なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、目の前の彼女が私だけど私じゃない、ということがわかったわけだけど。
「……これって今回の主題じゃないんだよねぇ」
「あっ」
そう、確かに彼女の存在は驚愕であったけど、別にそれが今回の主題かと言われればまったくそんなことはないのだ。
いやまぁ、ハロウィンの特殊な空気が彼女の存在の成立しやすさを跳ね上げた、って可能性はなくもないんだけどね?
「その辺りはよくわかりませんが、私がここに来たのはつい先日であるのは間違いないですね……」
「あらやだそうなの?ごめんねー、こんなバタバタしてる時期に」
「バタバタで済むんですかね、これは……」
思わず、と言った風に遠くを見詰めるキリアちゃん。
その視線の先の先には、若干掠れた状態で蠢くオルト・ハロウィンの姿が見受けられる。
……うん、少しでもオルトって存在について知っているなら、あんなもの()が普通に蠢いている状況というのがどれだけ異常か、ということにもすぐ思い至ることだろう。
必然、バタバタなどという言葉で表せるような状況ではない、という感想にもなる。
だがまぁ、実際今は『バタバタ』程度で済んでいる、というのも事実。
あのオルトが原種・ないしFGOでの亜種と同じなら、私たちはこうまで悠長にはしてられなかっただろう。
その辺りも踏まえると、やはり私たちの現状はまだまだぬるい、ということになるのであった。
「……いえでも、やっぱりオルトはあれではありませんか?」
「
「露骨に目を逸らすのは止めませんか!?」
なお、生真面目なキリアちゃんには通じませんでした。
いやー、なりきり郷ではよくあることってことで……ダメ?
「それにしても……シン・ユニバースロボ、でしたか?先ほども申しました通り、私がここに来たのはつい先日なので、あまり詳しいことは窺っていませんが……それに繋がりそうな話についてなら、うっすらと聞いたことがあるような気がします」
「マジで?!」
はてさて、キリアちゃんを一行に加えることとなった私たち。
本来ならこの場で別れるはずの彼女を同行させることになったのは、主に彼女が『シン・ユニバースロボ』についての噂を聞いたことがある、という部分にあった。
Xちゃんはここに入るのには必要だったが、その先──目的である『シン・ユニバースロボ』の捜索に関しては役に立たなかったのである。
「酷い言われようですが……まぁ、知り合いに尋ねた結果があれでは返す言葉もないですね」
「みんな『知らない』って顔だったもんね」
それもまぁ、隠してるってわけではなく本当に知らないって感じだったというか。
……そう、Xちゃんの知り合いである特撮組達は、その全てが『シン・ユニバースロボ』についての話を全く知らなかったのである。
いやまぁ、正確には『シン・ユニバースロボ』という正気を疑う存在そのものについては知ってたけど、それが現在この地区付近に潜んでいる……ということは知らなかったというか。*1
まぁ、そもそもその辺りを掘り進めると、そもそもここに『シン・ユニバースロボ』が潜んでいることを知らせてきたのは誰なのか、って話に繋がるのだが。
……一応、それの答えは予知組によるものってことになるんだけど、どうにも情報があやふやというか、読み取れるものが少なすぎるというか……ともかく、大まかな位置こそわかってもそれ以上は現地でどうにかするしかない、みたいな事態に陥っていたわけである。
なので、Xちゃんには密かに期待していたのだけれど……結果はこれだ。
いやまぁ、悪いのは彼女じゃないんだけど……ねぇ?
