なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
結局あのあと、他の人達から新たな質問が出ることはなかった。
……いやまぁ、ブラックホールだの超新星爆発だのバリオンだのレプトンだの、色々単語が出てきたのでそれの理解に努めていたというのが正解なのかもしれないが。
え?レプトンの話はしてない?*1
「まだるっこしい。つまりはどういうことだ?」
「核みたいな超兵器は、持って嬉しいコレクションである方が望ましい、って話」*2
「……流石の俺も、それが大分はしょった例えなのはわかるぞ」
あら、それは失礼。
……いやまぁ、どこぞの
今回は、それよりも遥かに硬い主張が飛んできたため、やむなくこっちが折れたってだけで。
「おや、まるで全ての元凶となる人間がいるかのような発言ですね」
「……幾らなんでも白々しすぎない?」
「ふふふ、冗談ですよ」
その当人──シュウさんは、先ほどから変わらずニコニコと笑みを浮かべている。
どうも、ネオ・グランゾンをその手で顕現させられるかもしれない、というのが嬉しくて仕方ないらしい。
……いや、本来ならできて当たり前なことでもあるため、いまいちいつものニコニコ顔と判別が付き辛いところもあるわけだが。
あれだ、純粋に喜んでいるのかいつもの泰然とした態度の延長なのかがわからない、みたいな?
まぁ、現状その辺りを問い質したところではぐらかされる可能性大なわけだが。
……ともかく、彼が『シュウ・シラカワ』である以上、ネオ・グランゾンを目指さないわけにはいかない、というのは確かな話。
それゆえ問答はここまで、ここからは件のネオ・グランゾンが暴走しないように注視する時間である。
「暴走、暴走ねぇ……実際、暴走すると思う?」
「確率としてはほぼないだろうと思ってるよ。少なくともシュウ・シラカワがそんなぶっつけ本番でチャレンジするとは思ってないし」
そうしてシュウさんの準備を見守っていると、横合いから小声でライネスが話しかけてくる。
内容は、この実験が失敗に終わるかどうか、みたいなもの。
……これが琥珀さんとかなら、意外と失敗したりもするのだが……ことシュウ・シラカワが行う実験において、失敗などと言うものが発生しうるのかと言われると甚だ疑問である。
……いやまぁ、本人は「私も完璧人間というわけではありませんので、時に失敗することもあるのですが……」とかなんとか、過去の失敗を例にして説明し始めそうな気もするのだが……あれだ、キャラクターイメージは早々覆るものでもない、というか?
そもそも、彼の失敗と言うのも基本的に彼自身に過失があるとは言い辛いモノばかり。
他人に自身の生へ介入されることを嫌がるのは、彼の失敗が他人に起因するものがほとんどだからこそだろう。
ゆえに、現状他者の思惑が絡むとも思えない状況であることも含め、私は失敗についてさほど心配していないということなのである。
「……すみませんせんぱい、一つよろしいでしょうか?」
「おっとマシュ?そういえばさっきから黙ってたけど……なにか気になることが?」
「はい、なんと言っていいのか……少し違和感があると言いますか」
「違和感?」
そうしてライネスと会話していたところ、さらに横合いからマシュが話に加わってきた。
おずおずと、けれどはっきりと会話に介入してきた彼女に内心ビックリしつつ、その発言に思わず眉根を寄せることに。
違和感というそれがなんなのか、詳しく尋ねていくと……。
「まず、シュウ・シラカワ博士は失敗を前提とした実験を行うような人物ではない。そうですよね?」
「まぁ、うん。なにより自身の人生を害されることを嫌うがゆえに、その要因が自身にあるのなら徹底的に原因を潰すタイプの人だからね」
言い換えると、自他ともに厳しいというか。*4
……自由を殊更に求めるものは自由に縛られる、なんて話もあるが、彼は実質そちら側の人間だと言えるだろう。
それゆえ、それを脅かすモノに対して徹底的な対策を講じるし、やられたあとは必ずやり返す。
ある意味では子供っぽくもあるわけだが……その辺りは深掘りするとろくなことにならないので割愛。*5
