はともかく、変身前の姿からそれがなんの『逆憑依』なのか?……ということを察することはほぼ不可能となっているのだった。
……え?元が二次元ならともかく、三次元のリアルな人をそのまま模すのは宜しくない?*3
ともかく。
さっきの彼がオンドゥル語を使ってたからと言って、それがイコール彼が仮面ライダー
たまたまオンドゥル語が母国語な人がそこにいただけ、という可能性も決して零ではないのだ。
「言ってて悲しくならないかい?」
「
「目を逸らすくらいなら最初から言わなきゃいいのに」
なお、一緒に付いてきたライネスからツッコミが入ったが……言ってる本人だって無茶苦茶言ってるなぁ、とは思ってるんだからほっといて欲しいと思う私なのであった。
「ところで、なんでさっきの彼をそのまま帰したんだい?私達の目的を思えば、彼の行き先は私達のそれと重なるんじゃないかと思うんだけど」
はて、忙しさに爆発したライネスが『ええい、私は休む!行くぞキーア!』とかなんとか宣いながら同行してきたわけなのだが。
いや、それでいいんかい?……というツッコミはウッドロウさんの『なに、気にすることはない』の一言によりあっさり返されたのだった。
……正確には、『疲れているようだから少し気晴らしをしてくるといい。なに、店の方は暫く私が見ていよう』と送り出してくれたわけなのだけれど。
まぁ、流石にココアちゃんが『バイトの時間だー!……ってなにこの人だかりー!?』ってやってきたからこそ言い出せることだった、という部分もあるだろうが。
あとはまぁ、単純に人足もちょっと少なくなってきていた、というのもあるかも知れない。
ともかく、ラットハウスを抜け出して私たちに同行することとなったライネスは、さっき走っていった剣崎(仮)君のことを思い出しながら声をあげる。
……現在私たちが探しているトラブルの種、そのうちの一つであるシン・ユニバースロボは、その構成員の中に仮面ライダーを含む存在である。
そして、特撮系の『逆憑依』はその特殊性ゆえ、他の面々とは離れて──彼らだけで集まっている、ということが多い。
……まぁ、どこぞの爆裂娘はどっかんどかんと爆発を多用することの多い彼らのところによくお邪魔してるらしいが、それに関しては私たちとは関係ないので割愛。
マシュと同じような声でもキャラは別だから余計のこと、である。
ともかく、彼ら独自とも言えるネットワークを持つのが特撮系の『逆憑依』達であり、それに渡りを付けるのであれば直接向かうのは悪手……とまでは言わないが、それなりに手間が掛かるのは事実。
ゆえに、恐らく特撮系であるさっきの剣崎(仮)君を引き留めるのが普通だろう、というのが彼女の主張なわけなのだが……。
「実際、最初はそのつもりだったのよ。ベルトっぽいものも見えたし、恐らく特撮系だろうからって」
「じゃあ、余計のことなんでだい?」
「……オンドゥル語は流石にちょっと」
「……あー」
当初、彼に声を掛けたのはその腰にベルトらしきものが見えたため。
このなりきり郷でああいうわかりやすいベルトをしているというのは、ほぼほぼ自身が特撮系であると主張しているようなもの。
ゆえに、彼に付いていくことで目的地に向かおうとしていたことは間違いない。
……ないのだが。
生憎私もマシュもオンドゥル語は習得言語外。
つまり、彼に付いていく場合聞き取りも対話もできない会話を繰り返すか、はたまた無言で付いていくしかないということになるわけで。
それはなんというかこう……お互いにあれというか、相手に対して失礼というか。
そんなわけで、彼を頼りに目的地に向かう方法は泣く泣く却下された、というわけなのだった。
「……そもそも私が案内できますけど?」
「そりゃまぁ、場所は確かに貴方が知ってるでしょうけど……元々特撮系の人達が気の良い人達だからと言って、彼らの場所に勝手に足を踏み入れたら良い顔はされないわよ」
なお、私達の言っていることがよくわかっていないのか、はたまたそんなこと気にせずに押し通ればいいじゃないかとでも思っているのか、なりきり郷ちゃんは自身を指差して不満げにしていたが……。
幾ら特撮系の人達が穏やかで大人であったとしても、彼らのプライベート空間に無断で立ち入れば良い顔はされないだろう。
そう考えると、誰かしらを頼って足を踏み入れるのが一番ということになるのだが……うーん。
生憎、私たちに特撮系への繋がりは……って、あ。
「あ?」
「いや、一人行けそうな人がいたなーと」
そういえば一人、私たちの知り合いに特撮系の人達にも顔が知られていそうな人がいたなー、と思い出す私。
とりあえず、彼女を目的に進むのが現状における最善、ということになるだろうか?
