なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、もしかしたらこの世界にもヴォルクルス、もしくはそれに似た邪神が現れようとしているのかもしれない。
その影響がシュウさんの目的意識を頑なにしているのかも、ということを自身の感じた違和感から察したのがマシュというわけだが……いやはや、筋の通ったいい論説であった。
とはいえ、それに素直に頷けるかと言うとそれはノーである。
「それはなんでだい?」
「いや、もし仮にそういうのが居るのなら、私の探知に引っ掛かるだろうし」
「……言われてみればそうだね」
確かに、今のシュウさんが頑なに見えるのは間違いない。
だが同時に、そこにロマン的なものが入り込んでいるだろうことも間違いはないだろう。
確かに『シュウ・シラカワ』として見ると彼の今の行動は操られているようにも見えるが、同時に『逆憑依の』シュウ・シラカワとしてみるのなら単なるごっこ遊びの延長にも思える、というか。
「ややこしいところだけど、私たち『逆憑依』って原作の本人ではあるけど、同時に全くの同一人物ってわけでもないんだよね」
わかりやすい例ではゆかりんとか、それこそ今のマシュもそうであるというか。
ベースとして原作の本人達が呼び出されてはいるけれど、そこに聖杯の知識的なノリでこっちの世界での常識や経験などが付与されているため、扱いとしてはどこまでも二次創作でしかないというか。
実態としては間違っているけれど、『逆憑依』の核となった存在と半ば融合しているようなものである、と言えばいいだろうか?
考え方の方針に中身がある程度影響している、とかの方が通りがいいかもしれない。
無論、あくまで
それはあのシュウさんにしても同じこと。
基本、『逆憑依』……ひいてはなりきりというのは
そのキャラを好きな人がそのキャラの意識に影響するのだから、そもそも最初からある程度の思考誘導を受けている、と見なす方が普通なのである。
そのため、今のシュウさんの様子も『洗脳が溶ける前の彼のスタンスが好きだった』のでそっちの方に寄るように中身が干渉した結果、と見なす方が自然であるということになると。
……どちらにせよ、仮に彼を操作する何者かが存在するのであれば、その繋がりを私が見逃すはずもない。
「なるほど。ではせんぱいの発言に反論していくことに致しましょう」
「……ひょ?」
(……お前は最後に殺すと言ったな?)
いや言われてないよ?
……なんか露骨な死亡フラグを立てられたような気がしたので反論したが、ともかく普段こういう状況になったら折れてくれるマシュが一切控えるつもりがないことに気付き、『あれ?もしかしてなにか見逃してる?』と不安になる私である。
そしてその不安は、見事に的中することとなったのであった。
「せんぱいが見逃す可能性のあるもの。……というと、一つだけ存在します」
「と、いうと?」
「相手がまだこの世界に現れていないもの──【兆し】であること。結果だけを先にこちらの世界に寄越し、そこまでの経路はこっちに出てきた時に改めて構築する……というその流れは、単純な探知・感知では把握の難しい相手であることは以前の経験から実感済みのことと思われます」
「…………」
彼女が話題に出してきたのは【兆し】。
予め知ろうとする場合に未来予知以外の手段がないそれは、確かに私の感知でも容易に知ることのできない相手であることは間違いない。
それと同時、相手があくまで『誘導』という迂遠な手段を取っていることの理由にもなっていた。
正確には、望んでその方法を取っているわけではなく
「【兆し】の時点でもある程度の干渉力があることは以前の事例から明らかではあるけど、その時でも予めそれらの問題・干渉を知ることは一部の者にしかできなかった。そしてそれらを感知するための手段は予知・予言であるため言うほどあてにもできなかった……というやつだね」
「確定するまであやふやだからこそ【兆し】である、ということですね。そして確定してしまえばその時点でそれより過去の事象に手を出すことも不可能、と。まさしく、私達の世界で言うところの『