ともかく、彼が『失敗の可能性が大半』というような状況を静観する、などということはあり得ないことだけは間違いあるまい。
「それから、ネオ・グランゾンの構造的に従来のやり方は本来無意味、ないし効果が薄いものである、というのも間違いないですね?」
「ええと……ネオ・グランゾンは邪神から力を借りる・ないし邪神をぼろ雑巾のように利用するものであるから、逆に言うと邪神が存在しなければ成立しない……って部分のことだよね?」
「ええ、そうです」
次に触れたのは、代替案を用意していない限り純粋なネオ・グランゾンへの変身はほぼ確実に失敗するだろう、という部分。
邪神というあからさまなこの世界の存在ではないものを利用することで霊的・呪的な効果を発揮した結果、グランゾンはネオ・グランゾンに変身するわけだから、その大本となる邪神が実在しなければそもそも変身なんてできるはずがない……という話だ。
とはいえ、これは霊的な力を利用する際
その辺り、シュウさんのことだから上手くやっているのだろうが……これで実は力の借り受け先が『星女神』様とかだったら私は笑うしかない。
実際、この世界で明確に霊的でかつ力の借り受け先として適している存在となれば、それこそ『星女神』様とか『月の君』様とかになるだろうし。
……その場合ネオ・グランゾンまで準【星の欠片】の仲間入りとなるため、私としては正直止めて欲しい感いっぱいなんだけども。
余計なトラブルの匂いが露骨にするし。
ともあれ、それらは今のところ余計な心配でしかなく、ここで語っても仕方がない。
仮に本当に準【星の欠片】になるようなことがあれば、そうなってしまったあとに議論をするべきで、今それを問題視するのは間違っているというわけだ。
「それは何故だ?事前に片付けられるのなら片付けておくべきだと思うが」
「【星の欠片】になるってのはそもそも才能ありきだから、仮に目指したとしてもなれないってことも多いんだよね」
「……なるほど?」
その一番の理由は、目指したからと言ってはいなりました、みたいなことにはならないという部分。
この前私たちが受ける羽目になった試練達をこなさないと認められない、というのだからその辺りの苦労は言わずもがな、というわけだ。
……ともかく、ヴォルクルス代わりのエネルギーがどうなっているのかはわからないが、先の話から考えるとその辺りの代替案を考えていないはずがない、ということになる。
なので、実質的にここも心配の必要がないということになるのだけれど……。
「なるほど……大体わかりました」
「マシュが世界の破壊者に!?」
「いやそうではなくてですね?というかせんぱい、話の腰を折らないでください」
「はーい」
これらの話を聞いて、マシュは自身の考えが纏まったのか下げていた視線を上に戻す。
そのまま、彼女は自身の感じた違和感がなんだったのか、こちらに説明してくるのだった。
「まず思ったのは、今ここにいるシュウ・シラカワは
「あっ」
「……キーア?」
「せんぱいはお気付きになられたようですが、このまま続けますね。原則私たち『逆憑依』は、現在展開されている作品の情報は、例えそれが
で、そうしてマシュが一言めに発した内容で、私はさくっと彼女の違和感が意味するところを気付いてしまった。
……そう、本来シュウさんは最終的に邪神の支配から逃れ、逆にそれを打ち倒すにまで至る。
となると、だ。
本来彼は、
元々の彼自身の人格が漏れ出てきた、とも言えるわけだが……ともかく、彼のライバルであるマサキ・アンドーが思わず二度見するくらい彼は変化するわけで。
それを前提に今のシュウさんを見ると、あまりに以前の彼のままなのである。
確かに、普段は以前と同じような態度を取っていることが多いとしても、だ。
言うなれば他者への対応の際に思いやりの気配がない、みたいな感じというか。
これが意味するところは、ただ一つ。
「……つまり、あくまで仮定となりますが……現在のシラカワ博士はなにかしらの存在から干渉を受けている可能性が非常に高い、ということです」
「……え、ヴォルクルスがいるってことかい?」
「そこまでは断定できませんが……シラカワ博士に気付かれないように、彼の方向性を誘導している存在がいることは否定できません」
彼はまた、何者かに狙われているということだ。