「よし、じゃあとりあえずその方向で行こう。三人ともいい?」
私の問い掛けに、三人は特に反論することもなく頷いてくれる。
その様子を確認し、私たちは一先ず今来た道を戻ることにしたのだった。
「あれ?キーアちゃん戻ってきたの?なんで?」
「人を探しててね。そしたらさっきラットハウスで見たなー、と思って戻ってきたってわけ」
まぁ、今もまだ滞在してるとは限らないんだけども。
とはいえ最初にここに来た時には途中まで同行してたし、なんならそのあとハロウィン限定ケーキを結構な数頼んでいたから、まだ食べ続けている可能性は十分にあるんだけど。
……などと言いながら、
数十秒後、店内の一画に積み上げられた皿達を発見した私たちは我が意を得たり、とばかりにその場所に近付いていき──、
「さっきぶりXちゃん。ちょっと顔貸して貰えるかな?」
「……え、なんですか皆さん揃いも揃って?というかあれ?顔貸してってことはもしかして私なにか
そこでケーキに舌鼓を打っていた、Xちゃんに声を掛ける。
……そう、私たちの知り合いの中で特撮系に渡りを付けられそうな人物というのは、なにを隠そうXちゃんのことだったのだ。
まぁ、姿の一つであるロボ警察はモロに特撮系が元ネタなので、当たり前と言えば当たり前なのだが。
実際、彼女は訓練だとかで特撮系の人達のところに場所を借りに行ったり心構えを聞いたりすることも多いらしく、こちらの話を聞いて直ぐ様協力を約束してくれたのだった。
「あ、それはそれとしてこれを食べ終わってから、ということで宜しいでしょうか?実はそれなりに頼んでしまっていてですね?」
「……あれだったら、私が虚無に保管しとくよ?時間経過が起きないからテイクアウトしても味は落ちないし」
「なんと!流石はキーアですね!」
まぁ、話を出したタイミングがタイミングだったので、ちょっと時間が掛かりそうにもなったけど……。
美味しいケーキを食べたいというのが根幹であることを察した私が、今あるケーキもこれから来るケーキもどちらも保管する……と告げれば、彼女は喜んで席を立ったのであった。
味も風味も落ちないことが約束されているから、こういう時に話が早くていいね、虚無式保管庫。
「……ちょっと待った、どんだけ頼んでるのよ?!」
川´_ゝ`)「なに、気にすることはない。メニューの端から端まで一通り頼まれた、というだけの話だからね」
「いやなに考えてるのXちゃん!?」
「いやーその、ハロウィンなのでちょっと贅沢をしようかなーと……」
……なお、精々テーブル一つ分くらいの量かと思っていたケーキの量だが。
暫くの間──具体的には一時間近く運ばれてきたケーキを虚無式保管庫にしまう行程が挟まることになり、驚愕で胸がいっぱいとなる事態に陥ったりもしたが──こちらから言い出したことなので途中で投げ出すこともできず、暫く足止めを受けることになったというのは、恐らく笑い話にしておくべき事態だと思われる。
……いや、これ後々銀ちゃんにバレたらあれこれ言われるやつじゃない?
なんでお前だけでこんなにケーキ食べてんだよ、俺だって甘いもの大量摂取してえよドカ食いしてえよ気絶はしねぇよ、って言い出しそうというか。
……と声を掛けたところ、当の本人は視線を逸らしてなにも聞こえない、みたいな顔をしていたのだった。