なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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平たく言うと後進に道を譲った、というだけの話

「え、ええと……つまり、どういうことなのですか?」

「うーん……結論だけ言うと私という存在の位階が一つ上がった……もとい()()()()ってだけの話なんだけど、それだとよくわかんないってまた言われそうだから、順を追って説明するね?」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 

 うーん、できればさっさと次の話に進みたいのだが。目の前で(キリア)待たせてるわけだし。

 ……とはいえ、確かに今の私の状態についてしっかりと説明したような覚えがない……というのも事実。

 なので、自身の中で色々と整理するという意味も含め、現在の私の状態を説明することにしたのだった。

 

 

「ええと、この間の騒動は覚えてるよね?『星女神』様やら『月の君』様やらのやつ」

「ああ、私たちは巻き込まれないように避難してたやつだね」

「……いやまぁ、そのトラブルに対する嗅覚は流石だと思うけど、『星女神』様の方はともかく『月の君』様の方は逃げる必要なかったと思うけどなー……」

 

 主に、下手に首を突っ込む方が危ない……的な意味で。

 正直な話、一般人……一般人?が関わるというのなら、二人とも対して危険度に違いはない(対処手段がない、的な意味で)わけだけど、敢えてどちらかの危険度を上に見積もるとすれば、やはり『月の君』様の方ということになるだろう。

 

 片方が太陽(あんぜん)であるならば、もう片方は北風(きけん)になるのがあの二人の根本的な在り方。

 二人揃って一つ、という性質はそれほどまでにその存在を縛る……とでもいうか。

 

 ともあれ、確かにあの二人に迂闊に関わるのが危ない……というライネスの感覚はそう間違いではない。

 間違いではないのだが……ある意味どこぞの魔導元帥と同じく、彼女達の方から関わってこようとすると逃げられるモノではない、というのも事実。

 ……裏を返すと『逃げられた』のではなく『見逃された』形でしかないため、あんまり本人の嗅覚を褒めすぎるのもなー、とか思わないでもない私なのであった。

 いやまぁ、今回の話には関係ないから黙っておくけどね?

 

 とりあえず話を戻すと。

 二人の超越者からの試練(きたい)にまんまと乗っかってしまった私は、現在とても特殊な状態に陥っている。

 詳しく言うと『逆憑依』と【星の欠片】が混じったような状態、ということになるのだが……この()()()()()()というのが難しい。

 

 

「難しい……と言いますと?」

「理路整然と区分けされた部分と、混沌と混じりあった部分が点在する形……って言えばいいのかな?秩序めいてもいるし、混沌めいてもいるというか……」

「はい?」

 

 

 綺麗に混ざりきっているわけではなく、かといって無秩序に並べ立てられているわけでもない……。

 料理に例えるのなら、所々ダマの残る水溶き薄力粉……みたいな感じだろうか?

 項目ごとにきっちり別れている部分と混在する部分がはっきりしているともいえるかも。

 

 これのなにが問題かと言うと、私の分類上の区分すらあやふやになっている、というところが大きい。

 とある部分では『逆憑依』としての性質が表に出ているが、また別の部分では【星の欠片】としての性質が表に出ているため、どちらかの尺度でモノを語ろうとすると必ず引っ掛かりができる……というか。

 

 

「……問題点がよくわからないから、具体例を挙げて欲しいんだけど?」

「そうだねぇ……例えば中身(かく)の保全。これは【星の欠片】の場合思いっきり中身を害する結果になるけど、『逆憑依』の場合は中身の保全こそ最重要項目だからかなり手厚く保護されてる。具体的には、二十六次元以上上のレベルで汚染に対する保護があるんだけど……」

「……ああ、魂の観測次元とか言うやつか。我らが偉大な執筆者の作品の一つに語られるという」

「そうそう、それそれ。『逆憑依』を作った人がその作品からのキャラクターなのか、はたまた()()()()()のためにその作品を頼ったのかはわからないけど……ともかく、『逆憑依』における中身の保全ってのはかなりの高次元からそれを行っている、ってのは間違いないわけ」

 

 

 とはいえ、どちらの事象についても詳しく知り得ているとは言えないのが私たち。

 ……問題点がどこにあるのか、なんてことをすぐに理解するのは難しいため、比較的わかりやすい話を例に上げる私である。

 

 そこで選んだのは、中身(かく)の保全に関する部分。『逆憑依』が強く保持し、【星の欠片】が積極的に破壊しにいく部分、ともいえるもの。

 本来……というか以前の私の場合、『逆憑依』部分は中身を守ろうとし、【星の欠片】部分はそれを(積極的ではないにしろ)壊しに掛かっていた、という感じになるのは否めない。

 実際、両者は相性があまり良くなく、『逆憑依』としての性質が過剰反応しやすいのが問題点であった。

 ……まぁ、いつぞやかのジャンヌ・アクアとかに比べれば、私に現れていた拒絶反応なんて可愛いものだったわけだが。

 

 ともあれ、中身の保全という目的において、両者は油と水のように混じりあわず反発するもの、という認識はそう間違いではないだろう。

 仮にそれらを両立させる場合、アクアのように完全に混ぜ合わせてしまうしかないというのが普通の考えになるわけだ。

 

 