ともかく、事ここに至って私たちは指標らしき指標を失い……それを見かねたかのように声を掛けてきたキリアちゃんの案内によって、とある場所へと向かって歩き始めていたのであった。
「それにしても……『勇姿は青より来る』だったっけ?なんのこっちゃと思ってたけど……まさかそのまんま
「いやまぁ、なりきり郷内に海がある、だなんて普通は思わないだろうから仕方ないけども」
で、そうして向かっている場所というのが、この特撮系の地区の端……そこにあるという海辺。
正確には、そこにあるという海岸沿いの洞穴。
……どうやら、その辺りで謎の影を見たという人がいるらしい。
「特撮といえば海の撮影もありますが……それでもスーツがダメになったりすることを考え、そう頻繁に使われることはない。必要ではあるけど使用頻度は多くない……ということで人の目が少なかったのが、Xさんのお友達に認知されていなかった理由でしょうね」*2
「なるほど……確かに海での撮影なんてそうそう見ませんしね」
ある意味Xちゃんのフォロー、とでもいうか。
ともあれ、向かうべき場所が本来人の近寄らない場所であるなら、他の人達が知らないのも無理はない。
ただ、そうなるとキリアちゃんが噂を聞いた相手、というのが気になるところだが……それに関してはあっさりと氷解した。
「……まぁ、他に誰もいなくて被害を気にする必要性がない、となれば確かに向いてるよねぇ……爆裂魔法の試し射ち」
「その結果としてこれから会いに行く相手にダメージを与える可能性があったということは、決して見逃してはいけない部分ですけどね」
(口調は普通だけど空気が痛い……)
そう、キリアちゃんが話を聞いた相手というのは、なにを隠そう例の爆裂娘だったのである。
なんでも『海といえば爆裂!爆裂といえば私……ということで、皆さんの背景を賑やかにする以外の時はそちらでレッツ爆裂!してる私ですが、やっぱり明確な目標というのは欲しいもの。なにもない場所にぶっぱなす爆裂魔法もそれはそれで乙なものですが、やっぱりド派手に相手を破壊してこそ!そんな私の願いを天が聞き届けたのか、ある時から海の中にそこを優雅に泳ぐ何者かが現れたのです!私はこれ幸い、とその影に対して爆裂魔法を放つようになったのですが……これが中々すばしっこいというか頑丈というか、思ったようには行かなくて……って、あの、マシュさん?なんでそんなこう、怖い顔を?ええとその、私用事を思い出したのでちょっイッタイメガァー!?』とかなんとか。
……うん、あの子はなんというか、もうちょっと自重とか覚えた方がいいんじゃないかなー。
まぁともかく、例の爆裂娘が推定
その情報を頼りに、私たちは海へ向かっているというわけなのだった。
「にしても……流石にハロウィンだなって感じだね」
「道行く人達も仮装をしていらっしゃいますからね」
で、そうして道を進んでいる私たちなのだけれど。
すれ違う人達──生憎特撮系の人達ばかりだからか、見た目は普通の人っぽい──がみんな仮装をしていることに、改めて今がハロウィンなのだなぁと実感しているのであった。
……いやまぁ、遠景に見えるオルト・ハロウィンの時点で今がハロウィンであることは疑うべくもないんだけどね?
「こう、ハロウィンというとエリちゃんってイメージが強すぎて、普通に仮装しているだけの人が不思議に思えてくるというか……」
「エリザベートさんが視界の中にいない、というのが不思議に思えてしまうというわけですね……」
思わず苦い顔になってしまう私たちである。
……なんというか、随分毒されてたんだなぁ私たち、みたいな気分になるというか。
根本的なことを言えば、エリちゃんが関わっていようがいまいがハロウィンはハロウィンなのだ。
そのはずなのだが……エリちゃんが視界の中にいない、というのが違和感になっているというか。
いやまぁ、今回もエリちゃんとハロウィンの話ではあるんだけどね?でもその状況下でかつ解決に走る際に彼女が隣にいない、というのが不可思議に思えてくるというか……。
ともあれ、些細な違和感を振り払いつつ道を進む私たち。
そうして人波を掻き分け進むうち、周囲は少しずつ殺風景なモノへと変化していき……。
「ここが、噂の場所ってわけ?」
「そうなるかと。……確かに、人気がないのも頷けますね」
恐らくは防風林なのだろう林を抜け、開けた視界。
そこに広がったのは、いわゆる灰色の空気──くすんだ色と言ってもおかしくはない、もうすぐ嵐が来そうだと実感するような空気感の海辺。
これから最終決戦なり、はたまたシリアスな戦闘なりが始まりそうな時化た海を前に、私たちは暫し立ち止まる。
それは何故か。
答えは単純、その海辺にいたモノ達に思わず驚愕していたからだ。
そこにいたのは四つの影。大きなトカゲのような生き物、モヒカンのようなシルエットの人型。
マフラーを棚引かせた人型に、両肩が突き出ているような見た目の人型。
それらはそれぞれ、シン・ユニバースロボを構成する存在達の特徴と合致していた。いたのだが……。
「……いや、小さくね!?」
「正確には、ライダーさん以外が……ですね。……蒲田さんも小さいですね?」
「いやなんでみんな同じサイズ……」
彼らの大きさ、それが問題だった。
そう、みんな同じ大きさ……具体的には普通の人間のそれと同じくらいの大きさだったのである。
……いや、大分小さいなこれ?!*4