なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「あー、なんというかすっごい久々にだらけられてる気がする……」
ベッドの上でぐでー、っとなりながら小さくあくびを溢す私。
なんというか、最近はずっと働き詰めだった気がするので、こうして本当になんにもない日というのは、すごく久しぶりのような感じがしている。
このままダラけきった正義*1……もといダラけきった休みを満喫してもいいのだが……。
「……出掛けようかな」
マシュも居ない家の中で、単にボケッとしているだけというものも味気ない。
折角の休みなのだから休みらしく、ちょいと郷の内部の探索でもしに行こう。
……みたいな気分で、よっ、と掛け声を掛けながらベッドから降りる私。
そのまま適当に着替えを終えて、鏡の前で全体的な見栄えチェック。
この姿になってからは、それなりに服にも髪にも気を遣うようになった。
理由はまぁ……単純に鏡の中の少女が着飾っていると、なんとなく楽しくなるから、だったりするのだが。
……鏡の中の少女が自分であることに、少なからず思うところが無いわけではないけれども。
「まぁ、眼福ってやつよね」
単純に見るだけなら、楽しさが勝るのだからそれでいいや……が、最近の私の結論だったりする。
全体的にボーイッシュかつほんのり可愛い、みたいな感じに纏まったことに一つ頷いて、そのまま寝室を出る。*2
内容は……時間帯的にもニュースのようだ。
普通のニュースっぽいので、特に気にもせずリビングを抜けようとする私。
「おや、お出掛けかい?」
「ちょっとねー。夕方まで戻んないつもりだから、昼御飯は適当にお願いね」
「ん、りょーかい。だったら僕も久々に
「……別に使ってもいいけど、あれで外でないようにね。(周囲が)危ないから」
「わかってるよ、さすがに迷惑を掛けるわけにもいかないしね」
「ならいいんだけど」
こちらの足音に目敏く反応したCP君に、暫く外に出ていることを伝える。
こちらの言葉に、キャタピー姿だと料理もできやしないので、久々に浸父の姿を使う……という彼女に一つ注意だけをして、こちらを見上げていたカブト君の頭を一撫でしたのち、玄関に向かった。
……ふむ、靴も意外と悩むところよね。
今回は少年っぽい服装で纏めてみたし、スニーカーとかでいいのかしら。
それとも、しっかりしたブーツとかのが合ってる?
むぅ、別にファッションリーダーってわけでもなし、なかなか決めらんないもんだな、これ。
というような感じにちょっとだけ靴選びに時間を掛け、最終的に背丈とかから小学生にしか見えないだろうし……という微妙な理由から、スニーカーを選んで履いて玄関から外に出る。
扉を開ければ、そこは居住区の一画。
文字通りの空間拡張技術により、外観と内観が一致しないそれらの住居は、私達の住んでいる区画ではまさに敷き詰めるように立ち並んでいる……という、ある種異様な見た目をしている。
こんなことになっている理由はもちろんあって、このあたりは秘密基地とかが好きな人達が、好んで集まっている場所なのだ。
見た目は狭いのに中は広い……という構造がウリの、半分カプセルホテル*3みたいな建物が集まった場所、というのがこのあたりの住居の特徴である。
元々は、今のように地下が何階も存在しなかった時に、狭い空間に居住区を詰め込むための苦肉の策……だったらしいのだが。
幼い頃にドラえもんの秘密道具など*4に憧れた紳士淑女諸君が、「寧ろこれがいい」みたいな感じで入居希望をしていった結果、広々と空間を使えるようになった今でも、こうして居住区の一つとして姿が残っている……のだとか。
まぁ、あれこれ語ったけど、私とマシュに関しては郷に来た当初、空き部屋がここしかないということで案内された当時のまま、別に住みにくいわけでもないので引っ越しもしていない……くらいの理由しかないのだが。
実際、私も秘密基地的なのは嫌いでもないし。
まぁ、そんなわけなので。
外に出れば必然、お隣さんだとかにも出会うこともある、というか。
「……ん、なんだキーアじゃねぇか。珍しーな、お前さんがこんな時間に出てくるの」
「その言葉、そっくりそのまま貴方にお返ししますわ、銀時さん?」
うちの左側のお隣には、最近銀ちゃんが越してきていた。
ちょっと前まで空き家だったのだが、適当に住居を探していた彼が、転がり込むように住まうことになったのである。………この辺の手続きとかも結構いい加減なのが、郷の不思議なところだ。
……空き家になってた理由?その更に隣にちょっと前まで両さん*5が住んでた、って言えばなんとなくわかるんじゃないかしらね?