私たちが【兆し】と呼ぶそれは、その存在が確定するまであらゆる計測を無視する存在でもある。
確かにそれによる影響はあるのに、そこに起因するものを調べようとするとなににも繋がらなくなる……。
文字通りに『因果が定まっていない』というべきか。それゆえ、時に本来核となるものすら捕まえられず、【鏡像】などという敵対者へと変貌することもあるわけだが……これは最初から【鏡像】になると定められているわけではない、ということでもある。
ボタンの掛け違いがあれば、いつぞやかに戦うことになったぶふあ声の信長だって、私たちと同じように暮らしていたかもしれないということだ。
それと同じく、今こうして私たちと一緒にいる『逆憑依』達も、なにかしらの変化が起きれば【鏡像】として処理されるだけだったかもしれない、というわけである。
つまり、【兆し】として現れただけでは、その後のことは全く不明だということ。
それと同時、今予測できることはどこまでも予測でしかないということもまた、一つの事実となる。
結果としてどうなったかだけが重要であり、そこまでの経路は『決まったあとに全て定まる』というか。
……それが事実であることは今までの経験から理解しているが、同時にマシュはこうも言っているのだ。
今私たちが出会ってきたものは、全て単なる【兆し】でしかないのかもしれない、と。
「……つまり、どういうことだ?」
「四つの予言はつまり
「随分と話が巻き戻ったな……」
言い換えれば、『最終的にオルトをどうにかする』こと以外の全てが未定、あらゆる選択肢が確率としてそこらに転がりまくっているというか。
現状の予想図としては『黒雲』相当のなにかと他三種を纏め、オルトに対抗するということになっているが……。
「例えばあの四体が合体しない挙げ句にシン・ゴジラが暴れまわるとか、合体はしても正義の味方じゃなくシン・ゴジラがロボパワーで暴れまわる結果になる可能性もあるし。例えばイデが宿ったはいいけど即座に人を見放してイデを発動させるかもしれないし、もっと人に対して悪意を持つようなものが宿った挙げ句、なりきり郷をイデオンガンで地表ごと吹っ飛ばす……なんてことになるかもしれない」
「それらは全て、可能性という形では確かに存在するもの。実際に実現されるかはそれこそ確率による、と言ったところですが……結果を見ない限り、それらの可能性を予め潰すということは不可能。何故ならば、【兆し】による現象の創出はあくまで結果から原因に向かっていくものだから……というわけですね」
「雑に言うと『今邪神が存在しなくても、結果邪神がいたことになる』可能性は常に存在している……ってことだね」
「……I'll be back?」
「いきなり原作変えるの止めない?」
いやまぁ、実質的な過去改変に近いわけだし、その言葉は関係性がないとも言えないわけだけれども。*1
ともあれ、現状私が気配を探れないとして、その相手が今現在【兆し】であるのならばそれは無理もないこと。
なにせ今この世界に私が探すべき相手は存在しない。存在しないのだから探せない、それをしようと思えば
で、そもそも予知というのは複数の道筋から相手を見付け出すモノでもあるので、どうしたって綺麗に捉えることはできないと。
「……つまり、どういうことだ?」
「仮にこれからシュウさんがなにかやらかすとして、それを今の私たちが止めることはできないってこと」
ともすれば、止めたことが要因となって暴走する、なんてこともあり得るかもしれない。
いや寧ろ、止めたことで悪化する可能性も否定できない。
相手があくまで可能性であるため、確実に止める手段がないというのが悪質、というべきか。
……ともかく、これから私たちは『暴走は起こるもの』としてそれに対する必要がある、ということ。
そして、そのために予めなにかしらの用意をするのも悪手である、ということがここでのマシュの発言の意味。
もっとも、本当になにも知らずにやられていたらそれこそ大惨事なので、こうして知らせる必要はあった……という形に落ち着くのであった。
なお、メイトリックスさんは『まだるっこしい』とキレていた。……まぁ、この辺はややこしいし面倒臭いから仕方ないね……。