「その物言いは……」

「まぁ、そういうこと。以前はくっきり色分けできたけど、今の私の場合中身の保全は()()()()()()()()()()()()()()()。混ざりあってると言ってもいいかも」

 

 

 その普通が、今の私の中では崩れている。

 混ざりあわずに調和しているのだ、以前は隙を見せればいつでも塗りつぶしてやる、と言わんばかりだった【星の欠片】(くろ)が、あくまで縁をなぞるだけに留めている……というような形で。

 

 

「『逆憑依』単体だと問題のある部分を補強してる、とも言えるかな?反対に【星の欠片】だけだとどうにもならない部分は『逆憑依』が補助している……みたいな?」

「なるほど……本来両立しないものが両立している、ということか。……ただ、その説明だけだとさっきの話とは矛盾するんじゃないのかい?」

「そこら辺が面倒くさくてねー……多分だけど、()()()()()()()()()()()みたいな感じで、適宜お互いが配慮してるみたいな感じというか……」

「は?」

 

 

 私の言葉に『なに言ってんだこいつ』みたいな反応を示すライネスだが……これに関しては私も上手く言語化はできない。

 こっちの判別とは別の地点で、『それが最良となる』結果になるように二つの要素が出力を勝手に調整している……というのが一番近いだろう。

 そこに私の意思の介在はないが、どうあれ私の判断・意思意向の邪魔にならないことだけは確か、というか。

 以前であれば、中身の保全を無視した行動(【星の欠片】の行使)にはなにかしらの反動があったが、今はそれが一切ない……というのが一番わかりやすいかも?

 

 

「無理が無理じゃなくなった、とも言えるのかな?本来出るはずの反動とか負荷とかを別の概念が抑えるようになったというか……」

「……それは、せんぱいが無茶をしやすくなった、ということでしょうか?」

「いや、無茶をしやすくなったというか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というか。前なら出来ても寝込んでいたようなことを、普通に健康なまま行使できるようになったというか」

「そ、それはよかった……のでしょうか?」

 

 

 あーうん、マシュの言いたいことはわかる。

 それって結局無茶の上限が上がっただけなんじゃないの?……と言いたいのだろう。

 その辺りは……うーん、今の私の限界というものがわからないのでなんとも。

 こうなった結果、再現度回りの話もどうも変なことになってるみたいだし。

 

 

「再現度が?」

「今までの私は『逆憑依』としての面が強かったけど、今の私は【星の欠片】としての面が強いのよ。……まぁ、完全に【星の欠片】になったってわけでもないから、全く再現度の影響を受けないってわけじゃないんだけど……なんていうのかな、自分の中の中で再現度を完結できるようになってしまった、みたいなところがあるというか」

「……あー、即興の演技のようになっている、と?」

「そうそう、そんな感じ」

 

 

 ライネスの言葉が一番近い、ということになるのだろう。

 今の私は、現在進行形で『キーア』という存在を演じているような状態。

 そのため、()()()()()()()()()()()として扱われているのである。

 

 ……元々【星の欠片】は再現度との相性が良い(=少ない再現度でほぼフルスペックを発揮できる)存在だったが、さらに今の私ならそこに再現度によるブーストまで加えられるようになった、というか。

 極論、瞬間的な出力に限るなら『星女神』様達を(した)回ることも不可能じゃなくなった、みたいな?

 

 

「そ、それはとんでもない強化なのでは?!」

「瞬間的な話であって、恒常的に上回れるわけじゃないけどね。これは──そう、ネギまで言うところの咸卦法*1みたいな感じ?」

「すぐにガス欠する、と?」

「純粋な合成じゃなく、微細世界での概念融合だからねぇ」

 

 

 普段の──勝手に調整してくれてるのとは違って、自分で意識してやらなきゃいけないというのもポイントなのだと思われる。

 

 ともあれ、色んな面で以前の私とは別物になった今の私だが、先の説明の中にそれを一番印象付ける要素が一つあったことがわかるだろうか?

 

 

「今ここにいるせんぱい自身が原作、というものですか?」

「そ。私が以前書き上げた黒歴史じゃなくて、今ここにいる私自身が私を形作る。──それはつまり、一つの存在として私が独立したってこと。結果、以前の私──『逆憑依』のキーア、という席が空いてしまったってわけね」

 

 

 それが、『今は私自身が原作である』というもの。

 それはすなわち、ただそこに生きる人達と同じく()()()()()()()()()()()()()()()()ということでもある。

 それゆえ、今の私は以前の要素を残しつつも、明確に別個の存在として独立し。

 その結果、確かに存在した『逆憑依』のキーアという席は、現状棚空き状態に陥っている……ということに繋がるのであった。

 

 

「まぁ、だからと言ってその席に直接彼女が座った、ってわけでもないんだけどね」

「そんなことをすれば以前の君の二の舞、ってやつだからね」

 

 

 まぁ、語ろうと思えばもうちょっと語れることもあるのだが、キリもよいのでこの辺で。

 次に、待たせ続けた目の前の彼女──キリアについての話に移行するとしよう。

 

 

*1
『魔法先生ネギま』シリーズに登場する技術の一つ。魔力と気という、本来反発する二つのエネルギーを混ぜ合わせる技法。これを使用できる人間は莫大な力を発揮できるようになるが、二種類のエネルギーを同時に使う為ガス欠も早いという欠点がある

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