なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
暫くの間イデオンを監視してみたものの、特に動き出す様子は見られない。
かつてこの機体と出会った時も、動き出したのは特定の場面だけだった辺り、なにか起動に条件とかがあるのかもしれない。
……まぁ、動かないのなら動かないでそっちの方が都合が良いので、こっちとしては無理に起動条件を調べよう……なんて気にはならないわけなのだけれど。
っていうか、下手するとイデって私たち【星の欠片】のこと嫌ってそうだし……。
「そうなのかい?」
「まぁ、在り方としてはわりと"負"の無限力に近いからね、私たちって」
概念として小さいものを目指す【星の欠片】は、その性質上基本的には負け組──切り捨てられたものと結び付きやすい。
負けが決まっているからこそ逆に勝負の意味が無くなる、なんて性質とかまさにそれだろう。
……その性質を保つために無限性を利用しているわけだから、【星の欠片】は歴とした無限力の一つ、というわけである。
それでいて、私たちは寧ろ人々の争いを
その先にあるだろう彼らの躍進を期待している。寧ろ、下手な意味での仲良しこよしなど求めていないというか?
……この話を字面通りに受け取ると『周囲に戦争の種を振り撒くもの』ってことになってしまうわけだが、そこに関しては反論があるような、ないような。
「まだるっこしい。どっちなんだ一体」
「基本的に推奨はしないんだよ、静観はするけど」
「どっち付かず、ということですね」
ある種の日和見主義というか、放任タイプというか。
……【星の欠片】は、基本的に人のすること全部手放しで褒めるタイプの厄介者である。
それは言葉通り、誰かを救うのも陥れるのも、はたまた攻撃するのも守るのも全部ひっくるめて『それが人がすることなら』由とする類いの存在。
褒めて伸ばすと言えば聞こえは良いが、その実間違った方向に進んでいても忠告などは一切しない。
何故ならば、【星の欠片】の愛する『人』というのは個人ではなく総体。
人類という種が次代にバトンを繋ぎ続ける様を尊ぶモノであるため、
……わかりにくいので簡単に言い直すと、例えば『テイルズオブファンタジア』のダオスはこのゲームのラスボスだが、その実彼が主人公の世界に対して警告した『魔科学』の使用についてのあれそれは、考えなしに使い続ければ星を滅ぼすものとして一定の正当性があった。
似たような例──星を食い潰して人を生かす、みたいなやり方をしてしまっている作品は幾つかあるが、それはつまり『今は良くても後々良くないことになる』ということを如実に示しているとも言える。*1
無論、突然今のインフラを潰して他のものに変えろ、などと言われても無理があるのも事実。
現実においてもそう易々と方向転換できないことは、皆骨身に染みているだろう。SDGsとか。*2
……その上で、長期的な目線に立った時に今のやり方を続けるのが間違いである、というのも正解なわけで。
そういった、人の視点以外の視点から物事を判断する場合、今の成功が後の失敗である、と察する機会は多いのだと言える。
あれだ、キュゥべぇの言い分にもある程度正当性はある、みたいな?*3
とはいえ、それはあくまで人外の視点に立った場合。
人の視点からそれをよし、とするのは無理があるのもまた事実。
そこら辺の舵取りは難しく──結果、【星の欠片】が選んだ答えは
間違えるのも良し、正しい道を進むのも良し。
良いと思って悪いことをするのも、悪いと思いながら良いことをするのも、全て全てそれが人の行いであるのならば否定しない。
但し、それらの行動に人以外の思惑が絡むのならそれは止める。
何故ならばあらゆる咎も責も報奨も、あくまで人自身が受け止め理解するべきモノであるがゆえ。
それはある種の優しさであり、厳しさでもある。
「……とまぁ、そういうわけで。
「やり過ぎる……っていうと、具体的には?」
「前から言ってる通りその人のための世界を作るとか」
「やり過ぎの規模が違いすぎやしないか?」
まぁ長くなったので纏めると。
私達【星の欠片】は、あらゆる意味でイデとは対称的な立場なのである。
彼らは人を『自分達を振るうに足る存在になって欲しい』と誘導するが、私達は『自分達を振るった先に辿り着く場所が見たい』ので端から協力的だし。
彼らは『人の憎しみを悪いものだと切除しようとする』が、私達は『人の憎しみもまた人の力だからそれが必要なら寧ろ焚き付ける』こともある。
彼らは強者としての視点から人を見定めるが、私達は弱者の視点から人を仰ぎ見る。
……それらの点を細かく上げていくと、寧ろ仲良くなれる要素がまっったくないという話になるわけで。
まぁ、互いに無限力であることは間違いなく、ぶつかり合えば酷いことになるのは明白。
なので、少なくとも私が見ている間は起動する気はない、みたいなことを考えていてもおかしくはないかなー、とか思ってしまうのであった。
……え?この場に私がいない場合?
