なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「さて、それでは早速実験に移ろうかと思いますが……なにかご質問は?」
「はいはーい」
「それではキーア嬢、どうぞ?」
はてさて、いよいよネオ・グランゾンの試験となるわけだけど……その前に質問タイム。
幾つか聞いておきたいことがあるので、その辺りの確認を取っていこうと思う。
「まず始めになんだけど、試すのはマハーカーラ……ネオ・グランゾンへの変身機構と、その最強武器・縮退砲についてってことであってる?」
「ええ、概ねその通りです。ネオ・グランゾンへの変身は言わずもがな、これが成立しないことには話が進みませんからね。それから縮退砲についてですが、これが曲がりなりにも使用できるのであれば、ネオ・グランゾンという機体としては十分に完成したと言えることでしょう」
そうして始めに尋ねたのは、今回の試験において確認する事項。
本命はやはり縮退砲であり、それを発射するための下準備としてネオ・グランゾンへの変身が必要なので、そちらも目標として定められている……という形になる。
「どういうことだ?」
「縮退砲は超新星爆発を引き起こす武器だって言ったけど、そのために必要なエネルギーの確保は通常のグランゾンだと不可能なんだよね」
一口に超新星爆発といっても、それを引き起こすには様々な条件が必要となる。
まず第一に、とてつもない質量、ないしそれと同等のエネルギーが必要となるという点。
そもそも超新星爆発と言うのは、恒星などの重い星がその活動の最後に引き起こす最後の輝きのこと。
ここでいう重い星とは、具体的には太陽の八倍の質量を持つような星のことであり、そういった星はその終わりに超新星爆発という特殊な最後を迎えるのである。
因みにそうじゃない星は白色矮星と呼ばれる高密度の天体となり、そうなる際に生まれた余熱によって白く輝き、やがて黒色矮星となって黒く静かに崩れていくのだとか。*1
……ブラックホールにならないのかって?そこがまた難しいところで、ブラックホールになるのは超新星爆発を起こすような質量を持つ星の中でも、太陽のおよそ二十倍の質量を持つモノでないといけないのだ。
それが何故かと言うと、超新星爆発の
「超新星爆発は星の最後の姿ですが、そのあとに生まれるものもある。具体的には中性子星というものなのですが、これの質量が太陽の一から三倍の範疇*2にある場合、それは星としての体裁を保てなくなる。要するに重力によって星が中心に向けて落ちきってしまう、というわけですね。その結果、皆さんのよく知るブラックホールが生まれるわけです」
「なるほど……」
具体的には、重力と縮退圧*3の均衡が破れるのがそれくらいの質量なのだとか。
均衡が破れると、周囲の物体は星の中心部に向かって重力に引かれ落ちていく。
それらは中心部に集まってさらに質量を上昇させ、それに伴って重力をも上昇させていき……結果、超重力の穴であるブラックホールになる、と。
まぁ、これはあくまで自然に生まれるブラックホールの発生の仕方ということになるわけだけど……太陽の二十倍以上の質量を持つ星が超新星爆発を起こした場合でない限り、ブラックホールになりうる質量──太陽の一から三倍ほどの質量の中性子星は生まれないのだそうな。
結果、ブラックホールが生まれるのは一定以上の重さの星の終わりの時だけ、ということになる。
「今の発言からわかる通り、太陽はブラックホールにはなり得ません。少なくとも自然には、ね」
「質量とエネルギーは相互互換だから、エネルギーを注ぎ込めば無理矢理ブラックホールにすることは可能ってことだね」
で、それを無理矢理やるのがグランゾンだと。
……超新星爆発のあとにブラックホールが生まれる、という説明からするとあとから出てきたモノの方が強いようなイメージが沸くかもしれないが、それに関してはピンきりと言ったところ。*4
少なくとも、超新星爆発のあとに生まれるブラックホールは、その元となった爆発に比べれば持ち合わせるエネルギーは下であるわけだ。
「言い方は悪いけど、いわば残りカスみたいなものだからね。重力臨界は極論質量を放り込みまくればその内到達するけど、超新星爆発を起こす場合は明確にそれを引き起こすだけの質量──エネルギーがいるから」
バイバインで増えた栗饅頭がブラックホールになったとして、それは超新星爆発よりも高いエネルギーを持つのか?……という話というか。