まぁ、あの人原作通りに無茶苦茶やって、今は確かミラさんのところに
さすがにあさひのまんまだと反省を促せないので、彼に対応する時は部長さんの姿になって、
閑話休題。……って使いすぎるとパターン化するから難しいよね、なんてどうでもいいことを呟きつつ。
「俺はあれだ、昨日寝た時間のせいってやつ。夜もまだまだー、みたいな時間に寝ちまったから、こんな朝早くにお目覚め、ってやつですよ」
「休みの日に朝から寝床でぐうたら、というのは体に悪いのだ、起きて運動してきたらいいのだ、へけっ」
「うわでたっ、……って、ごめんなさいハム太郎君。思わず驚いちゃった」
「気にしなくていいのだ。それより、銀ちゃんを連れ回してあげてほしいのだ、くしくし」
銀ちゃんから、朝八時過ぎなどという基本的に彼は寝ているはずの時間に起きている理由を聞いていたら、空いていた彼の部屋の中から、のっそりとゴジハム君が出てきた。
……そういえば、今は彼が銀ちゃんの同居人なんだっけ。
フライパンを片手に持っているのは、まさか彼が料理を作っている、とかなのだろうか?……百人力がどうとか最初に言ってたけど、本当になんでもできる感じなのだろうか、彼。
というか今さらなんだけど、実はこの子『
みたいな疑問とかを全て飲み込み、引き攣り気味の笑顔で挨拶を返せば、彼は銀ちゃんの世話をこちらに頼んでくる。
……休日のお父さんかな?家に居ると掃除とかの邪魔、みたいな。
「いや、そんな可哀想なモノを見る目で見られても困るんだが」
「そう……」
「だからって養豚場のブタを見るような目*8で見ろとも言ってないからね?!確かに俺とアイツ、声は同じだけどさぁッ!?」*9
「
「いや、さよならじゃないのだ。銀ちゃんを連れていってほしいのだ」
「……チッ!」
なので、まさかのゴジハム君に養われているかのような状況らしい銀ちゃんを、可哀想なものを見る目で見ていたら。
当の見られている側の銀ちゃんから、猛烈な抗議の声が上がったので、仕方なく見方を変える私。
……変えた方でも抗議の声が上がった。もー、わがままだなぁぎん太君は。*11
仕方ないのでネタにノリ返してクールに去ろうとしたら、こっちはこっちでゴジハム君に呼び止められてしまった。*12
……ぬぅ、どうあっても銀ちゃんを私に押し付けるつもりか!そうはいかんぞゴジハム君ッ!
「いやなにこれ、なんで俺、休みの日に子供の面倒見ろ、って言われた夫と妻の間に挟まれた子供ー、みたいことになってんの?意味わかんねーんだけど、俺大人なんだけど?」
「え?ふくしの……大学?に通ってる二十歳の大学生?」*13
「ちげーよ、こちとら健全で子供が見ても大丈夫な作風ー、で売ってるのに、そんなアウトラインスレスレなもんぶっこんできてんじゃねーよ、っていうかそれ、台詞的にはそっちが言うべきやつだろ、背丈的にも」*14
「っ……!!男の人っていつもそうですね……!私達のことなんだと思ってるんですか!?」
「止めてくんねー!?ホント止めてくんねー!?
「ドキドキで壊れそう?」
「
「きゃーっ☆剥かれるー☆」
「YA☆ME☆TE?!」
そんな感じにゴジハム君と視線をバチバチしてたら、間に挟まれた銀ちゃんが適当なことを言うので、あれよあれよという間にこんな感じである。
……誘導にはまってまんまとアカン台詞を口にするとか、それでも貴様ジョセフかっ!!*17母ちゃん情けのうて涙がちょちょぎれるわっ!!
「誰のせいだ誰のっ!!……ったく、気は済んだか?」
「おや、ここで大人ポイントを稼ぐ作戦とな?あざといな、流石銀ちゃんあざとい」
「さっきから絡み方がウザいのはなんなんですかねぇ!?」
おや、こっちがちょっと平時とテンションが違うのはバレていたらしい。……ふむ、流石は銀ちゃんということなのだろうか?
まぁ、わかってくれてるなら話は早い。
今日は銀ちゃん
「じゃあお母さん、息子さんを立派なお父さんにしてきます」
「ちょっと待てェェェェッ!!!?」
「へけ、せいぜい立派なお父さんにしてやってほしいのだ」
「おィィィィッ!!!?なに言ってんのお前らァァァァッ!!?」
「……えー♡今さら怖くなったんだ♡ざーこ♡年下の女の子に弄られっぱなし♡」
「へけ♡やっぱり銀ちゃんは口だけ野郎だったのだ♡くしくし♡」*18
「だから今日のお前らなんなのォォォォッ!!!?めちゃくちゃウゼェェェェんだけどォォォォッ!!!?」
はっはっはっ。
銀ちゃんよ、君が打てば響く系のツッコミ属性なのが悪いね☆
……………。
「わわわわわわわ悪いね☆」*19
「かぁっ!気持ちわりぃっ!!?やだおめぇ……!なにその動きミシンかなにかかっ!!?」*20
「……キシン流奥義!」*21
「ウボァーッ!?」
「銀ちゃん、流石にキモいはダメなのだ、へけっ☆」
なんとなく
……うん、初っぱなから収拾つかねぇな、どうしたもんかなこれ?
ボロ雑巾になった銀ちゃんに回復魔法を掛けて感謝を貰うというマッチポンプをしつつ、はてさてこれからどうしたものかと悩む私なのであった。
(なんだか久しぶりに注釈が20越えてるな、という顔)