最悪マシュ辺りを取り込んで起動しだしてもおかしくはないんじゃないかなー。
いやまぁ、うちのマシュだとイデ好みではないかもだけど。
「あー……ホムンクルスというか、感情の希薄なタイプってわりと好きそうな感じあるよね、イデって」
「争いを起こさない精神性を尊んでいる感はあるからね。天草とか話が合うかも?」
もしくは、どうしても譲れない点が出てきてエグい仲違いをするか。
……天草の求めた理想はイデのそれに近い気もするが、実際どうなるのかはわからない。
どちらにせよ、このなりきり郷には天草はいないので意味のない考察だ、くらいに留めておく方がいいような気もする。
「……と、言うわけでこうして話してる間にも動き出す気配がない、ということでとりあえずイデは後回しってことにしとこうか」
「……あ、なるほど。無意味にお話を続けていたわけではなかったのですね」
「遠回しに無駄話が長いって言うの止めない?」
い、いえそんなことは……とおたおたするマシュに苦笑いを返しつつ、一応人避けの結界を張ってからこの場を後にする私たちなのであった。
「さて、イデを後回しにするのはいいけど……次はどこを探そうか?」
「確か残りは『白光』と『黒雲』でしたか。……辛うじて、『白光』の方が見付けやすいような気がするような?」
はてさて、熔地庵を離れた私たちは、エレベーターの前で次の目的地を検討していた。
現状オルトが留まっている場所──特撮地区にて発見したシン・ユニバースロボの構成機体であるシンゴジ達。
それから、先ほど私たちが発掘()してしまった古代文明の遺跡、イデオン。
……正直この時点でいっぱいいっぱいだが、悲しいことに彼らはまだ前座である。
いやまぁ、竜頭蛇尾的に後二つは大したことない、ってパターンもあり得なくはないけどね?
でもなんとなく機動兵器で揃えられてるんだろうなぁ、という気はしている私である。相手が
……ハロウィンである以上、そのうちギガフレーム・メカエリチャンとかも出てきそうだし、そうなるとシラカワ博士も張りきり出しそうで嫌だなぁというか。
「スパロボにおける無限力って、ある種『運命』の別名みたいなところあるから、シラカワ博士イデ嫌いそうなんだよなぁ……」
「イデオンVSネオ・グランゾンとかただの悪夢では?」
「アストラとネオグラは戦わせちゃいけない、って設定が残ってるなら同じようにイデともぶつけちゃダメだろうしなぁ……」*4
まぁ、ネオグラは紫・もしくは深い青といった感じの機体カラーなので、今回の話には関係なさそうなのは良いことかなー。
「……そんな風に考えていた時期が私にもありました」
「言ってる場合かー!?宇宙がー!?宇宙そのものがー!?」
ははは。相変わらず口は災いの元ー。(白目)
……うん、機体色は違うしそもそもハロウィンに合わせてパワーが上がる、ってわけでもないから関係ないだろうなーと思っていたわけだけど。
そういえばあれだね、シラカワ博士──もといシュウさんがグランゾンの強化に余念がないはずがないよねっていうか?
……メカ系は再現度の縛りから『逆憑依』としては基本再現しきれず、アスナさんのように
その例で言うなら、シュウさんはこっちでグランゾンを一から作った、ってことになるわけだけど──その先を目指さないはずがなく。
「私のグランゾンがヒンドゥー教や仏教と関連付けられていることはご存知ですか?破壊神ヴォルクルス──破壊の神、と名付けられた相手をヒンドゥー教の
シュウ・シラカワが運命と言うものを嫌悪するのは、自身の運命が他人によって縛られていたことがあるため。
その軛から逃れるため、彼は一度自身の死を体験していた。
──そして前回のハロウィン、私たちは皆一度死んでいたとおぼしい。
それを誰かが回避してくれていたわけだが──こういう場合、『逆憑依』の再現度に関わる話として扱われることもあるわけで。
そう、今のシュウさんは、ネオ・グランゾンの自力変身へのフラグを得ている状態。
ならば、そんな彼がネオ・グランゾンへの変身を試さないはずがなく。
……え?なんで今なのかって?そりゃ勿論、この時期なら自分が無茶をやってもある程度お目こぼしを貰えげふんげふん。
まぁ要するに、トラブルを起こすのなら一辺に、というありがた迷惑な気遣いである。
が、ここで誤算があった。
本来の彼ならば失敗しなかったのだろうが、ここの彼はまだまだ未熟。
結果、変貌したネオ・グランゾンは暴走した。
背後に輝く光輪『バリオン創出ヘイロウ』は際限なくその光量を上げ、そのエネルギーを迸るほどに漏出せしめている。
それは最早、
「それはそれとして、なのですが。……ちょっと助けて貰えませんか?」
「シュウさんの口から聞きたくなかった言葉!!」
次のお題が『暴走ネオ・グランゾンの停止』であることは、最早疑う必要性もないのであった。
……これはもう泣いてもいいんじゃないかな私!?