いやまぁ、ブラックホールになったあとも増え続けるのであれば、その内合体して超巨大ブラックホールになり、超新星爆発のエネルギーを上回ることもあるだろうけども。
……ともかく、極論を言えば爆発なんて派手なことをしなくとも、ブラックホールを作ること自体は可能。
それゆえ、明確に爆発という結果を必要とする超新星爆発のほうが、必要となるエネルギーもそれによる被害も共に大きい、ということになるのであった。
で、それを起こすために必要なエネルギーは、質量的に考えると太陽の八倍以上。
……それだけのエネルギーを用意するためには、素のグランゾンでは役者不足というわけである。
そこで必要となるのが、ネオ・グランゾンの持つ機構の一つ『バリオン創出ヘイロウ』。
これは重粒子バリオン*5をエーテルの揺らぎから生み出すために必要なモノであり、これを利用することで莫大な質量とエネルギーを発生させているとのこと。
これにより、先の大きすぎるエネルギー・質量を賄っているわけだ。
逆に言うと、このシステムが無いと縮退砲は発射できないわけで。
そりゃまぁ、その辺りの設定が整理された結果、遥か昔に存在した『試作型縮退砲』も消えるわなというか。
……そのあとさらに説明を見直して『ブラックホール・ディスラプター』なるものに派生するわけだが。
閑話休題。
ともあれ、縮退砲を明確に使うにはネオ・グランゾンに変身することが必要である、ということがわかったと思う。
で、そのまま次の質問に移る。それは、
「ぶっちゃけ、ネオ・グランゾンって必要?」
「……なるほど。記録には残っていませんが、確かに私は『試作型縮退砲』のリメイクとも言える『ブラックホール・ディスラプター』を発射していた。……その点だけを見れば、無理にネオ・グランゾンを目指す必要はないのではないか?……と思えてしまうというわけですね?」
「まぁ、縮退砲にだけ拘るなら、ねぇ?」
真実、ネオ・グランゾンの試験は必要なのか、という部分。
ネオ・グランゾンは確かに強力な機体だが、同時に問題点も存在している。
それは、この機体に備わっているもう一つのシステム──『ヴォルクルスの
システム・マハーカーラの中核を為すこれは、ネオ・グランゾンの両肩に走る黄色い線の部分に搭載されたモノであり、ヴォルクルスの力を引き出すために必要な要素でもある。
「グランゾンからネオ・グランゾンへの変身のためにはこのシステムが必要不可欠だけど……その実、その説明通り
「ええ、その通り。ネオ・グランゾンへの変身の際、機体の各部に錬金術・および呪術理論による強化を施し、かつバリオン創出ヘイロウの呼び出しまで行うための呼び水……それこそがマハーカーラの必要性。つまり貴方はこう言いたいのでしょう?この世界に邪神・ヴォルクルスは存在しない。ゆえにネオ・グランゾンへの変身も行えるはずがない……と」
「まぁ、端的に言うとねぇ」
確かにネオ・グランゾンは強力な機体ではあるが、同時に危ない機体でもある。
その一番の理由は、邪神・ヴォルクルスの依り代となりうる危険性。
シュウ・シラカワという男の自由を縛るものである、という点となる。
無論、原作においてその呪いは解除されていたし、そもそもこっちには邪神がいないだろうからその危険性は半減以下となっているわけだが……同時に、力を借りる相手がいないということでもある。
言ってしまえば、別の手段が必要になるわけだ。
「まぁシュウさんのことだから、その辺りは折り込み済みなんだろうけど……同時に、そこまでしてネオグラに拘る理由があるのかな、って話にもなるわけで」
「……ええまぁ、確かに。ネオ・グランゾンは魅力的ですが、同時にその火力や機能は過剰気味、現状では必要性が薄いということもできるでしょう」
「だったら……」
「だからといって、目指さないわけにもいかないのですよ、私は」
「…………」
うーん、このわからず屋め……。
でもまぁ、確かにシュウさんの言葉にも一理ある。
折角『逆憑依』となったのだから、自身の限界に挑みたいとか、元々持っていたものをこっちでも使いたいとか、そういう感慨については否定する手段を持っていない。
なので、彼が頑なな姿勢を見せること自体は、こっちとしては否定も批判もしきれないのである。
どうしてもやりたいのであれば、やりたいようにさせるしかないというか。
「……はぁ、わかりました。こっちとしては聞きたいことは聞いたから、他の人が質問あるならそっちを聞いてあげて」
「ええ、ご理解ありがとうございます」
特に、シュウさんの言動に無理に突っ掛かるのは敵対判定されかねないし……。
そんな内心を押し留めつつ、私はシュウさんに