なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
いやなんでじゃ。……いやなんでじゃ?
などと、思わず乱暴な言葉使いになってしまったが、それも仕方のないこと。
イヤだってだねぇ、考えてもご覧よ。
オルトがヤバイオルトがヤバイ、って言ってる横で唐突に波導ガン構えたイデオンがいたらどう思うか。
やべえっていうか地上でそんなもの振り回すなというか、ともかく正気でいられないのは確かな話だろう。*1
というかだ、そもそもオルトの時点でいっぱいいっぱいなのに、イデオンなんて引っ張ってこられたらそりゃもうやってられるか、ってなるのが普通というか。
……さて、なんでこんなにキレ散らかしてるのかわからない人もいるだろうから、大雑把にイデオンについての解説をしておこうと思う。
伝説巨神イデオンは、
元々は株式会社トミー*2が持ち込んだ企画であり、その時の主役ロボ・イデオンは装甲車・タンクローリー・幼稚園バスが合体したもので、それに合わせてロボットの装甲に『地球連合軍』だの『そろようちえん』だのの文字が描かれていたりした。
言ってしまえば無茶振りの類いだったわけだが、富野氏はそれらのメカに『第六文明人の遺跡』という設定を加え、人と人との争いの果ての物語を作り上げたというわけだ。*3
さて、この主役メカであるところのイデオン。
大抵の人は『スーパーロボット大戦』シリーズで初めて触れた、という人が多いと思われるのだが。
それらの作品では決まって『バランスブレイカー』としての役割が与えられていることが多い。
射程が文字通りの無限──マップの端から端まで届く効果範囲であるとか、特定の条件を満たすとエネルギーが文字通りに無限となり、幾らでも武装を使うことができるようになるとか……そういった武勇伝に事欠かない。
その理由となるのが、イデオンを動かすために使われるエネルギー──通称イデ。
一応、各メカには核融合エンジンなどが搭載されているらしいが、実のところそれらの動力源ではイデオンを動かすためのパワーが足りないのだそうな。
それを補う……どころか寧ろ主体となって動かしているのが、先述したイデ。
これは、『第六文明人』の意志が依り集まって生まれたモノであり、人の意思に呼応してその出力を上げる特殊なエネルギーでもある。
そしてこのイデ、作中の描写によれば全宇宙のエネルギーのほぼ百パーセントを占めるだけの力を持つとされているのだ。
そう、イデ以外のエネルギー──ブラックホールや太陽などの高エネルギー体達すら、イデの前では一パーセントの出力にすら満たないのである。
それはもう、作中で言われた通りに『無限力』と呼んでも差し支えないくらいに。
……私は何度か、現実世界で無限を持ち出すことがどういうことかを口にして来たが、このイデオンはそれを見事にやりまくる。
力をさほど発揮していない時でもそれなりに強いが、真に力を発揮した際には一騎当千……どころか、一騎当千万ほどの無双ぶりを発揮するのだ。
イデオンソードは
その暴威はもはや神もかくやであり、ある意味俺Tueee系の走りであるとすら言えるかもしれない。
……まぁ、仮にイデオンを俺Tueee系の作品として見た場合、報われなさが強すぎて誰も憧れないだろう可能性が高いわけだが。
ともかく、イデオンという存在がとんでもない厄ネタである、ということは間違いない。
単純な戦力面で見てもそうだし、内包するイデの厄介さで見てもそうであるだろう。
「争いを憂う超越者、って感じの概念だからねぇ……」
「まず間違いなく、私たちにとっては福音ではなく厄災でしかないからねぇ」
敢えて悪く言うと、理想論の権化というか。
……まぁ、元々の第六文明人とやらは現行の人類達より遥かに精神的に優れた存在であったらしく、そんな彼らからすれば争いを続ける現行人類達が愚かに見えてもおかしくはない、というのはわからないではないのだが……。
結局のところ、彼らの求める精神的な成熟とは仏教のそれと近い、あらゆる欲の放棄に近い。
欲があるから人は争うし、互いを比べたがるし、違う相手を羨ましいと思ってしまう……。
それらは確かに醜いものでもあるが、同時に人の世を前に進めるための原動力でもある。
その辺、恐らく今新たにイデオンが描かれたとして、埋められぬ溝になりそうな気がしないでもない私だが……その辺りは横道に逸れすぎているのでとりあえずここで打ち切っておく。*4
ともかく、本気で無限を振り回せるイデオンならば、まず間違いなくオルトを撃滅せしめることができるだろう。
……できるだろうが、実際にやられた場合地上が酷いことになるのはまず間違いあるまい。
なにせイデオンソードは作中での最大威力なら惑星を真っ二つにするし、イデオンガンに至っては惑星を粉々にした上でその反対側にいる艦隊を完全に壊滅させる威力。
それらの威力を地上で発揮した日には、まず間違いなく地球が無茶苦茶になるだろう。
だがしかし、それゆえに火力を下げるのは厳禁である。
流石に原作ほどの不死性があるとは思えないが、それでも相手はオルト。
いやまぁ、実際のところ無限力にも適応できるのか否かはまったくわからないわけだが、危ない橋なら渡りたくない……というのも事実。
そのため、やるのなら絶対に死んだと確信できるような火力を持ち出すしかあるまい。
……そうなると地球ごとってことになってしまうので、結局イデオンなんて持ち出すもんじゃない、っていう話になってしまうのだった。
「ところで……『朱』がイデオンならば、『黒雲』は……」
「ヤメロォ!!考えないようにしてたんだぞぉ!?」
なお、イデオン……ジム神様がここに鎮座しているのなら、その対のような扱いをされるザク神様もいてもおかしくない……みたいな話が出てきたりもしたが、必死に聞こえないふりをする私なのであった。*6
……いやだって、ねぇ?イデオンに比べたら遥かにマシ……というか、無限力とかの使徒でもないから危険性はほぼない、と言い換えてもいいザク神様だけど。
その実、イデオンと並び立てても見劣りしないように見えるようなロボットが、純粋な人類の科学だけで生み出されてる……って時点で逆に危ないというか。*7
「それってつまり、下手すると今の人類にも扱えるかも……ってことだからねぇ」
「参考書か」
「はい?」
「あー……今まで完成させたことがなくても、お手本として革製品があるならその技術にたどり着くかも、ってことかな」
神妙な顔で『参考書』と呟いたメイトリックスさんだが、多分言いたかったのは今私が述べたことだろう。
技術の進歩と言うのはまさに日進月歩。
つい先日立ち止まっていたようなことでも、些細なきっかけで劇的に伸びることもある。
その些細なきっかけになりうる、という点でザク神様はとてもよろしくない。
なので、できればこの予想は外れていてほしいのだが……実際どうなるかは出会ってみなければわからない。
「そもそも、このイデオンをどうするのかってことすら決まってないからねぇ」
「そうなんだよねぇ……」
今のところ沈黙を保ち続けるイデオン。
それは無限力が存在しないからなのか、はたまた自身を扱うに足る搭乗者を求めているからか。
直接確認することができない以上、私たちにできることは想定することのみ。
願わくば、このイデオンが余計な被害をもたらすことのないように……と呟きながら、私たちはその威容を眺め続けていたのだった。