なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ようやっと終わった……」
「全て一品ずつでよかったですね……」
どうにかこうにかXちゃんの頼んだケーキ達をしまいこんだ私。
個人的にはこれを再び外に出す必要があるのか……と憂鬱でもあるのだが、背に腹は変えられない。
彼女を経由しないと特撮系の人には渡りを付けられないので、嫌が応にもやらなきゃいけな……え?そこまで深刻な話ってわけでもないだろうって?
まぁ後腐れがない方が都合が良いのは確かだから……。
そんなわけで、再びラットハウスを後にした私たち一行。
Xちゃんの伝を使い、特撮系キャラの犇めく場所へゴー、である。
「それにしても……もうそんな時期ですか。こんなところで向こうの風物詩に出くわすとは思っていませんでしたが」
「?風物詩ってなにが?」
そうして道すがら、ふと思い出したとばかりにXちゃんが声をあげる。
……のだが、微妙に内容が意味不明である。
風物詩というと、特定の季節を感じさせるもの……ということになるわけだが、現状それっぽいのなんてハロウィンくらいのもの。
そしてそのハロウィンは、今時『出くわすのが珍しい』みたいな言い方をされる行事ではない。
「ああ、あれですよあれ。オルト・ハロウィン。向こうのモノと比べると些か違いが見えますが、概ね同じ原理で動いているようですので珍しいなーと」
「
そうして首を捻る私に、Xちゃんは遠くに見えるオルト・ハロウィンを指してそう告げるのだった。
……いや、作中で詳細の明らかになってない世界の話をされても困るんだわ。
「仮装祭の蜘蛛は四つの遣いと共に現れる……などと言いますが、これから向かう先にいるのはあくまで一つ扱いなんですよね。四つ合体してますけど」
「止めてー!!微妙に与太話だと否定し辛いこと言うの止めてー!!?」
うんうん、と頷きながらこちらの知らない世界の風物詩を語ってくれるXちゃんだが……これあれだな?遠回しにシン・ユニバースロボをどうにかしても話はまだ続くって忠告されてるってやつだな?
しかもXちゃん本人に忠告のつもりはなく、単に自分の故郷(?)のことを語っているだけで……忠告しているのは世界とかそっちの方ってやつ。
いやまぁ、本命足るオルト・ハロウィンに手付かずである以上、今回の話が長丁場になるのは薄々察していたけども。
こうして実際にその片鱗をお出しされてしまうと、嫌が応にも実感してしまってうえってなるというか……。
ともかく、聞いているだけで憂鬱になってくるユニヴァーストークを止めさせるため、私はXちゃんの口を閉じさせに掛かったのだった。
「はい……はい。ええ、宿泊の予定はありません。用事が済めば早急に出ていく予定ですので。……え?寂しいことを言うな?久しぶりに来たんだからもうちょっとゆっくりしていけ?その申し出はありがたいのですが、こちらも
検問所?的な場所に入っていったXちゃんを待つこと数分。
中から聞こえてくるXちゃんの言葉に耳を傾けつつ、暇を潰す私たち一行である。
……え?なんで四人とも壁に寄り掛かって腕組みしてるんだって?単純に空き時間を潰したいだけなら、四人でおしゃべりでもしていればいいだろうって?
それはほら、会話をしてもいい雰囲気があるからこそ、みたいな話というか。
……その言い種だと、現状私語は禁じられているみたいに聞こえる?……まぁうん、実質的にそんな感じというか……。
先ほどから言うように、ここは特撮系の『逆憑依』達が集う居住区。
そこは普通の場所とは少し違うルールが敷かれた場所であり、私たち外様の人間はそれに抵触しないように注意を払う必要がある。
わかりやすい例で言うと、少なからず実在の人間が関わってくることによる違い、ということになるだろうか?
他の『逆憑依』は基本的に二次元──アニメや漫画、ゲームのキャラクターが現実世界にやって来た、というような状態の存在である。
そしてその出自ゆえに、実際にリアルで見るとちょっと不思議な気分になるタイプでもあるというか。
あれだ、それらの二次元媒体の姿と全く同じわけではないが、確かに彼ら本人だと納得できるなにかがある……みたいな?
