なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「い、いやいや!でも今回の話には関係ないはずだから!まだマシ!」
「……?失礼ライネス嬢、今回の話とは?」
「今の時期を思えばすぐに答えは出ると思うよ」
「……ああ、そういえば蜘蛛が蠢いていましたね。冬も間近なのに珍しいな、とは思っていましたが」
「君……」
今回のシュウさんの試験がネオ・グランゾンの運用試験である、ということを彼から聞かされた私は、思わず取り乱したわけだが……同時に、それでもまだ
……どこがって?そりゃ勿論、シュウさんのこれはハロウィンとは無関係だろうってことだよ!
どういうことかと言うと、ハロウィンのトラブルの種となるのは原則
シュウさんは今回初めて加わった存在でもないし、グランゾン自体も去年より前かもしくは去年に完成?したもの。
つまり『今回生まれたもの』という縛りからは外れるのだ。
……え?その区分だとキリアちゃんが怪しくなる?それは……そうねぇ……。
「おい?」
「いやほら、今のところ問題はないわけだけど、後々なんか起きる可能性は一応考慮してるから……」
「ならばいいが……」
確かに、キリアちゃんに関してはわりとギリギリというか、なにかフラグを感じたのも事実。
そのため、彼女には内緒で監視役的なものを設置しているため、なにか変なことになったらすぐさま急行するつもりではある。
……まぁ、今回生まれたもの、ってくくりだと実はイデオンがちょっと微妙だったりするのだが、あれに関しても注意しておく理由?みたいなものはあったり。
「そいつは一体なんだ?」
「
というか、じゃなきゃ当時の面子でイデオンを相手になんかできないし……。
それに先ほど全くこちらに反応を示さなかったのも、中身が伴ってないのであればそれも納得というか。
確かイデオンって、その機体に元から備え付けられている動力源じゃろくに動かせないらしいし。
……そういうわけなので、あのイデオンに関しては『イデが今回宿る』可能性を危惧し、こちらもキリアちゃんのところと同じく監視役を設置して確認中、というわけである。……分身系技能様々、ってやつ?
つまり、これらの例から想定される『危惧すべき相手』というのは、すなわち
そして、シュウさんとグランゾンはその条件からすると警戒の対象範囲外ということになるのである。
「ね?最悪の状況は回避してるでしょ?」
「なるほど。闇雲に行動しているのかと思っていましたが、その実意外と考えてらっしゃるんですね!」
「……なりきり郷ちゃんは私のことなんだと思ってるの?」
「え?ご本人が一番のトラブルメイカーなのに棚上げしている人、とか?」
「ノー!?私黒幕やったことないよ?!基本解決のために東奔西走してるだけだよ!?」
風評被害にも程があるわっていうか、まるで原作でのゆかりんの扱われ方(※旧バージョン)みたいな感じというか。
……まぁ確かに?キルフィッシュ・アーティレイヤーとしては
なんてことを心の内でぼやきつつ、空気を改めるため咳払いを一つ。
ともかく、今回『トラブルの種』になると目されるのは、
そのため、今年でもなければハロウィン関連でもないシュウさんとグランゾンは警戒外となるわけである。
「なるほど。まぁ私としましても、未完成品であの蜘蛛とぶつかり合うのは御免被りたいところではありますので、関係がないと言われるのは願ったり叶ったりではありますが」
「それは良かった。……良かったついでに、試験も後日にするとかできません?」
私たちこれからあの蜘蛛の対策のため、またまた走り回らないといけないので……的な言葉を裏に秘めた眼差しをシュウさんに向ける私。
それを受けた彼は、にっこりと笑みを浮かべて──、
「いやです。」
「即答!?」
「何故私がたかが蜘蛛のために、自分の研究を後回しにしなければいけないのです?寧ろここでグランゾンを完全なものとし、その五体を塵一つ残さずこの宇宙から消滅させるのが一番早いのでは?……なんて風に思ってしまうくらいですよ」
「YA☆ME☆TE!?」
それ周辺宇宙ごと吹っ飛ばすやつでしょうが!?
縮退砲なんて、こういう周囲の環境から切り離されたような場所でもないと迂闊に試験もできんわ。
……などと憤慨したところで、「だからかぁ……」と声が漏れた私である。
ああうん、ネオグラになったあと縮退砲試すつもりだっていうなら、この訓練場でもないと無理があるよね……。
要するにこの訓練場を借りた時点でやる気マックス、なにが起きようが実験を止めるつもりは毛頭ないということ。
そうなると、必然的にライネスがここに誘導したのもそのせい、ということになるのかもしれない。
「……どういうことだ?」
「縮退砲っていうのは、物凄く雑に言うと『超新星爆発を引き起こす』ものなんだけど、これが発生した場合発生箇所の半径五十光年以内の生命はまず壊滅的な被害を受けるんだよね」
「…………なんだって?」
「地上どころか太陽系内で撃つなそんなもん、みたいな威力ってこと」*1
まぁ、実際は超新星爆発といっても本来のそれよりは小規模らしく、影響範囲ももう少し狭くなる可能性があるのだが……。
そもそも光年というのが光が一年に進む距離、すなわちおよそ十兆キロであることからわかるように、例え規模が小さかろうがそんなもの地上でぶっぱなすんじゃねぇ……としかならないわけで。
どう考えても逃げ場ないからね、それ。
……そして、そんな甚大な影響を与える武装を、高々別位相の空間である、というだけの場所で使用して問題がない、なんてことは口が裂けても言えないだろう。
つまり、私がなにが言いたいのかというと。
このまま。
シュウさんの気の向くままにやらせると。
知らない内になりきり郷どころか太陽系が滅ぶ。
……この話のポイントは、ネオ・グランゾンは縮退砲を撃つ時謎の空間に転移している、という部分。
一応、所詮は演出なのでそこまでの破壊規模はないだろうとか、色々反論も思い浮かばないでもないのだが……『超新星爆発を起こしている』という一点は演出でもなんでもない事実であるため、それによって引き起こされる被害については演出だと切って捨てるわけにもいかないのである。
あれだ、ゲームシステム的な都合で不屈*2とかで耐えられるけど、本来なら文字通り蒸発してるのが普通……みたいな?
まぁ、原作性能そのままの威力ならイデオンにしろ他のロボットにしろ、迂闊に参戦なんてさせられなくなることも多いだろうから仕方ないのだけど。
ともかく。
元がゲーム原作だとその中でのダメージやらなにやらでイメージを固められてしまうことも多いが、実際に現実として向き合うとなればキチンと設定面を気にするべきというのは道理。
……それゆえ、このままシュウさんの好きにさせるのは論外。
防御に関しては一級品であるマシュや、ある種のチートである私を
「……なるほど。そう言われれば納得だな」
「わかって貰えてなにより。……さて、んじゃまぁ気は進まないけど……シュウさんの実験を手伝うかねぇ」
ここでシュウさんの気持ちを変えさせるのは難しいだろう。
となれば、さっさと実験を終わらせるのが最善というのは間違いあるまい。
ゆえに、私たちはにこやかに笑うシュウさんに承諾の合図を送ったのだった。
「…………?」
マシュ一人だけが、なにかを気にするような素振りをしていたことに気が付かないまま。