少女漫画などがわかりやすいが、絵柄をそのまま現実の人に反映すると眼球が大きくなりすぎる、みたいな話がある。
顔の半分以上の大きさの瞳と言うのは、その実
……より正確に言うと、構造上顔面から把握できる瞳の大きさというのは、眼球の一部でしかないということになるか。
極端に顔から飛び出しているのならともかく、眼球と言うのはその大半が顔の中に埋まっているもの。
まさしく氷山の一角と言うべきありさまであり、かつ極端に瞳が盛り上がっていたりでもしない限り、それは九割以上が顔面の中にある、ということを証明するものでもある。
……つまり、少女漫画における眼球というのは、頭の内蔵物の大半を占めているということ。
というか、下手すると左右の眼球が互いに干渉するレベルで大きいかもしれないのだ。
そんなモノをリアルに出せるわけがない。
髪の色くらいならともかく、眼球は特にリアルと二次元で差の出る部分、というわけだ。
ただ、そこで問題となるのがいわゆる実写化問題というもの。
表現の差でしかないそれは、しかしてキャラクターの特徴としても認識されているため、メディアを変えると同一人物として認識し辛くなる……という話である。
よく実写化で批判を受けるのが、キャラクターが似ていないというもの。
邦画でよく起こるそれは、原作のそれを想起できないという意味合いの言葉である。
これの理由となる一番の要因が、パーツの大きさ。
二次元のキャラクターは基本的に目が大きく、鼻や口は小さいもの。
対してリアルの人間というのは、目が小さく鼻や口は大きいもの。
方向性が真逆であるため、例え顔以外の部分を完全に再現してもたった一つ、顔の違いによって違和感を増し増しにしてしまうのである。*1
これは本来、私たち『逆憑依』にも起こって然るべきもの。
二次元の存在が現実に出てきた場合、その容姿はリアルのそれに沿ったものになるわけだが……それによって原作のキャラクターを想起できなくなる、という可能性は十二分に存在する。
なんなら絵柄の違いが現実という形で平均化されることで、本来全く別のキャラクターがよく似通った見た目になる……なんて可能性も存在している始末。
この辺りは黒髪ストレート系のキャラクターがよく当てはまる話、ということになるだろうか?
これらのキャラクターは自身の作品単体なら問題はなくとも、似たようなイメージのキャラクターを集めると絵柄以外の部分での個性付けが難しくなるタイプの存在である。
まぁ、基本的にこのタイプはいわゆる王道──他が奇抜である中で一人だけ正道であるからこそ目立つ……というタイプであるため、大袈裟なキャラ付けを必要としないことから起きるある種の必然、ということになるわけだが……。*2
ともあれ、絵柄の違いという差異すら省いてしまうと、個性が埋没する危険性があるのは間違いあるまい。
分かりやすく言うと、同じ絵柄でたきなと澪と凛を並べると誰が誰だかわからなくなる……みたいな話だ。*3
まぁ、これは極端な例ではあるが……実際に私たちについて回る問題であることも事実。
にも関わらず、私たちは個人を見間違えるということがない。先の例──黒髪三人娘が仮に一緒に現れたとしても、それらを判別できないなどと言うことは起こらない。
そしてこれは、『逆憑依』同士だと細かい認知ができる……みたいな話ではない。
外からの
その理由こそが、私たちに備わった
いわゆる気配とも近いそれは、個人を見た時に
先の三人ならば、愚直なまっすぐさを感じさせるのがたきなで、ほんのり愉快な人物であることを窺わせるのが凛。
それから、恥ずかしがり屋の性分が見えるのが澪……みたいな感じか。
これらは本来彼女達の話し方などから感じるものであり、立ち姿だけから感じるものではないのだが……私たち『逆憑依』の場合、それらの言語的理解を経ずとも感じられるものとなっている。
恐らく『逆憑依』として成立する際にキャラクター性が焼き付くような形になっているのだろう、とは琥珀さんの言。
実際後付けで琥珀さんと化した彼女も、周囲に『月姫の琥珀』と認知されていることから、恐らくそう間違った推測ではないと思われる。
……ともかく。
本来二次元からリアルへの
実写版『約束のネバーランド』のシスタークローネみたいなもの、とでも言うべきだろうか?*4
そんな感じでキャラを成立させているわけだが、それが特撮系だと少々話が変わってくる。
例えば変身ヒーローにおける変身後を主体とするのではなく、変身前の状態も包括してキャラを再現する場合。
極端な話、役者をそのままコピーすればそのキャラクターとして見ることはとても簡単になる。
三次元同士の再現であれば違和感は発生せず、かつ言動などがキャラクターそのままであればそれを他のモノと誤認する可能性はほぼ無に等しい。
しかしそれは同時に、実在する人物の模倣にすら繋がってくる、という危うい話にもなってくる。
他人の空似とはいえ、実際に現実に存在する相手と同じような姿になっているわけだから、トラブルの火種は確実に存在するというわけだ。
そのため、なりきり郷に存在する特撮系──もっと言えば実写系の『逆憑依』というのは、他の『逆憑依』とは別種の違和感とでも呼ぶべきモノを持ち合わせている。
それが、感じられるキャラクターとしての圧が強い、というもの。
最早威圧感に近しいレベルになっている、といえばその特異性もなんとなく理解できるだろうか?
これは、リアルではあっても
その正確な効果は『演者とは似てないと感じる』というモノなのだが……その仔細はともかく。
ここで重要なのは、生身の実写系の『逆憑依』は、単に普通に立っているだけで多少なりとも威圧感を発してしまう、ということ。
もし元々威圧感を感じさせるようなキャラクターであった場合、それらが相乗効果を発揮してヤバイことになる、という部分である。
(……筋肉モリモリ、マッチョマンの変態だ)
(まさか実際にその台詞を言いたくなる日が来るとは思ってなかったよ……)
検問所的な場所で、アサルトライフルとおぼしきモノを肩に担ぎながら、無言でこちらをジッ、と見詰めてくる上半身裸の男性。
……今となっては映像の中でしか見ることのできない、若かりしハリウッドスターの生き写しのようなその人物は、しかしてそれを見る私たちに言い様のない威圧感を感じさせていたのだった。
いやまぁ、ある意味この状況は第三次大戦前夜みたいな緊張感だけどさぁ?*5